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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
管理番号 1132610
異議申立番号 異議2003-73278  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-06-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-12-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3443710号「製茶精揉装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3443710号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3443710号は、平成6年11月22日に特許出願され、平成15年6月27日にその特許の設定登録がなされ、その後、株式会社寺田製作所より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年8月9日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成16年11月29日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
平成16年11月29日付け手続補正書による補正は、平成16年8月9日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の「・・・・・、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとした・・・・・」を「・・・・・、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、異種品質毎の茶葉が前記主移送コンベヤ上で混ざってしまわない場合を除き、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとした・・・・・」に補正することを含むものであるが、上記補正は、訂正明細書の請求項1に「異種品質毎の茶葉が前記主移送コンベヤ上で混ざってしまわない場合を除き」という発明特定事項を追加するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものである。
そうすると、当該訂正請求に対する上記補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の同法第131条第2項の規定に適合しない。

(2)訂正の内容
上記補正は認められないことから、特許権者が求めている訂正の内容は、平成16年8月9日付け訂正請求書に添付した訂正明細書に記載されている以下の(i)ないし(iv)のとおりである。
(i)特許請求の範囲の請求項1を「供給コンベヤによって前工程より適宜の間隔をあけて混ざらないように順次送られてくる異種品質毎の茶葉を、複数基の精揉機により各別に精揉を行い、精揉を完了した茶葉を精揉機より取り出して次工程まで移送する装置において、前記各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたことを特徴とする製茶精揉装置。」と訂正する。
(ii)明細書段落【0005】を「すなわち請求項1記載の製茶精揉装置は、供給コンベヤによって前工程より適宜の間隔をあけて混ざらないように順次送られてくる異種品質毎の茶葉を、複数基の精揉機により各別に精揉を行い、精揉を完了した茶葉を精揉機より取り出して次工程まで移送する装置において、前記各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたことを特徴とする。」と訂正する。
(iii)明細書段落【0009】を「まず請求項1記載の発明によれば、各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたので、主移送コンベヤに対する茶葉の送り出しを少なくとも各精揉機で扱う茶葉毎に行うことができる。」と訂正する。
(iv)明細書段落【0027】を「まず請求項1記載の発明によれば、各精揉機2には取り出した茶葉Aのストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤ110を接続させ、且つ前記各精揉機2からストックゾーンへの茶葉Aの取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤ110への移送作用をさせない停止状態で行うものとしたので、主移送コンベヤ110に対する茶葉Aの送り出しを少なくとも各精揉機2で扱う茶葉A毎に行うことができる。」と訂正する。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項(i)は、「且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取出にあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとした」という事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、訂正事項(ii)ないし(iv)は、訂正事項(i)と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、これらの訂正は、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

