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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1130811
異議申立番号 異議2003-72448  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-04-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-03 
確定日 2005-11-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3396191号「不適正カートリッジの検出方法及び装置及びシステム並びに記憶媒体及びカートリッジ」の請求項1ないし27に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3396191号の請求項に係る特許を取り消す。 
理由 I 手続の経緯
特許第3396191号の請求項1〜27に係る発明は、平成11年9月30日に出願され、平成15年2月7日に特許の設定登録がなされ、その後、中石幸明、キヤノン株式会社、高橋豊治より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年12月4日に訂正請求がなされたものである。

II 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正の内容は次のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項1における「・・・交換可能にセットされたカートリッジ内に」の記載を、「・・・交換可能にセットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に」と訂正し、「・・・測定して得た残量を記憶する」の記載を、「・・・測定して得た残量及びその測定日を記憶する」と訂正する。
(2)同じく請求項2、3における「前記不適正カートリッジであると判定され・・・」の記載を、「前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定され・・・」と訂正する。
(3)同じく請求項4における「前記カートリッジに記憶手段が・・・」の記載を、「前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が・・・」と訂正する。
(4)同じく請求項5における「前記不適正カートリッジの判定は・・・」の記載を、「前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジの判定は・・・」と訂正する。
(5)同じく請求項6における「前記トナーの残量は・・・」の記載を、「前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記トナーの残量は・・・」と訂正する。
(6)同じく請求項7における「・・・セットされるカートリッジ内に設けられ、」の記載を、「・・・セットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に設けられ、」と訂正し、「・・・測定した残量を前記識別情報とともに」の記載を「・・・測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに」と訂正する。
(7)同じく請求項8、9における「前記不適正カートリッジであると判定され・・・」の記載を、「前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定され・・・」と訂正する。
(8)同じく請求項10における「前記不適正カートリッジの判定は・・・」の記載を、「前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジの判定は・・・」と訂正する。
(9)同じく請求項11における「・・・セットされたカートリッジ内に収納されて」の記載を「・・・セットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に収納されて」と訂正し、「・・・記憶手段に記憶された」の記載を、「・・・記憶手段にその測定日とともに記憶された」と訂正する。
(10)同じく請求項12における「・・・セットされ、製造時に所定量のトナーが収納されたカートリッジにおいて、前記画像形成装置に使用するのに不適正であることを検出するための情報として、トナー残量又はカートリッジの識別情報を記憶するための記憶手段を設けた」の記載を、「・・・セットされるとともに製造時に所定量のトナーが収納された、感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジにおいて、前記トナーが詰め替えられた不適正なカートリッジであることを検出するための情報として、トナー残量及びその測定日を記憶するための記憶手段を設けた」と訂正する。
(11)同じく請求項13における「・・・セットされるカートリッジ内に収納されて」の記載を、「・・・セットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に収納されて」と訂正し、「・・・測定して得た残量を前記カートリッジに設けられた」の記載を、「・・・測定した残量及びその測定日を前記カートリッジに設けられた」と訂正する。
(12)同じく請求項14における「・・・セットされるカートリッジ内のカートリッジ側記憶手段から、」の記載を、「・・・セットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジに分離可能に設けられたカートリッジ側記憶手段から、」と訂正し、「・・・測定して得た残量を前記識別情報とともに」の記載を、「・・・測定して得た残量及びその測定日を前記識別情報とともに」と訂正し、「さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられ」の記載を、「さらに、前記カートリッジに前記カートリッジ側記憶手段が設けられ」と訂正する。
(13)同じく請求項15における「・・・トナー収納室と、トナーの残量を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、」の記載を、「・・・トナー収納室と、感光ドラムと、帯電ローラと、現像ローラと、トナーの残量及びその測定日を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、」と訂正する。
(14)同じく請求項16に「・・・トナー収納室と、カートリッジ識別情報を記憶する」の記載を、「・・・トナー収納室と、感光ドラムと、帯電ローラと、現像ローラと、カートリッジ識別情報を記憶する」と訂正し、「・・・測定した残量を前記カートリッジ識別情報とともに」の記載を、「・・・測定した残量及びその測定日を前記カートリッジ識別情報とともに」と訂正する。
(15)同じく請求項17における「・・・消耗品の残量を測定する手段と、測定して得た残量を記憶する手段と、」の記載を、「・・・消耗品の残量を測定する手段と、前記カートリッジに設けられ、測定して得た残量及びその測定日を記憶する記憶手段と、」と訂正し、「さらに、前記カートリッジに記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、記憶手段が設けられていない・・・」の記載を、「さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記記憶手段が設けられていない・・・」と訂正する。
(16)同じく請求項18における「前記消耗品の詰め替え判定は、・・・」の記載を、「前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記消耗品の詰め替え判定は、」と訂正する。
(17)同じく請求項19における「前記不適正カートリッジであると判定されたときに、・・・」の記載を、「前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、・・・」と訂正する。
(18)同じく請求項20における「・・・この測定手段で測定した残量を前記識別情報とともに」の記載を、「・・・この測定手段で測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに」と訂正する。
(19)同じく請求項21、22における「前記不適正カートリッジであると判定されたときに、・・・」の記載を、「前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、・・・」と訂正する。
(20)同じく請求項23における「・・・カートリッジにおいて、前記画像形成装置に使用するのに不適正であることを検出するための情報として、消耗品の残量又はカートリッジの識別情報を記憶するための記憶手段を設けた」の記載を、「・・・カートリッジにおいて、前記消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジであることを検出するための情報として、消耗品の残量及びその測定日を記憶するための記憶手段を分離可能に設けた」と訂正する。
(21)同じく請求項24における「・・・消耗品の残量を記憶する」の記載を、「・・・消耗品の残量及びその測定日を記憶する」と訂正する。
(22)同じく請求項25に「・・・測定した残量を前記カートリッジ識別情報とともに」の記載を、「・・・測定した残量及びその測定日を前記カートリッジ識別情報とともに」と訂正する。
(23)同じく請求項26における「画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられ、・・・」の記載を、「上部カートリッジと下部カートリッジからなり、画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に分離可能に設けられ、・・・」と訂正し、「・・・測定した残量を前記識別情報とともに」の記載を、「・・・測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに」と訂正する。
(24)同じく請求項27における「・・・測定して得た残量を前記識別情報とともに、」の記載を、「・・・測定して得た残量及びその測定日を前記識別情報とともに、」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正(1)は、カートリッジの構成に「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を加えると共に、記憶手段に記憶される情報の内容として「その測定日」を加えることで、カートリッジと記憶手段を技術的に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、このようなカートリッジの構成は、本件明細書の段落【0044】に記載されており、記憶手段に記憶される情報の内容は、同段落【0080】に記載されているので、訂正(1)は願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(2)〜(5)は、記憶手段の構成に「カートリッジに分離可能に設けられる」という要件を追加し記憶手段を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。訂正(3)において、「記憶手段」の前に「前記」を追加する訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、これらの各訂正は、本件明細書の段落【0115】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(6)は、訂正(1)と同様の構成を追加することで、カートリッジと記憶手段を技術的に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正(7)、(8)は、記憶手段の構成に「カートリッジに分離可能に設けられる」という要件を追加して記憶手段をより技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、これらの訂正は、本件明細書の段落【0115】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(9)、(11)〜(14)は、それぞれ請求項11、13〜16について、上記請求項1に関する訂正(1)と同様の構成を追加することで、カートリッジ、記憶手段、カートリッジ側記憶手段を技術的に限定するものであり、また、訂正(12)については、これに加えて、「カートリッジに分離可能に設けられる」という要件を追加し記憶手段を限定するものであるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、訂正(12)において、「記憶手段」の前に「カートリッジ側」を追加する訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、これらの訂正は、本件明細書の段落【0044】、【0080】、【0115】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(10)は、カートリッジの構成に「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を加えてこれを限定すると共に、記憶手段の情報から「カートリッジの識別情報」を削除し、記憶手段の情報である「トナー残量」に対して「その測定日」の情報を加えることで情報の内容を限定し、併せて「前記画像形成装置に使用するのに不適正であることを検出するための情報」が「トナーが詰め替えられた不適正なカートリッジであることを検出するための情報」であることを明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。訂正(10)は、本件明細書の段落【0044】、【0080】、【0072】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(15)は、請求項17に記載された記憶手段の情報である「トナー残量」に対して「その測定日」の情報を追加することで、記憶手段を技術的により限定するものである。また、訂正(15)における他の訂正は、訂正前の請求項17に記載されている3つの記憶手段がすべて同一であることを明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして記憶手段に記憶される情報は、本件明細書の段落【0080】に記載されており、3つの記憶手段が同一であることは図7のフローチャート等の記載をみれば明らかになるものであるから、訂正(15)は願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(16)、(17)は、記憶手段の構成に「カートリッジに分離可能に設けられる」という要件を追加し記憶手段を技術的に限定するものであるが、これらは上記訂正(2)〜(5)、(7)、(8)と同様である。したがって、訂正(16)、(17)は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。 訂正(18)は、 請求項20について、装置側記憶手段に記憶される情報の内容として、「その測定日」を加えることで、装置側記憶手段を技術的に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、記憶手段に記憶される情報の内容については、本件明細書の段落【0080】に記載されているので、訂正(18)は願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(19)は、カートリッジ側記憶手段の構成に「カートリッジ内に分離可能に設けられる」という要件を追加し該記憶手段を技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、該訂正は、本件明細書の段落【0115】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(20)は、記憶手段の情報から「カートリッジの識別情報」を削除し、記憶手段の情報である「トナー残量」に対しては「その測定日」の情報を加えることで情報の内容を限定し、併せて記憶手段の構成に「分離可能に」設けられるという要件を追加しこれを限定するものである。更に、「前記画像形成装置に使用するのに不適正であることを検出するための情報」が「消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジであることを検出するための情報」であることを明確にするものであるから、訂正(20)は特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして該訂正は、本件明細書の段落【0080】、【0072】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正(21)は、それぞれ請求項24について、記憶手段に記憶される情報の内容として「その測定日」を加えることで、記憶手段を技術的により限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして該訂正は、本件明細書の段落【0080】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
訂正(22)、(23)、(24)は、請求項25〜27について、「第2の記憶手段」又は「装置側記憶手段」に記憶される情報の内容として「その測定日」を加えることで、これらの記憶手段を技術的に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。記憶手段に記憶される情報の内容については、本件明細書の段落【0080】に記載されているので、訂正(22)〜(24)は願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
また、訂正(23)については、これに加えて、カートリッジに対し「上部カートリッジと下部カートリッジからなり」という要件を追加し、またカートリッジ側記憶手段の構成に「分離可能に」設けられるという要件を追加し、カートリッジ及び記憶手段を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。該訂正は、本件明細書の段落【0051】、【0115】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものである。
そして、上記した各訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.訂正の適否に関する結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III 特許異議申立についての判断
1.本件特許発明
上記のように訂正が認められるから、本件の請求項1〜27に係る発明は、上記訂正明細書の特許請求の範囲、請求項1〜27に記載された次のとおりものである。

