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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1133326
審判番号 不服2003-5123  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-27 
確定日 2006-03-16 
事件の表示 平成 6年特許願第238477号「エピタキシャル成長装置のサセプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成8年3月22日出願公開、特開平8-78347〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.出願の経緯の概要、及び本願発明
本願は平成6年9月6日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、平成14年8月30日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認められるところ、その本願発明3は次のとおりである。
「【請求項3】サセプタに、半導体ウェーハが載置されるポケットを複数備えたエピタキシャル成長装置のサセプタにおいて、
前記ポケットは、半導体ウェーハのオリエンテーションフラットに相当するオリエンテーションフラット部と、当該オリエンテーションフラット部以外の周縁部とを有し、
前記ポケットの周縁部に、エピタキシャル成長完了後の半導体ウェーハを取り出すための切り欠き部が形成され、
前記ポケットは、オリエンテーションフラット部が、隣接しているポケットの周縁部に近接されるとともに、切り欠き部が、隣接しているポケットと干渉しない位置になるように、サセプタ上に一定方向に沿って複数配置されていること
を特徴とするエピタキシャル成長装置のサセプタ。」

II.証拠の記載事実
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1〜5には、次の記載がある。
(1)引用例1(実願昭55-154473号(実開昭57-075739号)のマイクロフィルム)
(1-1)「高周波誘導によって加熱される材料よりなり、上面に半導体ウェーハを収容し得る凹部を形成してなるものにおいて、前記凹部が半導体ウェーハのオリエンテーションフラットに対応する直線部分を備えていることを特徴とする半導体製造用サセプタ。」(実用新案登録請求の範囲)
(1-2)「従来この種の半導体装置に用いられる半導体ウェーハ上にエピタキシャル成長層を形成した、いわゆるエピタキシャルウェーハは、例えば第1図のような装置を用いて製造されている。・・・10はサセプタホルダで、この上にサセプタ11をガス流入側が低くなるように傾斜させて保持し、サセプタ11上に半導体ウェーハ12が保持されている。」(第2頁第10行〜第3頁第2行)
(1-3)「凹部21の周縁の一部に半導体ウェーハ12のOF121に対応する直線部分22を備えている。そして、好ましくは、前記直線部分22と直交する線分23がサセプタ20の長手方向と一致し、かつより好ましくは前記直線部分22をガス流入側、換言すれば低位置側になるように配置する。」(第6頁第3〜9行)
(1-4)「凹部21または31の周縁の一部に、凹部21または31と同一の深さかそれよりも若干深い小さい半円状等の小凹部を形成してもよい。そのようにすると、エピタキシャル成長層を形成後、凹部21または31からエピタキシャルウェーハを取り出す場合に、前記小凹部にピンセットの先端を挿入できるので、エピタキシャルウェーハを容易に取り出せるという利点がある。」(第7頁第15行〜第8頁第3行)

(2)引用例2(実願昭60-041605号(実開昭61-158945号)のマイクロフィルム)
(2-1)「量産用の装置においては多数枚のウエハを一度に処理するため、第4図に示したエピタキシャル成長装置内のサセプタ、ウエハおよびガス吹出用ノズルの上面図のように、サセプタ12の表面に同心円状に2列以上のウエハ11載置用の座ぐり群17と18を設け、その各々にウエハをのせる方法が用いられている。」(第4頁第6〜12行)

(3)引用例3(実願昭61-152252号(実開昭63-057737号)のマイクロフィルム)
(3-1)「第1図(a)〜(c)を見るに、ウェハーを載置するための凹部2を有している気相成長用サセプター1の中で、ウェハーよりも小さい狭い部分が凹部2の底として残るように、凹部2の底部の周辺に凹部2よりも深い溝部2A・2Bを有している。一般にウェハ-はオリエンテーションフラット(OF)と称する切り込みがあり、サセプターとしてはこのOF部に対応した形の凹部を有し、その周囲に溝部を形成したものである。」(第5頁第5〜13行)
また、上記の第1図(a)には、オリエンテーションフラット部の直線部の延長線が、サセプター中心方向に向かうように、放射状に配列させることにより、当該オリエンテーション部を、円周方向にむけて一定方向に配置することが示されている。

III.対比・判断
本願発明3と、引用例1に記載されたものとを対比すると、引用例1には、半導体製造用サセプタに係る発明が記載されており(摘記1-1)、そして、引用例1に記載された、サセプタ凹部のオリエンテーションフラットに対応する直線部分(摘記1-1)は、本願発明3における、サセプタに設けたポケットのオリエンテーションフラット部に相当する。
また、引用例1には、凹部21または31の周縁の一部に、凹部21または31と同一の深さかそれよりも若干深い小さい半円状等の小凹部を形成してもよく、そのようにすると、エピタキシャル成長層を形成後、凹部21または31からエピタキシャルウェーハを取り出す場合に、前記小凹部にピンセットの先端を挿入できるので、エピタキシャルウェーハを容易に取り出せることが記載されており(摘記1-4)、この「小凹部」は、本願発明3における「切り欠き部」に相当する。
また、引用例1には、ウエハを収容する凹部の直線部分22と直交する線分23が、サセプタ20の長手方向と一致し、かつより好ましくは前記直線部分22をガス流入側、換言すれば低位置側になるように配置することが記載されており(摘記1-3)、してみれば、引用例1には、各凹部の直線部分がガス流入側になるように、複数の凹部を一定方向に配列させることが開示されているといえる。
また、本願発明3における「エピタキシャル成長装置のサセプタ」は、引用例1における「半導体製造用サセプタ」(摘記1-1)に相当し、本願発明3におけるサセプタの「ポケット」は、引用例1における「凹部」(摘記1-1)に相当し、本願発明3において「半導体ウェーハが載置」される点は、引用例1における「半導体ウェーハを収容」(摘記1-1)することに相当し、本願発明3における「オリエンテーションフラット部」は、引用例1における「オリエンテーションフラットに対応する直線部分」(摘記1-1)に相当する。また、サセプタにウェーハを載置する場合に、当該載置するウェーハを複数枚とすることは、引用例1の第1図(摘記1-2参照)にも示されるとおり、本願出願時通常行われる周知の事項である。

