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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B42D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B42D
管理番号 1130801
異議申立番号 異議2003-71471  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-06 
確定日 2005-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3354580号「データ媒体およびその製造方法」の請求項1ないし27に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3354580号の請求項1ないし27に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3354580号の請求項1乃至請求項27に係る発明は、平成3年9月26日(パリ条約による優先権主張 1990年9月26日 ドイツ国)に特許出願され、平成14年9月27日にその特許の設定登録がなされ、その後、請求項1乃至請求項27に係る発明の特許について新日本石油株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年3月5日に訂正請求がなされるとともに、特許異議意見書が提出された後、異議申立人に対し審尋がなされ、回答書の提出があったものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである。
訂正事項a:特許請求の範囲の欄を、
「【請求項1】視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子を備えたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等において、追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する素子に組み入れられて光学的可変効果に重なりそして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記光学的可変効果を有する素子の領域に設けられ、かつ、前記追加情報が、データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させるか、前記データ媒体の表面構造を局所的に付加物を組み入れるか、または前記平面素子の層厚を局所的に限定して変化させるかのいずれかによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項2】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が、前記光学的可変効果を有する素子中に、局所的に限定された構造的な変化、乱れまたは不均質部の形で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項3】請求項1または2記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記光学的可変効果を有する素子の技術では作成されないことを特徴とするデータ媒体。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する素子が前記データ媒体上に積層される多層薄膜の形で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項5】請求項4記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する素子が高光沢金属層、干渉層構造または回折構造、好ましくはホログラムであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項6】請求項5記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する素子がエンボスホログラムであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項7】請求項1記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する素子が他の層(14、16、20)に加えて光沢のある金属薄膜層(18)を有していることを特徴とするデータ媒体。
【請求項8】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記データ媒体中またはデータ媒体に隣接する接着剤層に局所的に限定して付加物を組み入れることによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項9】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記データ媒体表面に隣接する接着剤層の層厚を局所的に限定して変化させることによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項10】請求項1記載のデータ媒体において、前記付加物が、付加中にそれらの形状で前記光学的可変効果を有する素子中に押し込まれるような硬さおよび温度安定性を有する粒子を含んでいることを特徴とするデータ媒体。
【請求項11】請求項1記載のデータ媒体において、前記付加物が印刷法によって前記データ媒体または前記光学的可変効果を有する素子に付与されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項12】請求項11記載のデータ媒体において、前記付加物がスクリーン印刷技術によって付与され、約5〜20μmの乾燥層厚で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項13】請求項11記載のデータ媒体において、前記付加物が顔料および結合剤を含むインクであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項14】請求項13記載のデータ媒体において、前記顔料がカーボンブラック、クロムイエローおよび/または二酸化チタンであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項15】光学的可変平面素子を備えたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子として光学的可変平面素子を用意する工程と、前記光学的可変平面素子上または前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程と、好ましくは熱および圧力を用いて前記平面素子を前記データ媒体の表面に付与する工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記光学的可変平面素子から支持体を剥離する工程と、を有することを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項16】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、前記データ媒体上または前記光学的可変平面素子上に顔料含有インクを印刷することによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項17】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、少なくとも前記平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷し、次に機械、または熱彫刻によって印刷層のある部分を選択的に除去することによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項18】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、少なくとも平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷するかまたは顔料を満たしたカバーフイルムをその部分に付与し、次に顔料を有する層を顔料を含まない層領域で局所的に覆うことによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項19】請求項16記載の製造方法において、前記データ媒体または転写素子が通常の印刷法、好ましくはスクリーン印刷法によって印刷されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項20】請求項19記載の製造方法において、印刷付加物および/または顔料を含まない層が約5〜20μmの好ましい厚さで付与されていることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項21】請求項16記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が結合剤中の顔料濃度によって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項22】請求項18記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が局所的に限定した顔料を含まない層の厚さによって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項23】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、荒れ構造を追加情報の形で前記光学的可変平面素子または前記データ媒体中に押し込むことによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項24】請求項23記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が前記データ媒体表面の表面荒さによって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項25】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、前記光学的可変平面素子の接着剤層の厚さを変えることによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項26】請求項25記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度がその層厚によって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項27】請求項1乃至7のいずれかに記載のデータ媒体において、前記データ媒体の表面に隣接する接着剤層内に、前記追加情報が、前記接着剤層の層厚を変位させた形でまたは付加物、特に顔料を含むインクを印刷したものとして存在することを特徴とするデータ媒体。」から、
「【請求項1】視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等において、追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する前記平面素子に組み入れられて光学的可変効果に重なり、そして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記平面素子の領域に設けられ、前記追加情報は、前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させるか、または前記データ媒体の表面構造に局所的に付加物を組み入れて表面荒れが設けられることによって作成され、前記表面荒れは前記データ媒体に付与された前記平面素子の前記光学的可変効果を与える層に押しつけられてなることを特徴とするデータ媒体。
【請求項2】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に、局所的に限定された構造的な変化、乱れまたは不均質部の形で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項3】請求項1または2記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記光学的可変効果を有する前記平面素子の技術では作成されないことを特徴とするデータ媒体。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子が前記データ媒体上に積層される多層薄膜の形で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項5】請求項4記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子が高光沢金属層、干渉層構造または回折構造、好ましくはホログラムであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項6】請求項5記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子がエンボスホログラムであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項7】請求項1記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子が他の層(14、16、20)に加えて光沢のある金属薄膜層(18)を有していることを特徴とするデータ媒体。