「【請求項1】 画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定する測定手段と、前記カートリッジに設けられ、前記測定手段によって測定して得た残量及びその測定日を記憶する記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている前記不適正カートリッジであると判定する手段とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項2】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項3】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項4】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項5】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジの判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項6】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記トナーの残量は、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に、前記記憶手段に書き込まれることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項7】 画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とを備えるとともに、さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項8】 前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項7記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項9】 前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項7又は8記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項10】 前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジの判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われ、前記トナーの残量は、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に、前記装置側記憶手段に書き込まれることを特徴とする請求項7ないし9いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項11】 画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定し、今回測定したトナーの残量と、前回測定され、前記カートリッジに設けられた記憶手段にその測定日とともに記憶されたトナーの残量とを比較し、トナーの残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出方法。
【請求項12】 画像形成装置に着脱自在にセットされるとともに製造時に所定量のトナーが収納された、感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジにおいて、前記トナーが詰め替えられた不適正なカートリッジあることを検出するための情報として、トナー残量及びその測定日を記憶するための記憶手段を設けたことを特徴とするカートリッジ。
【請求項13】 画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量及びその測定日を前記カートリッジに設けられた記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項14】 画像形成装置に交換可能にセットるとともに感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラを含むカートリッジに分離可能に設けられたカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す機能と、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量及びその測定日を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能と、さらに、前記カートリッジに前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判定し、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項15】 画像記録に使用するトナーを収納するトナー収納室と、感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラと、トナーの残量及びその測定日を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの残量を測定する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項16】 画像記録に使用するトナーを収納するトナー収納室と、感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラと、カートリッジ識別情報を記憶する第1の記憶手段とを有するカートリッジと、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの残量及びその測定日を測定する手段と、測定した残量を前記カートリッジ識別情報とともに記憶する第2の記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記カートリッジ識別情報をもとに第2の記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項17】 画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されている消耗品の残量を測定する手段と、前記カートリッジに設けられ、測定して得た残量及びその測定日を記憶する記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項18】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記消耗品の詰め替え判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われることを特徴とする請求項17記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項19】 前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項17又は18記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項20】 画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量及び測定日を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項21】 前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項20記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項22】 前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項20又は21記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項23】 画像形成装置に着脱自在にセットされ、製造時に所定量の消耗品が収納されたカートリッジにおいて、前記消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジであることを検出するための情報として、消耗品の残量及び測定日を記憶するための記憶手段を分離可能に設けたことを特徴とするカートリッジ。
【請求項24】 画像記録に使用する消耗品を収納する消耗品収納室と、消耗品の残量及び測定日を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品の残量を測定する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項25】 画像記録に使用する消耗品を収納する消耗品収納室と、カートリッジ識別情報を記憶する第1の記憶手段とを有するカートリッジと、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品の残量を測定する手段と、測定した残量及び測定日を前記カートリッジ識別情報とともに記憶する第2の記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記カートリッジ識別情報をもとに第2の記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項26】 上部カートリッジと下部カートリッジからなり、画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に分離可能に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量及び測定日を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項27】 画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内のカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す機能と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量及び測定日を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能と、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判定し、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶した記憶媒体。」

なお、上記請求項1〜27に係る発明を、以下順に「本件発明1」、「本件発明2」、・・・「本件発明27」のように言う。

2.取消理由通知の理由の概要
(理由1) 本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
(理由2) 本件出願の請求項1ないし27に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1: 特開平10-133528号公報(異議申立人・中石幸明が提出した甲第1号証、異議申立人・キヤノン株式会社が提出した甲第1号証、異議申立人・高橋豊治が提出した甲第1号証)
刊行物2: 特開平8-197748号公報(申立人・高橋豊治が提出した甲第4号証)

3 引用刊行物の記載事項
当審で通知した取消理由(理由2)に引用された刊行物1(特開平10-133528号公報)には、
(1a)「着脱自在の交換部品を有する装置に用いられる純正交換部品消耗状態識別装置であって、交換部品に取付けられ消耗品の消耗量データを保持しデータ通信機能を有するデータキャリアと、装置本体内に設けられ、前記データキャリアのデータの読出し及び書込みをするデータ書込/読出ユニットと、前記純正交換部品に保持されている消耗品の消耗量を検出する消耗量検出手段と、前記データ書込/読出ユニットにより読出された消耗量データと、前記消耗量検出手段により検出された消耗量とを比較し、比較結果を出力する比較結果出力手段と、動作停止時に前記消耗量検出手段によって検出された消耗量データを前記書込/読出ユニットを介して前記データキャリアに書込む書込手段と、を具備することを特徴とする純正交換部品消耗状態識別装置。」(特許請求の範囲、請求項1)
(1b)「・・・及び前記データ書込/読出ユニットより読出された消耗量データと前記消耗量検出手段により検出された消耗量とが一致しないときに、その動作を禁止する動作制御手段と、動作停止時に前記消耗量検出手段によって検出された消耗量データを前記書込/読出ユニットを介して前記データキャリアに書込む書込手段と、を具備することを特徴とする純正交換部品消耗状態識別装置。」(同じく請求項2)、
(1c)「【発明の属する技術分野】本発明は複写機やプリンタ等の消耗品を交換可能な交換部品として着脱自在とする装置に用いられ、純正交換部品の不正使用を識別するための純正交換部品消耗状態識別装置及び画像形成装置に関するものである。」(段落【0001】)、
(1d)「【発明の実施の形態】図1は本発明の第1の実施の形態による交換部品消耗状態識別装置を画像形成装置である複写機に適用した構成を示すブロック図である。」(段落【0013】)、
(1e)「次にインク消耗量検出部10の一例について図5を用いて説明する。インクボトル2は例えば円筒形のボトルであって、下方にインクを供給するためのねじ溝が切られた円筒形のインク供給部2aが形成される。そしてインクボトル2にはボトル内にインクが満たされているときに変動部である中蓋2bが最上端位置にあり、インクの消耗量が少なくなれば徐々に中蓋2bが低下していくように構成される。この中蓋2bの一端に金属片41が取付けられる。この実施の形態によるインク消耗量検出部10はインクボトルが取付けられる本体側に中蓋2bのレベルを検出する近接センサを設けている。即ちインクボトル2の側壁にレベル変化に応じて金属片41に近接する位置には、複数の近接センサ42a〜42nが取付けられる。そしていずれの近接センサが金属片41を検出するかによってインクボトルのインク消耗量が検出できる。これらの近接センサ42a〜42nの出力は判別部43によって判別され、インクボトルの消耗量信号として制御部7に出力される。」(段落【0017】)
(1f)「次にこの実施の形態の動作について図6のフローチャートを参照しつつ説明する。動作を開始するとまずステップS1においてデータキャリア(DC)3よりインク消耗量のデータを読出す。そしてインク消耗量データが正常に読出されたかどうかをステップS2によってチェックし、正常な読出しでない場合、例えばインクボトル2にデータキャリア3が取付けられていない場合には、ステップS3に進んで純正交換部品であるインクボトル2が取付けられていないものとして警告表示を行ってステップS1に戻る。正常にインクボトルの消耗量が読出された場合には、ステップS4に進んでインク消耗量検出部10によりインク消耗量を計測する。そしてステップS5においてデータキャリアより読出したインク消耗量データと計測したインク消耗量とがほぼ同一レベルにあるかどうかを判別する。同一レベルにない場合にはインクボトルに再利用等のためインクのみが注入された可能性があるため、インクの異常状態を表示する(ステップS6)。そしてステップS7に異常状態をデータキャリア3に書込んでステップS1に戻る。ステップS5において消耗量データと計測したインク消耗量とのレベルがほぼ一致する場合には、ステップS8に進んで印刷を可能とし、印刷実行の起動操作が行われたかどうかを判別する。印刷実行起動ボタンが投入されると、ステップS9において印刷を実行する。そしてステップS10に進んで印刷終了又は中断状態かどうかを判別し、終了又は中断するまで印刷を実行する。印刷が終了又は中断すると、ステップS11に進んで再びインク消耗量検出部10によってインク消耗量を計測し、ステップS12に進んでデータキャリア3にインク消耗量データを書込んでステップS8に戻る。このとき印刷枚数をデータキャリアの印刷枚数領域のデータに加算して書込んでもよい。こうすれば印刷終了後は常に最終のインク消耗量データがデータキャリアに保持されることとなる。このようにインクボトル2に取付けられているデータキャリアにインク消耗量を保持しておくことにより、第三者がインクボトルにインクを再充填してもそのデータが異なるため、このような使用を未然に防止することができる。」(段落【0018】)
(1g)「尚ここで説明した実施の形態では複写機のインクボトルを交換部品の例として説明したが、本発明は消耗品を保持する交換部品を使う必要がある種々の製品、例えばトナーカートリッジを交換部品とするプリンタの画像形成装置等に適用することができることはいうまでもない。」(段落【0026】)

上記の摘記事項(1a)、(1c)〜(1g)からみて、刊行物1には以下の各発明が記載されていると認める。
・ 画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されているトナーの消耗量を測定する測定手段(消耗量検出手段)と、前記カートリッジに設けられ、前記測定手段によって測定して得た消耗量を記憶する記憶手段(データキャリア)と、前記測定手段で測定した今回の消耗量と前記記憶手段(データキャリア)から読み出した前回の消耗量とを比較し、消耗量が同一レベルであるといえないときは、トナーが不正に詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段(比較結果出力手段)とからなる不適正カートリッジの検出装置(以下「刊行物1第1発明a」という。)。

・ 画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されているトナーを測定し、今回測定したトナーの消耗量と前回測定され記憶手段(データキャリア)に記憶されたトナーの消耗量とを比較し、同一レベルであるといえないとき、トナーが不正に詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する不適正カートリッジの検出方法(以下「刊行物1第1発明b」という。)。

・ 画像形成装置に着脱自在にセットされたカートリッジにおいて、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであることを検出するための情報としてトナーの消耗量を記憶するための記憶手段(データキャリア)を設けたカートリッジ(以下「刊行物1第1発明c」という。)。

・ トナーの消耗量を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの消耗量を測定する手段(消耗量検出手段)と、前記測定手段で測定した今回の消耗量と前記記憶手段(データキャリア)から読み出した前回の消耗量とを比較し、同一レベルであるといえないとき、トナーが不正に詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段(比較結果出力手段)とを有する画像形成装置とからなる不適正カートリッジの検出システム(以下「刊行物1第1発明d」という。)。

また、上記の摘記事項(1a)、(1c)〜(1g)からみて、刊行物1には以下の発明も記載されていると認める。
・ 画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されているトナーの消耗量を測定する測定手段(消耗量検出手段)と、前記カートリッジに設けられ、前記測定手段によって測定して得た消耗量を記憶する記憶手段(データキャリア)と、前記測定手段で測定した今回の消耗量と前記記憶手段(データキャリア)から読み出した前回の消耗量とを比較し、消耗量が同一レベルであるといえないときは、トナーが不正に詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段(比較結果出力手段)と、前記カートリッジに記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する不適正カートリッジの検出装置(以下「刊行物1第2発明a」という。)。

同じく刊行物2には、
(2a)「記録用インクを収納した着脱自在なインクカートリッジを使用したインクジェットプリンタにおいて、各インクカートリッジを識別するために各インクカートリッジに設けられた識別情報と、インクジェットプリンタ本体に設けられ、各インクカートリッジに収納されている記録用インクの量を該インクカートリッジの前記識別情報に対応して記憶する記憶手段と、インクカートリッジがインクジェットプリンタ本体に装着された場合、該インクカートリッジの前記識別情報を読み取り、この読み取った識別情報に対応する前記記録用インクの量を前記記憶手段から読み出すインク量読み出し手段とを有することを特徴とするインクジェットプリンタ。」(特許請求の範囲、請求項1)、
(2b)「前記インクジェットプリンタ本体に装着されているインクカートリッジに収納されている記録用インクの量を適宜検出する検出手段と、該検出手段で検出した記録用インクの量を当該インクカートリッジの前記識別情報に対応して前記記憶手段に記憶するように制御する記憶制御手段とを有することを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。」(同請求項2)、
(2c)「前記検出手段は、前記インクカートリッジをインクジェットプリンタ本体から外そうとする操作の直前に該インクカートリッジに収納されている記録用インクの量を検出する手段を有することを特徴とする請求項2記載のインクジェットプリンタ。」(同請求項3)、
(2d)「図1(a)、(b)に示すインクカートリッジ1は、・・・、その矩形の箱型の上面に複数の電極からなるインクカートリッジ側電極部4を有するとともに、この電極部4に隣接して不揮発性メモリ3を内蔵した識別手段5を有する。
該識別手段5は、各インクカートリッジ1を各個別に識別するための識別情報を構成するものであり、この識別情報は前記不揮発性メモリ3に記憶されている。」(段落【0016】、【0017】)、
(2e)「以上のように構成されるインクジェットプリンタにおいて、図1に示すインクカートリッジ1を図2に示すインクカートリッジ収納ユニット11の収納部7内に装着すると、吸針8がインクカートリッジ1に差し込まれるとともに、インクカートリッジ1のインクカートリッジ側電極部4がインクカートリッジ収納ユニット11の収納部側電極部6に接触し、両者は電気的に接続される。そして、インクジェットプリンタの電源スイッチがオンされて、プリンタが動作状態に入ると同時に、プリンタ制御部110は、収納部側電極部6およびインクカートリッジ側電極部4を介してインクカートリッジ1の識別手段5の不揮発性メモリ3内に記憶されている識別情報を読み出し、この読み出した識別情報をプリンタ本体のメモリ12に記憶する。」(段落【0023】)、
(2f)「そして、例えばインクカートリッジ1がインクカートリッジ収納ユニット11内の所定位置に収納されているか否かを検知するための信号線ISからの信号を利用して、例えばインクカートリッジ収納ユニット11に装着されたインクカートリッジ1が取り外されたことが検知されると、この時点においてインクカートリッジ1内に残留しているインクの量が該インクカートリッジ1の識別情報に対応してメモリ12に記憶される。また、このインク残量のメモリ12への記憶は、印字中においてインクの残量が変化する都度に行うようにしてもよい。」(段落【0026】)、
(2g)「また、印字途中等において、インクカートリッジが取り外された場合には、この取り外された時点で装着されていたインクカートリッジの識別情報をメモリ12に記憶するとともに、この時点におけるインク残量を該識別情報に対応してメモリ12に記憶してもよい。」(段落【0027】)、
(2h)「また更に、本インクジェットプリンタにおいては、インクカートリッジ収納ユニット11内に装着されたインクカートリッジ1が今まで使用されていない例えば新たなインクカートリッジである場合には、該インクカートリッジの識別情報を上述したように読み出してメモリ12に記憶するとともに、該インクカートリッジ内のインクの量を検知し、この検知したインクの量を前記識別情報に対応してメモリ12に記憶する。そして、該インクカートリッジが使用された後、該インクカートリッジが取り外された場合には、上述したように、その使用中のインク使用量を差し引いたインクの残量を前記識別情報に対応してメモリ12に記憶する。」(段落【0028】)、
(2i)「また、それから、該インクカートリッジ1が再度使用された場合には、該インクカートリッジがインクカートリッジ収納ユニット11に装着された時点において該インクカートリッジの識別情報を読み出し、この読み出した識別情報に対応してメモリ12に記憶されている該インクカートリッジ1のインクの残量を読み出し、この読み出したインク残量から使用量を逐次減算することにより、使用に応じた現在のインク残量を常に監視することができる。」(段落【0029】)
上記摘記事項(2a)〜(2i)からみて、刊行物2には以下の発明が記載されていると認める。
画像形成装置(インクジェットプリンタ)に交換可能にセットされるインクカートリッジ内に設けられ、インクカートリッジを識別するための識別情報を記憶するインクカートリッジ側記憶手段(不揮発性メモリ3)と、前記インクカートリッジ内に収納されたインクの残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段(メモリ12)を有する画像形成装置(インクジェットプリンタ)。

