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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02G |
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管理番号 | 1133406 |
審判番号 | 不服2003-4144 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-14 |
確定日 | 2006-03-20 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 3513号「電気回路材および該電気回路材を備えた電気接続箱」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月28日出願公開、特開2000-209744〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年1月8日の出願であって、平成15年1月30日(起案日)に拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年3月14日に審判請求が行われるとともに、同年4月11日付けで手続補正が行われたものである。 2.平成15年4月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)の補正却下について [補正却下の決定の結論] 平成15年4月11日付け手続補正を補正却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1及び請求項2に記載された発明 本件補正により、特許請求の範囲は次のものとなった。 【請求項1】 電気接続箱の内部回路として収容するバスバーを、垂直部の先端に端子を形成した端子用単品材と、一定幅の連続材からなる連結用単品材とを組み合わせて形成し、該連結用単品材を連続縦バスバーとして用いると共に、所要位置で屈曲させ、かつ、該連続縦バスバーの上部あるいは/および下部の所要位置に、上記端子用単品材を溶接、圧接あるいはリベットで接続して構成している電気回路材を備え、上記電気回路材を電源回路として収容していることを特徴とする電気接続箱。 【請求項2】 上記端子用単品材は多車種に共用されるものであり、先端にタブを設けた平板状で溶接あるいはリベットで上記連続縦バスバーに接続するもの、上記連続縦バスバーに嵌入する切欠を備えて圧接で接続すると共に他端に電線接続用の圧接刃を備えたスロットを切り欠いたもの、先端にメス端子部を設けた平板状で溶接あるいはリベットで上記連続縦バスバーに接続するものからなる請求項1に記載の電気接続箱。 (2)比較 A.上記の本件補正と比較・検討される、平成14年12月19日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1は次のとおりの記載である。 「電気接続箱の内部回路として収容するバスバーを、一定幅とした連続材からなる連続縦バスバーに、両端に圧接刃を備えた形状の端子用単品材を接続して形成し、上記連続縦バスバーは所要位置で回路形状に屈曲させていると共に、該連続縦バスバーの長さ方向の中間位置の上部あるいは/および下部の所要位置に、上記両端に圧接刃を備えた端子用単品材を、その一方の圧接刃を上記連結用単品材に上方あるいは/および下方より圧接接続させて連結していることを特徴とする電気回路材。」 ここで「上記連結用単品材」なる記載があるが、この「上記」より前の部分には「連結用単品材」は記載されていない。この点について本願明細書及び図面の記載を参酌して検討すると、「連結用単品材」は「連続縦バスバー」の誤記であると認められる。よって「連結用単品材」を「連続縦バスバー」とした以下のとおりの請求項1を、平成14年12月19日付けの特許請求の範囲の請求項1として認めるものである。 「電気接続箱の内部回路として収容するバスバーを、一定幅とした連続材からなる連続縦バスバーに、両端に圧接刃を備えた形状の端子用単品材を接続して形成し、上記連続縦バスバーは所要位置で回路形状に屈曲させていると共に、該連続縦バスバーの長さ方向の中間位置の上部あるいは/および下部の所要位置に、上記両端に圧接刃を備えた端子用単品材を、その一方の圧接刃を上記連続縦バスバーに上方あるいは/および下方より圧接接続させて連結していることを特徴とする電気回路材。」 B.本件補正で補正された請求項1について、審判請求人は「出願時の特許請求の範囲の請求項1+請求項3」に該当すると主張しているが、本件補正後の請求項1と、平成14年12月19日付手続補正による本件補正前の請求項1及び請求項3とを比較すると、 a.本件補正によって、補正前の請求項1の「両端に圧接刃を備えた形状の端子用単品材」から、補正後の請求項1の「垂直部の先端に端子を形成した端子用単品材」に変更されている。 b.本件補正によって、補正前の請求項1の連続縦バスバーが「所要位置で回路形状に屈曲させ」から「該連結用単品材を連続縦バスバーとして用いると共に、所要位置で屈曲させ」に変更され、また連続縦バスバーに端子用単品材を取り付ける箇所についても「連続縦バスバーの長さ方向の中間位置の上部あるいは/および下部の所要位置」から「連続縦バスバーの上部あるいは/および下部の所要位置」に変更されている。 c.