【請求項8】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記データ媒体中またはデータ媒体に隣接する接着剤層に局所的に限定して付加物を組み入れることによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項9】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記データ媒体表面に隣接する接着剤層の層厚を局所的に限定して変化させることによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項10】請求項1記載のデータ媒体において、前記付加物が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に押し込まれるような硬さおよび温度安定性を有する粒子を含んでいることを特徴とするデータ媒体。
【請求項11】請求項1記載のデータ媒体において、前記付加物が印刷法によって前記データ媒体に付与されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項12】請求項11記載のデータ媒体において、前記付加物がスクリーン印刷技術によって付与され、約5〜20μmの乾燥層厚で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項13】 請求項11記載のデータ媒体において、前記付加物が顔料および結合剤を含むインクであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項14】請求項13記載のデータ媒体において、前記顔料がカーボンブラック、クロムイエローおよび/または二酸化チタンであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項15】光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程と、前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつけるか、または前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程と、好ましくは熱および圧力を用いて前記平面素子を前記データ媒体の表面に付与する工程と、前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記平面素子から支持体を剥離する工程と、を有することを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項16】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、前記データ媒体上または前記光学的可変平面素子上に顔料含有インクを印刷することによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項17】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、少なくとも前記平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷し、次に機械、または熱彫刻によって印刷層のある部分を選択的に除去することによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項18】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、少なくとも平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷するかまたは顔料を満たしたカバーフイルムをその部分に付与し、次に顔料を有する層を顔料を含まない層領域で局所的に覆うことによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項19】請求項16記載の製造方法において、前記データ媒体または転写素子が通常の印刷法、好ましくはスクリーン印刷法によって印刷されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項20】請求項19記載の製造方法において、印刷付加物および/または顔料を含まない層が約5〜20μmの好ましい厚さで付与されていることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項21】請求項16記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が結合剤中の顔料濃度によって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項22】請求項18記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が局所的に限定した顔料を含まない層の厚さによって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項23】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、荒れ構造を追加情報の形で前記光学的可変平面素子または前記データ媒体中に押し込むことによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項24】請求項23記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が前記データ媒体表面の表面荒さによって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項25】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、前記光学的可変平面素子の接着剤層の厚さを変えることによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項26】請求項25記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度がその層厚によって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項27】請求項1乃至7のいずれかに記載のデータ媒体において、前記データ媒体の表面に隣接する接着剤層内に、前記追加情報が、前記接着剤層の層厚を変位させた形でまたは付加物、特に顔料を含むインクを印刷したものとして存在することを特徴とするデータ媒体。」と訂正する。

訂正事項b.特許明細書の段落【0007】を、
「【0007】本発明によれば、視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等において、追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する前記平面素子に組み入れられて光学的可変効果に重なり、そして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記光学的可変効果を有する前記平面素子の領域に設けられ、前記追加情報は、前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させるか、または前記データ媒体の表面構造に局所的に付加物を組み入れて表面荒れが設けられることによって作成され、前記表面荒れは前記データ媒体に付与された前記平面素子の前記光学的可変効果を与える層に押しつけられてなることを特徴とするデータ媒体が得られる。」と訂正する。

訂正事項c.特許明細書の段落【0008】を、
「【0008】また、本発明によれば、光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子として光学的可変平面素子を用意する工程と、前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつけるか、または前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程と、前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記光学的可変平面素子から支持体を剥離する工程と、を有することを特徴とするデータ媒体の製造方法が得られる。」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aにおける、請求項1、請求項11についての訂正は、特許明細書の段落【0010】乃至【0013】、【0015】、【0030】、【0037】、【0041】、【0044】、【0047】、【0051】及び図4の記載に基づいて、データ媒体及び表面荒れの関係・構造を技術的に限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項aにおける、請求項15についての訂正は、、特許明細書の段落【0010】乃至【0013】、【0015】、【0030】、【0037】、【0041】、【0044】、【0047】、【0051】及び図4の記載に基づいて、表面荒れを光学的可変平面素子またはデータ媒体に付与する工程を技術的に限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項aにおけるその他の訂正は、請求項1、請求項11の訂正に伴い、それとの整合をとるためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項b、cは、訂正事項aに伴い、発明の詳細な説明の記載を、請求項の記載との整合を図るべく訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正は、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正前特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
ア.本件の請求項1乃至請求項27係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1乃至請求項27に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項27に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等において、追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する前記平面素子に組み入れられて光学的可変効果に重なり、そして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記平面素子の領域に設けられ、前記追加情報は、前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させるか、または前記データ媒体の表面構造に局所的に付加物を組み入れて表面荒れが設けられることによって作成され、前記表面荒れは前記データ媒体に付与された前記平面素子の前記光学的可変効果を与える層に押しつけられてなることを特徴とするデータ媒体。
【請求項2】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に、局所的に限定された構造的な変化、乱れまたは不均質部の形で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項3】請求項1または2記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記光学的可変効果を有する前記平面素子の技術では作成されないことを特徴とするデータ媒体。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子が前記データ媒体上に積層される多層薄膜の形で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項5】請求項4記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子が高光沢金属層、干渉層構造または回折構造、好ましくはホログラムであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項6】請求項5記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子がエンボスホログラムであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項7】請求項1記載のデータ媒体において、前記光学的可変効果を有する前記平面素子が他の層(14、16、20)に加えて光沢のある金属薄膜層(18)を有していることを特徴とするデータ媒体。