4.対比、判断
4-1.本件発明1〜6、11〜13、15、16、23〜25に関する検討
(1)本件発明1について
本件発明1(前者)と「刊行物1第1発明a」(後者)とを対比すると、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に収納されているトナーを測定する測定手段と、前記カートリッジに設けられ、前記測定手段によってトナーを測定し得た測定結果を記憶する記憶手段と、前記測定手段で測定した今回のトナーの測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、比較結果に基づき、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであるかを判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置である点。
(相違点1)
前者がカートリッジのトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、トナーの残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点3)
前者は、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。

以下、上記相違点について検討する。
・相違点1について
カートリッジ内のトナーの増減を監視するのに際して、トナーの残量に着目して残量を測定し比較するか、又はトナーの消耗量に着目して消耗量を測定し比較するかは当業者が適宜選択すべき事項である。そして、トナー切れとなり純正品でないトナーが補給された場合カートリッジ内のトナーは当然補給前より増加するので、トナーの残量に着目した場合、前の残量を記憶手段に記憶させておきトナーの残量が増加したときにのみトナーの詰め替えがなされた不適正なカートリッジと判定することも適宜行われることに過ぎない。

・相違点2について
画像形成装置において、センサ情報と測定日時を関連付けて記憶することは周知(特開平1-63177号公報、特開平3-27061号公報参照)であり、また、刊行物1に記載の複写機本体が備える「時計/カレンダ部11」(8頁、図1参照)の機能が利用できることは自明であるから、トナー残量とともに測定日を記憶することは当業者が必要に応じて適宜行うことである。

・相違点3について
画像形成装置にセットされるカートリッジに、感光ドラム、帯電ローラ及び現像ローラを設けることは普通に行われていることである(必要ならば、特開平9-120208号公報、特開平9-120248号公報、特開平9-190121号公報参照)。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
上記検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに画像形成装置の画像形成動作を禁止することが記載されている(1b)。画像形成装置のカートリッジに記憶手段を分離可能に設けることは周知(例えば、特開昭63-212956号公報、特開平9-213407号公報参照。)である。
したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
上記(1)、(2)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに警告表示することが記載されている(1d)。
したがって、本件発明3は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
上記(1)〜(3)の検討事項に加えて、刊行物1には、カートリッジに記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定することが記載されている(1d)。
したがって、本件発明4は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
請求項5において引用部分の構成は上記(1)〜(4)の検討事項のとおりである。刊行物1に記載のものは印刷動作が開始される前にトナー消耗量を測定するものであるが、カートリッジセット時に異状を検知することは普通であり[上記刊行物2の他、特開平9-120246号公報参照]、刊行物1に記載のものにおいて、カートリッジセット時に不適正カートリッジであるかどうかの判定を行うことは適宜行われることにすぎない。
したがって、本件発明5は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6について
請求項6において引用部分の構成は上記(1)〜(5)の検討事項のとおりである。トナーの残量を、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に記憶手段に記憶することは普通であり[上記刊行物2の他、特開平10-26917号公報参照]、刊行物1に記載のものにおいて、カートリッジが画像形成装置から取り出される際にトナーの残量を記憶手段に記憶することは適宜行われることにすぎない。
したがって、本件発明6は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明11について
本件発明11(前者)と「刊行物1第1発明b」(後者)とを対比すると、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されているトナーを測定し、今回測定した測定結果と前回測定され記憶手段に記憶された測定結果とを比較し、比較結果に基づき、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであるかを判定する不適正カートリッジの検出方法である点。
(相違点1)
前者がカートリッジ内のトナー残量を測定し、今回測定されたトナー残量と前回記憶されて記憶手段に記憶されたトナー残量とを比較し、トナー残量が増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、トナー残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点3)
前者では、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。

これらの相違点1〜3は、上記「(1)本件発明1について」で述べた相違点1〜3と実質的に同じであり、これらについては上記(1)の検討事項のとおりであるから、本件発明11は、刊行物1に記載された発明及び周知事項から当業者が容易になし得たものである。

(8)本件発明12について
本件発明12と「刊行物1第1発明c」とを対比すると、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に着脱自在にセットされたカートリッジにおいて、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであることを検出するための情報としてトナーに関する測定結果を記憶するための記憶手段を設けたカートリッジである点。
(相違点1)
カートリッジにおいて、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであることを検出するための情報として前者が、トナー残量を記憶するための記憶手段を設けているのに対して、後者がトナーの消耗量を記憶するための記憶手段を設けている点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、トナー残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点3)
前者では、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。

・相違点1について
カートリッジ内のトナーの増減を監視するのに際し、トナーの残量に着目して残量を測定し比較するか、又はトナーの消耗量に着目して消耗量を測定し比較するかは当業者が適宜選択すべき事項であり、そしてトナーの残量に着目した場合、トナーの詰め替えが適正になされていないことを検出するための情報としてトナーの残量を記憶手段に記憶させることは適宜行われることに過ぎない。
・相違点2について
画像形成装置において、センサ情報と測定日時を関連付けて記憶することは周知(特開平1-63177号公報、特開平3-27061号公報参照)であり、また、刊行物1に記載の複写機本体が備える「時計/カレンダ部11」(8頁、図1参照)の機能が利用できることは自明であるから、トナー残量とともに測定日を記憶することは当業者が必要に応じて適宜行うことである。
・相違点3について
画像形成装置にセットされるカートリッジに、感光ドラム、帯電ローラ及び現像ローラを設けることは普通に行われている。
したがって、本件発明12は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明13について
本件発明13は、画像形成装置、すなわち
画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定する測定手段、前記カートリッジに設けられ、前記測定手段で測定して得た残量を記憶する記憶手段、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する判定手段とからなる画像形成装置について、各手段が有する機能に着目し、機能を「コンピュータで実現するためのプログラムが記憶された記憶媒体」として表現したものである。
そこで、本件発明13(前者)と「刊行物1第1発明a」(後者)とを対比すると、前者は「・・・機能と、・・・機能と、・・・機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムが記憶された記憶媒体。」と記載されたものであり、両者は、まず発明の表現において差異があるが、この点は同じ対象について画像形成装置として表現したか、画像形成装置が有する手段の機能を「コンピュータで実現するためのプログラム」としてとらえ「そのプログラムが記憶された記憶媒体」というものの形式にして表現したかの単なる表現上の差異に過ぎない。
また、両者の間には、装置構成に差異があるが、両者の相違点は、「(1)本件発明1について」に記載した相違点1、2と実質的に同じであり、これらの点は上記(1)の検討事項のとおりである。
したがって、本件発明13は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件発明15について
本件発明15(前者)と「刊行物1第1発明d」(後者)とを対比すると、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
トナーの測定結果を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーを測定する測定手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、比較結果に基づき、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであるかを判定する手段とを有する画像形成装置とからなる不適正カートリッジの検出システムである点。
(相違点1)
前者がカートリッジのトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、トナーの残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点3)
前者は、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点4)
前者では、画像形成装置が「トナー収納室」、「記録紙に画像を形成するプリント部」を有するのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
上記相違点1〜3は、上記「(1)本件発明1について」で述べた相違点1〜3と同じであり、それらについては上記(1)の検討事項のとおりである。そして、相違点4に示したカートリッジの構成は周知であるから、本件発明15は、刊行物1に記載された発明及び周知事項から当業者が容易になし得たものである。

(11)本件発明16について
本件発明16(前者)と「刊行物1第1発明d」(後者)とを対比すると、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
記憶手段を有するカートリッジと、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーを測定する測定手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、比較結果に基づき、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであるかを判定する手段とを有する画像形成装置とからなる不適正カートリッジの検出システムである点。
(相違点1)
前者がカートリッジのトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では「第1の記憶手段」がカートリッジを識別するための識別情報を記憶しており、かつ、画像形成装置が測定手段で測定したトナーの残量とその測定日を識別情報とともに記憶する「第2の記憶手段」を備えているのに対して、後者ではカートリッジに設けられている記憶手段にトナー消耗量を記憶し、このような「第2の記憶手段」は備えていない点。
(相違点3)
前者では、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点4)
前者では、画像形成装置が「トナー収納室」、「記録紙に画像を形成するプリント部」を有するのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
以下、相違点について検討する。
上記相違点1、3は、上記「(1)本件発明1について」で述べた相違点1、3と実質的に同じであり、それらについては上記(1)の検討事項のとおりである。相違点4に示したカートリッジの構成は周知である。
次に、相違点2について検討する。
刊行物2に、画像形成装置(インクジェットプリンタ)に交換可能にセットされるインクカートリッジ内に設けられ、インクカートリッジを識別するための識別情報を記憶するインクカートリッジ側記憶手段(不揮発性メモリ3)と、前記インクカートリッジ内に収納されたインクの残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段(メモリ12)を有する画像形成装置(インクジェットプリンタ)が記載されている(2a〜2i)。
ここではインクジェットプリンタに関して記載されているが、トナーカートリッジをセットした画像形成装置においても、該インクジェットプリンタと同様な消耗品の残量確認の問題があるので、インクジェットプリンタにおけるインク残量を識別情報とともに本体装置側記憶手段に記憶するという技術は、トナーカートリッジをセットした画像形成装置に適用できることを示唆していると言える。
したがって、「刊行物1第1発明d」において、トナーの消耗量をカートリッジ側の記憶手段に記憶する代わりに、カートリッジ識別情報をカートリッジ側記憶手段に記憶させ、トナーの残量をカートリッジ識別情報とともに画像形成装置本体側に記憶することは適宜行われることにすぎない。
そして、トナーの残量を画像形成装置本体側に記憶する場合、測定日の情報を記憶させることも適宜行われることにすぎない(4-1(1)の「相違点2について」参照)。
したがって、本件発明25は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12)本件発明23について
本件発明23(前者)と「刊行物1第1発明c」(後者)とを対比すると、後者のトナーは「消耗品」に包含されるから、両者の間には下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に着脱自在にセットされたカートリッジにおいて、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであることを検出するための情報として消耗品に関する測定結果を記憶するための記憶手段を設けたカートリッジである点。
(相違点1)
カートリッジにおいて、前者が、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであることを検出するための情報としてトナー残量を記憶するための記憶手段を設けているのに対して、後者がトナーの消耗量を記憶するための記憶手段を設けている点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、トナー残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点3)
前者では、記憶手段が、カートリッジに分離可能に設けられているのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。