本件補正によって、連続縦バスバーに端子用単品部材を接続する方法が「両端に圧接刃を備えた端子用単品材を、その一方の圧接刃を上記連結用単品材に上方あるいは/および下方より圧接接続させて連結して」から「端子用単品材を溶接、あるいはリベットで接続して」に変更されている。 (3)検討 上記の(2)Bのa〜cの補正はいずれも、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当せず、また補正前の請求項1および請求項3に記載された発明のいずれの発明特定事項を限定したものでもなく、特許請求の範囲の減縮にも該当しない。 (4)むすび したがって、上記のような補正を含む本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第4項の規定の要件を満たしていないので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成15年4月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成14年12月19日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1は次のとおりであると認められるものである(上記2.(2)Aを参照)。 「電気接続箱の内部回路として収容するバスバーを、一定幅とした連続材からなる連続縦バスバーに、両端に圧接刃を備えた形状の端子用単品材を接続して形成し、上記連続縦バスバーは所要位置で回路形状に屈曲させていると共に、該連続縦バスバーの長さ方向の中間位置の上部あるいは/および下部の所要位置に、上記両端に圧接刃を備えた端子用単品材を、その一方の圧接刃を上記連続縦バスバーに上方あるいは/および下方より圧接接続させて連結していることを特徴とする電気回路材。」(以下、「本願発明」という) 4.引用文献 (4-1) これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された実願昭63-56613号(実開平1-162715号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という)には、電気接続箱におけるブスバーの接続構造が記載されていて、図面とともに次の事項が記載されている。 a.「従来、自動車の配線に用いられる電気接続箱として第8図に示すようなものがある。1はメインケース、2はアンダーケースで、ケース2には複数のブスバー3がその巾方向に縦に並列して収納、固定されている。4は平面は位置された分岐ブスバーで、一端のL形折曲片4aを第9図に示す如く上下一対の電極E、E’で所望のブスバー4にスポット溶接し、他端に形成した端子接続部4bをメインケース1に設けたコネクタハウジング5a、ヒューズキャビティ5b、リレーキャビティ5cなどの結合部内に挿着する。」(明細書第1頁第19行〜第2頁第9行) b.「分岐ブスバー18は長短様々であるが一端にブスバー接続部19、他端に端子接続部20を有する。ブスバー接続部19は、第4図aおよび5図に示す如く、一端のL形折曲片19aと、その側縁にスリット19bを介して折返し連成した折返し片19a’から成る一対の弾性狭持片として形成され、該弾性狭持片の先端部は拡開されて挿入ガイド19cとなっている。端子接続部20は、分岐ブスバー18の他端のL形折曲片20aを手前に傾斜して折返した折返し片20bを利用して上記と同様に一対の弾性狭持片20b、20b’を形成して成る。これらの分岐ブスバー18は、ケース本体10の内壁に縦に凹接したブスバー配設溝21に載置され、該溝21、21間に突接したボス22を第6図a、bに示す如く加熱及び加圧により押し潰すなどの方法により固定される。・・・・・また、隣接するまたは離れたブスバー12、12を相互に導通させるためには、第4図bに示すように、両端にブスバー接続部19、19’を設けたジャンクションブスバー18’を使用する。」(明細書第5頁第7行〜第6頁第18行) c.「第1図において、ケース本体10と裏カバー11をその位置決めピン24とピン孔25とにより突き合わせて両者を組合わせると、各分岐ブスバー18のブスバー接続部19(第1、3図における符号J1、J2、J3・・・)の一対の弾性狭持片19a、19a’が第4図のように対応する(縦)ブスバー12に嵌挿、接続される。・・・分岐ブスバー18とブスバー12との接続は、その一対の弾性狭持片19a、19a’をブスバー12に挿し込むだけできわめて簡単である。そして、第4図に矢印P、Qで示される如く、前後、左右に自由にずらすことができるから、その端子接続部20とヒューズキャビティ17などとの位置やピッチ合わせを容易に行うことができると共に、分岐ブスバー18とブスバー12の接続相手を互に変ることにより回路構成も容易に変更することができる。」(明細書第7頁第9行〜第8頁第14行) 上記の記載事項及び図面を参酌すると、引用文献1には、「電気接続箱のケース内に収容されるブスバーを、巾方向に縦に収納・固定されたブスバー(12)に、両端にブスバー接続部(19)を設けたジャンクションブスバー(18’)を接続して形成し、該縦方向に縦に収納・固定されたブスバー(12)の必要な所用位置に、該両端にブスバー接続部(19)を設けたジャンクションブスバー(18)を接続させて連結していることを特徴とする電気回路材」が記載されている。 (4-2) また、原査定の拒絶の理由で引用された実願昭56-26096号(実開昭57-140184号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という)には、コネクタハウジングが記載されていて、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「第3図において、Cはブスバー回路板、Dは回路板Cに挿着される外部配線接続用のコネクタハウジング、EはハウジングDに内挿される雄端子、Fはクリップ状の端子である。