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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1132379 |
審判番号 | 不服2004-4963 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-01-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-11 |
確定日 | 2006-03-09 |
事件の表示 | 特願2001-182094「移動端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 8日出願公開、特開2003- 4467〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成13年6月15日の出願であって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成16年4月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「外部のサーバ手段とデータの通信を行う通信手段と、 前記サーバ手段からダウンロードした道路の混雑状況の解析データを格納する解析データ格納手段と、 自車位置を検出する自車位置検出手段と、 地図データが格納された地図データ格納手段と、 ユーザの心理的要求をあらわすキーワードを入力するキーワード入力手段と、 前記キーワード入力手段で入力されたキーワードからユーザの心理的要求を満たす条件を選択する条件選択手段と、 前記条件選択手段で選択された条件に一致する前記解析データ格納手段に格納されている前記道路の混雑状況の解析データおよび前記地図データ格納手段に格納されている地図データを用いて前記条件選択手段で選択された条件に一致する道路を用いた経路を探索する経路探索手段と、 前記経路探索手段で探索された経路を案内する案内手段とを備えることを特徴とする移動端末装置。」 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-248475号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項2】 進行経路を利用者に通知するナビゲーション装置において、 キーワードを保持するキーワード保持手段と、 現在地情報及び地図情報を含む状況情報を取得する状況情報取得手段と、 入力される音声指示を受け付ける音声指示受付手段と、 前記音声指示が前記キーワードと一致したか判断する適合判断手段と、 前記音声指示が前記キーワードと一致した場合に、前記状況情報に基づいて、目的地及び最適経路を選定する目的地選定手段と、 前記地図情報と、前記目的地及び最適経路とを同時に表示する地図表示手段と、 を有することを特徴とするナビゲーション装置。」 (2)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、このようなナビゲーション装置では、目的地を決めずにドライブを楽しみたい、という要望には応えられないという問題点があった。 【0004】 本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、利用者がドライブを楽しみたい場合に、状況に応じて、任意の目的地及びそこへの最適経路を提示することのできるナビゲーション装置を提供することを目的とする。」 (3)「【0011】【発明の実施の形態】以下、本発明のナビゲーション装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一のナビゲーション装置の原理構成を示すブロック図である。 【0012】本発明の第一のナビゲーション装置10は、状況情報取得手段2と、目的情報受付手段3と、目的地選定手段4と、地図表示手段5とを有し、進行経路を利用者に通知する。 【0013】ここで、状況情報取得手段2は、現在地情報1a及び地図情報1bを含む状況情報1を取得する。また、目的情報受付手段3は、入力される目的情報を受け付ける。目的地選定手段4は、目的情報受付手段3が受け付けた目的情報がドライブであった場合に、状況情報1に基づいて目的地及び最適経路を選定する。そして地図表示手段5は、地図情報1bと、目的地選定手段4にて選定された目的地及び最適経路とを同時に表示する。」 (4)「【0014】なお、このナビゲーション装置10では状況情報1として、CD-ROM等に保存された情報やインターネット等を経由して取り込む情報等を利用できる。本発明の第一のナビゲーション装置10はこのように、状況情報1に基づいて目的地及び最適経路を選定することができるので、目的地を限定せずにドライブをしたいという要望に応えることができる。」 