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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1133410 |
審判番号 | 不服2003-11224 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-18 |
確定日 | 2006-03-20 |
事件の表示 | 特願2000-246644「粒子分散材料中の粒子充填構造の測定技術、及びそれを用いた評価装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年2月28日出願公開、特開2002-62254〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年8月16日の出願であって、平成15年5月14日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年7月18日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年7月18日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 不定形マトリックスを持つ粒子分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をその光学的異方性に基づいて観察し、測定する方法であって、(1)粒子状材料を原料とし、樹脂系材料に混合、混練し、粒子-樹脂・分散材料を作製する、(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を薄片化して薄片試料を作製する、(3)上記試料に単色光を照射してその透過・偏光像を観察し、粒子-樹脂・分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をin-situで測定する、ことを特徴とする粒子分散材料の内部構造の測定方法。」は 「【請求項1】 不定形マトリックスを持つ粒子分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をその光学的異方性に基づいて可視化して観察し、測定する方法であって、(1)粒子状材料を原料とし、樹脂系材料に混合、混練し、粒子-樹脂・分散材料を作製する、(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を単色光が透過できるμmオーダの厚さに薄片化して透過観察用薄片試料を作製する、(3)上記試料に単色光(赤外線を除く)を偏光化して照射してその透過・偏光像を、輝部として検出される光学的異方性に基づいて観察し、粒子-樹脂・分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をin-situで測定する、ことを特徴とする粒子分散材料の内部構造の測定方法。」 と補正された。 (2)補正の目的 上記補正は、請求項1に記載中の「その光学的異方性に基づいて観察し」を「その光学的異方性に基づいて可視化して観察し」と観察態様を可視化に限定して補正し、「薄片試料を作製する」を「単色光が透過できるμmオーダの厚さに薄片化して透過観察用薄片試料を作製する」と補正することによって、薄片試料の構成を限定すると共に、「(3)上記試料に単色光を照射してその透過・偏光像を観察し、」を「(3)上記試料に単色光(赤外線を除く)を偏光化して照射してその透過・偏光像を、輝部として検出される光学的異方性に基づいて観察し、」と補正することによって、「単色光」を「単色光(赤外線を除く)」と限定し、その透過・偏光像の観察を「輝部として検出される光学的異方性に基づいて」観察するものに限定したものである。 よって、請求項1の補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (3-1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-318713号(特開2001-141647号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。 (A)「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、粒子集合体構造の赤外線を用いた検査方法に関するものである。」 (B)「【0004】 しかし、通常の光学顕微鏡で観察し得る可視光域では成形体の透明性が低く、評価可能な最大の厚みは0.5ミリ程度が限度であった。また、強度が弱く折れやすい粒子集合体の評価を行う場合には、薄く加工することが極めて困難であった。より正確且つより簡便に材料を評価するために、より厚い粒子集合体を用いて評価する手法が要望されている。」 (C)「【0013】 また、前記被検体2の内部を観察するために動作波長が0.65〜20μmの透過型赤外線顕微鏡4を用いたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子集合体構造の赤外線を用いた検査方法に係るものである。」 (D)「【0035】 第三実施例は、図2に示したように被検体2として厚み1mmのアルミナ成形体を、また含浸媒3としてヨウ化メチレン(アルミナとの比屈折率1.0)を用いた場合の赤外線偏光顕微鏡により検査する検査方法である。 【0036】 赤外線偏光顕微鏡は、透過型赤外線顕微鏡4の光源5側及び対物レンズ7側に、それぞれ偏光子8A及び検光子8Bを設けたものである。 【0037】 この赤外線偏光顕微鏡を用いてそれぞれの偏光子8A及び検光子8Bを通過する直線偏光の振動方向が直交する直交ニコル観察を行った。直交ニコル観察でアルミナなどの光学的異方体を回転させると、45度回転させるごとに試料が明暗を繰り返す性質がある。 【0038】 被検体2を構成する粉体粒子1が配向している場合、即ち粒子の結晶軸の方位がある程度そろっている場合には、被検体2を回転させると45度回転させるごとに試料が明暗を繰り返す。 【0039】 また、被検体2中に粗大な粒子が存在していれば、被検体2を回転させると45度回転させるごとに粗大粒子が明暗を繰り返す。 