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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1130651
審判番号 不服2002-13985  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-25 
確定日 2006-02-07 
事件の表示 平成 4年特許願第213081号「消費税額調整システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 3月 4日出願公開、特開平 6- 60095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の要旨
本願は、平成4年8月10日の出願であって、平成14年6月24日付で拒絶査定され、これに対し同年7月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その後、当審による平成16年8月20日付の拒絶理由通知に対して、同年10月27日付手続補正書により特許請求の範囲が補正され、その請求項1に係る発明は、上記平成16年10月27日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求める機能と、
経理期間における取引の総額に対する消費税と該経理期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求める機能と、
取引の総額に対する消費税と取引ごとの消費税の合計との差とを記録するジャーナルファイルと
を備えた消費税額調整システムであって、
請求期間における取引の総額に対する消費税と、該請求期間における取引ごとの消費税の合計額との差を求め、前記ジャーナルファイルに記録する請求期間消費税額差異算出手段と
経理期間における取引の総額に対する消費税と、該経理期間における取引ごとの消費税の合計額との差を求め、前記ジャーナルファイルに記録する経理期間消費税額差異算出手段と、
前記請求期間消費税額差異算出手段が求めた差異となる額と、前記経理期間消費税額差異算出手段が求めた差異となる額との合計額を求める調整額算出手段と
を有することを特徴とする消費税額調整システム」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成16年8月20日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明が、本願の出願日前の平成4年4月に頒布された刊行物、「『CSP/FX Super CAPSEL 販売情報システム 運用ガイド 47BR-8530-3』,富士通株式会社,平成4年4月(第3版),p.107-111、及び、p.144-145」(以下、「引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例
そして、引用例には、次の事項が記載されている。
i)「● 消費税法施行規則第22条の適用
この施行規則により,領収単位で消費税を外税表示した場合,課税標準額に対する消費税計算時に,その外税表示をした端数処理後の消費税を積み上げて求めることも可能となっています.」(第110頁4〜7行目)
ii)「(3) 消費税差異の調整
本システムでは請求時の消費税額を請求先ごとに設定した計算単位(請求単位,伝票単位,明細単位)で求めています.これに対して月次処理時では伝票単位で消費税額を求めます.従って,請求先の計算単位が請求単位の場合,請求書等の請求関連帳票と元帳等の月次関連帳票の消費税額に差異が生じます.本システムでは,この差異を請求更新時に自動的に調整することができます(差異消費税額は月次で求めた消費税額に反映します.従って,請求書等の消費税額が変わることはありません).
消費税差異の調整方法を図3.38に示します.」(第144頁8〜15行目)、
iii)「● 請求締日と自社締日が一致しない請求先の場合,請求締日〜月次締日の期間に入力された取引については,月次処理時の消費税額に期間分の調整消費税額を反映することができません.請求締日〜月次締日の期間分の調整消費税額は次回請求時に算出され,翌月の月次処理時の消費税額に反映されることになります.図3.39に例を示します.」(第145頁3〜7行目)
iv)「図3.39 消費税差異の調整方法(請求締日≠自社締日)」には、「今回差異消費税額」又は「次回差異消費税額」として、「請求処理時(請求単位)消費税額」から、各請求締日までに発生した各「取引(税抜)伝票金額」毎(各売上毎)の消費税額の和を差し引いた額を算出したもの、及び、「当月消費税額計」又は「翌月消費税額計」として、月次で発生した各「取引(税抜)伝票金額」毎(各売上毎)の消費税額に、それぞれ「今回差異消費税額」又は「次回差異消費税額」を加えた「消費税計」、が記載されている。なお、「翌月消費税額計」として求めた「消費税計」が「3,736」と記載されているが(紙面右端側の記載)、これは「1,689」と記載すべき誤記であることは、「翌月消費税額計=638+1+1,050」の計算結果からして明らかである(第145頁 図3.39)。

引用例は、販売情報システムの運用ガイドであり、上記記載事項によるならば、引用例には、「請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求め、月次期間における取引ごとに求めた消費税の合計に前記差を合算し、さらにこの処理を毎月繰り返すことにより、消費税額の差異を調整する消費税額の差異調整システム」の発明(以下「引用例に記載の発明」という。)が開示されていると認められる。

4.対比
そこで、本願発明(以下、「前者」という)と引用例に記載の発明(以下、「後者」という)を対比すると、
後者は、システムとして消費税額を調整しているものであるから、後者の「消費税額の差異調整システム」は、前者の「消費税額調整システム」に相当する。また、後者は、「請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求め」る機能を持つことから、当該機能とともに、当該機能を実現する「請求期間における取引の総額に対する消費税と、該請求期間における取引ごとの消費税の合計額との差を求め」る「請求期間消費税額差異算出手段」をも有していることは明らかである。