この記載事項によると引用刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「インターネット等を経由して情報を取り込む手段と、現在地情報及び地図情報を含む状況情報を取得する状況情報取得手段と、入力される音声指示を受け付ける音声指示受付手段と、前記音声指示がキーワードと一致したか判断する適合判断手段と、前記音声指示が前記キーワードと一致すると、目的情報受付手段が受け付けた目的情報がドライブであった場合に、前記状況情報に基づいて、目的地及び最適経路を選定する目的地選定手段と、前記地図情報と、前記目的地及び最適経路とを同時に表示する地図表示手段と、を有するナビゲーション装置。」 同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-4387号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (5)「【0038】このような音声出力に対し、ユーザが「おいしいお店」とマイク16から入力すると、車載情報処理装置10は携帯型端末装置22にユーザの入力音声データを供給する。携帯型端末装置22は、この音声データを情報センタに送信する。この要求データを受信した情報センタでは、音声認識により要求の内容を解析し、要求の内容に合致するデータを検索して返信する。なお、検索中はその旨のデータを返信し、スピーカ18から「おいしいお店を目的地にして経路を検索します」などのメッセージを出力することが好適である。そして、検索が完了した場合には、検索完了データを返信する。本実施形態では、目的地までの経路が3通り存在し、これら3つのいずれを選択するかをまずユーザに問いかけている。問いかけのデータは文字データや音声データで返信する。文字データは携帯型端末装置22のディスプレイ上に表示される。図では、「おすすめ道路」、「とにかく早く着きたい」、「有料道路は使わない」と表示されている。音声データは車載情報処理装置10のスピーカ18に出力され、例えば「検索完了しました。おすすめ道路、最短時間経路、有料道路は使わない経路のどれになさいますか」などと出力される。」 (6)「【0039】このような音声出力及び表示に対し、ユーザが「とにかく早く着きたい」という嗜好をマイク16から入力した場合、あるいは携帯型端末装置22のキーパッドから該当する番号を入力した場合、携帯型端末装置22はこれらの嗜好データを情報センタに送信する。情報センタでは、送信された音声データを認識し、あるいは情報データに基づいて対応する経路を探索する。経路探索は、ユーザが選択した嗜好、交通情報、イベント情報に基づいて行われ、得られた経路データを返信する。返信する経路データとしては、具体的には全ルートデータ、現在地付近の地図データ、案内交差点データ、案内音声データ、施設情報データ、イベント情報データなどである。なお、最初の車両現在地は、ID、パスワード、通信ステイタス、結合状態モード通知と同時に送信しておくことができる。経路データを受信した携帯型端末装置22は、車載情報処理装置10に供給する。車載情報処理装置10は、GPSやジャイロで検出された車両現在位置と地図データを重畳するとともに、目的地までの案内経路を重畳して携帯端末装置22に供給し、ディスプレイ14に表示する。なお、携帯型端末装置22が十分なメモリや処理速度を有している場合には、車載情報処理装置10から車両の現在位置データを受け取り、自己で処理して地図データ上に現在位置及び案内経路を重畳表示してもよい。そして、車載情報処理装置10は、案内経路と現在位置とを逐次照合し、音声出力のタイミングを決定してスピーカ18から「次の交差点を右折です」などと案内する。また、このようなナビゲーションを行っている間、車載情報処理装置10は車両の走行ステータス(車速など)や現在位置データなどを所定時間(あるいは所定走行距離)毎に携帯型端末装置22に供給し、携帯型端末装置22はこれらのデータを情報センタに送信する。これらのデータは、情報センタ側でユーザの走行状況を把握するために用いられる。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「インターネット等を経由して情報を取り込む手段」は、前者の「外部……とデータの通信を行う通信手段」に相当し、後者の「地図情報と、目的地及び最適経路とを同時に表示する地図表示手段と、を有するナビゲーション装置」は、前者の「経路探索手段で探索された経路を案内する案内手段とを備える移動端末装置」に相当する。 また、後者の「現在地情報及び地図情報を含む状況情報を取得する状況情報取得手段」のうち、「現在地情報を取得する」部分は、「自車位置を検出する自車位置検出手段」に相当し、一方、「地図情報を取得する」部分は、当該取得した情報を格納する手段を有することは自明であるから、「地図データが格納された地図データ格納手段」を有するものといえる。 