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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1133320
審判番号 不服2003-3184  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-09-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-27 
確定日 2006-03-16 
事件の表示 特願2000-51144「簡易小型ガスまたは大気中浮遊微粒子検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月7日出願公開、特開2001-242057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成12年2月28日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されたとおりのものと認められるところ、その請求項1は次のとおりである。(以下、「本願発明」という。)
【請求項1】(A)検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を含有する気体を該検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子に対して吸着性を有する被膜を表面に有する水晶振動子に接触させて検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子のみを水晶振動子に吸着する手段、
(B)検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振しそのガスまたは大気中浮遊微粒子吸着による周波数変化を測定し表示する、もしくはガスまたは大気中浮遊微粒子濃度に変換表示する手段、
とを結合具備してなり、かつ、
上記(B)の検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振しその周波数変化を測定し表示する手段は、筐体の中に(C)検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振させる手段、(D)当該水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段及び(E)該周波数変化を表示する手段が組み込まれ一体化されているものであることを特徴とする簡易小型ガスまたは大気中浮遊微粒子検出装置。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物は、次のものである。
刊行物1:実願平4-45865号(実開平6-7049号)のCD-ROM
刊行物2:実願平4-11524号(実開平5-73560号)のCD-ROM

(1)刊行物1には次の事項が記載されている。
「【0012】)
本考案の携帯用小型においセンサでは、センサヘッドをコネクタ一体型として、例えば、市販されているような小型の周波数カウンタへ直接取り付けることで、簡単に、においセンサを構成できるようにするとともに、センサヘッドと周波数カウンタを、一体の例えば手の平サイズの小型なものとして、簡便に取り扱えるようにし、携帯用に好適なものにする。一方、センサヘッドとしては水晶振動子を用いることにより、測定対象を広げるとともに、消費電力を少なくしてバッテリの長時間使用可能とし、携帯用に好適なものとする。」

「【0014】
図1は携帯用小型においセンサの最も重要な部品である小型なセンサヘッドの透視的な構成図であって、1は薄膜付き水晶振動子、2はソケット、3は発振回路、4は発振調整穴、5はファン、6は直流モータ、7Aはコネクタ、8は筒型のケース、9はヘッドカバー、10は直流電源用リード線、11は電源コネクタである。
【0015】
本実施例のセンサヘッドは、水晶振動子1と発振回路3と同軸コネクタ等のコネクタ7Aなどを一体化して作製し、それに保護用のケース8を被せて例えば先端部直径18mm、全長8cm程度に構成したものである。水晶振動子1はケース8の先端部に配置し、ソケット2により発振回路3へ接続し、端面および側面ににおいの吸引孔を有するヘッドカバー9を被せる。この水晶振動子1は、においに対し吸着性を有する薄膜を電極面に形成したもので、種々の吸着特性の異なるものが作成可能であり、用途に応じて取り替えることができる。・・・ケース8の後端に一体に配置して、前述の発振回路3の出力や直流モータ6の駆動信号等を接続する。センサヘッドが必要とする電源の接続用としては、発振回路3等から直流電源用リード線1
0を引き出し、その先に電源コネクタ11を取り付けたものを用いる。」

「【0017】
本実施例の小型周波数カウンタは、図1のセンサヘッドを着脱できるコネクタ7Bを有し、周波数カウンタの電源のみならずセンサヘッドの発振回路3の電源を供給するバッテリ15を内蔵して、例えば、その大きさとしては縦10cm,横8cm,厚さ2.5cm程度に作製される。これに小型センサヘッドを装着したセンサ全体の大きさは、長さが8cm程度増加して16cm程度となるが、ヘッドを先端部を検知対象のにおい源に近づけてのセンシングは片手で操作できる。このように、大きさとして手の平サイズの携帯に便利な携帯用小型においセンサを提供することができる。また、バッテリ15を内蔵することで、フィールドでの使用を非常に便利にしている。
【0018】
周波数カウンタの構成においては、箱型のケース13にカウンタ用電子回路14とバッテリ15を内蔵し、前面には電源スイッチ17,におい強度表示LED18,周波数表示板20を配置し、両側面には直流アダプタ端子16,ゼロセット兼ファンモータスタートスイッチ19が設けられ、上部にはコネクタ7Bと直流電源端子12が設けられている。図1のセンサヘッドは、コネクタ7Aがコネクタ7Bに嵌合されて支えられるとともに、電源コネクタ11が直流電源端子12に接続されて、バッテリ15から電源の供給を受ける。」

「【0020】
本実施例の携帯用小型においセンサを動作させるためには、初めに任意の薄膜付き水晶振動子1(表面には被膜として、ポリビニルアセテート,ポリブチレンアジペート,
・・・などが皮膜形成されている)を選び、これをセンサヘッドのソケット2に取り付ける。続いて、コネクタ7Aと電源コネクタ11を周波数カウンタに取り付けて、周波数カウンタの電源スイッチ17を入れる。・・・におい強度表示LED18の無のLEDが初め、点灯し、においの強度によって、弱,中,強のLEDが順次点灯する。これによって、その場所のにおい強度を計ることができる。この時、ファン用直流モータ6の回転時間は、およそ5秒とする。これは状況に応じて、変えることが可能であるが、例えば5秒を標準としたものである。また、同時に周波数表示板20の周波数の変化の大きさを数値として読み取ることによっても、数値データとして強中弱よりも細かくにおいを強度を判定できる。」

