• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1133349
審判番号 不服2003-20576  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-23 
確定日 2006-03-16 
事件の表示 平成 4年特許願第 45653号「医療用画像データ表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 9月28日出願公開、特開平 5-249948〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯/本願発明
本願は、平成4年3月3日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成14年10月7日付け、平成15年1月27日付け、同年7月16日付け、及び、同年10月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】 読み込んだ原画像データの撮像範囲に対し、医療診断に供する表示用画像データの作成範囲を入力可能な入力手段と、
前記入力された表示用画像データの作成範囲に基づいて前記原画像データから縮小処理または拡大処理により前記表示用画像データを作成する画像データ処理手段と、
前記原画像データと前記表示用画像データを関連付けて格納する画像データ格納手段と、
前記表示用画像データを表示可能な画像データ表示手段とを備えたことを特徴とする医療用画像データ表示装置。」
なお、平成13年7月23日付けでなされた手続補正は、平成14年4月8日付けで補正却下の決定がなされ、既に確定している。

2.引用刊行物
これに対し、当審において、平成17年11月9日付けで通知した拒絶の理由には、本願出願前に頒布された以下の刊行物が引用されており、各刊行物の記載事項は、後述する「2-1.」乃至「2-3.」に記載のとおりである。

刊行物1:特開平3-30961号公報
刊行物2:特開昭63-262763号公報
刊行物3:特開平2-147046号公報

2-1.刊行物1
刊行物1(特開平3-30961号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「デイジタル化画像データの全体または一部分を、レーザプリンタに出力するときに35mmのスライドの大きさに合うように縮小または拡大して、デイジタルメモリ上に複数個並べて蓄積し、該画像データをレーザビーム走査により出力フイルムに書き込むとき、該レーザビームの強度をデイジタル化画像データの値により変調して書き込むことを特徴とするレーザプリンタ。」(1ページ左下欄「特許請求の範囲」)
1b.「本発明は、医師の読影診断に供するデイジタル化医用画像を出力フイルムに書き込むレーザプリンタに係り、特に画質の良い35mmのスライドを作成するのに適したレーザプリンタに関する。」(1ページ左下欄15行〜18行)
1c.「本発明では、レントゲンフイルムなどの画像をデイジタイザによりデイジタル化画像データとしたものをスライドに作成する場合、デイジタル化画像データをCRTモニタに表示し、操作者はスライドにしたい部分をCRT上で指定する。指定された部分の画像データを一旦画像メモリに記憶しておく。・・・必要な画像データが揃つたら、それらの画像データは出力フイルム一枚の上に複数写し込めるように並べかえてレーザプリンタに出力する。出力フイルムに出力された複数の小画像をハサミ等で切り離せば、各々35mmのスライドとなる。」(2ページ左上欄9行〜右上欄1行)
1d.「レントゲンフイルムなどの原フイルムから得られたデイジタル化画像データを磁気テープ装置5に蓄積しておく。・・・磁気テープ装置5からスライドにしようとする画像データを画像メモリA3に読み出し、表示用モニタであるCRTA4の画面に表示する。画像データは第2図に示す如く表示されるが、操作者は第2図の画面の中でスライドにする部分を操作用端末7(当審注;「操作用端末8」は「操作用端末7」の誤記と認められるので、読み替えた。)とトラツクボール9を用いて指定する。第2図で破線で囲まれた部分A1,A2がスライドにする部分である。・・・この指定された部分A1,A2などの画像データは、一旦画像メモリB6に記憶しておく。この時、画像データはレーザプリンタに出力した際に35mmのスライドの大きさになるように予め決まつた寸法に拡大または縮小して画像メモリB6に記憶する。この時の拡大か縮小かは、スライドにする部分を指定したときの原画像の大きさに依存する。」(2ページ右上欄19行〜右下欄6行)

2-2.刊行物2