したがって、両者は、「請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求める機能を備えた消費税額調整システムであって、請求期間における取引の総額に対する消費税と、該請求期間における取引ごとの消費税の合計額との差を求める請求期間消費税額差異算出手段を有する消費税額調整システム」である点で一致し、次の点で相違する。

a)前者は、「取引の総額に対する消費税と取引ごとの消費税の合計との差とを記録するジャーナルファイル」を設け、「請求期間消費税額差異算出手段」は、求めた(算出した)「請求期間消費税額差異」を該「ジャーナルファイルに記録する」のに対し、後者ではそのようなジャーナルファイルが明示されていない点。
b)前者は、「経理期間における取引の総額に対する消費税と該経理期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求める機能」及び「経理期間における取引の総額に対する消費税と、該経理期間における取引ごとの消費税の合計額との差を求め、前記ジャーナルファイルに記録する経理期間消費税額差異算出手段」を有するとともに、「請求期間消費税額差異算出手段が求めた差異となる額と、前記経理期間消費税額差異算出手段が求めた差異となる額との合計額を求める調整額算出手段」を有することにより消費税額調整をおこなう構成であるのに対し、後者では、そのような機能及び各手段がなく、月次期間における取引ごとに求めた消費税の合計に、請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を合算し、さらにこの処理を毎月繰り返すことにより消費税額調整をおこなう構成である点。

5.相違点に対する当審の判断
次に、これら相違点について以下に検討する。
5-1. 相違点a)について
引用例に記載の発明においても、求めた(算出した)「請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差」を消費税額調整に用いるのであるから、その後の処理のために当該「差」を何らかの形で記録手段に記録しておく必要があることは自明の技術事項であり、しかも、コンピュータを用いた業務処理システムにおいて、データの更新記録を履歴情報としてジャーナルファイルに記録することは、引用例を掲げるまでもなく、当該技術分野において慣用技術である。
よって、引用例に記載の発明において、本願発明のようなジャーナルファイルを設け、求めた(算出した)「請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差」を該ジャーナルファイルに記録することは、当業者ならば格別の技術的困難性なく容易に想到し得ることである。

5-2. 相違点b)について
イ)引用例の図3.39を、関連する説明(上記各摘記事項)とともに参照すると、請求期間における消費税の計算時に、消費税を求める際の端数処理の影響に起因して、取引の総額に対する消費税と該期間における取引ごとに求めた消費税の合計との間に差が生じることが記載されており、月次期間における処理でも同様の差が生じることは明らかである。また、請求締め日と経理締め日とが一致しない場合、それぞれの期間内で対象となる取引にズレが生じることに起因して、請求処理時と月次処理時との間で、取引の総額、取引の総額に対する消費税、取引ごとに求めた消費税の合計のそれぞれについて差が生じることが明らかである。そして、これらの差が生じると、請求書等の請求関連帳票と元帳等の月次関連帳票との間で消費税額に差が発生するので、経理上、何らかの形で調整処理をする必要が生じることは、自明である。

ロ)引用例に記載の発明においては、前述の消費税額の差を経理上処理する消費税額調整の方針として、まず、請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差(「今回差異消費税額」)を求めておき、次いで、経理期間である月次処理時に、当月における取引ごとに求めた消費税の合計にその差を合算して「当月消費税額計」を求め、さらにこうした処理を毎月繰り返すことで、消費税額の調整としている。
引用例の図3.39の例に則して述べるならば、まず、請求期間における取引の総額(「今回売上」)92,520に対する消費税額(「請求処理時消費税額(請求単位)」)2,775から、請求期間における個々の売上51,230及び41,290ごとに求めた消費税額1,536及び1,238の合計を引いて、差(「今回差異消費税額」)の「1」を算出し、その差「1」を月次処理時に、当月における取引ごとに求めた消費税1,536及び1,238並びに961の合計に合算して、1,536+1,238+1+961=3,736とすることにより、経理期間における消費税額(「当月消費税額計」)とし、この処理を毎月繰り返すことで消費税額の調整としている。
しかしながら、引用例に記載の発明におけるこのような処理では、上記摘記事項iii)に記載のように、請求締日〜月次締日の期間に入力された取引については,月次処理時の当月の消費税額に前記期間分の調整消費税額を反映することができていない。図3.39の例に則して述べるならば、請求締日〜月次締日の期間に入力された取引32,060に対する消費税額961については、当月の差(「今回差異消費税額」)の「1」に反映されないまま加算しており、当月の経理処理の中では、取引32,060に対する調整消費税額は反映されないことになる。
また、引用例に記載の発明における処理では、算出された月次における消費税額(「当月消費税額計」)は、請求期間における取引の総額に対する消費税と該請求期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差(「今回差異消費税額」)を流用した、いわば「みなし」の金額であって、月次における取引の総額に対する消費税を実際に計算した金額でもなければ、該月次における取引ごとに求めた消費税の合計を実際に計算した金額でもない。
図3.39の例に則して述べるならば、前記算出された月次における消費税額(「当月消費税額計」)3,736は、月次における取引の総額124,580に対する消費税を実際に計算した金額3,737とは異なるし、該月次における取引ごとに求めた消費税の合計を実際に計算した金額1,536+1,238+961=3,735とも異なるものである。

