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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1131704
審判番号 不服2002-4551  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-15 
確定日 2006-02-17 
事件の表示 平成7年特許願第13428号「ノイズ抑制型電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年8月9日出願公開、特開平8-204380〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1手続の経緯
本願は、平成7年1月31日の出願であって、平成14年2月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年3月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年4月12日付で手続補正がなされたものである。

2平成14年4月12日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年4月12日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1) 本願補正発明について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
【請求項1】
「誘導性ノイズを放射する能動素子を実装した実装体部と、前記実装体部全体を包んで収納する収納体とを含むノイズ抑制型電子装置において、前記実装体部と前記収納体との間には、支持体及び絶縁性軟磁性体から成る電磁干渉抑制体が設けられ、前記電磁干渉抑制体における前記絶縁性軟磁性体は、磁気異方性が出現して高周波領域において磁気共鳴に基づく複素透磁率の増大化が生じて前記誘導性ノイズのうちの高周波領域のものを抑制するように、有機結合剤と該有機結合剤中に分散された偏平状又は針状,或いはそれらが混在する形状の軟磁性体粉末とから成ることを特徴とするノイズ抑制型電子装置。」と補正された。
上記補正は、新規事項を追加するものではなく、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「絶縁性軟磁性体」を「電磁干渉抑制体における絶縁性軟磁性体」との限定及び「誘導性ノイズ」の抑制について「誘導性ノイズのうちの高周波領域のもの」を抑制するとの限定を付加したものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2) 引用刊行物と記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物は、以下のとおりである。
[刊行物1]実願平3―57706号(実開平5―4592号)の
CD―ROM
[刊行物2]特開平7-22771号公報
[周知例1]特開昭63-98198号公報
なお、下記記載中の下線は、いずれも当審で加入し、〈 〉内には、 本願発明で相当している事項の用語を示す。

[刊行物1]【要約】には、
「【目的】高周波数帯域用電子機器の内部回路に設けられた電波遮蔽用の金属シールド函内部における電波の反射現象を抑止することにより、回路破壊やノイズの発生を防止せんとするものである。
【構成】発振回路及び/又は増幅回路等の電波発生源を外被する樹脂絶縁層とこれを外装する電波遮蔽用の金属シールド函との間に、反射防止材としての電波吸収体を部分的にあるいは全体にわたって介在させたことを特徴としている。」と記載され、上記下線部分には、
「誘導性ノイズ(不要電磁波)を放射する発振回路及び/又は増幅回路等の電波発生源〈能動素子〉を実装した実装体部と、前記実装体部全体を包んで収納する金属シールド函〈収納体〉とを含むノイズ抑制型電子装置において、前記実装体部と前記金属シールド函〈収納体〉との間には、電波吸収体〈電磁干渉抑制体〉が設けられ、誘導性ノイズのうちの高周波領域のものを抑制する」構成が示されていることになる。

【実用新案登録請求の範囲】の【請求項5】には、
「電波吸収体として、フェライト粉、カーボン粉又は金属粉のうちから選んだ1種又は2種以上を合成樹脂系バインダー又はゴム系バインダーに分散配合した材料を用いてなる請求項1,2,3又は4記載の高周波数帯域用電子機器内部回路の反射防止構造。」と記載され、上記下線部分には、
「合成樹脂系バインダー〈有機結合剤〉と該有機結合剤中に分散された粉末から成るノイズ抑制型電子装置」が示されていることになる。
[刊行物2]【要約】には、
「【目的】軽量で、自由に可撓性を与えることも可能な、磁気シールド効果の高いシート状磁気シールド材料及びその製造方法を提供すること。
【構成】配向された、形状異方性を有する軟磁性金属粉を含む磁気シールド層を備えたシート状磁気シールド材料。」と記載され、
【0014】には、
「〔磁気シールド層の具体的構成〕本発明の磁気シールド材料を構成する磁気シールド層中に含有させる軟磁性金属としては、偏平状、針状、柱状等の形状異方性を有するセンダスト(鉄を主体とし、Al約5%、ケイ素約10%、炭素、マンガン、酸素等を微量含む鉄系磁性合金)、パーマロイ、鉄含有アモルファス金属等の高透磁率、低保磁力すなわち軟磁性の金属粉が使用される。また、バインダー成分としては、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂が使用される。また、バインダー成分の種類、ガラス転移温度、分子量等を適宜選択することによって、硬度、可撓性等の種々の機械的特性等を満足し得る磁気シールド層を作成することが可能である。実用上望ましいバインダー成分のガラス転移温度は-40℃〜200℃、分子量は500〜1000000である。」と記載され、
【0019】には、
「〔支持体〕本発明のシート状磁気シールド材料の製造方法において使用される支持体は、その上にシート状磁気シールド材料を形成した後に、普通はその支持体から磁気シールド材料を剥離して、シート状磁気シールド材料としてできるだけ小体積で、軽量な状態で使用することになる。従って、この支持体は剥離性のある、乾燥硬化後シールド層が容易に剥離できるものであれば特に制限はない。例としてポリエステル、ポリカーボネート、テフロン、ポリエチレン等のプラスチックフィルムや、シリコン処理された剥離紙等、必要に応じて離型処理を施した金属シート、布、網等が挙げられる。勿論、支持体が強度上等の理由で必要な場合は支持体からシート状磁気シールド材料を剥離せずに使用することも良い。」と記載されている。