ブスバー回路板Cは、複数のブスバー回路131、132および133を、ハウジング15を一体的に形成した蓋板16と、ハウジング15に対する嵌着溝20を設けた絶縁基板19との間に狭持して構成する。ブスバー回路131は、従来と同様に細巾帯状であるが、絶縁基板19の面に直交した状態で所望のパターンを有して折曲加工により形成され、その先端部にT字状の雄端子部14が形成されている。この雄端子部14は、回路の一面にほぼ直交して折り曲げ連成した第1の折曲片14aと、該片14aの先端延設部を折返し重合しかつ前端が回路の他面側にのびる折返し重合板14bと、該板14bの先端延設部を回路の他面に向けて折返した第2の折曲片14cとにより成る。そして、第2の折曲片14cの先端は場合により、ブスバー回路132に示す如く、重合部14dを介して更に延設し、他のブスバー回路132’を構成する。即ち、この場合には1本のブスバー回路132-132’の中間に押す端子部14が形成されている。なお、ブスバー回路133は直線状であり、雄端子部を有しない。」(明細書第5頁第3行〜第6頁第13行) 5.対比 本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載されている「巾方向に縦に収納・固定されたブスバー」「ジャンクションブスバー」はそれぞれ、本願発明における「連続縦バスバー」「端子用単品材」に相当するものである。引用文献1において図面を参酌する限と、ブスバーは一定幅を有することは明らかであり、また更に引用文献1においても、巾方向に縦に収納・固定されたブスバーの所用位置にジャンクションブスバーを接続しているので両者は、 「電気接続箱の内部回路として収容するバスバーを、連続材からなる連続縦バスバーに、端子用単品材を接続して形成し、該連続縦バスバーの長さ方向の所要位置に、端子用単品材を接続させて連結していることを特徴とする電気回路材。」 である点で一致するが、以下の点において相違している。 (相違点1)本願発明においては、連続縦バスバーを「所用位置で回路形状に屈曲させている」のに対し、引用文献1に記載された発明には、上記の構成がない点。 (相違点2)本願発明においては、端子用単品材は「両端に圧接刃を備えた形状」であるのに対し、引用文献1に記載された発明では、端子用単品材の両端に「ブスバーとの接続部」を有するに過ぎない点。 (相違点3)本願発明においては、「端子用単品材が連続縦バスバーの長さ方向の中間位置の上部あるいは/および下部の所定位置に圧接接続されている」のに対し、引用文献1に記載された発明には、このような構成がない点。 6.判断 (6-1)相違点1について検討する。 上記の(4-2)に示されるように、引用文献2には電気接続箱内に収容される連続縦バスバーを、回路形状に屈曲させて使用する構成が記載されている。この屈曲が回路として必要な所用位置で行われることは当然な事項であり、この引用文献2に記載の公知な構成を、引用文献1に記載された発明に適用することは、当業者にとって容易な事項に過ぎない。 (6-2)相違点2について検討する。 先の拒絶査定時において挙げられた特開平8-227736号公報(以下、「周知例」という)に記載されているように、連続縦バスバーに圧接接続させる端子用単品材を、その両端に圧接刃を備えた形状と為すことは周知な事項であり(周知例の明細書【0022】段、図面第3〜5図等を参照)、この周知な構成を、引用文献1に記載された発明に対して用いることに格別の困難性は認められない。 (6-3)相違点3について検討する。 上記(6-2)で検討したように、周知の両端に圧接刃を備えた形状の端子用単品材を、引用文献1に記載された発明に対して適用することに格別の困難性は認められず、その際、連続縦バスバーの長さ方向の中間位置の上部あるいは/および下部の所定位置、要するに必要な電気的接続を行う必要のある位置において、該連続縦バスバーに圧接接続することは、当業者が設計変更として適宜行うことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用文献1に記載された発明、および引用文献2、周知例に記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明および引用文献2、周知例に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2〜4に係る発明について審理するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-05 |
結審通知日 | 2006-01-17 |
審決日 | 2006-01-30 |
出願番号 | 特願平11-3513 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(H02G)
P 1 8・ 121- Z (H02G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清田 健一 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
櫻井 仁 水垣 親房 |
発明の名称 | 電気回路材および該電気回路材を備えた電気接続箱 |
代理人 | 大和田 和美 |