3.特許異議申立
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】供給コンベヤによって前工程より適宜の間隔をあけて混ざらないように順次送られてくる異種品質毎の茶葉を、複数基の精揉機により各別に精揉を行い、精揉を完了した茶葉を精揉機より取り出して次工程まで移送する装置において、前記各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取出にあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたことを特徴とする製茶精揉装置。
【請求項2】前記ストックゾーンは、コンベヤであることを特徴とする請求項1記載の製茶精揉装置。
【請求項3】前記ストックゾーンは、精揉機における揉釜毎に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の製茶精揉装置。
【請求項4】前記ストックゾーンは、複数基の精揉機が共有していることを特徴とする請求項1、2または3記載の製茶精揉装置。」

(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人 株式会社寺田製作所は、下記甲第1号証ないし甲第3号証を提出し、訂正前の本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと主張している。

甲第1号証:社団法人静岡県茶業会議所編「新茶業全書」昭和63年
10月1日8版発行、292頁の「図8 60K3-2
-2 2ライン配置図」
甲第2号証:実公昭45-30720号公報
甲第3号証:特公昭63-16090号公報

(3)甲各号証の記載内容
甲第1号証の図8には、1台の蒸機、3台の「粗」なる粗揉機、2台の「揉」なる揉捻機、2台の「中」なる中揉機、及び2台の「精」なる精揉機からなるラインが2ライン設けられ、各ラインの精揉機にはコンベヤが設けられ、各コンベヤからの移送物を受ける1台のコンベヤが配置された「60K3-2-2 2ライン配置図」が記載されている。
甲第2号証には、「製茶機において、台枠aの両側枠板の間に介装した精揉装置bを一体に設けた機枠cを両側枠板の上面に軸装支持した揉手往復軸dに固装したクランクロッド5の先端に更に関着した連杆8の先端を、モータeの回転軸に連繋した減速機fの減速回転軸に固装したクランクロッド13の先端に関着し、この減速機fの反対側から、回転箒軸15を、チェーンホイール16,チェーン17、チェーンホイール18等のチェーン伝達機構を経て回転するようにし、且つ上記精揉装置bの下側に上部を開放し、傾斜状に配置し、且つ底面に鋸歯状凹凸を設け、下外側に向けて加熱バーナkの火口を設け、更に両端部を軸支した支軸に固装した擺動腕32を、回転駆動軸33に設けたクランク腕34の回転によって連杆35を経て擺動させて上記導樋iの末端開口に無端搬出コンベヤベルトを設けて成る製茶の連続整形、仕上乾燥装置。」(実用新案登録請求の範囲の項)、及び「精揉された茶葉は、下部の傾斜滑り板h上に落ちて落下口23から下方の導樋i内に導通され、この導樋iの先端24から無端輸送ベルトjに導かれて外方に搬出される。この導樋iは上部を開放して傾斜状に配置されその底面25に鋸歯状凹凸26を設け、下外側に向けて加熱バーナkの火口37,37・・・を当てて、約30〜40℃程度に加熱させる。又、両端部27及び28を支軸29及び30,30(31,31は支軸30,30に嵌装した転子)にて軸支し、軸29に固装した擺動腕32を回転駆動軸33に設けた小クランク腕34の回転によって連杆35を経て擺動させて、上記振動機構導樋iを揺動させる。」(1頁2欄18〜32行)と記載されている。
甲第3号証には、「入荷生葉の計量装置と、生葉室の生葉エリヤへ該入荷生葉を散布する散布装置と、該散布された生葉を加工ラインへ取出す取出装置と、記憶装置を具備し、該記憶装置には上記生葉エリヤを多数に分画したエリヤテーブルと、散布装置を所定の分画エリヤに自動的に移動制御するフローのプログラムとを記憶しており、予め設定された散布方式により上記プログラムに従って当該入荷生葉を所定の分画エリヤに散布するように構成した制御回路を有する、生茶葉自動管理装置。」(特許請求の範囲の項)、及び「(1)まず第10図に示す入荷から計量までの工程を説明する。・・・(c)次に入荷者ボタン75が押されると「入荷者ボタンは押されたか?」は「YES」となるから入荷者No.を表示板76に表示する。 (d)次に品種ボタン77が押されると「品種ボタンは押されたか?」は「YES」となるから品種No.を表示板78に表示する。・・・ (h)投入ボタン91が押されると「投入ボタンは押されたか?」は「YES」となるから次のステップに移る。・・・ (k)投入コンベア11のベルト回転機構15に出力して運転開始する。・・・ (m)・・該センサが限界を検出すれば直ちに投入コンベヤ11のベルト回転を停止し、限界でなければ投入コンベヤ運転を続行しながら「投入量限界か?」を確認しつづけ「限界」すなわち「YES」となった時点で投入コンベヤを停止する。」(10頁20欄5行〜11頁21欄33行)と記載されている。

