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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1132369
審判番号 不服2003-14627  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-30 
確定日 2006-03-09 
事件の表示 特願2000-385490「セキュリティ監視診断サービスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月28日出願公開、特開2002-185456〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成12年12月19日の出願であって、平成15年5月23日に手続補正がされたが、同年6月26日付けで拒絶査定され、同年7月30日に審判請求がなされるとともに、同年8月29日に手続補正がされたものである。

2.平成15年8月29日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月29日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1が次のように補正された。

(補正前)
「【請求項1】 監視装置と、セキュリティセンタ用コンピュータと、遠隔診断装置と、からなり、監視診断対象のクライアントサーバシステムと該クライアントサーバシステムのネットワーク及びWAN等のネットワークを介して情報を送受して、監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ監視診断を行い、かつ、システム管理者用コンピュータに監視診断結果を報告するセキュリティ監視診断サービスシステムにおいて、
監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ診断を行う機能、不正アクセス監視を行う機能、ウィルス監視を行う機能、ファイアウォール又はVPN構築を行う機能、又はファイアウォール運用監視を行う機能、を有することを特徴とするセキュリティ監視診断サービスシステム。」

(補正後)
「【請求項1】 監視装置と、セキュリティセンタ用コンピュータと、遠隔診断装置とからなり、WAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムと情報を送受して、クライアントサーバシステムのセキュリティ監視診断を行い、かつ、システム管理者用コンピュータに監視診断結果を報告するセキュリティ監視診断サービスシステムにおいて、
前記監視装置はWAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムのネットワークに接続されており、そして、監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ診断を行う機能、不正アクセス監視を行う機能、ウィルス監視を行う機能、ファイアウォール又はVPN構築を行う機能、又はファイアウォール運用監視を行う機能を有することを特徴とするセキュリティ監視診断サービスシステム。」

上記補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項である「監視装置」について、「前記監視装置はWAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムに接続されており、」と限定するものである。また、補正前の発明の「監視診断対象のクライアントサーバシステムと該クライアントサーバシステムのネットワーク及びWAN等のネットワークを介して情報を送受」する点が、「WAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムと情報を送受」すると補正されたが、これは上記限定に伴うものであり、情報の送受に関して「該クライアントサーバシステムのネットワーク及びWAN等のネットワークを介して」の点は補正後の発明に実質的に含まれている。
したがって、請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)引用例および引用発明
原査定の拒絶の理由に引用した、本件出願前の刊行物である社団法人電気通信協会発行のNTT技術ジャーナル第12巻第4号の77〜79頁に掲載された「ネットワークセキュリティサービス(NetProtect)を提供」(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の記載がある。

「インターネットの急速な普及、行政や商取引などのオンライン化の進展に伴い、インターネットや電話網を介した不正アクセスが急速に増加の兆しをみせてきています(図1).
一方,これらの不正アクセスはグローバル化し,企業や国家の垣根を越えて影響範囲が拡張する傾向にあるため,不正アクセスへの対策実施が企業等の社会的責任ともなってきています.
このような状況を踏まえ,NTT-ATではこれまで培ってきたLAN,電話網などの構築技術やセキュリティ技術を活かし,セキュリティの診断からポリシ策定,ネットワークの設計・構築,セキュリティポリシに基づく設計・運用の監査や不正侵入監視までを総合的に行うネットワークセキュリティサービス「NetProtect」を提供しています.」(77頁左欄15行〜中欄8行)
「NetProtectのサービスの概要
NetProtectは,セキュリティの診断から運用監視まで5つのサービスで構成されています(図3).診断,監査,監視については,米ISS社やAXENT社等の市販ツールに独自ツールを組み合せて使用しています.以下に各サービスの概要を紹介します.
■セキュリティ診断
お客さまのネットワークにおけるセキュリティの脆弱さを,インターネットあるいは電話網経由で外部から診断します(図4).
(1) インターネット経由診断
インターネットに接続されたWebサーバや電子メールサーバ等の外部接続ポイントのセキュリティレベルを検査します.
・・・(中略)・・・
■セキュリティ監視
ネットワークシステムが外部から不正アクセスを受けていないか,以下の2通りの手法で監視します.不正アクセス検出時は,あらかじめ決められたアクション(電子メール通知等)で対応します.
(1) ネットワーク監視
インターネットやリモートアクセスポイント経由のパケットを監視し,不正アクセスをリアルタイムに検出します.
(2) サーバ監視
各種サーバ類のシステムログやファイルを監視・分析し,不正アクセスをリアルタイムに検出します.」(78頁右欄7行〜79頁右欄21行)