そこで、これらの点を検討すると、上記相違点1、2は、上記「(8)本件発明12について」で述べた相違点1、2と実質的に同じであり、それらについては上記(8)の検討事項のとおりである。相違点3に示した記憶手段が分離可能である点は周知である。
したがって、本件発明23は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(13)本件発明24について
本件発明24(前者)と「刊行物1第1発明d」(後者)とを対比すると、後者のトナーは「消耗品」に包含されるから、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
消耗品の測定結果を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、比較結果に基づき、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであるかを判定する手段とを有する画像形成装置とからなる不適正カートリッジの検出システムである点。
(相違点1)
前者がカートリッジの消耗品の残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定された消耗品の残量が前回記憶された残量より増加しているときに消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジの消耗品の消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定された消耗品の消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、消耗品の残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点3)
前者は、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点4)
前者では、画像形成装置が「消耗品収納室」、「記録紙に画像を形成するプリント部」を有するのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。

上記相違点1〜4は、上記「(10)本件発明15について」で述べた相違点1〜4と実質的に同じであり、それらについては上記「(10)本件発明15について」、「(1)本件発明1について」の検討事項のとおりである。
したがって、本件発明24は、刊行物1に記載された発明及び周知事項から容易になし得たものである。

(14)本件発明25について
本件発明25(前者)と「刊行物1第1発明d」(後者)とを対比すると、後者のトナーは「消耗品」に包含されるから、両者の間には下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
記憶手段を有するカートリッジと、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品を測定する測定手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、比較結果に基づき、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであるかを判定する手段とを有する画像形成装置とからなる不適正カートリッジの検出システムである点。

(相違点1)
前者がカートリッジの消耗品の残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定された消耗品の残量が前回記憶された残量より増加しているときに消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一でないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では「第1の記憶手段」がカートリッジを識別するための識別情報を記憶しており、かつ画像形成装置が測定手段で測定したトナーの残量とその測定日を識別情報とともに記憶する「第2の記憶手段」を備えているのに対して、後者ではカートリッジに設けられている記憶手段にトナー消耗量を記憶し、このような「第2の記憶手段」は備えていない点。
(相違点3)
前者では、画像形成装置が「トナー収納室」、「記録紙に画像を形成するプリント部」を有するのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。

上記相違点について検討すると、相違点1〜3は、上記「(11)本件発明16について」で述べた相違点1、2、4と実質的に同じであり、それらについては上記(11)の検討事項のとおりである。
したがって、本件発明25は、刊行物1に記載された発明及び周知事項から当業者が容易になし得たものである。

4-2.本件発明7〜10、14、17〜22、26、27に関する検討

(1’)本件発明7について
本件発明7(前者)と「刊行物1第2発明a」(後者)とを対比すると、両者の間には、下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられるカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納されたトナーを測定する手段と、この測定手段で測定した測定結果を記憶する記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、測定結果に基づき、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであるかを判定する手段とを備えるとともに、さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定する不適正カートリッジの検出装置である点。
(相違点1)
前者がカートリッジ内のトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジ内のトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者ではカートリッジ側記憶手段がカートリッジを識別するための識別情報を記憶しており、かつ、不適正カートリッジ検出装置が、測定手段で測定したトナーの残量とその測定日を識別情報とともに記憶する装置側記憶手段を備えているのに対して、後者ではカートリッジ側記憶手段はトナー消耗量を記憶し、このような装置側記憶手段を備えていない点。
(相違点3)
前者では、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。

以下相違点について検討する。
・相違点1について
カートリッジ内のトナーの増減を監視するのに際して、トナーの残量に着目して残量を測定し比較するか、又はトナーの消耗量に着目して消耗量を測定し比較するかは当業者が適宜選択すべき事項である。そして、トナー切れ後に純正品でないトナーが補給された場合カートリッジ内のトナーは当然補給前より増加するので、トナーの残量に着目した場合、前の残量を記憶手段に記憶させておきトナーの残量が増加したときにのみトナーの詰め替えが適正になされていないと判定することは適宜行われ得ることに過ぎない。
・相違点2について
上記したように、刊行物2には、画像形成装置(インクジェットプリンタ)に交換可能にセットされるインクカートリッジ内に設けられ、インクカートリッジを識別するための識別情報を記憶するインクカートリッジ側記憶手段(不揮発性メモリ3)と、前記インクカートリッジ内に収納されたインクの残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段(メモリ12)を有する画像形成装置(インクジェットプリンタ)が記載されている(2a〜2i)。
ここではインクジェットプリンタに関して記載されているが、トナーカートリッジをセットした画像形成装置においても、該インクジェットプリンタと同様な消耗品の残量確認の問題があるので、インクジェットプリンタにおけるインク残量を識別情報とともに本体装置側記憶手段に記憶するという技術は、トナーカートリッジをセットした画像形成装置に適用できることを示唆していると言える。
したがって、「刊行物1第2発明a」において、トナーの消耗量をカートリッジ側の記憶手段に記憶する代わりに、カートリッジ識別情報をカートリッジ側記憶手段に記憶させ、トナーの残量をカートリッジ識別情報とともに画像形成装置本体側に記憶することは適宜行われることにすぎない。
そして、トナーの残量を画像形成装置本体側に記憶する場合、測定日の情報を記憶させることも適宜行われることにすぎない(4-1(1)の「相違点2について」参照)。
したがって、本件発明7は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2’)本件発明8について
上記(1’)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに画像形成装置の画像形成動作を禁止することが記載されている(1b)。
ところで、画像形成装置のカートリッジに記憶手段を分離可能に設けることは周知である。
したがって、本件発明8は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3’)本件発明9について
上記(1’)、(2’)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに警告表示することが記載されている(1d)。
したがって、本件発明9は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4’)本件発明10について
上記(1’)〜(3’)の検討事項に加えて、トナーの残量を、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に記憶手段に記憶することは普通であり[上記刊行物2の他、特開平10-26917号公報参照]、「刊行物1第2発明a」において、カートリッジが画像形成装置から取り出される際にトナーの残量を記憶手段に記憶することは適宜行われることにすぎない。 したがって、本件発明10は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5’)本件発明14について
本件発明14は、画像形成装置、すなわち像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内のカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す手段、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定する測定手段、前記測定手段で測定して得た残量を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する記憶手段、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する判定手段、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判定し、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する判定手段とを有する画像形成装置について、各手段が有する機能に着目し、機能を「コンピュータで実現するためのプログラムが記憶された記憶媒体」として表現したものである。
そこで、本件発明14(前者)と「刊行物1第1発明a」(後者)とを対比すると、前者は「・・・機能と、・・・機能と、・・・機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムが記憶された記憶媒体。」と記載されたものであり、両者は、まず発明の表現において差異があるが、この点は同じ対象について画像形成装置として表現したか、画像形成装置が有する手段の機能を「コンピュータで実現するためのプログラム」としてとらえ「そのプログラムが記憶された記憶媒体」というものの形式で表現したかの単なる表現上の差異に過ぎない。
また、両者は、装置構成に関して下記の点(相違点1〜4)で相違するが、以下に記載するように相違点に示す装置構成は当業者が容易になし得るものである。そして、装置を手段から成るものとして表現するか、手段の機能を「コンピュータで実現するためのプログラム」としてとらえ発明の末尾を「そのプログラムが記憶された記憶媒体」として表現するかは単なる表現上の差異に過ぎない。
(相違点1)
前者がカートリッジのトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、カートリッジ側記憶手段がカートリッジを識別するための識別情報を記憶しており、かつ、カートリッジ側記憶手段からカートリッジを識別するための識別情報を読み出す手段と、測定手段で測定したトナーの残量とその測定日を識別情報とともに記憶する装置側記憶手段を備えているのに対して、後者ではカートリッジ側記憶手段にトナー消耗量を記憶し、このような識別情報を読み出す手段と装置側記憶手段を備えていない点。
(相違点3)
前者では、カートリッジが「感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ」を含むのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。
(相違点4)
前者では、カートリッジ側記憶手段が、カートリッジに分離可能に設けられているのに対して、後者ではそのことが記載されていない点。

そこで、これらの点について検討すると、上記相違点1、3は、「(1’)本件発明7について」に記載した相違点1、3と実質的に同じであり、これらの点は上記(1’)の検討事項のとおりである。相違点2については、「(1’)本件発明7について」に記載した相違点2の検討事項に加え、刊行物2には「プリンタ制御部」が識別情報を読み出す機能を有することが記載されている(2e)。
以上のとおりであるから、本件発明14は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6’)本件発明17について
本件発明17(前者)と「刊行物1第2発明a」(後者)とを対比すると、後者のトナーは消耗品に包含されるので、両者の間には下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されている消耗品を測定する手段と、測定して得た測定結果を記憶する測定手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前記記憶手段から読み出した前回の測定結果とを比較し、比較結果に基づき、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであるかを判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジに記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する不適正カートリッジの検出装置。
(相違点1)
前者がカートリッジの消耗品の残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定された消耗品の残量が前回記憶された残量より増加しているときに消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジの消耗品の消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定された消耗品の消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、記憶手段に、消耗品の残量と共に「その測定日」の情報が記憶されるのに対し、後者ではそのことが記載されていない点。

上記相違点1は、上記「(1’)本件発明7について」で述べた相違点1と実質的に同じであり、上記(1’)の検討事項のとおりである。
次に相違点2であるが、画像形成装置において、センサ情報と測定日時を関連付けて記憶することは上記したように周知であり、また、刊行物1に記載の複写機本体が備える「時計/カレンダ部11」(8頁、図1参照)の機能が利用できることは自明であるから、トナー残量とともに測定日を記憶することは当業者が必要に応じて適宜行うことである。
したがって、本件発明17は、刊行物1に記載された発明及び周知事項から容易になし得たものである。

(7’)本件発明18について
上記(6’)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに画像形成装置の画像形成動作を禁止することが記載されている(1b)。画像形成装置のカートリッジに記憶手段を分離可能に設けることは周知である。
したがって、本件発明18は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8’)本件発明19ついて
上記(6’)、(7’)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに警告表示することが記載されている(1d)。
したがって、本件発明19は、刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9’)本件発明20について
本件発明20(前者)と「刊行物1第2発明a」(後者)とを対比すると、後者のトナーは「消耗品」に包含されるので、両者の間には下記の一致点及び相違点がある。
(一致点)
画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられた記憶手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する手段と、この測定手段で測定した測定結果を記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の測定結果と前回の測定結果とを比較し、測定結果に基づき、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定する不適正カートリッジの検出装置である点。
(相違点1)
前者がカートリッジ内のトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルでないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者ではカートリッジ側記憶手段がカートリッジを識別するための識別情報を記憶しており、かつ、不適正カートリッジ検出装置が、測定手段で測定したトナーの残量とその測定日を識別情報とともに記憶する装置側記憶手段を備えているのに対して、後者ではカートリッジ側記憶手段はトナー消耗量を記憶し、このような装置側記憶手段を備えていない点。

上記相違点1、2は、上記「(1’)本件発明7について」で述べた相違点1、2と実質的に同じであり、それらについては上記(1’)の検討事項のとおりである。
したがって、本件発明20は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項から容易になし得たものである。

(10’)本件発明21について
上記(9’)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに画像形成装置の画像形成動作を禁止することが記載されている(1b)。
そして前述したように画像形成装置のカートリッジに記憶手段を分離可能に設けることは周知である。
したがって、本件発明21は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11’)本件発明22について
上記(9’)、(10’)の検討事項に加えて、刊行物1には、不適正カートリッジであると判定されたときに警告表示することが記載されている(1d)。
したがって、本件発明22は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12’)本件発明26について
本件発明26は、カートリッジが、上部カートリッジと下部カートリッジからなる点、カートリッジ側記憶手段が分離可能に設けられている点を除き本件発明20と同じである。
本件発明26(前者)と「刊行物1第2発明a」(後者)とを対すると、両者は、「(9’)本件発明20について」に記載した相違点1、2、前者ではカートリッジが上部カートリッジと下部カートリッジからなる点(相違点3)及び前者ではカートリッジ側記憶手段が分離可能に設けられている点(相違点4)において相違する。