(4)判断
本件発明1は、「供給コンベヤによって前工程より適宜の間隔をあけて混ざらないように順次送られてくる異種品質毎の茶葉を、複数基の精揉機により各別に精揉を行い、精揉を完了した茶葉を精揉機より取り出して次工程まで移送する装置において、前記各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取出にあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたことを特徴とする製茶精揉装置」であって、特に精揉工程終了後、各精揉機毎の茶葉が混じり合わないようにするための機構に係るものである。
これに対して、甲第1号証の図8に示される製茶精揉機には、コンベヤが設けられ、このコンベヤからの移送物を受ける別のコンベヤが配置されているところ、各コンベヤは、茶葉を移送する作用を有することは窺い知れるものの、先のコンベヤが、ストックゾーンとしての機能を有していること、及び前記各精揉機から先のコンベヤへの茶葉の取出にあたっては、先のコンベヤから後のコンベヤ(主移送コンベヤ)への移送作用をさせない停止状態で行うことについて教示するところは全くない。
特許異議申立人は、甲第1号証について「2台毎の精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンが設けられ、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させた製茶精揉装置が記載されていることが認められる。」(特許異議申立書5頁)と主張しているが、特許異議申立人は、甲第1号証に係るコンベヤが各々本件発明1で特定する「ストックゾーン」と「主移送コンベヤ」に相当するものであると認定した根拠を全く示していないことから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
甲第2号証には、精揉された茶葉が下方の導樋内に導通され、この導樋から無端輸送ベルトに導かれて外方に搬出されるように構成された精揉装置が記載されている。しかし、この導樋は傾斜状に配置され、下外側には加熱バーナが設けられて約30〜40℃程度の加熱により茶葉が乾燥されるようになっていることを踏まえると、この導樋においては、茶葉は滞留することなく連続して移送するものと解される。
そうすると、甲第2号証に係る導樋には、ストックゾーンとしての機能はなく、精揉機から導樋への茶葉の取出しにあたっては、導樋から無端輸送ベルトへの移送作用をさせない停止状態で行うことはできないというべきである。
甲第3号証に係る生茶葉自動管理装置は、入荷生葉の計量装置と、生葉室の生葉エリヤへ該入荷生葉を散布する散布装置と、該散布された生葉を加工ラインへ取出す取出装置とこれらを制御する制御回路を有するものであって、本件発明1のような精揉に関して記載されているところはなく、コンベヤを茶葉のストックゾーンとして機能させ、このストックゾーン(コンベヤ)の取出側に次工程への主移送コンベヤを接続し、各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取出にあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うことについて言及されるところはない。
以上のように、甲第1号証ないし甲第3号証には、本件発明1において特定する「各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取出にあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行う」ことについて教える記載は全くないのであるから、甲第1号証ないし甲第3号証の記載から本件発明1を導き出すことは、当業者といえども困難であるというべきである。
そして、本件発明1は、製茶精揉装置を上記の如く構成することにより特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件発明2ないし4は、本件発明1を引用し、さらにその構成を限定するものであるから、本件発明1についての上記判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人 株式会社寺田製作所の異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
製茶精揉装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】供給コンベヤによって前工程より適宜の間隔をあけて混ざらないように順次送られてくる異種品質毎の茶葉を、複数基の精揉機により各別に精揉を行い、精揉を完了した茶葉を精揉機より取り出して次工程まで移送する装置において、前記各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたことを特徴とする製茶精揉装置。
【請求項2】前記ストックゾーンは、コンベヤであることを特徴とする請求項1記載の製茶精揉装置。