【請求項8】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記データ媒体中またはデータ媒体に隣接する接着剤層に局所的に限定して付加物を組み入れることによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項9】請求項1記載のデータ媒体において、前記追加情報が前記データ媒体表面に隣接する接着剤層の層厚を局所的に限定して変化させることによって作成されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項10】請求項1記載のデータ媒体において、前記付加物が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に押し込まれるような硬さおよび温度安定性を有する粒子を含んでいることを特徴とするデータ媒体。
【請求項11】請求項1記載のデータ媒体において、前記付加物が印刷法によって前記データ媒体に付与されることを特徴とするデータ媒体。
【請求項12】請求項11記載のデータ媒体において、前記付加物がスクリーン印刷技術によって付与され、約5〜20μmの乾燥層厚で存在することを特徴とするデータ媒体。
【請求項13】請求項11記載のデータ媒体において、前記付加物が顔料および結合剤を含むインクであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項14】請求項13記載のデータ媒体において、前記顔料がカーボンブラック、クロムイエローおよび/または二酸化チタンであることを特徴とするデータ媒体。
【請求項15】光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程と、前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつけるか、または前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程と、好ましくは熱および圧力を用いて前記平面素子を前記データ媒体の表面に付与する工程と、前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記平面素子から支持体を剥離する工程と、を有することを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項16】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、前記データ媒体上または前記光学的可変平面素子上に顔料含有インクを印刷することによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項17】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、少なくとも前記平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷し、次に機械、または熱彫刻によって印刷層のある部分を選択的に除去することによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項18】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、少なくとも平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷するかまたは顔料を満たしたカバーフイルムをその部分に付与し、次に顔料を有する層を顔料を含まない層領域で局所的に覆うことによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項19】請求項16記載の製造方法において、前記データ媒体または転写素子が通常の印刷法、好ましくはスクリーン印刷法によって印刷されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項20】請求項19記載の製造方法において、印刷付加物および/または顔料を含まない層が約5〜20μmの好ましい厚さで付与されていることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項21】請求項16記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が結合剤中の顔料濃度によって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項22】請求項18記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が局所的に限定した顔料を含まない層の厚さによって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項23】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、荒れ構造を追加情報の形で前記光学的可変平面素子または前記データ媒体中に押し込むことによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項24】請求項23記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が前記データ媒体表面の表面荒さによって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項25】請求項15記載の製造方法において、前記局所的に限定した変化を、前記光学的可変平面素子の接着剤層の厚さを変えることによって生じさせることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項26】請求項25記載の製造方法において、前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度がその層厚によって調整されることを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項27】請求項1乃至7のいずれかに記載のデータ媒体において、前記データ媒体の表面に隣接する接着剤層内に、前記追加情報が、前記接着剤層の層厚を変位させた形でまたは付加物、特に顔料を含むインクを印刷したものとして存在することを特徴とするデータ媒体。」(以下、それぞれ「訂正発明1」乃至「訂正発明27」という。)

イ.引用例等
当審が通知した取消理由に引用した、引用例1:実願昭61-160851号(実開昭63-66300号)のマイクロフィルム、引用例2:特開昭61-176969号公報、引用例3:特開昭61-272772号公報には、それぞれ下記の事項が記載されている。

[引用例1]
a.「表面が微細な凹凸形状をなすパターンを有する画像形成体として、金属光沢を有するシート状基体表面に微細な万線状凹凸パターン群を各画素ごとに万線を少しずつ変え複数群賦形してある画像形成体(オパール効果を有する画像形成体)がある。この画像形成体は、例えば、ワックスラミネートしたアルミ箔紙のアルミニウム表面に、必要ならば絵柄を施し、しかる後に微細な万線状凹凸パターン群をその万線方向を少しずつ変えて種々組合わせたエンボスパターンを設けてなるプレス版を押圧して作製されている。」(第1頁17行〜第2頁7行)。
b.「第1図は、本考案の一実施例の概略構成を示す斜視図、第2図は、同実施例の画像形成体を組み込んだカードの断面図である。図中1は、例えばアルミニウムの蒸着層等からなる金属光沢を有するシート状基体である。シート状基体1の表面の所定領域には、・・・干渉縞からなる人物のホログラム画像2が形成されている。ホログラム画像2上には、保護層3が形成されている。保護層3及びホログラム画像2を含むシート状基体1の表面領域には、・・・傾斜角度の異なる複数の万線状凹凸パターン群4a〜4fからなるT字形の表示情報4が形成されている。・・・ホログラム画像2と表示情報4の複雑な情報表示によってカードの偽造防止を確実に行うことができる。」(第4頁9行〜第5頁7行)。

[引用例2]
a.「本発明は、ホログラム付きカードに関し、さらに詳しくは、種々の情報、例えば文字、記号および図形などが、ホログラフィーとそれと異質の原理とにより記録され、偽造防止効果を持つカードに関する。」(第1頁右下欄7〜11行)。
b.「本発明のホログラム付きカードは、光波の振幅および位相に関してホログラフィーにより記録再生される第一情報と、光波の振幅および/または波長のみに関して記録再生される第二情報とを有する記録体を含むことを特徴とするものである。」(第2頁左下欄16行〜右下欄1行)。
c.「本発明において、文字、記号、図形などの個別情報としての第二情報を記録する方法には、種々の方法がある。ホログラムが反射型である場合、ホログラム層自体の部分的変性・変化による方法のほか、次に例示するように反射層を部分的に変化・変性し、その反射率を低下させて記録することができる。例えば、反射層を熱的、化学的、機械的な方法で除去する方法、反射層を変形する方法、・・・部分的なマスクを介して金属蒸着などを行って反射層を部分的に形成する方法、・・・他方、ホログラムが透過型である場合、ホログラムをマット化して、もしくはマスク層を付加して第二情報を記録することができる。・・・第二情報の記録は第一情報の記録の前、その後、または同時に行われる。」(第3頁右上欄2行〜左下欄1行)。
d.「本発明のカードに、第一情報および第二情報を有する記録体が含められる。カードにこの記録体を設ける態様は、種々の態様があり、例えばカードの表相部に記録体を形成する方法、ホログラム層をカード表面に貼着する方法、ホログラム層をカード表面に転写する方法・・・などがある。」(第3頁右下欄4〜10行)。

[引用例3]
a.「支持体と、該支持体に設けられた透明型ホログラムと、該透明型ホログラムの少なくとも下部位置に設けられた表示部とからなることを特徴とする透明型ホログラム形成体。」(特許請求の範囲)。
b.「第1図は本発明のホログラム形成体の一実施例を示すもので、1は支持体で、該支持体1の任意の位置に表示部2が設けられ、該表示部2の上部位置には透明型ホログラム3が設けられている。本発明において透明型ホログラムとは、表示部を隠蔽させない性質即ち透明性を有し、しかもこのようにそれ自体は透明でありながらホログラムとしての機能を備えているホログラムをいう。・・・透明型ホログラム3はホログラム形成層のみから構成されていても或いはホログラム形成層にホログラム効果を増大させる薄膜層を設けて構成されていてもよい。薄膜層を設ける場合の本発明の一構成例は第3図に示されている。同図は透明型ホログラムがレリーフホログラムである場合の構成例を示すもので、ホログラム形成層4のレリーフ形成面5に薄膜層6が設けられている。7は接着層である。ホログラム形成層に薄膜層を設ける態様はレリーフホログラムの場合に限られず、他のホログラムも同様に適用される。薄膜層はホログラム効果を発現できしかも下層の表示部を隠蔽させない材質であればいかなるものも使用でき、例えば、・・・厚みが200Å以下の反射性金属薄膜層等が挙げられる。」(第2頁右上欄10行〜左下欄17行)。
c.「透明型ホログラム3を支持体1上に設けるには、ホログラム転写箔を形成しておき、これを転写方式にて設けても或いはホログラムラベルを形成しておき、これを粘着方式にて設けてもよい。ホログラム転写箔の一構成例は第4図に示される。同図にしめされるホログラム転写箔8はベースフィル9上に、保護層10、ホログラム形成層4、薄膜層6、接着剤層7の順に積層して構成される。・・・上記の如く構成されるホログラム転写箔8を接着剤層7が支持体1表面に接するように該支持体1に重ね合わせ、加熱、加圧してベースフィルム9を剥がすことにより透明型ホログラム3が支持体1に転写される(第3図)。このような構成は、例えば第2図に示されるような定期預金証書とした構成された支持体1と銀行名及び認証印として印刷形成された表示部2と該表示部2上に設けられた透明型ホログラム3とからなる本発明透明型ホログラム形成体の実施例に適用される。」(第8頁右上欄11行〜右下欄18行)。
d.「透明型ホログラムは平滑面に設ける場合に限定されず、文字等を凸状にエンボス形成した表示部上に設ける場合のように、凹凸面に設けてもよた、更にホログラム自体、エンボスされていてもよい。」(9頁左下欄6〜10行)。
e.「本発明において、透明型ホログラムが形成されるべき支持体・・・はあらゆる物品、商品、製品に及ぶ。従って、・・・株券、小切手、手形、証券、証書、通帳類、・・・等の金券類;キャッシュカート、クレジットカード、メンバーズカード、・・・ICカード等のカード類;・・・が挙げられる。」(第9頁左下欄10行〜右下欄8行)。
f.「本発明において透明型ホログラムを反射型ホログラムとして構成した場合、ホログラムの特徴である再生の角度依存性により、ホログラムの再生可能な角度範囲外では単なる透明体としてした見えず、ホログラムの再生可能な角度範囲内では光の反射率が最大になり、反射型ホログラムとしての効果が出てくる。」(第9頁左下欄9〜15行)。

ウ.対比・判断
引用例3の上記記載a〜fを含む明細書及び図面によると、引用例3には、下記の発明が記載されている。
「ホログラムが表面に付与されたカード類、金券類等の支持体1において、文字等の表示部を凸状にエンボス形成した凹凸面上にホログラム形成層や薄膜層から構成されるホログラムを転写したカード類、金券類等の支持体1。」(以下、「引用例3発明A」という。)

(1)まず、訂正発明1について検討する。
そこで、訂正発明1と引用例3発明Aとを対比する。
追加情報について、訂正発明1では、「前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させる」態様(以下、「A態様」という。)、または「前記データ媒体の表面構造に局所的に付加物を組み入れて表面荒れが設けられる」態様(以下、「B態様」という。)と規定されている。