刊行物2(特開昭63-262763号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
2a.「本発明は医用画像情報の処理方法に関し、一層詳細には、オリジナルとしての医用画像と、前記オリジナルの医用画像に診断情報を表記した作業用の医用画像とを検索データによって関連させた状態でランダムアクセス可能な記録媒体に記録保存し、医療業務の要請に応じて前記オリジナル医用画像および作業用医用画像を取り出し可能にした医用画像情報の処理方法に関する。」(1ページ右下欄1行〜9行)
2b.「検索データとは画像信号によって構成される医用画像に係る固有データを意味する。すなわち、前記検索データは、第4図に示すように、患者情報62、撮影情報64、医用画像の属性情報66および診断情報67から構成される。・・・属性情報66は・・・オリジナルの医用画像47aが格納される画像アドレス(AD0)・・・前記オリジナルの医用画像47aに関連する作業用の医用画像47b、47c、・・・が格納される画像アドレス(ADW)等の情報を含む。」(3ページ左下欄1行〜16行)
2c.「複数の医師による個別の診断が終了すると、医用画像47a、47b、47c、・・・を用いて総合的な診断を行う。すなわち、前記医用画像47a、47b、47c、・・・に係る画像信号は検索データの属性情報66に基づいてハードディスク72および光ディスク74より取り出され、画像出力装置18の高精細ディスプレイ44又は46上に表示される。」(5ページ左上欄17行〜右上欄4行)

2-3.刊行物3
刊行物3(特開平2-147046号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
3a.「医用画像を装置相互間で転送し受信した画像をモニタに表示して診断に供する医用画像転送装置において、他の装置に送信すべきオリジナル画像データを受信側で診断し易い表示用データに送信側において予め変換処理する画像処理部と、他の装置から受信された表示用画像データを変換処理を行うことなくそのまま表示する画像表示部とを備えたことを特徴とする医用画像転送装置。」(1ページ左下欄「特許請求の範囲」)
3b.「予め送信側において送りたいオリジナル画像データを変換処理して少ないデータ量の表示用画像データとなした後転送するので、受信側では受信した表示用画像データをそのままCRTモニタ等に表示して観察することができる。よって送信側において予めオリジナル画像データを受信側で診断し易い表示用画像データとなるように変換処理して送ることにより、受信側では何らの変換処理を行うことなく、画像を直ちに表示させることができる。よって正確な診断を行うことができる。」(2ページ右上欄4行〜13行)
3c.「第1図は本発明の医用画像転送装置の実施例を示すブロック図で、1はデータバスで画像データを所望部に送るためのものである。・・・3は画像メモリでオリジナル画像データを格納するためのもので、X線フィルム上に記録された画像がフィルムディジタイザ等によってディジタルデータに変換されたものが格納されている。・・・例えばNo.1の半切サイズの場合は、・・・1760ピクセル×2140ピクセル×10ビットの全データ量が・・・第4図に示すようにメモリに格納されている。・・・4は画像処理部でマイクロプロセッサ等から構成され、医師等のオペレータの操作に応じて前記画像メモリ3に格納されているオリジナル画像データを読出して、データ圧縮を行うべくデータ変換処理を行うためのものである。・・・CRTモニタの性能としては濃度分解能が問題となり、現在の技術レベルではこの濃度分解能は256(28)階調が限界である。よってこの28階調に従って第3図に示すように、1024ピクセル×1576ピクセル×8ビットのデータ量にデータ圧縮を行うような変換処理を行うものとする。・・・6は伝送部で各種インターフェースを含んでおり、画像メモリ3に格納されているオリジナル画像データを画像処理部4によって変換処理した表示用画像データを回線を介して他の医用画像転送装置に転送するためのものである。またこの伝送部6は他の装置から表示用画像データが転送されてきた場合、このデータを受信して表示部5に表示するように働く。7は磁気ディスク,ハードディスク等から成る大容量メモリで、他の装置から表示用画像データが転送されてきた場合これらのデータを格納するためのものである。これらのデータは必要に応じて読出して表示部5に表示することができる。」(2ページ右上欄16行〜3ページ左下欄2行)
3d.「本実施例によれば、受信側では受信した表示用画像データを何らの変換処理も施さずに、そのまま直ちに表示することができるので応答性を改善することができる。」(3ページ右下欄16行〜20行)
3.対比/判断