引用例のネットワークセキュリティサービスは、そのシステム構成が明らかではないが、監視機能、遠隔診断機能を有することから監視装置、コンピュータ、遠隔診断装置を備え、監視・診断結果を報告することは明らかである。また、引用例のネットワークセキュリティサービスの対象となるネットワークシステムはインターネットに接続されてサーバを有するものであるから、WAN等のネットワークに接続されたクライアントサーバシステムが含まれることは明らかである。
したがって、技術常識を参酌すれば、引用例には、「監視装置と、コンピュータと、遠隔診断装置とからなり、WAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムと情報を送受して、クライアントサーバシステムのセキュリティ監視診断を行い、かつ、監視診断結果を報告するネットワークセキュリティサービスシステムにおいて、監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ診断を行う機能、および、不正アクセス監視を行う機能を有することを特徴とするネットワークセキュリティサービスシステム」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、「監視装置と、コンピュータと、遠隔診断装置とからなり、WAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムと情報を送受して、クライアントサーバシステムのセキュリティ監視診断を行い、かつ、監視診断結果を報告するネットワークセキュリティサービスシステムにおいて、監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ診断を行う機能、又は、不正アクセス監視を行う機能を有することを特徴とするネットワークセキュリティサービスシステム」で一致し、次の点で相違するものの他に実質的な相違点はない。
(相違点1)
本願補正発明のシステムは、監視装置と、セキュリティセンタ用コンピュータ、遠隔診断装置とからなり、前記監視装置はWAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムのネットワークに接続されているのに対し、引用発明のシステムは、監視装置と、コンピュータ、遠隔診断装置とからなるものの、前記監視装置は接続態様が明らかでない点。
(相違点2)
本願補正発明では、システム管理者用コンピュータに監視診断結果を報告するのに対し、引用発明は、監視診断結果をどのように報告するのか明らかでない点。

上記相違点1について検討する。引用発明において、ネットワークセキュリティサービスを実施する拠点であるセンタを設置し、該センタにセキュリティサービスを実施するコンピュータや遠隔診断装置を設けることは、当業者が通常考えることである。また、クライアントサーバシステムの監視を行う監視装置を該クライアントサーバシステムのネットワークに接続し、該監視装置が情報をセンタコンピュータに送信するシステムは、特開平8-237249号公報、社団法人電気通信協会発行のNTT技術ジャーナル第5巻第1号79頁に掲載された「ネットワーク設備を統合化して、遠隔監視制御する広域監視制御システム(WINCS)の開発」に記載されるように周知である。したがって、引用発明に当業者の技術常識や周知技術を適用して相違点1に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得るものと認められる。
上記相違点2について検討する。引用例に「不正アクセス検出時は、あらかじめ決められたアクション(電子メール通知等)で対応します。」と記載されているように、監視診断結果をネットワーク経由で報告することは引用例の記載から当然想定し得る事項であり、そのような場合に報告がシステム管理者用コンピュータになされることは明らかである。したがって、引用発明において相違点2のようにすることは当業者が容易になし得るものと認められる。
また、本願補正発明の効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年8月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月23日付けで補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「監視装置と、セキュリティセンタ用コンピュータと、遠隔診断装置と、からなり、監視診断対象のクライアントサーバシステムと該クライアントサーバシステムのネットワーク及びWAN等のネットワークを介して情報を送受して、監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ監視診断を行い、かつ、システム管理者用コンピュータに監視診断結果を報告するセキュリティ監視診断サービスシステムにおいて、
監視診断対象のクライアントサーバシステムのセキュリティ診断を行う機能、不正アクセス監視を行う機能、ウィルス監視を行う機能、ファイアウォール又はVPN構築を行う機能、又はファイアウォール運用監視を行う機能、を有することを特徴とするセキュリティ監視診断サービスシステム。」

(2)引用例および引用発明
原査定の拒絶の理由に引用した引用例および引用発明は上記2.(2)のとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から、実質的に、「監視装置」の限定事項である「前記監視装置はWAN等のネットワークに接続された監視診断対象のクライアントサーバシステムのネットワークに接続されており、」との構成を省いたものである。また、本願発明には、補正後の請求項に記載されていない事項として、情報に送受に関して「該クライアントサーバシステムのネットワーク及びWAN等のネットワークを介して」行うことを含んでいるが、該事項は本願補正発明に実質的に含まれているものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-04 
結審通知日 2006-01-10 
審決日 2006-01-23 
出願番号 特願2000-385490(P2000-385490)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之間野 裕一  
特許庁審判長 廣岡 浩平
特許庁審判官 山本 春樹
宮下 誠
発明の名称 セキュリティ監視診断サービスシステム  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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