【請求項3】前記ストックゾーンは、精揉機における揉釜毎に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の製茶精揉装置。
【請求項4】前記ストックゾーンは、複数基の精揉機が共有していることを特徴とする請求項1、2または3記載の製茶精揉装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の目的】
【産業上の利用分野】
本発明は製茶精揉装置に関するものであって、特に精揉工程終了後、各精揉機毎の茶葉が混じり合わないようにするための機構に係るものである。
【0002】
【発明の背景】
製茶工程における加工は、多くは摘採した茶葉を茶葉コンテナにまとめて収容し、これを順次蒸し工程、揉乾工程へ送り出して処理している。このような一括加工の処理形態であっても通常は、原料茶葉は同一茶期、同一地域における収穫茶の場合は性状が近似していることからほとんど問題は生じない。しかしながら産地によっては畑地の状況、施肥状況等によって茶葉品質(等級)に著しく幅があり、このような場合、異種品質の茶葉を混ぜて加工したのでは、製品茶としての品質は著しく劣ってしまう。
このようなことから、産地によっては製茶工場は連続的に稼働させながら異収穫地の茶葉が混ざらないように加工する必要が生じている。
【0003】
特に精揉工程終了後においては、従来は図8に骨格的に示すように精揉機2′(揉釜)が直列的に設けられていて且つ取り出された茶葉A′は一本のコンベヤライン(主移送コンベヤ110′)に集中してしまうから、揉釜毎にあるいは精揉機毎に異なった茶葉が加工されている場合には充分に区別できなくなってしまう。この傾向は特に移送方向下流側へ落とされる茶葉A2′が上流側の精揉機2′からの茶葉A1′の取り出しより遅れた場合に顕著に現れてしまうものであって、下流側にすでに到達していた上流側の茶葉A1′と下流側の茶葉A2′とが主移送コンベヤ110′上で混じってしまうという問題を生じていた。
【0004】
【開発を試みた技術的事項】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、精揉工程終了後、各精揉機毎の茶葉が混じり合ってしまうことのない新規な製茶精揉装置の開発を試みたものである。
【0005】
【発明の構成】
【目的達成の手段】
すなわち請求項1記載の製茶精揉装置は、供給コンベヤによって前工程より適宜の間隔をあけて混ざらないように順次送られてくる異種品質毎の茶葉を、複数基の精揉機により各別に精揉を行い、精揉を完了した茶葉を精揉機より取り出して次工程まで移送する装置において、前記各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたことを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の製茶精揉装置は、前記要件に加え、前記ストックゾーンは、コンベヤであることを特徴とする。
【0007】
更にまた請求項3記載の製茶精揉装置は、前記要件に加え、前記ストックゾーンは、精揉機における揉釜毎に形成されることを特徴とする。
【0008】
更にまた請求項4記載の製茶精揉装置は、前記要件に加え、前記ストックゾーンは、複数基の精揉機が共有していることを特徴とする。
これら発明により前記目的を達成しようとするものである。
【0009】
【発明の作用】
まず請求項1記載の発明によれば、各精揉機には取り出した茶葉のストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤを接続させ、且つ前記各精揉機からストックゾーンへの茶葉の取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤへの移送作用をさせない停止状態で行うものとしたので、主移送コンベヤに対する茶葉の送り出しを少なくとも各精揉機で扱う茶葉毎に行うことができる。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、ストックゾーンは、コンベヤであるので、茶葉をストックするとともに主移送コンベヤに移送することができる。
【0011】
更にまた請求項3記載の発明によれば、ストックゾーンは、精揉機における揉釜毎に形成されるので、茶葉を揉釜毎に主移送コンベヤに移送することができる。
【0012】
更にまた請求項4記載の発明によれば、ストックゾーンは、複数基の精揉機が共有しているので、大容量の茶葉を分断せずに主移送コンベヤに移送することができる。
【0013】
【実施例】
【請求項2に対応する実施例】
本発明の製茶精揉装置1は製茶ラインにおける中揉工程と乾燥工程との間に設けられるものであり、この製茶精揉装置1へは図1に示すように、供給コンベヤ100から茶葉Aが供給される。また製茶精揉装置1で処理された茶葉Aは本発明の特徴的構成であるコンベヤ3を経て主移送コンベヤライン110へ送り出される。
ここで前記製茶精揉装置1とは、複数基の精揉機2と複数基のコンベヤ3とを具えて成る精揉工程全体の系を意味するものとして定義されるものである。
【0014】
まず前記精揉機2について簡単に説明する。このものは図1に骨格的に示すように、従来より公知の装置を適用したものであって、通常四基または八基の揉釜4を具えて成る。本実施例において説明する精揉機2は一例として四基の揉釜4を具え、上方に投入口5、下方に排出口6を具えるものとした。