相違点1、2は、「(9’)本件発明20について」における検討事項のとおりであり、相違点3、4に示した構成はいずれも周知である(相違点3については、例えば特開平4-362961号公報、特開平5-53384号公報参照)。
したがって、本件発明26は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(13’)本件発明27について
本件発明27は、画像形成装置、すなわち画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内のカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する測定手段と、前記測定手段で測定して得た残量を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段と、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判定し、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置について、各手段が有する機能に着目し、機能を「コンピュータで実現するためのプログラムが記憶された記憶媒体」として表現したものである。
そこで、本件発明27(前者)と「刊行物1第2発明a」(後者)とを対比すると、前者は「・・・機能と、・・・機能と、・・・機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムが記憶された記憶媒体。」と記載されたものであり、両者は、まず発明の表現において差異があるが、この点は同じ対象について画像形成装置として表現したか、画像形成装置が有する手段の機能を「コンピュータで実現するためのプログラム」としてとらえ「そのプログラムが記憶された記憶媒体」というものの形式で表現したかの単なる表現上の差異に過ぎない。
また、両者は、装置構成に関しては下記の点(相違点1、2)で相違するが、以下に記載するように相違点に示す装置構成は当業者が容易になし得たものである。そして、装置を手段から成るものとして表現するか、手段の機能を「コンピュータで実現するためのプログラム」としてとらえ発明の末尾を「そのプログラムが記憶された記憶媒体」として表現するかは単なる表現上の差異に過ぎない。
(相違点1)
前者がカートリッジのトナーの残量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの残量が前回記憶された残量より増加しているときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定するのに対して、後者がカートリッジのトナーの消耗量を測定して記憶手段に記憶し、今回測定されたトナーの消耗量が前回記憶された消耗量と同一レベルであるといえないときにトナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する点。
(相違点2)
前者では、カートリッジ側記憶手段がカートリッジを識別するための識別情報を記憶しており、かつ、カートリッジ側記憶手段からカートリッジを識別するための識別情報を読み出す手段と、測定手段で測定したトナーの残量とその測定日を識別情報とともに記憶する装置側記憶手段を備えているのに対して、後者ではカートリッジ側記憶手段にトナー消耗量を記憶し、このような識別情報を読み出す手段と装置側記憶手段を備えていない点。