以上のとおりであるから、本願発明3は、引用例1に記載されたものと、
「サセプタに、半導体ウェーハが載置されるポケットを複数備えたエピタキシャル成長装置のサセプタにおいて、
前記ポケットは、半導体ウェーハのオリエンテーションフラットに相当するオリエンテーションフラット部と、当該オリエンテーションフラット部以外の周縁部とを有し、
前記ポケットの周縁部に、エピタキシャル成長完了後の半導体ウェーハを取り出すための切り欠き部が形成されていること
を特徴とするエピタキシャル成長装置のサセプタ。」の点で一致し、一方、

(イ)本願発明3では、ポケットの配置について、「前記ポケットは、オリエンテーションフラット部が、隣接しているポケットの周縁部に近接される」と特定しているのに対して、引用例1には、そのように明示する記載が見当たらない点、及び、
(ロ)本願発明3では、ポケットの切り欠き部に関して、「切り欠き部が、隣接しているポケットと干渉しない位置になるように、サセプタ上に一定方向に沿って複数配置されている」と特定しているのに対して、引用例1には、当該記載が見当たらない点で、本願発明3は、引用例1に記載されたものと相違している。

そこで、相違点(イ)及び(ロ)について、以下、検討する。
相違点(イ)について
引用例1には、ウェーハを収容する凹部の直線部分22と直交する線分23が、サセプタ20の長手方向と一致し、かつより好ましくは前記直線部分22をガス流入側、換言すれば低位置側になるように配置することが記載されており(摘記1-3)、各凹部の直線部分がガス流入側になるように、複数の凹部を一定方向に配列させることが開示されているといえる。また、引用例3には、サセプタ凹部のオリエンテーションフラットの直線部の延長線を、サセプタ中心方向に向けることにより、当該オリエンテーション部を円周方向にむけて一定方向に配置することが示されている(摘記3-1、第1図(a))。
一方、サセプタにウェーハを載置する場合に、当該載置するウェーハを複数枚とすることは、引用例1の第1図(摘記1-2参照)にも示されるとおり、本願出願時通常行われる周知の事項である。そして、その際に、処理効率及び均一性等の点から、サセプタに配置する複数のウェーハ数をできるだけ多くすべく、各ウェーハを近接して配置することは、当業者が容易になし得ることである。
してみれば、ウェーハを載置する複数のポケットについて、オリエンテーションフラット部を、一定方向に沿って配置させ、隣接しているポケットの周縁部に対向して配置するとともに、これを近接させ、もって、上記相違点(イ)のとおり特定することに、格別の困難性があるとはいえない。

相違点(ロ)について
引用例1には、凹部にの周縁の一部に、本願発明3の「切り欠き部」に相当する「小凹部」を形成することの記載があるものの(摘記1-4)、その形成位置についての具体的な記載は見当たらない。
これについて検討すると、引用例1(第1図)のほか、引用例2(第4図)及び引用例3(第1図(a))にも示されるとおり、サセプタにウェーハを載置する凹部を複数設けることは既知の事項であり、当該複数の凹部に、上記「小凹部」ないし「切り欠き部」を形成するに際しては、エピタキシャル成長後のウェーハ取り出し(摘記1-4参照)上の利便性等の点から、周囲に隣接する凹部と干渉しない位置とすることは、当業者が容易に想到できることである。しかも、引用例1には、上記のとおり、各凹部の直線部分が、ガス流入側になるように、それぞれの凹部を、一定方向に配列させることが開示されており(摘記1-3参照)、また、引用例3には、サセプタ凹部のオリエンテーションフラットの直線部の延長線を、サセプタ中心方向に向けることにより、当該オリエンテーション部を円周方向にむけて一定方向に配置することが示されている(摘記3-1、第1図(a))。
してみれば、上記一定方向に沿って配置した複数のサセプタ凹部につき、その周縁部に「小凹部」(摘記1-4)ないし「切り欠き部」を形成する場合に、隣接する凹部に干渉しない形成位置とし、また、一定方向に沿って複数配置するようになすことに、格別の困難性があるとはいえない。
以上のとおりであるから、引用例1に記載された各「凹部」周縁に形成する「小凹部」(摘記1-4)に相当する、本願発明3の「切り欠き部」に関して、上記相違点(ロ)のとおり特定することに、格別の困難性があるとすることはできない。
なお、相違点(ロ)における、「サセプタ上に一定方向に沿って複数配置されている」とした点は、請求項3の記載からみて、ポケットの配置状態を記載したものとも読み得るが、この場合についても、上記「相違点(イ)について」及び「相違点(ロ)について」の欄に記載したと同様、引用例1及び3の記載からみて、格別の困難性があるとすることはできない。

以上、「相違点(イ)について」及び「相違点(ロ)について」の欄に記載したとおり、上記相違点(イ)及び(ロ)とした点については、格別に困難なものとはいえず、したがって、本願発明3は、引用例1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である。

IV.むすび
以上のとおり、本願発明3は、引用例1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、本願発明1〜2及び4についてあらためて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-13 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-01-31 
出願番号 特願平6-238477
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 池田 正人
特許庁審判官 岡 和久
大嶋 洋一
発明の名称 エピタキシャル成長装置のサセプタ  
代理人 木村 高久  

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