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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1131929
審判番号 不服2002-25075  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-26 
確定日 2006-02-23 
事件の表示 平成9年特許願第30593号「自動車のサイドストラクチャ構造」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月25日出願公開、特開平10-226363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成9年2月14日の出願であって、原審において、平成14年2月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、請求人(出願人)より平成14年4月22日付で意見書の提出と共に手続補正がされたが、平成14年11月21日付けで拒絶査定がなされた。この査定を不服として、平成14年12月26日に本件審判請求がなされると共に、平成15年1月23日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年1月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年1月23日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「前車輪と対向するサイドシルの前端部に設けられ、且つ、衝突により後退した上記前車輪を受け止める鉛直状の受座面と、上記受座面から後方の上記サイドシルの前端部に向かって延び同前端部の周壁に溶接される支承部とを有する前車輪後退抑止部材を備えたことを特徴とする自動車のサイドストラクチャ構造。」
と補正された。
上記の補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由において引用された、本件特許出願前に頒布された刊行物である、特開平7-267148号公報(以下、「引用例」という。)には、「自動車の下部車体構造」に関して、図7,8とともに次の事項が記載されている。
(イ)「図7に示される如く、この自動車の下部車体構造では、車体70の下部両側に車両前後方向に延設されるロッカ(サイドシルとも言う)72が配設されており、ロッカ72の前端部上面には、フロントピラー74が立設されている。……ロッカ72の前端部は、トルクボックス80の前端面から車両前方へ突出し衝撃吸収部82とされており、衝突時には、タイヤを介して車体70に加わる衝撃を衝撃吸収部82の圧縮変形によって吸収するようになっている。」(段落【0003】)
(ロ)「……この自動車の下部車体構造では、図8に示される如く、衝突時に、フロントタイヤ84と衝撃吸収部82とが当接……」(段落【0004】)

図7,8の記載をみると、衝撃吸収部82の前端面は、鉛直状の受座面であると認められるから、前記記載事項(イ)、(ロ)及び図7,8の記載を総合すると、引用例には、
「フロントタイヤ84と対向するロッカ72の前端部に一体的に設けられ、且つ、衝突により後退した上記フロントタイヤ84を受け止める鉛直状の受座面を有する衝撃吸収部82を備えた自動車の下部車体構造」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「フロントタイヤ84」、「ロッカ72」、「下部車体構造」は、それぞれ、本願補正発明の「前車輪」、「サイドシル」、「サイドストラクチャ構造」に相当し、また、引用発明の「衝撃吸収部82」は、後退したフロントタイヤ84を受け止める働きをもしているから、この機能に照らし、本願補正発明の「前車輪後退抑止部材」に対応することが明らかである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「前車輪と対向するサイドシルの前端部に設けられ、且つ、衝突により後退した上記前車輪を受け止める鉛直状の受座面を有する前車輪後退抑止部材を備えた自動車のサイドストラクチャ構造」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
前車輪後退抑止部材について、本願補正発明では、受座面から後方のサイドシルの前端部に向かって延び同前端部の周壁に溶接される支承部を有しているのに対し、引用発明では、衝撃吸収部82(前車輪後退抑止部材)がロッカ72(サイドシル)の前端部に一体的に設けられている関係上、支承部を必要とせず、したがって、このような支承部に係る構成を具備していない点。

4.当審の判断
そこで、前記相違点について以下に検討する。
引用発明も、本願補正発明と同じく、自動車の衝突時に前車輪を相手車両等衝突物とロッカ72とで挾むようにし、前車輪を衝撃エネルギー吸収手段として機能させるものであって、車体前部の変形量を低減させ、乗員の生存空間を確保するようにした自動車のサイドストラクチャ構造を提供している、といえるものである。更に、引用発明の衝撃吸収部82(前車輪後退抑止部材)は、自動車の衝突時に後退変位した前車輪を鉛直状の受座面で速やかに受け、受座面で受けた荷重は、衝撃吸収部82がロッカ72(サイドシル)の前端部に一体的に設けられているので、ロッカ全体に伝えられることが明らかであって、これにより前車輪の更なる後退を抑止するものと認められる。
そうすると、引用発明は、支承部を有するようにした本願補正発明と技術的意味において基本的に変わるところはない。しかも、別々の役割を担う複数の部材を溶接によって一体化すること自体は、技術分野を問わない周知慣用の技術常識というべきものであるから、引用発明のように、衝撃吸収部82(前車輪後退抑止部材)とロッカ72(サイドシル)という、別々の役割を担う部材を始めから一体化しているものに替えて、本願補正発明のように、支承部を受座面から後方のサイドシルの前端部に向かって延び同前端部の周壁に溶接し、この支承部を介して前車輪後退抑止部材とサイドシルとを接合一体化するようにした点に格別の創意を見出すことができない。
そして、本願補正発明により得られる効果も、周知慣用の技術常識をも考慮することにより、引用発明から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、周知慣用の技術常識をも考慮することにより、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成15年1月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成14年4月22日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「前車輪と対向するサイドシルの前端部に設けられ、且つ、衝突により後退した上記前車輪を受け止める鉛直状の受座面と、上記受座面から上記サイドシルに向かって延び同サイドシルに結合される支承部とを有する前車輪後退抑止部材を備えたことを特徴とする自動車のサイドストラクチャ構造。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明の構成事項を全て含むと共に、当該発明の構成事項の一部に更に限定を施している本願補正発明が、前記【2】3.以下に記載したとおり、周知慣用の技術常識をも考慮することにより、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、周知慣用の技術常識をも考慮することにより、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-13 
結審通知日 2005-12-20 
審決日 2006-01-10 
出願番号 特願平9-30593
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B62D)
P 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 大野 覚美
柴沼 雅樹
発明の名称 自動車のサイドストラクチャ構造  
代理人 本多 章悟  
代理人 樺山 亨  

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