ハ)したがって、引用例に記載の発明における処理は、経理期間に基づく元帳等の月次関連帳票を作成する観点からすると、本来経理期間である月次をベースにした処理をしなければならないところ、請求期間ベースにおける差を流用し、月次をベースとした計算を実際には行わない便宜的な処理であるということは否めないことになる。
そこで、経理上の処理をできるだけ正確に行いたいという経理上の一般的な要望にしたがえば、前述したように、経理期間である月次の処理時においても請求処理時における差と同様の原理で差が生じるわけであるから、元帳等の経理期間をベースとした帳票を作成するにあたり、経理期間である月次における取引の総額に対する消費税と該月次における取引ごとに求めた消費税の合計との差を実際に算出し、請求処理時における差を合算することにより、既に算出し処理されている当該請求処理時における差を反映して現実に調整すべき額を算出するように、消費税額調整の処理の方針を変更することは、自然な発想であるということができる。

ニ)本願発明と引用例に記載の発明とのシステム構成上の相違点である上記b)は、こうした引用例に記載の発明における経理上の処理の不十分さから発想される消費税額調整の方針の変更に対応したものとみることができる。
そして、本願発明の上記相違点b)に係る構成のうち、「経理期間における取引の総額に対する消費税と該経理期間における取引ごとに求めた消費税の合計との差を求める機能」及びこの機能を実現するための「経理期間における取引の総額に対する消費税と、該経理期間における取引ごとの消費税の合計額との差を求め」る「経理期間消費税額差異算出手段」については、前述したように、「差」が生じる原理が経理期間におけるものと請求期間におけるものとが全く同じであることから、引用例に記載の発明の「請求期間における」差を求める機能及び「請求期間消費税額差異算出手段」の構成を、そのまま流用できることは明らかである。そして、求めた差を「ジャーナルファイルに記録する」ことについては、既に前項「4-1. 相違点a)について」で検討したとおりである。
また、本願発明の上記相違点b)に係る構成のうち、「請求期間消費税額差異算出手段が求めた差異となる額と、前記経理期間消費税額差異算出手段が求めた差異となる額との合計額を求める調整額算出手段」については、既に算出されて記録された2つの差異となる額を、単に合計するだけの手段であるから、手段の構成自体は慣用技術を単に採用したものに過ぎない。

ホ)請求人は、当審による平成16年8月20日付の拒絶理由通知に対する同年10月27日付意見書の中で、
「〔4〕・・(略)・・ 引用例刊行物には、ある一つの取引先に関して、設定した計算単位と月次処理における消費税額の差異を調整することは記載されていますが、しかし、複数の取引において、各取引ごとの消費税額と各取引の総額に対する消費税額との差異を調整することは記載されていません。
具体的に判り易く説明しますと、・・(略)・・ 取引先ごとの計算結果を集計した額と総額を元に計算した額とにおいて1円の誤差が生じるという問題がでます。
このように、ある会計期間における経理上の税額の調整額を求めるために、単に請求期間と経理期間の差からくる誤差を修正するだけでは、取引先ごとに計算を行った消費税額と総計を元に計算を行った消費税額とにおいて誤差が生じてしまうという問題が、指摘の刊行物では残ります。
本願発明では、・・(略)・・取引先ごとに計算した・・(略)・・取引先ごとに計算した・・求めることで、より正確、容易に経理処理を行うことを可能にするという顕著な効果が発生します。」(下線は、当審にて付け加えたものである。)
と主張している。
しかしながら、本願発明では、複数の取引先を前提として「取引先ごと」に計算する構成は記載されておらず、上記請求人の主張は、請求項の記載に基づかないものである。
したがって、上記請求人の主張は、当を得ないものであって、これを採用することはできない。

へ)以上、検討したところによれば、引用例に記載の事項ならびに慣用技術から本願発明の上記相違点b)に係る構成を得ることは、当業者にとって容易に想到できた事項である。

5-3. まとめ
してみれば、これら各相違点a),b)は、格別のものとは認められない。
そして、本願発明の要旨とする構成によってもたらされる効果も、引用例に記載の発明から当業者ならば予測し得る程度のものであって、格別のものとは認められない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び上述した慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2005-11-14 
結審通知日 2005-11-22 
審決日 2005-12-06 
出願番号 特願平4-213081
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子和田 財太  
特許庁審判長 佐藤 伸夫
特許庁審判官 篠原 功一
久保田 健
発明の名称 消費税額調整システム  
代理人 岡田 守弘  
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