そこで、追加情報がA態様の場合について検討する。
引用例3発明Aの「ホログラム」、「文字等」、「表示部」、「カード類、金券類等の支持体1」は、それぞれ訂正発明1の「視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子」、「記号、図形等」、「追加情報」、「データ媒体」に相当する。
引用例3発明Aの、支持体1上で凸状にエンボス形成された文字等の表示部は、ホログラムのホログラムとしての効果に重なり、視覚的に認識することができるものである。
また、引用例3発明Aの「凸状にエンボス形成した凹凸面」は、支持体1の表面構造が局所的に限定して変化している表面荒れとみることができる。
してみると、追加情報がA態様の場合、訂正発明1と引用例3発明Aは、
「視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子が表面に付与されたデータ媒体において、追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する前記平面素子に組み入れられて光学的可変効果に重なり、そして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記平面素子の領域に設けられ、前記追加情報は、前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させることによって作成され、前記表面荒れは前記データ媒体に付与された前記平面素子の前記光学的可変効果を与える層に押しつけられてなるデータ媒体。」である点で一致し、両者間に相違点は存在しない。
従って、訂正発明1は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(2)次に、訂正発明2について検討する。
訂正発明2は、訂正発明1の追加情報が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に、局所的に限定された構造的な変化、乱れまたは不均質部の形で存在することに限定するものである。
そして、引用例3発明Aは、文字等の表示部を凸状にエンボス形成した凹凸面上にホログラムを転写することで、ホログラムに「凸状にエンボス形成した凹凸面」に対応する構造的な変化、乱れまたは不均質部が存在することは明らかである。
従って、上記(1)と同様にして、訂正発明2は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(3)次に、訂正発明3について検討する。
訂正発明3は、訂正発明1または訂正発明2の追加情報が前記光学的可変効果を有する前記平面素子の技術では作成されないことに限定するものである。
そして、引用例3発明Aの表示部(追加情報)が、ホログラム(視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子)の技術では作成されないことは明らかである。
従って、上記(1)と同様にして、訂正発明3は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(4)次に、訂正発明4について検討する。
訂正発明4は、訂正発明1乃至訂正発明3いずれかの光学的可変効果を有する前記平面素子が前記データ媒体上に積層される多層薄膜の形で存在することに限定するものである。
そして、引用例3発明Aは、引用例3の上記記載bからみて、ホログラム(視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子)がカード類、金券類等の支持体1(データ媒体)上に積層される多層薄膜の形で存在することは明らかである。
従って、上記(1)と同様にして、訂正発明4は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(5)次に、訂正発明5について検討する。
訂正発明5は、訂正発明4の光学的可変効果を有する前記平面素子が高光沢金属層、干渉層構造または回折構造、好ましくはホログラムであることに限定するものである。
そして、引用例3発明Aは、ホログラム(視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子)がカード類、金券類等の支持体1(データ媒体)上に転写されたものであり、上記(1)と同様にして、訂正発明5は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(6)次に、訂正発明6について検討する。
訂正発明6は、訂正発明5の光学的可変効果を有する前記平面素子がエンボスホログラムであることに限定するものである。
しかしながら、例を挙げるまでもなく、エンボスによってホログラムを作成することは周知であるので、上記(1)と同様にして、訂正発明6は引用例3に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(7)次に、訂正発明7について検討する。
訂正発明7は、訂正発明1の光学的可変効果を有する前記平面素子が他の層(14、16、20)に加えて光沢のある金属薄膜層(18)を有していることに限定するものである。
そして、引用例3の上記記載bには、ホログラム形成体に反射性金属薄膜層を設けることが記載されている。そして、金属薄膜層が反射性であることから、光沢を有すると考えられる。
したがって、上記(1)と同様にして、訂正発明7は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(8)次に、訂正発明8について検討する。
訂正発明8は、訂正発明1における追加情報が、データ媒体中またはデータ媒体に隣接する接着剤層に局所的に限定して付加物を組み入れることによって作成されることに限定するものである。
即ち、訂正発明8は、追加情報がB態様の場合についての限定であるが、有価証券、クレジットカード等の偽造防止のために、データ媒体上に印刷(付加物)を施し、表面荒れを作成し、その表面荒れをデータ媒体に付与された視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子に押し付けることは、特開昭60-13598号公報(特に、第2図参照)等にみるように周知である。
してみれば、上記(1)を勘案すれば、引用例3発明Aの如く、データ媒体の表面に荒れを設けることに代えて、その表面に付加物を組み入れ、訂正発明8の如く構成することは、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、訂正発明8には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明8は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(9)次に、訂正発明9について検討する。
訂正発明9は、訂正発明1における追加情報が、データ媒体表面に隣接する接着剤層の層厚を局所的に限定して変化させることによって作成されることに限定するものである。
即ち、訂正発明9は、追加情報がB態様の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明9には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明9は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(10)次に、訂正発明10について検討する。
訂正発明10は、訂正発明1における付加物が、光学的可変効果を有する平面素子中に押し込まれるような硬さおよび温度安定性を有する粒子を含んでいることに限定するものである。
しかしながら、上記(8)で説示したように、データ媒体上に印刷(付加物)を施し、表面荒れを作成し、その表面荒れをデータ媒体に付与された視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子に押し付けることは、特開昭60-13598号公報(特に、第2図参照)等にみるように周知である。
そして、印刷を施す際にインクを顔料系のものとすることも周知であり、この顔料を訂正発明10の如く平面素子中に押し込まれるような硬さおよび温度安定性を有する粒子とすることは、当業者が適宜なし得る単なる設計上の問題にすぎない。
してみれば、訂正発明10は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、訂正発明10には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明10は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(11)次に、訂正発明11について検討する。
訂正発明11は、訂正発明1における付加物が印刷法によってデータ媒体に付与されることに限定するものである。
しかしながら、上記(8)で説示したようにデータ媒体上に印刷(付加物)を施し、表面荒れを作成し、その表面荒れをデータ媒体に付与された視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子に押し付けることは、特開昭60-13598号公報(特に、第2図参照)等にみるように周知である。
してみれば、上記(8)を勘案すれば、訂正発明11は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、訂正発明11には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明11は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(12)次に、訂正発明12について検討する。
訂正発明12は、訂正発明11における付加物がスクリーン印刷技術によって付与され、約5〜20μmの乾燥層厚で存在することに限定するものである。
しかしながら、印刷法として、スクリーン印刷技術は周知であり、この技術を採用し、約5〜20μmの乾燥層厚とすることは、当業者が適宜なしえる単なる設計事項にすぎない。
したがって、上記(11)と同様にして、訂正発明12は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、訂正発明12には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明12は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(13)次に、訂正発明13について検討する。
訂正発明13は、訂正発明11における付加物が顔料および結合剤を含むインクであることに限定するものである。
しかしながら、印刷を顔料および結合剤を含むインクで行うことは周知であるので、上記(11)と同様にして、訂正発明13は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、訂正発明13には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明13は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(14)次に、訂正発明14について検討する。
訂正発明14は、訂正発明13における顔料がカーボンブラック、クロムイエローおよび/または二酸化チタンであることに限定するものである。
しかしながら、スクリーン印刷インクとして、顔料としてカーボンブラック、クロムイエローおよび/または二酸化チタンを含有するものは周知である。
上記(13)と同様にして、訂正発明14は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、訂正発明14には、依然として追加情報がA態様の場合が残っていることから、この場合には、上記(1)での理由は依然として有効であるから、訂正発明14は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(15)次に、訂正発明15について検討する。
(ア)まず、訂正発明15の表面荒れが、「前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつける工程」(以下、「A工程」という。)により設けられる場合について検討する。
引用例2の上記記載a〜d含む明細書及び図面によると、引用例2には、下記の発明が記載されている。
「ホログラムが表面に付与されたカードを製造する方法であって、カードを用意する工程と、転写方式によって付与されるホログラムを用意する工程と、ホログラム層自体を部分的に変性・変化させる工程と、ホログラム層をカード表面に転写する工程と、を有するカードの製造方法。」(以下、「引用例2発明」という。)

そこで、訂正発明15と引用例2発明とを対比する。
引用例発明2の「ホログラム」、「カード」は、訂正発明15の「光学的可変平面素子」、「データ媒体」に相当する。
引用例発明2の「カードを用意する工程」、「転写方式によって付与されるホログラムを用意する工程」、「ホログラム層自体を部分的に変性・変化させる工程」は、それぞれ訂正発明15の「好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程」、「好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程」、「データ媒体に対向する平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつける工程」に相当する。