上記「2-1.」の記載「1a.」乃至「1d.」から、上記刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レントゲンフイルムなどの画像をフイルムデイジタイザによりデイジタルデータとしたデイジタル化画像データを格納する画像メモリA3、CRTモニタA4に表示される画像メモリA3のデイジタル化画像データについてスライドにしたい部分をCRT上で指定する操作用端末7とトラツクボール9、指定された部分の画像データを記憶する画像メモリB6、画像メモリB6に記憶された画像データを出力フイルムに書き込むレーザプリンタを備え、画像メモリB6に記憶する際、35mmのスライドの大きさになるように予め決まつた寸法に拡大または縮小して画像メモリB6に記憶することを特徴とする装置」
本願発明(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。
後者の、レントゲンフイルムなどの画像をフイルムデイジタイザによりデイジタルデータとした「デイジタル化画像データ」は、前者の、読み込んだ「原画像データ」に相当する。後者の、デイジタル化画像データについてスライドにしたい部分をCRT上で指定する「操作用端末7とトラツクボール9」は、前者の、読み込んだ原画像データの撮像範囲に対し、医療診断に供する表示用画像データの作成範囲を入力可能な「入力手段」に相当し、後者の「画像メモリB6に記憶された画像データ」、は、前者の「表示用画像データ」に相当する。
後者の、画像メモリB6に記憶された画像データを出力フィルムに書き込む「レーザプリンタ」と、前者の、表示用画像データを表示可能な「画像データ表示手段」とは、ともに、画像データを可視化するための「画像データ可視化手段」である。
後者の装置は「画像メモリB6に記憶する際、35mmのスライドの大きさになるように予め決まつた寸法に拡大または縮小して画像メモリB6に記憶する」という機能を有しており、明示はないものの、そのような機能を実現する手段を含んでいるものと認められるから、前者の、「入力された表示用画像データの作成範囲に基づいて前記原画像データから縮小処理または拡大処理により前記表示用画像データを作成する」画像データ処理手段に相当する構成を含んでいるものと認められる。
後者の、デイジタル化画像データを格納する「画像メモリA3」、指定された部分の画像データを記憶する「画像メモリB6」と、前者の、原画像データと表示用画像データを関連付けて格納する「画像データ格納手段」とは、上記相当関係も勘案すれば、ともに、原画像データと表示用画像データを格納する「画像格納手段」である。
また、後者の、デイジタル化画像データを格納する画像メモリA3、スライドにしたい部分をCRT上で指定する操作用端末7とトラツクボール9、指定された部分の画像データを記憶する画像メモリB6、画像メモリB6に記憶された画像データを出力フイルムに書き込むレーザプリンタを備えた「装置」は、上記相当関係及び対応関係も勘案すれば、前者の「医療用画像データ表示装置」に相当する。
以上より、両者は、
「読み込んだ原画像データの撮像範囲に対し、医療診断に供する表示用画像データの作成範囲を入力可能な入力手段と、
前記入力された表示用画像データの作成範囲に基づいて前記原画像データから縮小処理または拡大処理により前記表示用画像データを作成する画像データ処理手段と、
前記原画像データと前記表示用画像データを格納する画像格納手段と、
前記表示用画像データを可視化するための画像データ可視化手段とを備えたことを特徴とする医療用画像データ表示装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
前者が、原画像データと表示用画像データを関連付けて格納し、また、表示用画像データを表示可能な画像データ表示手段を備えているのに対し、後者は、デイジタル化画像データを格納する「画像メモリA3」、指定された部分の画像データを記憶する「画像メモリB6」のデータを関連付けて格納する点は記載されておらず、また、画像の出力にレーザプリンタを用いている点。

上記相違点について検討する。
上記刊行物2には、オリジナルの医用画像47aに、関連する作業用の医用画像47b、47c等を検索データによって関連させた状態でランダムアクセス可能な記録媒体に記録保存するとともに、それらの医用画像47a及び47b、47c等を高細密ディスプレイ上に表示する点が示されており(「2-2.」の記載「2a.」乃至「2c.」参照。)、データの格納、表示の点からみると、刊行物2記載の「オリジナルの医用画像47a」、「作業用の医用画像47b、47c等」が、それぞれ、本願発明の「原画像データ」、「表示用画像データ」に相応するものであるから、本願発明のように原画像データと前記表示用画像データを関連付けて格納する画像データ格納手段を設けるとともに、それらの画像データを画像データ表示手段に表示する点は、上記刊行物2に示された技術事項に基づき当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。