【0015】
このような精揉機2にはコンベヤ3を付設するものであって、これらを含めてユニット10と定義するものである。前記コンベヤ3は実質的に請求項1で定義した取り出した茶葉のストックゾーンを構成するものであり、図1に骨格的に示す従来より公知の振動コンベヤを適用したものである。またこのコンベヤ3の容量は、前記精揉機2で一度に処理される茶葉Aをすべて収容できるものとする。
【0016】
次に上述のユニット10を複数ユニット組み合わせて構成される製茶精揉装置1全体の構成について説明する。なお各ユニットを総称して示すときにはユニット10とし、各別に示すときにはユニット11〜15とする。そして図1に骨格的に示すように、本実施例における製茶精揉装置1は、一基の精揉機2に一基のコンベヤ3を排出口6に臨むように付設して成るユニット10を二ユニット具えて構成される。具体的にはユニット11を主移送コンベヤ110の進行方向前方に、またユニット12をユニット11の後方に配置するものである。そして各ユニット10における精揉機2の投入口5には、中揉機からの供給コンベヤ100が臨み、また排出口6はコンベヤ3に臨むように配設される。
【0017】
以上が本発明の製茶精揉装置1の具体的な構成の一例であり、以下茶葉Aの実際の処理態様について図2を参照しながら段階的に説明する。
まず図2(a)に示すように、製茶精揉装置1には前工程より異種品質の茶葉A1と茶葉A2とが、適宜の間隔をあけて供給コンベヤ100上を順次送られて供給される。そしてまず茶葉A1がユニット11に投入される。
【0018】
次いで図2(b)に示すように、精揉機2により精揉処理がなされた茶葉A1はコンベヤ3上に排出され、更に主移送コンベヤ110上に送られる。この処理と平行して茶葉A2はユニット12に投入され精揉機2により精揉処理がなされる。
【0019】
次いで図2(c)に示すように、ユニット12における精揉機2により精揉処理が成された茶葉A2がコンベヤ3上に排出され始める。このとき茶葉A2を主移送コンベヤ110上に送り込んでしまうと茶葉A1と混ざってしまう。
【0020】
このような事態を避けるために、ユニット12におけるコンベヤ3を停止状態にした後、図2(d)に示すように、ユニット11におけるコンベヤ3上の茶葉A1がすべて主移送コンベヤ110上に送り込まれた時点でユニット12におけるコンベヤ3を駆動し、茶葉A2を主移送コンベヤ110上に送り込むようにするものである。
【0021】
因みに前記コンベヤ3が、請求項1で定義した各精揉機2に設けられる取り出した茶葉のストックゾーンを構成するものであり、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤ110を接続させればよいので、以下のような形態を採ることもできる。例えばこのような一例としては図3に示すようにバケット7を用いるものであって、このバケット7内に各品質の茶葉Aをそれぞれ一括して収容されるようにする。そして各ユニット10のバケット7の底を開放して順次主移送コンベヤ110上に茶葉Aを送り込むようにするものである。
【0022】
また前記ユニット10の構成としては図4に示すように、コンベヤ3を主移送コンベヤ110の上方に平行に配設したものとしてもよい。因みにこのような形態は、図8に示した従来の直線的に設けられた精揉機2′に対して、容易に増設することが可能なものである。
【0023】
なお上述した説明においては、図5(a)に示すような二基のユニット11、12を設けた場合について説明したが、ユニット10の数は、図5(b)(c)(d)(e)に示すように更に増やすことも可能である。因みにこの図5に示す種々のユニット10の配設態様は、主移送コンベヤ110へ供給する茶葉Aの量が60Kg、120Kg、180Kgの場合のそれぞれのユニット10の配設態様を示すものである。因みに製茶機械分野での機器の容量の表し方は、茶葉Aの重量によって表すものであり、例えば60Kgなら60Kとするものである。なお精揉機2の容量は現状では60Kと120Kのものがあるため、これを前提としたライン構成とした。
そして図5(c)に示す製茶精揉装置1を例に説明すると、この装置は三基のユニット11〜13を設けることにより構成されたものである。このものは前記図5(a)に示す配設態様あるいは図5(b)に示す配設態様が主移送コンベヤ110の片側のみにユニット10を配設していたものと相違し、主移送コンベヤ110の両側にユニット10を配設して成るものである。更に具体的には、各ユニット10におけるコンベヤ3がそれぞれ主移送コンベヤ110に臨むように配列され、且つ60Kの精揉機2と120Kの精揉機2とを対向するように配して180Kとした部分と、120Kの精揉機2の部分とを組み合わせて配設したものである。もちろんこの他にも、工場の形態に適した適宜の配置を採ることもできる。
【0024】
【請求項3に対応する実施例】
この実施例は図6に示すように、ユニット10の構成を精揉機2における個々の揉釜4に対してそれぞれ一基ずつのコンベヤ3を付設するようにしたものである。もちろんこの場合各コンベヤ3の容量は揉釜4と同等とする。すなわち先の実施例においては、ユニット10の構成を、一基の精揉機2に対して一基のコンベヤ3を付設するようにしたが、実際の製茶ラインにおける加工容量の関係で、各揉釜4毎に異種品質の茶葉Aを処理することが行われることを想定して、各揉釜4毎にコンベヤ3が臨むような構成を採るものである。