また、訂正発明15における、「前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程」とは、文言的には、データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れに対して、平面素子を押しつける工程であると解さざるを得ないが、表面荒れがA工程で作成されている場合では、上記工程は、単なる転写工程と解さざるを得ない。
してみると、引用例発明2の「ホログラム層をカード表面に転写する工程」と、訂正発明15の「好ましくは熱および圧力を用いて前記平面素子を前記データ媒体の表面に付与する工程と、前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記平面素子から支持体を剥離する工程」とは、「平面素子をデータ媒体の表面に転写する工程」である点で共通する。

そうすると、訂正発明15と引用例2発明とは、
「光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程と、前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつける工程と、前記平面素子を前記データ媒体の表面に転写する工程と、を有するデータ媒体の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:平面素子をデータ媒体の表面に転写する工程について、訂正発明15では、好ましくは熱および圧力を用いて平面素子をデータ媒体の表面に付与する工程と、平面素子の光学的可変効果を付与する層に表面荒れが押しつけられるように、平面素子をデータ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記平面素子から支持体を剥離する工程の3段階に分けて規定しているのに対して、引用例2発明では、単にホログラム層(平面素子)をカード表面に転写する工程としている点。

上記相違点について検討する。
引用例3の記載cに、「ホログラム転写箔8を接着剤層7が支持体1表面に接するように該支持体1に重ね合わせ、加熱、加圧してベースフィルム9を剥がすことにより透明型ホログラム3が支持体1に転写される(第3図)」と記載されていることから、平面素子をデータ媒体の表面に転写する工程について、相違点に係る訂正発明15の如く構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、訂正発明15は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(イ)次に、訂正発明15の表面荒れが、「前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程」(以下、「B工程」という。)により設けられる場合について検討する。
引用例3の上記記載a〜fを含む明細書及び図面によると、引用例3には、上記引用例3発明Aに加えて下記の発明が記載されている。
「ホログラムが表面に付与されたカード類、金券類等の支持体1を製造する方法であって、支持体1を用意する工程と、転写方式によって付与されるホログラムを用意する工程と、前記支持体1に文字等の表示部を凸状にエンボス形成し凹凸面とする工程と、前記ホログラムを前記支持体1の前記凹凸面に重ね合わせ、加熱、加圧して、前記ホログラムからベースフィルム9を剥がすことにより転写する工程と、を有するカード類、金券類等の支持体1の製造方法。」(以下、「引用例3発明B」という。)
そこで、訂正発明15と引用例3発明Bとを対比する。
引用例3発明Bの「ホログラム」、「ベースフィルム9」、「カード類、金券類等の支持体1」は、それぞれ訂正発明15の「光学的可変平面素子」、「支持体」、「データ媒体」に相当する。
引用例3発明Bの「支持体1に凸状にエンボス形成した凹凸面」は、支持体1の表面構造が局所的に限定して変化している表面荒れとみることができる。
してみると、引用例3発明Bの「支持体1を用意する工程」、「転写方式によって付与されるホログラムを用意する工程」、「支持体1に文字等の表示部を凸状にエンボス形成し凹凸面とする工程」は、それぞれ訂正発明15の「好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程」、「好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程」、「データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることによりデータ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程」に相当する。
また、引用例3発明Bの「ホログラムを前記支持体1の前記凹凸面に重ね合わせ、加熱、加圧して、前記ホログラムからベースフィルム9を剥がすことにより転写する工程」と、訂正発明15の「平面素子の光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた平面素子から支持体を剥離する工程」に相当する。

してみると、訂正発明15と引用例3発明Bは、
「光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程と、前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程と、好ましくは熱および圧力を用いて前記平面素子を前記データ媒体の表面に付与する工程と、前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記平面素子から支持体を剥離する工程と、を有するデータ媒体の製造方法。」である点で一致し、両者間に相違点は存在しない。
従って、訂正発明15は引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(ウ)以上のとおり、訂正発明15は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないか、または、引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(16)次に、訂正発明16について検討する。
訂正発明16は、訂正発明15における局所的に限定した変化をデータ媒体上または前記光学的可変平面素子上に顔料含有インクを印刷することより生じさせることに限定するものである。
しかしながら、有価証券、クレジットカード等の偽造防止のために、データ媒体上に印刷(付加物)を施し、表面荒れを作成し、その表面荒れをデータ媒体に付与された視角に依存する光学的可変平面素子に押し付けることは、特開昭60-13598号公報(特に、第2図参照)等にみるように周知である。
してみれば、上記(15)を勘案すれば、訂正発明16は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(17)次に、訂正発明17について検討する。
訂正発明17は、訂正発明15における局所的に限定した変化を、少なくとも平面素子を付与する領域においてデータ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷し、次に機械、または熱彫刻によって印刷層のある部分を選択的に除去することによって生じさせることに限定するものである。
即ち、訂正発明17は、局所的に限定した変化の生成がB工程の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明17には、依然として局所的に限定した変化の生成がA工程の場合が残っていることから、この場合には、上記(15)(ア)での理由は依然として有効であるから、訂正発明17は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(18)次に、訂正発明18について検討する。
訂正発明18は、訂正発明15における局所的に限定した変化を、少なくとも平面素子を付与する領域においてデータ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷するかまたは顔料を満たしたカバーフイルムをその部分に付与し、次に顔料を有する層を顔料を含まない層領域で局所的に覆うことによって生じさせることに限定するものである。
即ち、訂正発明18は、局所的に限定した変化の生成がB工程の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明17には、依然として局所的に限定した変化の生成がA工程の場合が残っていることから、この場合には、上記(15)(ア)での理由は依然として有効であるから、訂正発明17は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(19)次に、訂正発明19について検討する。
訂正発明19は、訂正発明16における局所的に限定した変化をデータ媒体上に顔料含有インクを印刷する際の印刷法を、通常の印刷法、好ましくはスクリーン印刷法によって印刷することに限定するものである。
しかしながら、印刷法として、スクリーン印刷技術は周知であり、この技術を採用することは、当業者が適宜なし得る単なる設計事項にすぎない。
したがって、上記(16)と同様にして、訂正発明19は、上記引用例1乃至引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(20)次に、訂正発明20について検討する。
訂正発明20は、訂正発明19における印刷付加物および/または顔料を含まない層が約5〜20μmの好ましい厚さで付与されていることに限定するものである。
しかしながら、スクリーン印刷技術は周知であり、この技術を採用し、約5〜20μmの層厚とすることは、当業者が適宜なしえる単なる設計事項にすぎない。
したがって、上記(19)と同様にして、訂正発明20は、上記引用例1乃至引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(21)次に、訂正発明21について検討する。
訂正発明21は、訂正発明16における局所的に限定した変化をデータ媒体上に顔料含有インクを印刷することより生じさせる際に、結合剤中の顔料濃度によって調整するものに限定するものである。
即ち、訂正発明21は、局所的に限定した変化の生成がB工程の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明21には、依然として局所的に限定した変化の生成がA工程の場合が残っていることから、この場合には、上記(15)(ア)での理由は依然として有効であるから、訂正発明17は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(22)次に、訂正発明22について検討する。
訂正発明22は、訂正発明18において、光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が局所的に限定した顔料を含まない層の厚さによって調整されることに限定するものである。
即ち、訂正発明22は、局所的に限定した変化の生成がB工程の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明22には、依然として局所的に限定した変化の生成がA工程の場合が残っていることから、この場合には、上記(15)(ア)での理由は依然として有効であるから、訂正発明17は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(23)次に、訂正発明23について検討する。
訂正発明23は、訂正発明15において、局所的に限定した変化を、荒れ構造を追加情報の形で前記光学的可変平面素子または前記データ媒体中に押し込むことによって生じさせることに限定するものである。
引用例2の記載cには、「文字、記号、図形などの個別情報としての第二情報を記録する方法には、種々の方法がある。ホログラムが反射型である場合、ホログラム層自体の部分的変性・変化による方法」と記載されており、引用例3の記載dには、「ホログラム自体、エンボスされていてもよい」と記載されていることから、ホログラム層(光学的可変平面素子)に追加情報を押し込むことによって生じさせるようにすることは、当業者が適宜なしえる単なる設計上の問題にすぎない。
したがって、上記(15)と同様にして、訂正発明23は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(24)次に、訂正発明24について検討する。
訂正発明24は、訂正発明23において、光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度がデータ媒体表面の表面荒さによって調整されることに限定するものである。
上記(15)(イ)において説示した点、及び上記(23)を勘案すると、訂正発明24は、引用例2及び引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(25)次に、訂正発明25について検討する。
訂正発明25は、訂正発明15において、局所的に限定した変化を、光学的可変平面素子の接着剤層の厚さを変えることによって生じさせることに限定するものである。