上記相違点1、2についてであるが、「(5’)本件発明14について」に記載した相違点1、2と実質的に同じであり、これらの点は上記(5’)の検討事項のとおりである。
したがって、本件発明27は、刊行物1、2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV むすび
以上のとおりであるから、 本件の請求項1ないし27に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1ないし27に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
不適正カートリッジの検出方法及び装置及びシステム並びに記憶媒体及びカートリッジ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム,帯電ローラ,現像ローラを含むカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定する測定手段と、前記カートリッジに設けられ、前記測定手段によって測定して得た残量及びその測定日を記憶する記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている前記不適正カートリッジであると判定する手段とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項2】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項3】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項4】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項5】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジの判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項6】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記トナーの残量は、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に、前記記憶手段に書き込まれることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項7】画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム,帯電ローラ,現像ローラを含むカートリッジ内に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とを備えるとともに、
さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項8】前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項7記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項9】前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項7又は8記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項10】前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジの判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われ、前記トナーの残量は、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に、前記装置側記憶手段に書き込まれることを特徴とする請求項7ないし9いずれか記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項11】画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム、帯電ローラ及び転写ローラを含むカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定し、今回測定したトナーの残量と、前回測定され、前記カートリッジに設けられた記憶手段にその測定日とともに記憶されたトナーの残量とを比較し、トナーの残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出方法。
【請求項12】画像形成装置に着脱自在にセットされるとともに製造時に所定量のトナーが収納された、感光ドラム,帯電ローラ,現像ローラを含むカートリッジにおいて、前記トナーが詰め替えられた不適切なカートリッジであることを検出するための情報として、トナー残量及びその測定日を記憶するための記憶手段を設けたことを特徴とするカートリッジ。
【請求項13】画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム,帯電ローラ,現像ローラを含むカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量及びその測定日を前記カートリッジに設けられた記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項14】画像形成装置に交換可能にセットされるとともに感光ドラム,帯電ローラ,現像ローラを含むカートリッジに分離可能に設けられたカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す機能と、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量及びその測定日を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能と、
さらに、前記カートリッジに前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判定し、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項15】画像記録に使用するトナーを収納するトナー収納室と、感光ドラムと、帯電ローラと、転写ローラと、トナーの残量及びその測定日を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、
記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの残量を測定する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項16】画像記録に使用するトナーを収納するトナー収納室と、感光ドラムと、帯電ローラと、転写ローラと、カートリッジ識別情報を記憶する第1の記憶手段とを有するカートリッジと、
記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの残量を測定する手段と、測定した残量及びその測定日を前記カートリッジ識別情報とともに記憶する第2の記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記カートリッジ識別情報をもとに第2の記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項17】画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されている消耗品の残量を測定する手段と、前記カートリッジに設けられ、測定して得た残量及びその測定日を記憶する記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、
さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項18】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記消耗品の詰め替え判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われることを特徴とする請求項17記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項19】前記記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項17又は18記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項20】画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、
さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項21】前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたことを特徴とする請求項20記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項22】前記カートリッジ側記憶手段は前記カートリッジに分離可能に設けられており、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項20又は21記載の不適正カートリッジの検出装置。
【請求項23】画像形成装置に着脱自在にセットされ、製造時に所定量の消耗品が収納されたカートリッジにおいて、前記消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジであることを検出するための情報として、消耗品の残量及びその測定日を記憶するための記憶手段を分離可能に設けたことを特徴とするカートリッジ。
【請求項24】画像記録に使用する消耗品を収納する消耗品収納室と、消耗品の残量及びその測定日を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、
記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品の残量を測定する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項25】画像記録に使用する消耗品を収納する消耗品収納室と、カートリッジ識別情報を記憶する第1の記憶手段とを有するカートリッジと、
記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品の残量を測定する手段と、測定した残量及びその測定日を前記カートリッジ識別情報とともに記憶する第2の記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記カートリッジ識別情報をもとに第2の記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする不適正カートリッジの検出システム。
【請求項26】上部カートリッジと下部カートリッジからなり、画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に分離可能に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量及びその測定日を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、
さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする不適正カートリッジの検出装置。
【請求項27】画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内のカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す機能と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量及びその測定日を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能と、
さらに、前記カートリッジに前記記憶手段が設けられているかどうかを判定し、前記記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定する機能とを画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ,ファクシミリ,複写機等の画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジが、消耗品(トナー,インク等)を詰め替えた不適正なものかどうかを検出するための方法及び装置及びシステムに関するものである。更に、本発明は、消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジを検出するためのプログラムを記憶した記憶媒媒体と、消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジを検出するために適したカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば電子写真式のプリンタでは、現像媒体としてトナーを充填したトナーカートリッジが用いられている。このトナーカートリッジでは、その製造時に一定量のトナーが充填されており、プリンタに交換可能にセットされる。このトナーカートリッジ内のトナーが殆どなくなると、プリンタの表示器にトナー切れが表示されるから、新しいトナーカートリッジに交換される。
【0003】
前記トナー切れの状態は、トナー残量測定装置によってトナー残量を測定することで検出される。トナー残量測定装置としては、例えば特開平7-28320号公報に記載されているように、トナーカートリッジが装填されるカートリッジ室に、光源とホトセンサーとを配置したものが知られている。トナーカートリッジの両側壁には透明窓が形成されているから、一対の透明窓を通して光源からの光がホトセンサーに入射する。トナーの残量が多い場合は、トナーによって光源からの光が遮断されるから、ホトセンサーの出力は小さく、トナー残量が少なくなるとホトセンサーの出力は大きくなる。そこで、ホトセンサーの出力が一定値に達したときに、トナー切れであると判定する。
【0004】
前記トナーカートリッジは、補充瓶からのトナーをプリンタ内のトナー収納室へ補給することが不要であるため、手や衣服がトナーで汚れる心配がなく、またトナーカートリッジを交換するだけでよいので、操作が簡単である等の利点がある。
【0005】
前記トナーカートリッジを更に発展させ、感光ドラム,帯電ローラ,現像ローラ,クリーニング部等を取り付けたプロセスカートリッジも知られている。このプロセスカートリッジでは、感光ドラム等の寿命に合わせた量のトナーが充填されており、トナーの交換と同時に感光ドラム等も交換されるから、メンテナンスが簡便であり、またメンテナンス契約も特に必要とされない等の利点があるため、個人用プリンタ等に広く利用されている。
【0006】
使用済みのカートリッジは、カートリッジ販売業者を介してプリンタメーカーに回収される。プリンタメーカーは、環境汚染防止や資源の有効活用の観点から、使用済みカートリッジを分解し、各部品を検査して正常なものは再使用し、またプラスチック部品は溶解・ペレット化して、プラスチック材料として再利用をしている。また、このカートリッジのリサイクルによって、カートリッジの販売価格の引下げも図っている。
【0007】
使用済みのカートリッジの全てがプリンタメーカーに戻されるのではなく、その一部がトナーの詰め替え業者にまわされる。トナー詰め替え業者は、所定の料金で詰め替えを請け負い、カートリッジを分解してから適当なトナーを補給する。また、使用済みのカートリッジを購入し、これにトナーを補給してから、再生カートリッジとして、新品のカートリッジに比べてかなり安い価格で販売するトナー詰め替え業者もある。
【0008】
カートリッジの製造時に充填されるトナー(純正品)は、プリンタのプロセス特性(感光ドラムの特性,帯電電圧,クリーニング特性,定着特性)を考慮して、トナーの成分を決定している。しかし、トナー詰め替え業者が使用するトナーは、その組成成分が純正品のトナーとは異なっているため、印字品質の低下を起こすことがある。また、トナーが定着ローラにこびりついたりして、定着ローラを損傷することもある。
【0009】
印字品質の低下や、故障が発生した場合に、補給したトナーに原因があるにもかかわらず、ユーザーはプリンタに原因があると誤解することが多い。これによって、地道に積み上げてきたプリンタの信頼性が一挙に失われることになる。また、ユーザーによっては、プリンタを製造したメーカーを信頼しなくなり、このメーカーが取り扱う全製品に対して嫌悪感を懐くこともある。
【0010】
プリンタメーカーの信頼性を維持するには、詰め替え業者による消耗品の詰め替えを事前に防止したり、あるいは消耗品を詰め替えた不適正なカートリッジは再使用できないようにする等の対策を考慮することが必要である。
【0011】
消耗品の詰め替え防止対策としては、前述した特開平7-28320号公報には、プリント枚数をカウントするカウンタと、現像ローラの回転を阻止する電磁ブレーキを設けたプロセスカートリッジが記載されている。このプロセスカートリッジでは、トナーの消費量をプリント枚数から間接的に調べ、プリント枚数が一定値に達したときに、トナー切れが発生したと判断し、電磁ブレーキを作動する。この電磁ブレーキによって、現像ローラの回転が阻止されるから、いったんトナー切れとなると、トナーの補充の有無にかかわらず、プロセスカートリッジを使用することができなくなる。したがって、トナーは入っているが、電磁ブレーキがかかっているプロセスカートリッジは、トナーの詰め替え品であると判断することができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の消耗品詰め替え防止対策では、電磁ブレーキが作動する前、すなわちトナーが少し残っている段階でトナーを補充した場合(途中詰め替えをした場合)には、プロセスカートリッジを再使用することが可能になってしまうという問題がある。また、文字数の多いプリントと、文字数が極端に少ないプリントとがあるから、プリント枚数からトナーの残量を予測するものでは、トナーの残量を正確に測定することはできない。そのために、トナーが残っているにもかかわらず、電磁ブレーキが作動してプロセスカートリッジが使用できなくなることがある。これは資源の無駄となる。更に、電磁ブレーキやカウンタが必要であるため、プロセスカートリッジのコストアップを招くことになる。
【0013】
また、従来の消耗品詰め替え防止対策では、プロセスカートリッジに電磁ブレーキやカウンタを設けなければならないため、プロセスカートリッジが複雑で大型化し、コスト高となるという問題がある。また、電磁ブレーキがかかっている状態は直ぐに分かるので、プロセスカートリッジの分解時に、電磁ブレーキを除去するか、あるいはブレーキがきかない状態にすることができるから、有効な詰め替え防止策とはいえない。
【0014】
本発明は、消耗品を詰め替えた不適正なカートリッジを確実に検出することができる不適正カートリッジの検出方法及び装置及びシステム,並びに記憶媒体及びカートリッジを提供することを目的とするものである。
【0015】
本発明の別の目的は、消耗品の残量を正確に測定することができるようにした不適正カートリッジの検出方法及び装置及びシステム及び記憶媒体を提供することにある。
【0016】
本発明の更に別の目的は、消耗品を詰め替えた不適正なカートリッジを使用することができないようにする不適正カートリッジの検出方法及び装置及びシステム及び記憶媒体を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の不適正カートリッジの検出装置は、画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定する手段と、測定して得た残量を記憶する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている前記不適正カートリッジであると判定する手段とからなるものである。
【0018】
なお、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設け、さらに、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けることが好ましい。
【0019】
なお、前記記憶手段を、カートリッジに設けることが好ましい。
【0020】
なお、前記カートリッジに記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、記憶手段が設けられていないときは不適正カートリッジであると判定することが好ましい。
【0021】
なお、前記不適正カートリッジの判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行うことが好ましい。
【0022】
なお、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に、前記トナーの残量を、前記記憶手段に書き込むことが好ましい。
【0023】
また、本発明の不適正カートリッジの検出装置は、画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなるものである。