さらに、後者の「ドライブ」は、利用者がドライブを楽しみたい場合に入力する、心理的要求をあらわすキーワードであるから、後者の「ドライブ」という「目的情報」を受け付ける「目的情報受付手段」は、前者の「ユーザの心理的要求をあらわすキーワードを入力するキーワード入力手段」に相当する。 そして、後者では、目的情報が「ドライブ」であることから、「目的地」は「ドライブ」という条件に一致する道路により導かれることになり、したがって、経路探索手段は「地図データ格納手段に格納されている地図データを用いて…条件に一致する道路を用いた経路を探索する」ものといえる。 したがって両者は、 [一致点] 「外部とデータの通信を行う通信手段と、 自車位置を検出する自車位置検出手段と、 地図データが格納された地図データ格納手段と、 ユーザの心理的要求をあらわすキーワードを入力するキーワード入力手段と、 前記地図データ格納手段に格納されている地図データを用いて条件に一致する道路を用いた経路を探索する経路探索手段と、 前記経路探索手段で探索された経路を案内する案内手段とを備える移動端末装置。」で一致し、 [相違点] (イ)本願発明は通信手段が、外部の「サーバ手段」とデータの通信を行うものであるとともに、「前記サーバ手段からダウンロードした道路の混雑状況の解析データを格納する解析データ格納手段」を有するのに対して、引用発明ではこのような手段を有していない点、 (ロ)本願発明が、「キーワード入力手段で入力されたキーワードからユーザの心理的要求を満たす条件を選択する条件選択手段」を有するのに対して、引用発明ではこのような手段を有していない点、および (ハ)経路探索手段に関し、本願発明が、「条件選択手段で選択された条件に一致する解析データ格納手段に格納されている道路の混雑状況の解析データ」および地図データ格納手段に格納されている地図データを用いて「前記条件選択手段で選択された」条件に一致する道路を用いた経路を探索するものであるのに対して、引用発明ではこのような特定がなされていない点で相違している。 4.相違点に対する判断 (イ)経路探索手段で探索された経路を案内する案内手段を備える移動端末装置において、外部のサーバ手段とデータの通信を行う通信手段と前記サーバ手段からダウンロードした道路の混雑状況の解析データを格納する解析データ格納手段を有することは、引用刊行物2などに記載されており周知技術と認められ、引用発明においてもこのような周知技術を採用することで相違点(イ)に係る本願発明の構成とすることは適宜設計し得る事項と認められる。 (ロ)キーワード入力手段で入力されたキーワードからユーザの心理的要求を満たす条件を選択する条件選択手段を設けることは、引用刊行物2に、「おいしいお店」というキーワードを入力した後、探索された経路に対してさらにユーザの嗜好を入力して選択する手段を設けた発明が記載され、また、特開平11-211497号公報の段落(0005)〜(0014)に、ドライブを楽しむために出発地と目的地とが一致した環状ルートの探索条件が設定されたときにさらに「名所巡り」とか「景色を楽しむ」等の探索条件を設定する発明が記載されているところから、周知技術と認められるので、引用発明においてもこのような周知技術を採用することで相違点(ロ)に係る本願発明の構成とすることは適宜設計し得る事項と認められる。 (ハ)条件選択手段で選択された条件に一致する、解析データ格納手段に格納されている道路の混雑状況の解析データおよび地図データ格納手段に格納されている地図データを用いて前記条件選択手段で選択された条件に一致する道路を用いた経路を探索する経路探索手段は、引用刊行物2および上記特開平11-211497号公報に記載されており、周知技術と認められるので、引用発明においてもこのような周知技術を採用することで相違点(ハ)に係る本願発明の構成とすることは適宜設計し得る事項と認められる。 したがって、引用発明において、相違点(イ)ないし(ハ)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。 また、本願発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知技術から予測しうる程度のものと認められる。 5.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-28 |
結審通知日 | 2006-01-10 |
審決日 | 2006-01-23 |
出願番号 | 特願2001-182094(P2001-182094) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 学 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 田中 秀夫 |
発明の名称 | 移動端末装置 |
代理人 | 大橋 公治 |
代理人 | 役 昌明 |
代理人 | 平野 雅典 |
代理人 | 林 紘樹 |