なお、表示用画像データを作成し表示する点に関して、本願明細書の段落【0012】に「画像として表示したいときには、予め作成された表示用画像データが使用されるので、原画像データに対しフォーマット変換をする要がなく、医療用画像データの画像表示の速度を速くすることができる。」旨記載されているが、本願発明の「表示用画像データ」は、このフォーマット変換を不要とする点の構成の限定はなされておらず、また、仮に、「表示用画像データ」がこのようなフォーマット変換を不要とするものを意味するものとしても、上記刊行物3に、表示用画像データに関して、「予め送信側において送りたいオリジナル画像データを変換処理して少ないデータ量の表示用画像データとなした後転送するので、受信側では受信した表示用画像データをそのままCRTモニタ等に表示して観察することができる。よって送信側において予めオリジナル画像データを受信側で診断し易い表示用画像データとなるように変換処理して送ることにより、受信側では何らの変換処理を行うことなく、画像を直ちに表示させることができる。」、「受信側では受信した表示用画像データを何らの変換処理も施さずに、そのまま直ちに表示することができるので応答性を改善することができる。」等、相応する記載(「2-3.」の記載「3b.」、「3d.」参照。)があり、また、表示用画像を格納しておき表示部に表示することも、「7は磁気ディスク,ハードディスク等から成る大容量メモリで、他の装置から表示用画像データが転送されてきた場合これらのデータを格納するためのものである。これらのデータは必要に応じて読出して表示部5に表示することができる。」との記載(「2-3.」の記載「3c.」参照。)からみて、この点は、刊行物3に示されているものと認められ、格別のものということはできない。
したがって、上記刊行物2に示される技術事項を刊行物1記載の発明に適用し、本願発明のように構成する点に格別の困難性は認められない。
そして、本願発明による効果も、刊行物1及び2の記載から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
なお、審判請求人は、上記一致点、相違点の認定及び判断について、平成17年12月21日付け意見書において、「刊行物1記載のものは、レントゲンフィルムの画像から35mmスライドを作成するための装置について開示されているだけであり、PACS(医用画像保存伝送表示システム)に関連するものではない。従って、刊行物1のものは、スライドにするための画像データの保存は一時的なものであって、本願発明のように一時記憶手段ではない格納手段、すなわち、本願発明の実施例ではファイル装置11に記憶することとは全く異なっている。いうなれば、本願発明の特許請求の範囲の構成要件ではない実施例の画像メモリー8が、刊行物1の画像メモリAや画像メモリBに対応し、本願発明の格納手段は、刊行物1の磁気テープ5に対応する。刊行物1では、磁気テープ5に記憶されているのは、原画像の画像データのみである。従って、「前記原画像データと前記表示用画像データを格納する画像格納手段」については、刊行物1には、開示されていない。よって、審判官殿の本願発明と刊行物1との一致点の認定には瑕疵があると言わざるを得ない。以上から、本願発明と刊行物1との相違点の1つは、前者が、表示用画像データを格納するのに対し、後者が、表示用画像データを格納しない点である。さらに、もう1つの相違点は、前者が原画像データと表示用画像データを関連付けて格納するのに対して、後者は、それらを関連付けて格納しない点である。さらに、発明の対象となる装置が両社では全く異なることから、画像の出力手段が異なる点であり、相違点は、少なくとも3つあることになる。
次に、刊行物2について検討する。審判官殿は、2つ目の相違点に関し、・・・と主張されている。しかしながら、刊行物2のものは、作業用の画像を原画像と関連付けて記憶するものであって、表示用の画像を原画像と関連付けて記憶するものとは、全くその技術思想を異にしている。従って、本願発明と刊行物2では、その目的や効果も全く異なっている。刊行物2では、オリジナルの画像を残したままで、何らかの加工(診断情報の表記等)を施した画像も関連させて記憶しておくものであって、作業用画像が、本願発明での、表時変換処理が必要のない表示画像である必要は全くなく、そのことについては全く刊行物2には記載されていない。刊行物1においては、表示用画像データを一時的ではなく格納することについて全く記載がなく、刊行物2には、原画像データと表示用画像データを関連付けて記憶することについては、全く記載がなく、それを示唆する記載も全くない。審判官殿は、2つ目の相違点について、刊行物1と刊行物2から当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められるとされているが、その根拠が全く示されていない。