上記軟磁性の金属粉は、各種樹脂をバインダーとすることにより、絶縁性の軟磁性体となる。よって、上記下線部分には、
「支持体及び絶縁性軟磁性体から成るもので、絶縁性軟磁性体は……偏平状又は針状,或いはそれらが混在する形状の軟磁性体の粉末」が示されていることになる。

[周知例1]
電磁波遮蔽シ-ト及びその製造方法に関する発明で、
[2頁左下欄15行〜右下欄3行]には、
「本発明は、主として電界成分の反射損失を利用することを目的とする導電性層と、主として磁界成分の吸収損失を利用することを目的とする透磁性層を積層して構成されるものであつて、合成樹脂に導電性フイラ-0.5〜30体積%を分散せしめてなる導電性層の少なくとも片面に合成樹脂に透磁性フイラ-10〜70体積%を分散せしめてなる透磁性層を積層してなる電磁波遮蔽シ-トである。」と記載され、
[3頁右上欄7行〜11行]には、
「一方、透磁性層を形成するために用いる透磁性フイラーとしては、パーマロイ、ミユーメタル、Moパーマロイスーパーマロイ、センダスト等の合金、Mn-Zn、Ni-Zn系のフエライトの粉体をあげることができ、」と記載され、
[4頁右上欄]の第1表には、100,500,1000MHzにおける磁界に対する遮蔽効果が示されている。

したがって、上記下線部分と第1表には、センダスト、パーマロイの粉末〈軟磁性体粉末〉を合成樹脂〈有機結合剤〉に分散させた絶縁性軟磁性体を交番磁界中でのシールド材〈電磁干渉抑制体〉として用いれば磁界成分吸収損失現象が生ずることが示されている。

[周知例2]特開昭55―157300号公報
電磁遮へい吸収材に関する発明で、
[特許請求の範囲]には、
「(1) 非導電性粘結物質と導電性箔状粒子との混練成形材であって、上記箔状粒子が成形材表面に平行に配向していることを特徴とする電磁遮へい吸収材。
《中略》
(5) 箔状粒子が磁性材であることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の電磁遮へい吸収材。」と記載され、
[2頁左下欄2行〜右下欄1行]には、
「本発明を以下に詳細に説明する。非導電性の粘結物質としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン《中略》等の物質が使用される。導電性箔状粒子には、フレーク状の黒鉛粉末粒子、《中略》さらに高透磁性磁性材料のパーマロイ、アルパームの箔状粒子、センダストの箔状粒子等が用いられる。」と記載され、
[3頁右上欄7行〜左下欄9行]には、
「上記で得られる電磁遮へい吸収材では、第2図に示したように配向した箔状粒子2bが丁度金属薄板を積層したのと同様の積層構造をしているので、高周波に対して渦電流損を生じさせず、しかも箔状粒子2bの導電性により電磁遮へいを可能とするのである。ここで、箔状粒子に黒鉛粉末粒子を用いるとき、黒鉛粉末自体が箔片状であるので箔状にする加工を必要とせず取扱いが仕易い利点がある。また高周波に対して効果的である。あまり高くない周波に対しては、高導電性金属の箔状粒子を用いることができる。さらに磁気の遮へい吸収に重点をおくときには、磁性材、特に高透磁率磁性材の箔状粒子を用いる。
以上説明した非導電性粘結物質と導電性箔状粒子との混練物の電磁遮へい吸収材は、金属板に比べるとその電気抵抗は高いものといわなければならない。従って、高周波に対する電磁遮へいには有効である」と記載されている。

よって、上記下線部分には、センダスト、パーマロイの箔状粒子〈偏平状の軟磁性体粉末〉と非導電性粘結物質〈有機結合剤〉とを混練成形した絶縁性軟磁性体を高周波領域での電磁遮へい吸収材として用いる点が示されている。

(3) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「誘導性ノイズを放射する能動素子を実装した実装体部と、前記実装体部全体を包んで収納する収納体とを含むノイズ抑制型電子装置において、前記実装体部と前記収納体との間には、電磁干渉抑制体が設けられ、誘導性ノイズのうちの高周波領域のものを抑制するように、有機結合剤と該有機結合剤中に分散された粉末から成るノイズ抑制型電子装置」である点で一致し、
以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点1>
本願補正発明においては、電磁干渉抑制体が、支持体及び絶縁性軟磁性体から成るもので、絶縁性軟磁性体は……偏平状又は針状、或いはそれらが混在する形状の軟磁性体の粉末からなるものであるのに対し、刊行物1に記載された電波吸収体〈電磁干渉抑制体〉には、明確な支持体が無く、粉末が軟磁性体であるとの記載がない点
<相違点2>
本願補正発明においては、絶縁性軟磁性体の粉末は、磁気異方性が出現して高周波領域において磁気共鳴に基づく複素透磁率の増大化が生じるものであるのに対し、刊行物1に記載された電波吸収体〈電磁干渉抑制体〉は当該構成を有するものではない点