【0024】
なお、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたり、また、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けることが好ましい。
【0025】
なお、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、このカートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することが好ましい。
【0026】
なお、前記不適正カートリッジの判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行うことが好ましい。
【0027】
なお、カートリッジが画像形成装置から取り出される際に、前記トナーの残量を、前記カートリッジ側記憶手段に書き込むことが好ましい。
【0028】
また、本発明の不適正カートリッジの検出方法は、画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定し、今回測定したトナーの残量と、前回測定したトナーの残量とを比較し、トナーの残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定するようにしたものである。
【0029】
また、本発明のカートリッジは、画像形成装置に着脱自在にセットされ、製造時に所定量のトナーが収納されたカートリッジにおいて、前記画像形成装置に使用するのに不適正であることを検出するための情報を記憶するための記憶手段を設けたものである。
【0030】
なお、前記情報は、トナーの残量又はカートリッジの識別情報であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の記憶媒体は、画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に収納されているトナーの残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量を記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能とを、画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶している。
【0032】
また、本発明の記憶媒体は、画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内のカートリッジ側記憶手段から、各カートリッジを識別するための識別情報を読み出す機能と、前記カートリッジ内に収納されたトナーの残量を測定手段に測定させる機能と、前記測定手段で測定して得た残量を前記識別情報とともに、画像形成装置内の装置側記憶手段に記憶する機能と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する機能とを、画像形成装置のコンピュータで実現するためのプログラムを記憶している。
【0033】
また、本発明の不適正カートリッジの検出システムは、カートリッジと画像形成装置とから構成されており、このカートリッジには、画像記録に使用するトナーを収納するトナー収納室と、トナーの残量を記憶する記憶手段とが設けられており、また画像形成装置には、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの残量を測定する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とが設けられている。
【0034】
また、本発明の不適正カートリッジの検出システムは、カートリッジと画像形成装置とから構成されており、このカートリッジには、画像記録に使用するトナーを収納するトナー収納室と、カートリッジ識別情報を記憶する第1の記憶手段とが設けられており、また画像形成装置には、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内のトナーの残量を測定する手段と、測定した残量を前記カートリッジ識別情報とともに記憶する第2の記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記カートリッジ識別情報をもとに第2の記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、トナーが詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とが設けられている。
【0035】
また、本発明の別の不適正カートリッジの検出装置は、画像形成装置に交換可能にセットされたカートリッジ内に収納されている消耗品の残量を測定する手段と、測定して得た残量を記憶する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジに記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、記憶手段が設けられていないときは消耗品詰め替えカートリッジであると判定することを特徴とする。
【0036】
また、前記消耗品の詰め替え判定は、カートリッジが画像形成装置にセットされたときに行われることが好ましい。
【0037】
また、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けたることが好ましい。
【0038】
また、本発明の別の不適正カートリッジの検出装置は、画像形成装置に交換可能にセットされるカートリッジ内に設けられ、カートリッジを識別するための識別情報を記憶するカートリッジ側記憶手段と、前記カートリッジ内に収納された消耗品の残量を測定する手段と、この測定手段で測定した残量を前記識別情報とともに記憶する装置側記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記識別情報をもとに前記装置側記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられている不適正カートリッジであると判定する手段とからなる不適正カートリッジの検出装置であり、さらに、前記カートリッジ側記憶手段が設けられているかどうかを判断する手段を設け、前記カートリッジ側記憶手段が設けられていないときは前記不適正カートリッジであると判定することを特徴とする。
【0039】
また、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、前記画像形成装置の画像形成動作を禁止する手段を設けることが好ましい。
【0040】
また、前記不適正カートリッジであると判定されたときに、警告表示する表示手段を設けることが好ましい。
【0041】
また、本発明の別のカートリッジは、画像形成装置に着脱自在にセットされ、製造時に所定量の消耗品が収納されたカートリッジにおいて、前記画像形成装置に使用するのに不適正であることを検出するための情報として、消耗品の残量又はカートリッジの識別情報を記憶するための記憶手段を設けたことを特徴とする。
【0042】
また、本発明の別の不適正カートリッジの検出システムは、画像記録に使用する消耗品を収納する消耗品収納室と、消耗品の残量を記憶する記憶手段とを有するカートリッジと、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品の残量を測定する手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする。
【0043】
また、本発明の別の不適正カートリッジの検出システムは、画像記録に使用する消耗品を収納する消耗品収納室と、カートリッジ識別情報を記憶する第1の記憶手段とを有するカートリッジと、記録紙に画像を形成するプリント部と、交換可能にセットされた前記カートリッジ内の消耗品の残量を測定する手段と、測定した残量を前記カートリッジ識別情報とともに記憶する第2の記憶手段と、前記測定手段で測定した今回の残量と前記カートリッジ識別情報をもとに第2の記憶手段から読み出した前回の残量とを比較し、残量が増加しているときは、消耗品が詰め替えられた不適正カートリッジであると判定する手段とを有する画像形成装置とからなることを特徴とする。
【0044】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明が適用される電子写真方式のプリンタを示すものである。プリンタ10は、プリンタ本体11にカートリッジ12が交換可能にセットされている。このカートリッジ12には、トナー13が充填されたトナー室14の他に、感光ドラム15,帯電ローラ16,現像ローラ17が設けられており、いわゆるプロセスカートリッジの形態をしている。
【0045】
感光ドラム15は、金属製の円筒体の外周面に、光導電性の皮膜が設けられている。帯電ローラ16は、金属製の軸と、その外周にはめ込んだ導電性を有する発泡ウレタンの筒体と、この発泡ウレタンの外側に嵌めた半導電性を有するプラスチック製のチューブとからなる。この帯電ローラ16は、発泡ウレタンの弾力によって、感光ドラム15の外周面に接触している。また、感光ドラム15と帯電ローラ16との間に一定の電圧を印加するために、感光ドラム15の円筒体と、帯電ローラ16の軸は、プリンタ本体11内の帯電回路に接続されている。この接続のために、カートリッジ12には電気接点が設けられている。
【0046】
給紙トレイ20上には、複数枚の記録紙21がセットされている。給紙トレイ20の一番上にある記録紙21が給紙ローラ22で引き出され、一対の搬送ローラ23に向けて給紙される。搬送ローラ対23は、記録紙21をニップして転写位置に搬送する。この転写位置には、転写ローラ24が配置されており、カートリッジ12がセットされたときに、その感光ドラム15に接触する。
【0047】
プリント時には、感光ドラム15が一定速度で時計方向に回転する。この感光ドラム15は、帯電ローラ16に接触しながら通過するときに外周面が一様に帯電される。また、半導体レーザ26は、画像データに応じて駆動され、強度変調されたレーザ光を発生する。このレーザ光は、ポリゴンミラー27を経て、回転中の感光ドラム24に入射する。ポリゴンミラー27は、レーザ光を感光ドラム24の軸方向(主走査方向)に振らすことで、ラスタスキャンをする。感光ドラム15は、レーザ光が照射された部分が除電されるから、その外周に静電潜像が形成される。
【0048】
トナー室13内のトナー14は、回転中の現像ローラ17の外周に付着して搬送される。トナー14は、現像ローラ17に付着して搬送される間に、規制ブレード28(図4参照)を通過する。この通過時に、トナー14は、規制ブレード28との摩擦により、感光ドラム15と逆極性に帯電される。このトナー14が感光ドラム15まで運ばれると、静電力で感光ドラム15に吸着されるため、感光ドラム15の静電潜像がトナー像に可視化される。
【0049】
感光ドラム15の回転によって、トナー像は転写位置まで移動する。この転写位置では、記録紙21が、転写ローラ24と感光ドラム15との間に挟まれて、感光ドラム15の周速度と同じ速度で移動している。転写ローラ24は、トナー像と逆の電位にバイアスされているから、感光ドラム15上のトナー像が記録紙21に転写される。
【0050】
トナー像が転写された記録紙21は、定着器29に向かって搬送される。この定着器29は、一対の定着ローラ30と、ヒータ(図示せず)とから構成されており、トナーを加熱して溶融する。溶融したトナーは、記録紙21に吸着される。定着処理された記録紙21は、プリンタ本体11から排紙される。
【0051】
図2〜図4は、カートリッジの一例を示すものである。図2は上部カートリッジを示し、図3は下部カートリッジを示す。また、図4は組立状態を示す。上部カートリッジ32及び下部カートリッジ33の本体34,35は、黒色をしたプラスチック成形品である。
【0052】
図2及び図4において、上部カートリッジ32には、トナー室13が形成されており、製造時に一定量のトナー14が充填されている。このトナー室13の下方には、細長なトナー供給口13aが形成されており、使用前にはシールテープ(図示せず)で封鎖されている。また、トナー室13の側面には、トナー14を充填するための充填口(図示せず)が設けられており、トナー14の充填後はキャップ37で封止されている。符号38は、トナー室13の天板であり、上部カートリッジ本体34に接着されている。
【0053】
上部カートリッジ本体34には、帯電ローラ16が回転自在に取り付けられている。この帯電ローラ16に近接した位置に、露光開口39が形成されており、この露光開口39を通ってレーザ光が感光ドラム15に入射する。
【0054】
上部カートリッジ32と下部カートリッジ33とを結合するために、上部カートリッジ本体34には、トナー室13側に2個の係止爪40が、そして帯電ローラ16側に2個の係止爪41が形成されている。なお、符号42〜44は、図4で明らかなように、露光室45内にトナー14が入り込まないように、隙間を塞ぐためのスポンジテープである。
【0055】
図3及び図4において、下部カートリッジ本体35には、感光ドラム15,現像ローラ17が回転自在に取り付けられている。また、下部カートリッジ本体35には、プリンタ本体11内に設けた駆動ギヤ(図示せず)に噛合する従動ギヤ46が設けられている。この従動ギヤ46の回転は、ギヤ47を介して現像ローラ17に伝達され、更にギヤ48を介して感光ドラム15に伝達される。感光ドラム15の下方に位置する部分に開口49が形成されている。この開口62を介して転写ローラ24が入り込んで感光ドラム15に接触する。
【0056】
支持プレート50の先端には、クリーニングブレード51が取り付けられており、感光ドラム15に付着している余分なトナーを掻き落とす。この掻き落とされたトナーを廃トナー室52内に集めるために、下部カートリッジ本体35にスクイシート53が取り付けられている。この廃トナー室52は、支持プレート50,クリーニングブレード51,スクイシート53で区画されている。
【0057】
前記支持プレート50の上端がスポンジテープ44に接触しているから、廃トナー室52と露光室45とが仕切られ、それにより使用済みトナーが露光室45を経てカートリッジ12から漏れ出ないようにしている。スポンジテープ42が下部カートリッジ本体35の内側に接触しており、またスポンジテープ43が規制ブレード28の上端に接触している。これらのスポンジテープ42,43によって、トナー室13側と露光室45とを仕切ることで、未使用のトナー14が露光室45を経てカートリッジ12から漏れ出るのが防止されている。
【0058】
下部カートリッジ本体35には、係合穴56と、係止突起57が設けられている。上部カートリッジ32を下部カートリッジ33に嵌め込むと、係合穴56に上部カートリッジ本体34の係止爪40が嵌合し、係止突起57に上部カートリッジ本体34の係止爪41が係合する。これらの係止爪40,41,係合穴56,係止突起57によって、上部カートリッジ32と下部カートリッジ33とが一体的に組み立てられる。
【0059】
プリンタの電気構成を示す図5において、プリンタ本体11に、CPU(バソコン)60,メモリ61,プリント部62,表示器63,トナー残量測定部64が設けられている。カートリッジ12には、トナー収納室13等の他に、メモリ65が設けられている。このメモリ65とCPU60とを電気的に接続するために、カートリッジ12の外面には電気接点(図示せず)が設けられ、またプリンタ本体11にも電気接点(図示せず)が設けられている。メモリ61,65としては、バックアップが不要なEEPROMが用いられる。
【0060】
CPU60は、プリンタ10の各部をシーケンス制御する他に、トナーの詰め替えが行われた不適正なカートリッジかどうかの判定をする。もし、トナー詰め替えカートリッジであると判定した場合は、表示器63に詰め替えであること,適正なカートリッジに交換すべきこと、プリントが禁止されること等を表示し、そしてプリント部62の作動を禁止する。表示器63は、操作パネル(図示せず)とともに、プリンタ本体11の外面に設けられている。
【0061】
メモリ61(以下、プリンタメモリという)には、各カートリッジに識別情報(ID)が与えられている場合は、プリンタ本体11にセットしたことがあるカートリッジのIDと、このカートリッジのトナー残量等の情報を記憶する。このIDとしては、数字,文字,記号,又はこれらを組み合わせたもの等が用いられる。
【0062】
詰め替え業者による情報の読み出しや書換えができないように、IDやトナー残量の情報を暗号化するか、あるいは情報の読み出しに特殊な暗号を使用することで、情報の保護を図るのがよい。なお,プリンタメーカーは、暗号を入力したり、あるいは保護を解除する秘密コマンドを入力することで、情報の読み出しや書換えを行うことができる。
【0063】
プリント部62は、レーザ26やポリゴンミラー27等の記録系,定着器29,転写ローラ24とカートリッジ12と給紙ローラ22と搬送ローラ23とを駆動するモータ,帯電ローラ16に電圧を印加する帯電回路等から構成されている。
【0064】
メモリ(以下、カートリッジメモリという)65には、トナー残量測定部64で測定したトナー残量等の情報が記憶される。新品のカートリッジに対しては、所定のトナー残量を表す情報が製造時に書き込まれている。この情報に対しても前述した保護を図るのがよい。各カートリッジにIDが与えられている場合は、トナー残量の代わりにIDが製造時に書き込まれている。
【0065】
図6は、トナー残量測定部の一例を示すものである。トナー室13の両側壁に、一対の窓が形成されており、これらの窓の内側に透明板73,74が取り付けられている。これらの透明板73,74を挟むように、ライン状光源75と、ライン状センサー76とが配置されている。
【0066】
トナー残量測定部64は、ライン状光源75,ライン状センサー76とによって構成されている。ライン状光源75は、測定時にCPU60によって一定時間発光される。ライン状センサー76からの信号は、CPU60に取り込まれ、その受光状態からトナー残量が算出される。
【0067】
ライン状光源75としては、LED等の光源75aをライン状に設けたものが用いられる。また、棒状の蛍光灯をライン状光源75として使用することができる。ライン状センサー76としては、複数のホトセンサー76aをライン状に設けたもの,又はCCD等のラインイメージセンサー等が用いられる。
【0068】
トナー残量の測定時には、CPU60によってライン状光源75が発光される。このライン状光源75から放出された光のうち、トナー14よりも低い位置から放出されたものはトナー14で遮断される。しかし、トナー14よりも高い位置から放出された光は、トナー14で遮られることなく進行し、ライン状センサー76に入射する。
【0069】
トナーの残量が多いと、下側に位置しているホトセンサー76aが遮光されるから、上側にあるホトセンサー76aだけがライン状光源75からの光を検出する。トナー残量が減るにつれて、下側のホトセンサー76aも光を検出する。CPU60は、どのホトセンサーまで遮光されているか、又はどのホトセンサーまで光を検出しているかを調べることで、トナー14の残量を算出する。
【0070】
この光学的なトナー残量測定部64では、透明板73,74にトナー14が付着していると、トナー残量を正しく測定することができなくなる。そこで、透明板73,74は、トナー14が電気的又は物理的に付着しにくい材料で作られており、またトナー14が落下し易いように良好な表面平滑性が与えられている。
【0071】
なお、トナー残量測定部をカートリッジ12に設け、測定したトナー残量のデータをプリンタ本体11のCPU60に送ってもよい。この場合には、ライン状光源75とライン状ホトセンサー74とをカートリッジ12に設けるとともに、ライン状光源75の点灯制御やトナー残量の算出をするための専用のCPUをカートリッジ12に設ける。この専用CPUは、プリンタ本体11のCPU60からのデータ要求に基づいてトナー残量を測定し、得られたトナー残量のデータをCPU60へ送る。
【0072】
図7は、カートリッジメモリ65から読みだしたトナー残量と、今回測定したトナー残量とを比較することで、トナーを詰め替えた不適正なカートリッジかどうかを検出する例を示すものである。プリンタ本体11のカートリッジ室(図示せず)にカートリッジ12を装填するには、まずカートリッジ室の蓋を開く。カートリッジ12がカートリッジ室に完全に装填されると、カートリッジメモリ65がCPU60に接続され、また感光ドラム15と帯電ローラ16とがプリント部62の帯電回路に接続される。
【0073】
プリンタ電源がONのときには、カートリッジ室の蓋が閉じたことを検知するスイッチ(図示せず)からの信号で、CPU60はカートリッジ12がセットされたと判断する。次に、CPU60はカートリッジメモリ65の有無をチェックする。カートリッジメモリ65には、トナー残量のデータの他に、カートリッジメモリありを示すフラグが書き込まれている。CPU60は,このフラグが読みだせたときには、プリンタメーカーから提供された正規のカートリッジであると判定する。
【0074】
他方、正規のカートリッジでない場合は、カートリッジメモリ65が設けられていないことがある。このようなカートリッジでは、フラグを読みだすことができない。この正規のカートリッジでないものに対しては、トナーが詰め替えられた不適正なカートリッジと同等に扱い、CPU60は、警告表示するとともにプリント動作を禁止する。
【0075】