次に、刊行物3について検討する。刊行物3では、送信側で表示用の画像を作成するので、そのための処理の時間がかかることは明らかであり、処理の時間が短縮されるのは、受信側だけである。これに対して、本願発明では、予め表示用画像を作成しておき格納しているので、変換処理が全く必要がないものである。さらに、審判官殿は、表示用画像を格納しておき表示部に表示することも記載されている旨主張されているが、審判官殿が指摘する部分には、受信側で一旦表示用画像を受信した場合、それを記憶しておくことが記載されているだけである。すなわち、表示用画像データを作成して原画像データを関連付けて記憶しておくこととは異なる。つまり、刊行物3では、表示用画像データを受信していないものを表示するたびに送信側で変換処理が必要となるが、本願発明では、そのような場合でも変換処理が必要ない。さらに、刊行物3では、受信したものを記憶しておくだけであり、表示用画像データと原画像データとを関連付けて記憶するものでもない。
・・・以上の説明から明らかなように、審判官殿の主張は、刊行物1乃至3の瑕疵のある認定に基づくものであって、到底承服できない。
刊行物1に対して、刊行物2及び3に記載の技術事項を適用するといっても、どのように適用されるのであろうか。刊行物1に対して、刊行物2を適用すると、刊行物1に作業用データに相当するものが存在するかどうかは不明であるが、刊行物1において、作業用画像データを磁気テープに格納することになる。さらに、それに、刊行物3を適用すると、表示用画像を送信側で作成するものであるから、磁気テープから画像データを送信する際に表示用画像データを作成することになる。そして、一旦作成した表示用画像データは、一時的に画像メモリAに記憶されることになり、画像メモリAの容量が許す限りの枚数の表示用画像データが記憶され、それらから所望のものを読み出して表示することができるといったものが考えられる。このような構成のものは、明らかに本願発明の構成とは異なるものである。」と主張しているので、これらの主張について検討する。
(1)「前記原画像データと前記表示用画像データを格納する画像格納手段」については、刊行物1には、開示されていないとの主張について
上記主張は、「刊行物1のものは、スライドにするための画像データの保存は一時的なものであって、本願発明のように一時記憶手段ではない格納手段、すなわち、本願発明の実施例ではファイル装置11に記憶することとは全く異なっている。」との主張を前提とするものと認められる。しかしながら、刊行物1には、上記したように、デイジタル化画像データを格納する「画像メモリA3」、指定された部分の画像データを記憶する「画像メモリB6」が記載されているのであり、また、特許請求の範囲の記載からみて、本願発明の「画像データ格納手段」が一時的記憶手段を除外しているものであると解することもできないから、上記主張は、刊行物1の記載内容、及び、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、採用できない。
また、刊行物1は、PACS(医用画像保存伝送表示システム)に関連するものではないとも主張しているが、本願発明がPACSに特に限定されるものでもないから、この点を差異とする主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、採用できない。
(2)刊行物2及び3に関する主張等について
この点に関しては、上記相違点の検討で述べたとおりである。
したがって、上記意見書の主張は採用しない。

以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が、上記のとおり特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-19 
結審通知日 2006-01-20 
審決日 2006-01-31 
出願番号 特願平4-45653
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 山口 敦司
後藤 時男
発明の名称 医療用画像データ表示装置  
代理人 堀口 浩  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