これらの相違点について検討する。
<相違点1>について
相違点1の「支持体及び絶縁性軟磁性体から成り、……絶縁性軟磁性体は、偏平状又は針状,或いはそれらが混在する形状の軟磁性体粉末」からなるものは、刊行物2に示されている。
そして、センダスト、パーマロイの粉末〈軟磁性体粉末〉を合成樹脂に分散させた絶縁性軟磁性体を交番磁界中でのシールド材〈電磁干渉抑制体〉として用いれば、磁界成分吸収損失現象が生ずることは、周知例1に記載され、センダスト、パーマロイの箔状粒子〈偏平状の軟磁性体粉末〉と合成樹脂とを混練成形した絶縁性軟磁性体を高周波領域での電磁遮へい吸収材として用いる点も周知例2に記載されているから、軟磁性体粉末を高周波領域での電波吸収体〈電磁干渉抑制体〉として用いることは周知の技術事項であるといえる。
よって、このような周知の技術事項を勘案すると、刊行物2に示された支持体と、偏平状又は針状軟磁性体粉末とを、刊行物1のような高周波領域での電波吸収材料〈電磁干渉抑制体〉の支持体及び粉末として用いることは、当業者であれば容易に想到し得ることといわざるを得ない。
<相違点2>について
本願実施例と同じものである刊行物2に記載の偏平状又は針状センダスト、パーマロイを、刊行物1に記載の発明における高周波領域で用いた場合には、「磁気異方性が出現して高周波領域において磁気共鳴に基づく複素透磁率の増大化が生じ」るのは当然いえることであるから、本願補正発明でいう「磁気異方性が出現して高周波領域において磁気共鳴に基づく複素透磁率の増大化が生じ」るのは、刊行物2に記載の軟磁性体粉末を刊行物1に記載の発明に用いることによって当然生ずる現象であって、刊行物2に記載の軟磁性体粉末を刊行物1に記載の発明に用いた場合の現象作用を表現したに過ぎず、また、このような現象自体も周知例1及び周知例2に記載のものにおいて生じていたものと同じであるから、結局、相違点2も実質的には上記相違点1と同じものに帰し、当業者が容易に想到できたものである。
そして、本願補正発明の効果は、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項並びに周知例1,2に記載の技術事項から当業者が予測できる範囲のものであって、格別意外性のあるものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項並びに周知例1,2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 請求人の主張について
請求人は、引用例2(刊行物2)に記載の軟磁性体粉末を高周波領域での吸収体として用いる点が周知ではないと主張しているが、前記「(3) 対比・判断」で述べたように絶縁性軟磁性体を高周波領域での電波吸収体として用いること自体は、前記周知例2に記載があるように周知の技術事項であるから、請求人の前記主張は採用することができない。
(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3本願発明について
(1) 本願発明
平成14年4月12日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年1月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたものと認められるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。
【請求項1】
誘導性ノイズを放射する能動素子を実装した実装体部と、前記実装体部全体を包んで収納する収納体とを含むノイズ抑制型電子装置において、前記実装体部と前記収納体との間には、支持体及び絶縁性軟磁性体から成る電磁干渉抑制体が設けられ、前記絶縁性軟磁性体は、磁気異方性が出現して高周波領域において磁気共鳴に基づく複素透磁率の増大化が生じるように有機結合剤と該有機結合剤中に分散された偏平状又は針状,或いはそれらが混在する形状の軟磁性体粉末とから成ることを特徴とするノイズ抑制型電子装置。
(2) 引用刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等及びその記載事項は、前記2(2)に記載したとおりである。

(3) 判断
本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から「絶縁性軟磁性体」の限定事項である「電磁干渉抑制体における絶縁性軟磁性体」と「誘導性ノイズ」の限定事項である「誘導性ノイズのうちの高周波領域のもの」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに前記した他の構成要件を付加して限定した本願補正発明が、前記2(3) に記載したとおり、
刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項並びに周知例1,2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項並びに周知例1,2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(4) むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項並びに周知例1,2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、
本願の請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-13 
結審通知日 2005-12-14 
審決日 2006-01-04 
出願番号 特願平7-13428
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之川内野 真介柴沼 雅樹  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 鈴木 久雄
見目 省二
発明の名称 ノイズ抑制型電子装置  
代理人 山本 格介  
代理人 池田 憲保  

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