(2)刊行物2には次の事項が記載されている。
「【0014】
図1は発光ダイオードアレーをセンサ出力とする本考案の第一の実施例の携帯用においセンサの構成図であって、(a)は側面図、(b)は前面図である。図において、1は水晶振動子、2はにおい吸着膜付き水晶振動子、3は発振回路、4は周波数調整回路、5は周波数混合回路、6は狭帯域バンドパスフィルタ、7は増幅回路、8は整流回路、9はLED(発光ダイオード)ドライバ、10はLEDアレー、11はLED調整回路、12は吸引ファン、13はDCモータ、14はモータタイマ回路、15は電源スイッチ、16はNiCdバッテリ、17はACアダプタ端子を示す。本実施例の大きさは、先端部直径18mm程度、バッテリ部直径32mm程度、長さ180mm程度に作製可能である。
【0015】
図2はセンサ回路の回路構成を示すブロック図であり、3は発振回路、5は周波数混合回路、6は狭帯域バンドパスフィルタ、7は増幅回路、8は整流回路、9はLEDドライバ、10は4ドットLEDアレー(正常値;緑色、第一レベル;オレンジ色、第2レベル;赤色、第3レベル;赤色)、11はLED調整回路である。」

3.本願発明と刊行物1に記載された発明との対比
刊行物1に記載された発明では、筐体(ケース13)内に水晶振動子の発振によって発生する周波数変化を測定する手段(周波数カウンタ)と該周波数変化を表示する手段が組み込まれ一体化されていることが認められ、本願発明と刊行物1に記載された発明とは、
(一致点)
【請求項1】(A′)検出対象物を含有する気体を該検出対象に対して吸着性を有する被膜を表面に有する水晶振動子に接触させて検出対象物を水晶振動子に吸着する手段、
(B′)検出対象物を吸着した水晶振動子を発振しその吸着による周波数変化を測定し表示する手段、
とを結合具備してなり、かつ、
上記(B′)の検出対象物を吸着した水晶振動子を発振しその周波数変化を測定し表示する手段は、筐体の中に(D′)当該水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段及び(E′)該周波数変化を表示する手段が組み込まれ一体化されている簡易小型検出対象物検出装置。」
である点で一致するが、次の点で相違する。
(相違点1)
検出対象物が、本願発明では、検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子であって、検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子のみを水晶振動子に吸着する手段を具備するのに対し、刊行物1に記載された発明では、検出対象物がにおいであり、においのみを水晶振動子に吸着する手段を具備する点。

(相違点2)
本願発明では、筐体の中に検出対象物を吸着した水晶振動子を発振させる手段も組み込まれ一体化されているのに対して、刊行物1に記載された発明では、検出対象物を吸着した水晶振動子を発振させる手段は筐体(ケース13)と別体のケース8に水晶振動子と共に収納され、コネクタ7により筐体内の回路と結合されている点。

4.相違点についての検討
相違点1について、
「におい」がガスや大気中の微粒子であるミストなどの状態で存在する物質によるものであることは広く知られている事項であり、そのような物質を吸着する被膜を有する水晶振動子の発振周波数が物質を吸着しない場合と吸着した場合で変化するという刊行物1に記載された現象(刊行物2に記載された現象も同じ)は、吸着する物質がガスまたは大気中浮遊微粒子であっても成り立つ現象であることは当業者にとって明らかであるから、刊行物1に記載された装置を検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子の検出に応用することは当業者が容易に想到しうることである。

相違点2について、
刊行物1に記載された発明においては、水晶振動子と水晶振動子発振回路がケース8に組み込まれ、当該水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段と該周波数変化を表示する手段がケース13に組み込まれ、両者はコネクタで結合されているが、このような小型検出対象物検出装置においてケース8とケース13を別体とせずに一つのケースとすることは当業者が適宜変更できることであり(上記の刊行物2の記載と図示参照)、しかも、水晶振動子と水晶振動子発振回路を離して配置することは周知慣用技術である(例えば、特開昭61-148335号公報、実願平2-8789号(実開平3-101437号)のマイクロフィルム参照)から、刊行物1に記載された発明において水晶振動子発振回路を、当該水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段及び該周波数変化を表示する手段が組み込まれたケース(筐体)側に収容し、相違点2に係る本願発明の構成を得ることは当業者が容易に想到しうることである。

そして、本件の明細書に記載された本願発明の作用効果は、刊行物1、刊行物2、周知例の記載から当業者が容易に想到しうるものであって、格別のものではない。

5.むすび
以上のとおり、本件の請求項1に係る発明は、その出願前に国内で頒布された刊行物1、2に記載された発明および周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明についての検討・判断を示すまでもなく、この出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-10 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-01-30 
出願番号 特願2000-51144(P2000-51144)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼見 重雄  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 水垣 親房
菊井 広行
発明の名称 簡易小型ガスまたは大気中浮遊微粒子検出装置  

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