即ち、訂正発明25は、局所的に限定した変化の生成がA工程の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明25には、依然として局所的に限定した変化の生成がB工程の場合が残っていることから、この場合には、上記(15)(イ)での理由は依然として有効であるから、訂正発明25は、引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(26)次に、訂正発明26について検討する。
訂正発明26は、訂正発明25において、光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度がその層厚によって調整されることに限定するものである。
即ち、訂正発明26は、局所的に限定した変化の生成がA工程の場合についての限定であり、この限りにおいては、上記引用例1乃至引用例3のいずれにも上記限定事項について記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
しかしながら、訂正発明26には、依然として局所的に限定した変化の生成がB工程の場合が残っていることから、この場合には、上記(15)(イ)での理由は依然として有効であるから、訂正発明26は、引用例3に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

(27)次に、訂正発明27について検討する。
訂正発明27は、訂正発明1乃至訂正発明7のいずれかのデータ媒体において、データ媒体の表面に隣接する接着剤層内に、追加情報が、前記接着剤層の層厚を変位させた形でまたは付加物、特に顔料を含むインクを印刷したものとして存在することに限定するものである。
しかしながら、「追加情報が、付加物、特に顔料を含むインクを印刷したものとして存在する」場合には、上記(8)と同様の理由で、訂正発明27は、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、訂正発明1乃至訂正発明27についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
データ媒体およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等において、
追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する前記平面素子に組み入れられて光学的可変効果に重なり、そして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記平面素子の領域に設けられ、
前記追加情報は、前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させるか、または前記データ媒体の表面構造に局所的に付加物を組み入れて表面荒れが設けられることによって作成され、
前記表面荒れは、前記データ媒体に付与された前記平面素子の前記光学的可変効果を与える層に押しつけられてなる
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項2】
請求項1記載のデータ媒体において、
前記追加情報が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に、局所的に限定された構造的な変化、乱れまたは不均質部の形で存在する
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項3】
請求項1または2記載のデータ媒体において、
前記追加情報が前記光学的可変効果を有する前記平面素子の技術では作成されない
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ媒体において、
前記光学的可変効果を有する前記平面素子が前記データ媒体上に積層される多層薄膜の形で存在する
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項5】
請求項4記載のデータ媒体において、
前記光学的可変効果を有する前記平面素子が高光沢金属層、干渉層構造または回折構造、好ましくはホログラムである
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項6】
請求項5記載のデータ媒体において、
前記光学的可変効果を有する前記平面素子がエンボスホログラムである
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項7】
請求項1記載のデータ媒体において、
前記光学的可変効果を有する前記平面素子が他の層(14、16、20)に加えて光沢のある金属薄膜層(18)を有している
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項8】
請求項1記載のデータ媒体において、
前記追加情報が前記データ媒体中またはデータ媒体に隣接する接着剤層に局所的に限定して付加物を組み入れることによって作成される
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項9】
請求項1記載のデータ媒体において、
前記追加情報が前記データ媒体表面に隣接する接着剤層の層厚を局所的に限定して変化させることによって作成される
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項10】
請求項1記載のデータ媒体において、
前記付加物が、前記光学的可変効果を有する前記平面素子中に押し込まれるような硬さおよび温度安定性を有する粒子を含んでいる
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項11】
請求項1記載のデータ媒体において、
前記付加物が印刷法によって前記データ媒体に付与される
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項12】
請求項11記載のデータ媒体において、
前記付加物がスクリーン印刷技術によって付与され、約5〜20μmの乾燥層厚で存在する
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項13】
請求項11記載のデータ媒体において、
前記付加物が顔料および結合剤を含むインクである
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項14】
請求項13記載のデータ媒体において、
前記顔料がカーボンブラック、クロムイエローおよび/または二酸化チタンである
ことを特徴とするデータ媒体。
【請求項15】
光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、
好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、
好ましくは転写法によって付与される平面素子を用意する工程と、
前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつけるか、または前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化をつける工程と、
好ましくは熱および圧力を用いて前記平面素子を前記データ媒体の表面に付与する工程と、
前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、
必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記平面素子から支持体を剥離する工程と、
を有する
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の製造方法において、
前記局所的に限定した変化を、前記データ媒体上または前記光学的可変平面素子上に顔料含有インクを印刷することによって生じさせる
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項17】
請求項15記載の製造方法において、
前記局所的に限定した変化を、少なくとも前記平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷し、次に機械、または熱彫刻によって印刷層のある部分を選択的に除去することによって生じさせる
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項18】
請求項15記載の製造方法において、
前記局所的に限定した変化を、少なくとも平面素子を付与する領域において前記データ媒体に全体的に顔料含有インクを印刷するかまたは顔料を満たしたカバーフイルムをその部分に付与し、次に顔料を有する層を顔料を含まない層領域で局所的に覆うことによって生じさせる
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項19】
請求項16記載の製造方法において、
前記データ媒体または転写素子が通常の印刷法、好ましくはスクリーン印刷法によって印刷される
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の製造方法において、
印刷付加物および/または顔料を含まない層が約5〜20μmの好ましい厚さで付与されている
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項21】
請求項16記載の製造方法において、
前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が結合剤中の顔料濃度によって調整される
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項22】
請求項18記載の製造方法において、
前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が局所的に限定した顔料を含まない層の厚さによって調整される
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項23】
請求項15記載の製造方法において、
前記局所的に限定した変化を、荒れ構造を追加情報の形で前記光学的可変平面素子または前記データ媒体中に押し込むことによって生じさせる
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項24】
請求項23記載の製造方法において、
前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度が前記データ媒体表面の表面荒さによって調整される
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項25】
請求項15記載の製造方法において、
前記局所的に限定した変化を、前記光学的可変平面素子の接着剤層の厚さを変えることによって生じさせる
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項26】
請求項25記載の製造方法において、
前記光学的可変平面素子の光学特性の変化の程度がその層厚によって調整される
ことを特徴とするデータ媒体の製造方法。
【請求項27】
請求項1乃至7のいずれかに記載のデータ媒体において、
前記データ媒体の表面に隣接する接着剤層内に、前記追加情報が、前記接着剤層の層厚を変位させた形でまたは付加物、特に顔料を含むインクを印刷したものとして存在する
ことを特徴とするデータ媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子(OVD)を備えたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等、およびそのようなデータ媒体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
データ媒体を保護するために、その視覚効果が回折、干渉等に基づく光学的可変デバイス(以下、OVDという)を用いることが知られている。この点に関し、クレジットカード、IDカード、銀行券、有価証券等を保護するためにホログラム、シネグラム、回折格子および干渉層素子が特に使用されている。そのようなデバイスは、人が検査可能な真正性に関する従来の保護要件、すなわち一方において高い製造努力、他方においてどのような追加の手段も借りることのない明確な検査性を満たしている。さらに、OVD類は最新の技術水準に相当するので、その関連製品にも現代の高度な技術が付与される。
【0003】
高い製造努力が必要であるために、例えば、エンボスホログラムは比較的費用のかかるものであり、個人情報の媒体としての使用がこれまで制限されていた。ホログラムを経済的に安く製造することは大量生産する場合にだけこれまで可能であった。しかしながら、偽造からさらに保護するために、および一連のカードまたは単一のカードをさらに個別に識別できるようにするために、同一の外観を有するホログラムを追加の手段によって互いに区別可能にする必要、すなわち同様のホログラムを使用するにもかかわらずホログラムの領域においてある程度個別に識別できる必要がある。ホログラムそれ自体は直接相違を示さないが、これらの追加の手段が異なるカードをホログラム領域において視覚的に区別可能にする。
【0004】
理想的な場合に、これらの手段は、例えばIDカードの正当な使用者にしか関係しない個人データを含むのにも適しているべきである。したがって、問題は、連続的に大量に製造される標準ホログラムを、それらを一つ一つのデータ媒体または少なくとも限られた数のデータ媒体にだけ独特であるように、ホログラムをデータ媒体に付与する時より遅くない時に個別化することにある。