【0025】
【請求項4に対応する実施例】
また図7(a)(b)(d)(e)に示すように、一例として二基の精揉機2に対し設けられるコンベヤ3を、いわば共有した形態としてユニット10を構成することも可能である。すなわち先の実施例においては、ユニット10の構成は、一基のコンベヤ3が、一基の精揉機2または揉釜4に対して付設されるものであったが、製茶ラインにおける加工容量の関係で常時二基以上の精揉機2がまとまって単一品種の茶葉Aを処理することが行われる場合には、各精揉機2毎にコンベヤ3が臨むことが要求されるものの、必ずしも分断されたコンベヤ3でなくともよく、一本の共有されたコンベヤ3としてもよいのである。
因みにこの図7に示すライン構成は240K容量の精揉機2がないため、120K容量の精揉機2を使用するライン構成とする場合等に適したものである。
【0026】
そして図7(a)に示す実施例は上述のような組み合わせのユニット11とユニット12とを、主移送コンベヤ110の両側に対向するように設けたものである。また図7(b)に示す実施例は同様のユニット11とユニット12とを主移送コンベヤ110の片側のみに連続して設けたものである。また図7(d)に示す実施例は同様のユニット11とユニット12とユニット13の三ユニットとを図7(b)に示す実施例と同様に主移送コンベヤ110の片側のみに連続して設けたものである。また図7(e)に示す実施例は同様のユニット11とユニット13とを図7(b)に示す実施例と同様に主移送コンベヤ110の片側に連続して設けるとともに、主移送コンベヤ110を挟んで対向する側にユニット12を設けたものである。
因みに図7(a)(b)に示す実施例の形態は図7(c)に示すような構成で代用することもできる。これは一基の精揉機2に対して一基のコンベヤ3を設けたようなユニット11、ユニット12を 主移送コンベヤ110の片側のみに連続して設けるとともに、主移送コンベヤ110を挟んで対向する側にユニット13、ユニット14を同じく連続させて配設したものである。この場合には対向するユニット11とユニット13とを同一茶葉A1を扱うようにし、ユニット12とユニット14とを同一茶葉A2を扱うようにしてもよいし、連続するユニット11とユニット12とを同一茶葉A1を扱うようにし、ユニット13とユニット14とを同一茶葉A2を扱うようにするというように任意の組み合わせが可能となる。
【0027】
【発明の効果】
まず請求項1記載の発明によれば、各精揉機2には取り出した茶葉Aのストックゾーンを設け、このストックゾーンの取出側に次工程への主移送コンベヤ110を接続させ、且つ前記各精揉機2からストックゾーンへの茶葉Aの取り出しにあたっては、ストックゾーンから主移送コンベヤ110への移送作用をさせない停止状態で行うものとしたので、主移送コンベヤ110に対する茶葉Aの送り出しを少なくとも各精揉機2で扱う茶葉A毎に行うことができる。
【0028】
また請求項2記載の発明によれば、ストックゾーンは、コンベヤ3であるので、茶葉Aをストックするとともに主移送コンベヤ110に移送することができる。
【0029】
更にまた請求項3記載の発明によれば、ストックゾーンは、精揉機2における揉釜4毎に形成されるので、茶葉Aを揉釜4毎に主移送コンベヤ110に移送することができる。
【0030】
更にまた請求項4記載の発明によれば、ストックゾーンは、複数基の精揉機2が共有しているので、大容量の茶葉Aを分断せずに主移送コンベヤ110に移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の製茶精揉装置を示す骨格的透視斜視図である。
【図2】
同上作動状態を段階的に示す骨格的平面図である。
【図3】
ストックゾーンの他の実施例を示す骨格的側面図である。
【図4】
コンベヤの配設態様を異ならせた他の実施例を示す骨格的透視斜視図である。
【図5】
60K、120K、180Kラインに対応したユニットの主々の配設例を示す骨格的平面図である。
【図6】
ストックゾーンを揉釜毎に形成した実施例を示す骨格的平面図である。
【図7】
240Kラインに対応したユニットの種々の配設例を示す骨格的平面図である。
【図8】
従来の製茶精揉装置における精揉機の配設態様を示す骨格的斜視図である。
【符号の説明】
1 製茶精揉装置
2 精揉機
3 コンベヤ
4 揉釜
5 投入口
6 排出口
7 バケット
10 ユニット
11 ユニット
12 ユニット
13 ユニット
14 ユニット
15 ユニット
100 供給コンベヤ
110 主移送コンベヤ
A 茶葉
A1 茶葉
A2 茶葉
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-12-05 
出願番号 特願平6-312708
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 河野 直樹
鵜飼 健
登録日 2003-06-27 
登録番号 特許第3443710号(P3443710)
権利者 カワサキ機工株式会社
発明の名称 製茶精揉装置  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 東山 喬彦  
代理人 東山 喬彦  

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