CPU60は、正規のカートリッジであると判定すると、カートリッジメモリ65からトナー残量のデータを読みだす。新品のカートリッジの場合には、カートリッジの製造時に、充填されたトナーの量に相当した一定のデータがカートリッジメモリ65に書き込まれている。また、使用済みのカートリッジの場合には、トナー残量測定部64で測定したトナー残量のデータがカートリッジメモリ65に書き込まれている。なお、トナー残量のデータが改ざんされると、トナーの詰め替えの事実を検出することができなくなる。そこで、データの改ざんを防止するために、暗号化したデータを使用してCPU60でこれをデコードしたり、あるいはデータの読み出しに特殊なプロトコルを使うのがよい。
【0076】
次に、CPU60は、トナー残量測定部64を作動させて、トナー室13内に貯留されているトナー14の量を測定する。CPU80は、測定した現在のトナー残量と、カートリッジメモリ65から読みだしたトナー残量とを比較し、トナー14の補充による詰め替えが行われたかどうかを判断する。
【0077】
CPU60は、現在のトナー残量が、カートリッジメモリ65から読みだしたトナー残量よりも多い場合には、トナーの詰め替えが行われた不適正なカートリッジであると判断する。また、両者が同じ場合、あるいは現在のトナー残量の方が少ない場合には、トナーの詰め替えは行われていない適正なカートリッジであると判断する。
【0078】
CPU60は、トナーの詰め替えが行われた不適正なカートリッジであると判断した場合は、トナー詰め替えであること、プリント品質が劣化すること、適正なカートリッジを装填すべきこと等の警告をする。更に、CPU60は、プリント部62のプリント動作を禁止する。このプリント動作が禁止された場合は、パソコン等からプリント要求があっても、CPU60はそれを受け付けず、したがってプリント部62のプリント動作は実行されない。
【0079】
他方、CPU60は、トナーの詰め替えが行われていない適正なカートリッジであると判断した場合は、プリント部62のプリント動作を許容する。CPU60は、パソコン等からプリント要求があると、プリント部62をシーケンス制御して記録紙21に画像や文字を記録する。このプリンタ10の正常動作中は一定枚数がプリントされる毎に、又は一定時間が経過する毎に、CPU60はトナー残量測定部64を作動させてトナー残量を測定する。得られたトナー残量は、カートリッジメモリ65に書き込まれる。
【0080】
なお、トナー残量のデータは、新しいものに更新する他に、測定日時とともにトナー残量を追加記録してもよい。こうすると、トナー残量の履歴からプリンタの稼働状況が分かるため、故障の解析や製品改良等の資料として利用することができる。
【0081】
プリンタ10の正常動作中に、トナー残量の測定値が所定値以下となったとき、好ましくはトナーがほぼ空となり、測定値が零となったときに、表示器63にトナー切れによるカートリッジの交換が表示される。なお、トナー残量の測定値が零となっても、ある程度のトナー14は残っているので、適当な枚数のプリントは可能である。
【0082】
カートリッジを交換する場合には、カートリッジ室の蓋を開いてから、空となったカートリッジ12を抜き出す。次に、新しいカートリッジからシールテープを剥がしてトナー供給口13aを開口させる。トナー排出口13aが開くと、トナー室13内のトナー14が現像ローラ17へ供給可能となる。この新しいカートリッジをカートリッジ室に装填してから、カートリッジ室の蓋を閉じると、前述したように、カートリッジメモリの有無のチェック,トナー増量のチェック等が実行される。新品の正規なカートリッジの場合には,プリンタを正常動作させることができる。
【0083】
ユーザーによっては、空となったカートリッジに対して、トナーの補充を詰め替え業者に依頼することがある。詰め替え業者は、係止爪40を係合穴56から外し、また係止爪41を係止突起57から外して、カートリッジ12を上部カートリッジ32と下部カートリッジ33とに分解する。
【0084】
カートリッジ12の分解後に各部を清掃してから、上部カートリッジ32のトナー排出口13aに、シールテープを張りつけてこれを閉鎖する。次に、上部カートリッジ32のキャップ37を外して、トナーをトナー室13内に補充する。トナーの補充後に、キャップ37を再びはめ込み、トナー室13を密閉する。詰め替え業者は、トナーの補充後に、上部カートリッジ32と下部カートリッジ33とを組み立て、この組み立てられたカートリッジ12を包装してユーザーへ発送する。
【0085】
詰め替え業者から戻されてきた不適正なカートリッジをプリンタ本体11にセットすると、前述したようにトナー増量のチェックが行われる。この場合は、カートリッジメモリ65には、トナー残量が零を表すデータが記憶されている。他方、トナー残量測定部64で測定した現在のトナー残量は、ほぼ満杯量を表すデータとなっている。したがって、現在のトナー残量の方が多いので、CPU60はトナーの詰め替えが行われた不適正なカートリッジであると判断し、警告表示するとともに、プリントを禁止する。
【0086】
プリント禁止の状態では、パソコン等からプリント要求があっても、プリンタ10はプリント動作を実行しないため、トナー詰め替えをした不適正なカートリッジは使用することができない。結果的に、ユーザーは、これ以降トナーの詰め替え依頼を断念し、プリンタメーカーから提供されている適正なカートリッジを使用することなる。これは、不適正なトナーの使用による印字品質の低下を防止し、またプリンタの故障防止に寄与する。更に、プロセスカートリッジでは、感光ドラム15等の部品が品質保証期間を経過した状態で使用されるのを防止し、それによる印字品質の低下を防ぐことができる。
【0087】
図7に示す例では、トナー残量の測定と書込みは、正常なプリント動作が行われている間に適宜行われるが、カートリッジ12をプリンタ本体11から取り出すときに、これを実行してもよい。
【0088】
図8は、カートリッジを識別するためのIDを各カートリッジに割り当てるとともに、プリンタメモリ61にIDとともにトナー残量を記憶させる例を示す。カートリッジ12のセットが検出されると、CPU60は、前述したような手順でカートリッジメモリ65の有無をチェックする。
【0089】
カートリッジメモリ65が設けられていないものは、正規のカートリッジでないと判断される。また、IDとして暗号を使用したり、あるいは特殊なプロトコルを使用することにより、正規のカートリッジ以外では、たとえカートリッジメモリ65が設けられていても、IDを読みだすことができない。これらの場合には、警告表示するとともに、プリント動作を禁止する。
【0090】
次に、読みだしたIDの照合が行われる。この照合では,まず、IDのデータフォーマットから正規のIDかどうかをチェックする。ID自体のチェック後に、このIDがプリンタメモリ61に記憶されているかどうかを検査する。これは、一度使用されたカートリッジでは、そのIDとトナー残量とがプリンタメモリ61に記憶されているから、ID照合によって、新品のカートリッジであるか、あるいは前にプリンタ本体11にセットしたことがあるカートリッジかどうかが識別される。
【0091】
もし、新品のカートリッジの場合には、IDとともに、トナー残量のデータとして一定値をプリンタメモリ61に書き込む。この一定値は、製造時にトナー室13内に充填されたトナーの量に相当している。このデータの書込み後に、図7の例で説明したように、プリンタ10が正常動作する。また、この正常動作中に、適宜トナー残量を測定し、プリンタメモリ61内のトナー残量のデータを更新又は追加記録する。なお、前述したように、トナー切れが表示されたときは、新品のカートリッジと交換される。
【0092】
前述したID照合によって、一度使用したことがあるカートリッジであると判定されると、トナー残量測定部64を作動してトナー室13内のトナー残量を測定する。プリンタメモリ61には、前に使用したカートリッジのIDと前回測定したトナー残量とが記憶されているから、カートリッジメモリ65から読みだした1Dに基づき、トナー残量のデータをプリンタメモリ61から読みだす。
【0093】
CPU60は、プリンタメモリ61から読みだしたトナー残量と、今回測定したトナー残量とを比較し、トナー残量が増加している場合には、トナーが詰め替えられた不適正なカートリッジであると判断し、警告表示とプリントの禁止をする。他方、トナー詰め替えで行われていない適正なカートリッジであると判断すると、プリンタ10は正常動作する。
【0094】
図9は、カートリッジをプリンタ本体から取り出す時に、トナー残量をプリンタメモリ61に書き込むようにした例を示すものである。このトナー残量の書込み以外は、図8に示すものと同じであるため、カートリッジの取り出しについてのみ説明する。
【0095】
プリンタ本体11からカートリッジ12を取り出すときは、カートリッジ室の蓋を開き、次にカートリッジロックレバーを操作してカートリッジのロックを解除する。この蓋の開き動作又はカートリッジロックレバーが操作されたことをスイッチ等で検出することで、カートリッジの取り出し準備操作がされたことを検知する。このスイッチからの信号をCPU60が受け取ると,トナー残量測定部64を作動させてトナー残量を測定する。得られたトナー残量は、IDに対応させてプリンタメモリ61に書き込まれる。
【0096】
また、正常動作中は、適宜にトナー残量を測定しているから、このトナー残量のデータをCPU60のレジスタに一時記憶しておき、カートリッジの取り出し準備操作が行われたときに、この一時記憶しておいたトナー残量のデータをプリンタメモリ61に書き込んでもよい。更に、カートリッジの取り出し準備操作でトナー残量をメモリに記憶する仕方は、図7に示すものに対しても利用することができる。
【0097】
前述したIDを使用する例では、トナー詰め替えをした不適正なカートリッジであっても、別のプリンタにセットすると、このプリンタにとっては新規なIDであるため、新品のカートリッジであると判断され、正常なプリント動作が実行されることになる。この問題は、IDの他に、使用したことがあることを表す使用履歴情報を併用することで防止することができる。
【0098】
使用履歴情報としては、カートリッジの取り出し情報や、各プリンタに与えられているプリンタID(例えば製造番号)等がある。これらの情報がカートリッジメモリに書き込まれているかどうかによって、新品のカートリッジか否かを判断することができる。なお、プリンタIDの場合には、カートリッジをプリンタ本体にセットしたとき、又はこれから取り出すときに、カートリッジメモリに書き込まれる。
【0099】
図10は、使用履歴情報として、カートリッジの取り出し情報を用いる例を示す。図9の例と同様に、トナー切れとなったカートリッジ12を取り出す際に、トナー残量の測定が行われ、得られたトナー残量のデータがプリンタメモリ61に書き込まれる。また、トナー残量が零の場合には、プリンタ本体11からカートリッジ12が取り出されたことを表すカートリッジ取り出し情報がカートリッジメモリ65に書き込まれる。
【0100】
この取り出し情報が書き込まれたカートリッジ12にトナー14を詰め替えてから、前と同じプリンタ本体11にセットすると、前述したようにカートリッジメモリ65の有無のチェック,情報読み出しの可否のチェックが行われる。同じプリンタ本体の場合には、図9の例と同様に、ID照合によって使用済みのカートリッジであると判断されるから、トナー増量のチェックが行われ、これによって不適正なカートリッジであることが検出される。なお、トナー増量のチェックをせずに、取り出し情報の有無をチェックすることで、不適正なカートリッジか否かを検出してもよい。
【0101】
トナー詰め替えをした不適正なカートリッジ12を別のプリンタ本体にセットすると、ID照合では新しいカートリッジであると判定される。しかし、このカートリッジでは、そのカートリッジメモリ65に取り出し情報が記憶されているから、この取り出し情報の有無をチェックすることで、不適正なカートリッジであることが検出され、警告表示とプリント動作の禁止とが行われる。勿論、取り出し情報がないものは、新品の正規なカートリッジであると判定され、前述したようにIDの書き込み後に、プリンタが正常動作する。
【0102】
図11は、トナー残量測定部の別の例を示すものである。天板38の内側に、音源70と、集音器71と取り付けられている。トナー残量の測定時には、音源70は、トナー14に向けて超音波を発生する。この超音波の一部は、トナー14の表面で反射して集音器71で検出される。
【0103】
音源70で超音波を発生してから、集音器71で超音波を検出するまでの時間を測定する。この時間は、トナー14の残量が多いほど短いから、この時間からトナー残量を求めることができる。具体的には、時間とトナー残量とのテーブルを準備し、これを参照して時間をトナー残量に変換するのがよい。
【0104】
トナー残量測定部は、時間測定やトナー残量の算出をするために、専用のCPU(図示せず)を持っている。また、前記テーブルを使用する場合は、テーブルメモリも備えている。勿論、専用のCPUを省略し、プリンタ本体11のCPU60で時間測定やトナー残量算出をしてもよい。
【0105】
トナー残量測定部は、カートリッジ12に内蔵されており、この外面に設けた電気接点を介してプリンタ本体11にトナー残量のデータを送る。この超音波式のトナー残量測定部は、トナー14が音源70や集音器71に付着していても、これに影響されることなく、トナー残量を測定することができる。
【0106】
図12は,記憶媒体(CD,フロッピー,ICメモリ,MO等)に格納された詰め替えカートリッジの検出・使用禁止のプログラムをプリンタ本体のCPU(コンピュータ)にインストールする例を示す。プリンタ本体80は、パソコン81に接続されており、バソコン81から送られた文字データや画像データを記録紙にプリントする。
【0107】
図7〜図10のフローチャートに示すような詰め替えカートリッジの検出・使用禁止の手順を実行したり、又は機能や手段を実現するためプログラムがプリンタ本体80に与えられていない場合には、このプリンタ本体80では、トナーを詰め替えたカートリッジの使用を阻止することができない。このようなプリンタ本体80に対しては、詰め替えカートリッジの検出・使用禁止のプログラムをインストールすることが必要である。
【0108】
記憶媒体例えばCD82には、例えば図7に示すフローチャートに示す機能を実現するためのプログラムが記憶されている。このCD82は、パソコン81のCDドライブ(図示せず)にセットされる。バソコン81は、CD82に記憶されたプログラムを読み出し、プリンタ本体80のハードディスク83に書き込む。
【0109】
プリンタ本体80のCPU84は、ハードディスク83に書き込まれたプログラムを実行することで、前述したようにトナーを詰め替えたカートリッジを検出し、そして警告及び使用禁止をする。
【0110】
入力装置85は、スキャナー,デジタルカメラ等からの画像データや文字データを入力するためのものである。ROM86は、プリント部87のプリント動作を制御するためのプログラムや、画像処理するためのプログラム等が格納されている。また、RAM87には、データを一時的に記憶するために使われる。
【0111】
なお、CD82をプリンタ本体80に直接にセットして、必要なプログラムをプリンタ本体80に書き込んでもよい。更には、CDをプリンタ本体80にセットしたまま使用し、このCDから読み出したプログラムを実行して、トナー詰め替えカートリッジの判定等をしてもよい。
【0112】
使用済みの空のカーリッジでは、カートリッジの販売業者を介して、プリンタメーカーに回収されてリサイクルが行われる。プリンタメーカーは、カートリッジを分解し、清掃してから各部品を検査する。正常な部品は再使用し、故障や使用期間が経過した部品は素材に戻して再利用する。
【0113】
また、各部品が正常で、カートリッジ全体がそのまま使用できるものは、純正のトナーを充填することができる。この場合には、カートリッジメモリに、充填したトナー量に応じたデータを書き込み、またカートリッジメモリにIDを記憶するものでは、新しいIDを書き込む。なお、取り出し情報を使用する場合は、カートリッジメモリからこの情報を消去する。この純正なトナーを充填したものは、適正なカートリッジとして取り扱われる。また、IDやトナー残量の情報に暗号を使用していたり、情報の読み出しや書込みの保護を図っているときは、プリンタメーカーは、暗号を入力したり、あるいは保護を解除する秘密コマンドを入力することで、情報の読み出しや書換えを行う。
【0114】
トナーの増量があった場合には、トナーの詰め替えカートリッジである判定しているが、トナー14は自由に移動する粉体であること、トナー残量測定部64による測定ミスがあること等を考慮すると、増量が2倍以上のときにトナーの詰め替えであると判定するのがよい。
【0115】
また、カートリッジメモリだけが故障していることがある。このような場合には、カートリッジ全体を廃棄するよりは、カートリッジメモリだけを交換した方が都合がよい。そこで、カートリッジメモリは、カートリッジから取外しができるようにするのがよい。
【0116】
前述した例では、プリンタ電源を入れた状態で、カートリッジが装填されたときに、トナー詰め替えのチェックをしている。カートリッジを装填してから電源を入れると、トナー詰め替えのチェックが行われない。そこで、プリンタ電源を入れたときにもチェックをするのがよい。合理的には、プリンタ電源が入った状態でカートリッジ装填がされた時、カートリッジが装填された状態でプリンタ電源を入れたときに、トナー詰め替えのチェックをするのがよい。勿論、トナー詰め替えのチェックは、適宜なとき例えばプリンタ動作中でのトナー残量測定時にしてもよい。
【0117】
前述した例は、プロセスカートリッジであるが、本発明は、トナーだけを収納したトナーカートリッジに対しても利用することができる。更に、本発明を、インクジェットプリンタ用のインクを収納したインクカートリッジ,ドットプリンタ用のインクリボンを収納したリボンカートリッジ,サーマルプリンタ用のインクリボンを収納したリボンカートリッジ等に適用してもよい。また、本発明は、プリンタの他に、ファクシミリ,複写機等の画像形成装置にも適用される。
【0118】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明は、前回測定した消耗品の残量と、今回測定した残量とを比較して、消耗品が増量されているかどうかを判断するものであるから、消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジを確実に検出することができる。
【0119】
また、本発明は、消耗品を実測しているから、その残量を正確に測定することができる。更に、消耗品詰め替えカートリッジを検出したときに、警告表示をしたり、プリントを禁止するから、消耗品が詰め替えられた不適正なカートリッジの使用を確実に阻止することができる。
【0120】
更に、本発明は、記憶手段に前回測定時の残量の情報を書き込んでいるから、電磁ブレーキのように簡単に修理されて再使用が可能な状態にされることはない。この情報を暗号化したり、特殊な読み出し手順を採用したりして情報の保護を図れば、更に消耗品詰め替え防止が確実となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
電子写真式プリンタの一例を示す概略図である。
【図2】
上部カートリッジの斜視図である。
【図3】
下部カートリッジの斜視図である。
【図4】
上部カートリッジと下部カートリッジとを組み立てたカートリッジの断面図である。
【図5】
電子写真式プリンタの電気構成を示すブロック図である。
【図6】
トナー残量測定部の一例を示す断面図である。
【図7】
カートリッジメモリにトナー残量を書き込むようにした例を示すフローチャートである。
【図8】
カートリッジメモリにIDを記憶し、プリンタメモリにトナー残量を書き込むようにした例を示すフローチャートである。
【図9】
カートリッジの取り出し操作で、トナー残量をプリンタメモリに書き込む例を示すフローチャートである。
【図10】
カートリッジ取り出し情報をカートリッジメモリに書き込む例を示すフローチャートである。
【図11】
超音波測距方式のトナー残量測定部の一例を示す断面図である。
【図12】
CDに格納された詰め替えカートリッジの検出・使用禁止のプログラムをプリンタ本体にインストールする例を示す説明図である。
【符号の説明】
10 プリンタ
11 プリンタ本体
12 カートリッジ
13 トナー室
14 トナー
32 上部カートリッジ
33 下部カートリッジ
75 ライン状光源
76 ライン状センサー
80 プリンタ本体
82 CD
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-29 
出願番号 特願平11-280464
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G03G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 北川 清伸  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 伏見 隆夫
井出 和水
登録日 2003-02-07 
登録番号 特許第3396191号(P3396191)
権利者 富士写真フイルム株式会社
発明の名称 不適正カートリッジの検出方法及び装置及びシステム並びに記憶媒体及びカートリッジ  
代理人 小林 和憲  
代理人 飯嶋 茂  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 小林 和憲  
代理人 飯嶋 茂  
代理人 大塚 康弘  

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