【0005】
したがって、本発明は光学的可変デバイス、特にホログラム、を有するデータ媒体において、前記光学的可変デバイスが追加の手段によって個別化されるデータ媒体を提案するという課題に基づくものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題は、追加情報を、その後にOVDに組み入れられて光学的可変効果に重なりそして同様に視覚的に認識可能な記号、図形等の形でOVD領域に設けることによって解決される。
【0007】
本発明によれば、視角に依存する光学的可変効果を有する平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等において、追加情報が、その後前記光学的可変効果を有する前記平面素子に組み入れられて光学的可変効果に重なり、そして同様に視覚的に認識することができる記号、図形等の形で前記光学的可変効果を有する前記平面素子の領域に設けられ、前記追加情報は、前記データ媒体の前記表面における局所的に限定された領域に表面荒れが設けられるように前記データ媒体の表面構造を局所的に限定して変化させるか、または前記データ媒体の表面構造に局所的に付加物を組み入れて表面荒れが設けられることによって作成され、前記表面荒れは、前記データ媒体に付与された前記平面素子の前記光学的可変効果を与える層に押しつけられてなることを特徴とするデータ媒体が得られる。
【0008】
また、本発明によれば、光学的可変平面素子が表面に付与されたデータ媒体、特にIDカード、有価証券等を製造する方法であって、好ましくは滑らかな表面を有するデータ媒体を用意する工程と、好ましくは転写法によって付与される平面素子として光学的可変平面素子を用意する工程と、前記データ媒体に対向する前記平面素子の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記平面素子に局所的に限定した変化をつけるか、または前記データ媒体の表面の局所的に限定された領域内の表面荒れを変化させることにより前記データ媒体の表面に局所的に限定した変化を付ける工程と、前記平面素子の前記光学的可変効果を付与する層に前記表面荒れが押しつけられるように、前記平面素子を前記データ媒体の表面に押しつける工程と、必要に応じて前記データ媒体に固着させられた前記光学的可変平面素子から支持体を剥離する工程と、を有することを特徴とするデータ媒体の製造方法が得られる。
【0009】
【作用】
本発明は、光学的可変効果が広い領域にわたって存在する平面素子を使用し、かつ光学的可変効果を層構造における構造的な変化、乱れまたは不均質部によって局所的に変化、減衰あるいはさらには破壊させることができるという条件のもとに、視角に依存する光学的可変効果を有するほとんど全ての平面素子に、追加情報を記憶させることができるという発見に基づくものである。これらの乱れが図形、記号または絵文字の形で付与される場合、それらは図形、記号または絵文字としてデータ媒体に設けられたOVD内に統合され、特定の視角において認めることができる光学的可変効果に加えてそれらを同様に認識することができる。このようにして、一方ではOVD内に統合されるのでそのOVDとともに照合することができ、他方ではそうすることによって変更および改竄から保護することができるOVDの個別化を行うことができる。
【0010】
本発明に基づく追加情報は、OVDの製造工程から分離される技術であって、光学的可変効果を与える層に乱れを選択的に組み入れるという技術を用いて作成するのが好ましい。これは、最も簡単な場合には、比較的小さな表面荒れを有する領域に局所的に限定された表面荒れを付加しそしてこのOVDをデータ媒体に付与する際にこの荒れをOVDに押し付けることによって行うことができる。
【0011】
「表面荒れ」という用語は、本発明においては、OVDがその後固定されているような状態になっているデータ媒体について言うものである。
【0012】
したがって、いわゆる冷間接着法(cold-bonding method)によって表面荒れを付与する際には、表面は光学的可変層を局所的に「乱す」のに必要な荒れを室温において有していなければならない。熱間積層法(hot-laminating method)またはホットスタンピング法(hot-stamping method)によって付与される素子の場合に、所望の効果を得るためには、荒れがなおこの温度で十分に存在しあるいはこの温度で少なくともやがては現れなくてはならない。最後に述べた様相は熱可塑性結合剤とともに顔料等を含む印刷インクを用いる場合に特に重要である。何故ならば、これらのインクは、乾燥状態においては基本的に十分滑らかな表面を形成するが、その表面が圧力(積層圧力またはホットスタンピング圧力)の作用下に十分に加熱された状態においては、顔料が「荒れ」として表面に認められるからである。これは、おそらく、十分に高い割合で顔料が存在する場合、圧力によって結合剤が脇に押しやられ、固い顔料がいわば「重ねられたままになる」からであろう。本発明の効果は顔料の割合が不十分の場合、過度に厚いインク層の場合、または積層温度で完全に流体にならない結合剤に関しては生じないので、「荒れ」は、特にこれらのパラメータによって調節することができる。
【0013】
本発明の効果を得るためには、彫刻、サンドブラスト法、エンボス加工、エッチング等によってデータ媒体中に構成される表面構造が、平面素子を付与する方法にかかわらず適している。しかしながら、光学的可変デバイスが熱間積層法またはホットスタンピング法によって付与されるデータ媒体を使用する場合、熱い状態においてのみ荒れが存在するだけで既に十分である。すなわち、熱可塑性結合剤中に埋め込まれた顔料を使用することもできる。
【0014】
上で述べた可能性の二つを組み合わせること、例えば、均一に着色されたデータ媒体の外層を部分的に彫刻すること、着色されていない滑らかな層で表面の荒れを覆うことにより表面荒れを局所的に排除すること、または表面に設けられた荒れ構造を部分的にアイロン掛けすることももちろん考えられる。
【0015】
使用される層状素子は、基本的には、一方においては、異なる視角において異なる光学特性を有し、他方においては、表面荒れが表面変形によってこれらの光学的効果を視覚的に(好ましくは顕微鏡撮影装置を用いるような領域で)認めることができるように変化させるほど薄い全ての素子である。これらの要件は転写技術によって付与される全ての薄い光沢層によっておよび適切に付与される回折格子、ホログラム、シネグラム、干渉層状素子等によって実質的に満たされる。
【0016】
基本的な本発明の原理を、いわゆる転写支持体上に半製品として作成され、転写法によって実際のデータ媒体に転写される種々の平面素子に関して以下に説明する。
【0017】
【実施例】
本発明の実施例を図面を参照して次に説明する。
【0018】
図5は、一般的な印刷パターン2およびこの場合はエンボスホログラムとして設計され、ホログラフィック情報が波線4によって象徴化されている光学的可変デバイス3を有する従来のデータ媒体1、例えばIDカードを示している。
【0019】
そのようなデータ媒体1は、複数のフイルム層から通常構成され、その内部の層は不透明であり、その前面および裏面上に印刷パターン2が設けられている。印刷パターン2の損傷、改竄および偽造を避けるために、印刷された内部の層は透明フイルム層で通常被覆されている。光学的可変デバイス、この場合はホログラム3は、これらの透明な保護フイルムの外面上に一般に付与されている。この接合は糊付け(冷間積層法)によって、またはいわゆるホットスタンピング法または熱間積層法を用いて、熱および圧力の作用下で積層(熱間積層)することによって行うことができる。接合方法にかかわりなく、カード表面に好ましくは非常に薄いホログラムを隆起部を形成することなく配設しようと常に努力がなされている。
【0020】
一般の転写ホログラムは特定の視角においては高光沢の鏡のように見えるが、他の視角においてはホログラフィック情報を明らかに示す金属の反射層を有しているのはよく知られている。そのようなホログラムはデータ媒体の図案中に統合されている。すなわち、それらが一緒に光学単位体を形成するように印刷パターン2と調和されている。
【0021】
図1は、本発明の追加情報5が、この場合は文字「A」の形で、エンボスホログラム3の領域に設けられている、公知のIDカード1を示したものである。追加情報5は艶消し構造としてホログラム3の高光沢金属層に統合されている。異なる反射角で見た場合に、一方において、ホログラフィック情報は通例の通り認めることができるが、他方において、ほぼ全ての視角において認めることができ、かつホログラフィック情報によってある意味で覆われている追加情報はその平らな艶消しの外観のために一般的なホログラフィック情報からも区別される。追加情報5は、ホログラフィック効果が認められず金属層が鏡としてのみ現れる反射角において、特に明らかに認めることができる。ホログラフィック情報が特にはっきりと現れる角度においては、追加情報5は、いわばホログラフィック情報によってより明るく照らされるので、あまりよく見ることができない。
【0022】
本発明で使用できる転写ホログラムの構造を実際の比率を考えずに図2に概略的に示す。転写バンドは、例えば、ポリエステルフイルムである支持体10と、その上に設けられ、積層温度で溶融して支持体層10を剥離することができる分離層12とからなる。分離層12に隣接して、ホログラムをデータ媒体に転写した後に外層となり、ホログラムをある程度機械的に保護する保護ラッカー層14が設けられている。保護ラッカー層14の下に、ホログラムの回折構造がプレスダイによって型押しされる熱可塑性樹脂層16がある。金属層18がホログラム構造体上にスパッタリングされている。作成方法に依存して、上記型押しおよび金属化は逆の順に行うこともできる。最後に、保護ラッカー層20およびその上のヒートシール層22が積層材の型押しされた側に通常設けられる。金属層18は部分的に透過性であるように薄くスパッタリングすることもできる。また、スクリーンを使用して金属層を付与することもあるいは種々の別の方法を使用することもできる。
【0023】
層14、16、18、20および22からなるエンボスホログラム3は支持体10の助けによりデータ媒体1に転写される。
【0024】
エンボスホログラムはいわゆるホットスタンピングダイを用いてホットスタンピング法によってデータ媒体に転写される。転写バンドをヒートシール層22がデータ媒体1上にくるように配置する。ホットスタンピングダイを所定の圧力で一定時間押し付けることによってホットスタンピングダイの下の分離層12が溶融しかつヒートシール層22が活性化される。ホットスタンピングダイを取り外した後、支持体10を剥離する。正確には、ホットスタンピングダイによって型押しされたホログラムの部分はデータ媒体1に固着されたままである。ホットスタンピングダイの真下に配置されていないホログラムの残りの部分は支持体上に残り、支持体とともにデータ媒体1から除去される。転写バンドそれ自体は公知であり、本発明の目的ではない。
【0025】
熱間積層法による転写は、データ媒体を積層用板で完全に覆い、そして熱および圧力をデータ媒体の全域に作用させることを除いて上記の場合と同様の方法で行われる。したがって、転写される要素をデータ媒体の一部に限定しようとする場合、それはデータ媒体上に後で存在するであろう広さで転写バンドに既に存在しなければならない。
【0026】
図3は、図5に示したデータ媒体1のホログラムの部分の断面を示すものである。簡素化のために、一般に3層以上からなるカード本体1を1層で示してある。明確にするために各層の比率は同様に真実ではない。標準のカードとして設計されたカード1は通常約0.76mmの厚さである。転写ホログラムの厚さは通常数μmの範囲にある。
【0027】
図3の層状構造は、層20、18、16および14からなるホログラムが接着剤層22によって固定されるデータ媒体1を含んでいる。ホログラフィック情報4はマイクロレリーフとして知られている方法で、熱可塑性樹脂層16および金属薄層18中に押し込まれる。層14および20は機械的損傷からホログラムを保護するために抵抗ラッカー層として設計されている。
【0028】
層状構造14、16、18、20および22は、一方においてカード本体に固定した場合に機械的に安定な単位体となるが、他方においてカードから剥離するとホログラムが崩壊することになるような低い固有安定性を有するような寸法および構造に構成されている。そのような転写ホログラムのより詳細な説明は、例えば独国特許公開公報第33 08 831号に見ることができる。
【0029】
図4においては、追加情報5がこの場合は構造的不均質の形で層状構造体中に統合されていることを除いては図3におけるのと同一の層状構造が選択されている。
【0030】
以下に説明するように、追加情報5は種々様々の形で作成することができる。この図4の場合、ホログラムの下に設けられ、OVDを付与する際に層状構造体を介してホログラムを支持する層20および18に押し込まれる追加の印刷情報6によって作成される。印刷層6は着色インクからなり、約5〜20μmの厚さであるのが好ましい。結合剤の顔料に対する比率は、良好な「フィリング(fillng)」が乾燥インク層に存在するように、すなわち、層断面から見た場合に顔料が連続的に存在するように選択される。これは一般に高不透明着色インクに関する場合である。
【0031】
インクは使用する成分によって構造が非常に異なるものであるので、好ましい混合比を言うことは不可能である。しかしながら、さらに付加的な手段を用いることなく多くの高不透明着色インクを用いて所望の効果を得られることが実験によって示されている。効果の大きさは各インクに関して別々に実験で確かめねばならない。効果の大きさは、次に、層の厚さを変えるかあるいは顔料または結合剤の比率を変化させることによって変えることができる。
【0032】
ヴィーデルホルト(Wiederhold)社からJ65、J60、J12およびJ20の商品名で市販されているスクリーン印刷インクを用いて特に良好な結果が挙げられた。特に有用であることが証明された顔料はカーボンブラック、クロムイエローおよび二酸化チタンであるが、このことは本発明をこれらの顔料に限定しようとするものではない。
【0033】
図4に断面で示されそして印刷層6上に設けられたホログラム3は圧力および熱の作用下に熱間積層法によってカード表面に押し付けられる。押し付けられている間に軟化接着剤層22が活性化され、一般においてカードとの密着がなされ、他方においてスクリーン印刷層が転写ホログラムの層状構造中に押し込められる。
【0034】
着色インクの熱可塑性結合剤が接着剤層と同様に軟化し、顔料が「重ねられたままである」間に、圧力に押されて脇に流れ出し、粒径に依存して多少荒れた表面構造を形成するので、本発明の効果が恐らく生じる。この構造がホログラム層18中に押し込められ、さもなければ滑らかである金属表面に視覚的に認めることができる乱れをミクロンの範囲にあるホログラムのレリーフ構造中に生じる。このようにして作成された乱れは、一方において、ホログラフィック記録を減衰させ、他方において、周囲と対照がよく、したがって視覚的によく認めることができる艶消し平面構造を高光沢金属中に生じる。
【0035】
顔料構造体の効力に依存して、ホログラフィック効果の乱れは広範に調節可能である。すなわち、これらの領域においてホログラフィック効果を完全に排除することも、またそれを、追加情報が金属層のすれすれの視角においてより近くで見る際にだけ認識できるように弱くすることもできる。
【0036】
既に述べたように、本発明の効果を生じるために種々の手段が考えられる。最も簡単な場合には、個別化のために選択された情報およびデータに、それらがその後付与されるホログラム中に現れるであろうカードの領域で、顔料含有インクを付与する。ホログラフィック平面素子を熱間積層法またはホットスタンピング転写法によってこの印刷パターン上に付与すると、印刷面部分は、さもなければ高光沢であるホログラムの金属層中に、艶消し面として後にホログラム中で認識される。ホログラム効果はこれらの手段によってその効力に依存していろいろな程度に減衰されるが、一般に完全には崩壊されないので、ある視角において2種類の情報の重なりを検出することができる。
【0037】
本発明のさらに他の実施例によれば、印刷追加情報を顔料インクによって転写ホログラムの接着剤層22上に印刷し、一緒にデータ媒体1に転写することもできる。
【0038】
顔料含有層を広い範囲にわたってデータ媒体上に印刷し、それから後にホログラム中でなお光って見えるべき領域を彫刻によって除去するか、あるいはそれらを透明ラッカー等によって覆うことも可能である。
【0039】
広範囲にわたる顔料含有印刷層の代わりに、追加情報に応じて透明ラッカー等によって同様に部分的に覆われた適切にフィリングされたカバーフイルムか、または追加情報に応じて接着剤層の厚さが変えられている転写ホログラムを使用することも同様に本発明の範囲内にある。
【0040】
以下、多くの可能な変法から幾つかの実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
【0041】
実施例1
外面に透明保護フイルムを有する多層カードのOVDの領域に、スクリーン印刷技術によって印刷(英数字記号、図形等)を施した。スクリーン印刷は、ヴィーデルホルト(Wiederhold)スクリーン印刷インクJ65(カーボンブラック顔料含有)を用いて70スクリーン(70メッシュ/cm)で行った。元来ペースト状で存在するこのスクリーン印刷インクを10%のシンナー(ヴィーデルホルト(Wiederhold)JVS)と混合した。
【0042】
市販の転写ホログラムを、約20μmの乾燥層厚を有する硬化プリント上に積層した。
【0043】
転写フォイルを剥離した後、ホログラムは未印刷部で高光沢をもって認識することができた。スクリーン印刷された記号の領域では、これらの部分が全ての視角において十分に認識することができるはっきりと輪郭を表した艶消し構造として存在していた。ホログラフィック効果は追加情報の領域でなお見ることができたが、非常に減衰した程度でしか見られなかった。
【0044】
実施例2
実施例1におけるのと同様なカード、すなわち、外側に透明保護フイルムを有する多層構造体を使用した。OVDの領域において、砂目状表面レリーフの形でカード表面に記号を付与した。この表面レリーフは元来高光沢の積層用板を局所的にサンドブラストすることによって作成した。
【0045】
市販の転写ホログラムをホットスタンピング転写法によってレリーフ構造体上に付与した。
【0046】
転写バンドを剥離した後、記号は、特定の視角においてホログラムの光沢構造とは明らかに異なるはっきりと輪郭を表した艶消し構造として同様に認めることができた。しかし、本実施例において、この艶消し構造はかなり弱く、金属層すれすれの視角においてしか主に見ることができなかった。本実施例において、ホログラフィック効果は、追加情報がホログラムに対して最適な視角においてほとんど完全に見えなくなるほど追加情報の領域においても強かった。
【0047】
実施例3
実施例1におけるのと同様なカードにそのOVDの全領域にわたってスクリーン印刷インク(ヴィーデルホルト(Wiederhold)J65、70メッシュ/cmスクリーン)を用いて印刷した。インクが硬化した後、スクリーン印刷した表面内にパターンを彫刻し、あるいはパターン内のスクリーン印刷インクを除去した。
【0048】
転写ホログラムをその上に積層した後においては、彫刻部分は、減衰したホログラフィック効果を有する艶消しの周囲に対してはっきりと見分けられるホログラフィック効果を有する光沢構造として認識することができた。ホログラフィック効果の減衰は実施例1におけるそれとほぼ一致した。
【0049】
実施例4
広い範囲にスクリーン印刷部を有するカードを実施例3におけるのと同様に作成し、インクが硬化した後、その上を透明ラッカー(ヴィーデルホルト(Wiederhold)J70、層厚約20μm)によって部分的に覆った。市販の転写ホログラムをホットスタンピング転写法によってこの組合体の上に付与した。
【0050】
転写フォイルを剥離した後においては、透明ラッカーによって覆われた領域はホログラム領域中に高光沢で減衰されないホログラフィック効果を有して認識することができた。ラッカーによって覆われていない領域においては、追加情報が、実施例1で述べたように、非常に減衰されたホログラフィック効果を有する艶消し構造の形で認識された。
【0051】
実施例5
接着剤層の厚さがパターン状に変えられた転写ホログラムを(実施例3に従って)広い範囲にわたってスクリーン印刷されたカード上に積層した。薄い接着剤層領域の厚さは転写ホログラムにおける通常の厚さに相当した。厚い接着剤層領域はさらに接着剤を印刷することによって約15μmだけ厚くした。
【0052】
ホログラムを熱間積層法によって付与した後、追加情報は(薄い接着剤層の領域で)実施例1におけるのと同じ艶消し構造として認識された。厚い接着剤層の領域において、ホログラムは減衰されない光沢のある構造で存在していた。
【0053】
実施例6
市販の転写ホログラムをホットスタンピング法によって(実施例1に従って)透明な外層フイルムを有するカードに付与した。ホログラムを付与する前に、着色インク(ヴィーデルホルト(Wiederhold)J65、70スクリーン)を用いてスクリーン印刷パターンを接着剤層に付与した。
【0054】
転写フォイルを剥離した後、このスクリーン印刷パターンは上述の実施例におけるのと全く同様にホログラムの高光沢金属層中に艶消し構造として認められた。
【0055】
実施例7
透明ラッカー(ヴィーデルホルト(Wiederhold)社から入手した透明ラッカーJ70、層厚約10μm)で形成したネガティブプリントを、その外層が二酸化チタンをフィラーとして有する不透明な白色PVCフイルムとして設計されたカードのOVDの領域に設けた。高光沢の薄い金属層をホットスタンピング転写法によって透明ラッカー層上に付与した。
【0056】
転写フォイルを剥離した後、透明ラッカーによって覆われていない表面部分は高光沢金属層中に艶消し構造として視角に依存して様々な程度に認めることができた。
【0057】
実施例8
転写ホログラムをホットスタンピング法によって(実施例1に従って)透明なカバーフイルムを有するカードに付与した。カードに付与する前に、サンドブラスト法によって作成されたレリーフを、高磨きスチール板に対して背後から、この転写ホログラムに型押ししてパターンを形成した。このようにして作成された追加構造はカードに転写する前に転写ホログラム中に艶消しのパターン構造として既に認めることができた。
【0058】
この転写ホログラムをホットスタンピング法によってカード表面に付与した後、この艶消し構造はほとんど変化しない形で存在し、上述の実施例におけるのと同様に種々の視角においてはっきりと認められた。
【0059】
実施例9
転写用干渉素子をホットスタンピング転写法によって実施例1で記載したカードに付与した。そのような干渉素子は公知であり、例えば、米国特許第3,858,977号に記載されている。
【0060】
転写素子を付与する前に、荒れたパターン構造を滑らかなスチール表面に対して背後(接着剤層)からこの転写用干渉素子に型押し形成した。転写素子は異なる視角においては虹色に輝く緑の色彩効果に変化する金-オレンジの色彩効果を常態では有している。追加情報を有する領域は僅かに虹色に輝く黄色を示す艶消し構造として全ての視角においてほとんど一定してなお認められた。
【0061】
このようにして作成された干渉素子を付与した後においては、型押しされた構造によって生じた追加情報はほとんど同じ形で存在していた。
【0062】
実施例10
転写用干渉素子を実施例1で記載した(透明カバーフイルム上にスクリーン印刷した)カードに付与した。転写フォイルを剥離した後、実施例9に記載した実施例におけるのと同じ色彩変化効果がスクリーン印刷した領域で認められた。
【0063】
本発明によれば、OVD類に追加情報を非常に簡単でかつ安価に付与することが可能となる。その光学的可変効果に関し、全ての視角において優位を欠くように、または二次効果しか有しないように、または十分に認められるようにその効力を選択的に調節して追加情報を組み込むことができる。追加情報は常に光学的可変効果と見分けがつきまた光学的可変効果の一般的印象に調和して統合される。
【0064】
本発明の効果を生じさせる方法は公知のカード製造技術に容易に統合させることができる。光学的可変デバイス、特にホログラムは、積層されて、既に打ち抜かれている場合、カードの最後の製造工程のうちの1工程で通常付与される。
【0065】
本発明の追加情報に要求される構造は1回またはそれ以上の中間操作で生じさせることができる。使用する材料および所望の効果に依存して、必要な手段が特定の半製品および/または完成品に講じられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の追加情報を設けたOVDを有するデータ媒体を示す図である。
【図2】
転写バンドの断面を示す図である。
【図3】
図5の公知のデータ媒体の断面を示す図である。
【図4】
図1のデータ媒体の断面を示す図である。
【図5】
OVDを付与した公知のデータ媒体を示す図である。
【符号の説明】
1…データ媒体
2…印刷パターン
3…光学的可変デバイス(ホログラム)
4…ホログラフィック情報(波線)
5…追加情報
6…印刷層(追加印刷情報)
10…支持体
12…分離層
14…保護ラッカー層
16…熱可塑性樹脂層
18…金属層
20…保護ラッカー層
22…接着剤層(ヒートシール層)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-20 
出願番号 特願平3-248020
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B42D)
P 1 651・ 113- ZA (B42D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 藤井 靖子
谷山 稔男
登録日 2002-09-27 
登録番号 特許第3354580号(P3354580)
権利者 ガオー ゲゼルシャフト フェア オートマチヨン ウント オーガニザチヨン ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 データ媒体およびその製造方法  
代理人 堀 進  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 土屋 洋  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 飯高 勉  
代理人 韮澤 弘  
代理人 土屋 洋  
代理人 菅井 英雄  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 米澤 明  
代理人 堀 進  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 内田 亘彦  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 青木 健二  
代理人 千葉 剛宏  

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