【0040】 従って、第3実施例により被検体2中のアルミナ微細粒子の配向構造が観察でき、また同時に欠陥発生の原因となるアルミナの粗大粒子が選択的に明瞭に観察できた。 【0041】 また、このような偏光観察に透過型赤外線顕微鏡4を用いたから、厚い被検体2の中の配向構造や粗大粒子を観察することができ、容易に試料を作成できると共に試料の情報を従来より極めて正確に把握できることとなる。」 (E)「【0043】 第四実施例は、図4に示すようにセラミックスのテープ成形に本発明の検査方法を適用した例である。 【0044】 この場合、被検体2はアルミナ粒子に結合剤や分散剤や溶媒などの所定の添加物を添加したスラリー9がドクターブレード10によって均等な厚さに広げられたシート状の成形体で、乾燥されながら移動していく被検体2を連続的に検査できるよう構成されている。 【0045】 従って、第四実施例に示した検査方法を用いれば、成形体中の全体にわたって欠陥および不均一の情報を極めて容易に得られるから、品質低下の原因となるような重大な欠陥のある部分を除去したり、これらの欠陥および不均一の発生原因を調べてプロセスにフィードバックすることにより、大幅な品質向上やコスト削減が期待できる。」 (3-2)対比 そこで本願補正発明と先願明細書に記載された発明(以下、「先願発明」という。)とを対比すると、 (ア) 先願発明において、第4実施例として、第3実施例の検査方法を適用したものは、被検体2としては、アルミナ粒子に結合剤や分散剤や溶媒などの所定の添加物を添加したスラリー9がドクターブレード10によって均等な厚さに広げられたシート状の成形体を乾燥したものを用い(段落44,45)、検査方法としては、透過型赤外線顕微鏡4の光源5側及び対物レンズ7側に、それぞれ偏光子8A及び検光子8Bを設けた赤外線偏光顕微鏡を用いて、アルミナなどの光学異方体をそれぞれの偏光子8A及び検光子8Bを通過する直線偏光の振動方向が直交する直交ニコル観察を行ってアルミナ微粒子の配向構造を観察するもの(段落35〜41)であり、上記「アルミナ粒子に結合剤や分散剤や溶媒などの所定の添加物を添加したスラリー9」は不定形マトリックスを持つ粒子分散材料であるから、上記先願のものは、本願補正発明の「不定形マトリックスを持つ粒子分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をその光学的異方性に基づいて可視化して観察し、測定する方法」に相当する。 (イ) 先願明細書には、「アルミナ粒子に結合剤や分散剤や溶媒などの所定の添加物を添加したスラリー9・・・均等な厚さに広げられたシート状の成形体」などセラミックのテープ成形体を赤外偏光透過測定の測定対象物とすることが記載されており(段落43,44)、通常アルミナ製のテープ成形体は、アルミナ粉末に焼結助剤としてのシリカ(SiO2)やSiO2含有ガラス、アクリル樹脂、溶剤としてのキシレンなどを混成してテープ成形するという製造工程を有する(必要なら、例えば、特開平10-316475号公報、特開平7-336052号公報、特開平10-203863号公報参照)のであり、これは本願補正発明に於ける、(1)粒子状材料を原料とし、樹脂系材料に混合、混練し、粒子-樹脂・分散材料を作製する、(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を薄片化して薄片試料を作製する、なる各工程に相当する。 (ウ)先願発明において、直交ニコル観察でアルミナなどの光学的異方体を回転させると、45度回転させるごとに試料が明暗を繰り返す性質があるから、被検体2を構成する粉体粒子1が配向している場合、即ち粒子の結晶軸の方位がある程度そろっている場合には、被検体2を回転させると45度回転させるごとに試料が明暗を繰り返す。それによって、被検体2中のアルミナ微細粒子の配向構造が観察でき、また同時に欠陥発生の原因となるアルミナの粗大粒子が選択的に明瞭に観察できたことが記載されており、これは本願補正発明の(3)上記試料に単色光を偏光化して照射してその透過・偏光像を、輝部として検出される光学的異方性に基づいて観察し、粒子-樹脂・分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)を測定する、行程に相当する。 (エ)先願の実施例4は、テープ成形過程において検査されているのであるから、「in-situ」で検査されている。 以上のことから、本願補正発明と先願発明とは、 「不定形マトリックスを持つ粒子分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をその光学的異方性に基づいて可視化して観察し、測定する方法であって、(1)粒子状材料を原料とし、樹脂系材料に混合、混練し、粒子-樹脂・分散材料を作製する、(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を単色光が透過できる厚さに薄片化して透過観察用薄片試料を作製する、(3)上記試料に単色光を偏光化して照射してその透過・偏光像を、輝部として検出される光学的異方性に基づいて観察し、粒子-樹脂・分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をin-situで測定する、粒子分散材料の内部構造の測定方法。」 で一致し、以下の点で一応相違する。 〈相違点a〉:透過観察用試料が、本願補正発明では、μmオーダの厚さに薄片化した透過観察用薄片試料であるのに対し、先願発明においては、ドクターブレード10によって均等な厚さに広げられたシート状の成形体である点。 〈相違点b〉:本願補正発明では、単色光として、単色光(赤外線を除く)を用いているのに対し、先願発明では、動作波長が0.65〜20μmの単色光を用いた点。 (3-3)判断 そこで、上記相違点について検討する。 〈相違点a〉について 先願発明においては、従来のものが試料を薄くする必要があった(段落4)ものを、それより厚い試料でも測定可能としたものであって、実施例としては、5mm(段落23)、1mm(段落35)、0.5mm(500μm)(段落31)のものが用いられている。試料を厚くすることは使用する波長によって制限されるものであるが、薄くすることについては試料の強度等によって制限されることがあるにしても、光が透過し易くなるので原理的に制限されるものではないことは明らかである。 それ故、実施例として、500μmの厚さの試料が用いられており、さらに、従来の500μm程度以下の厚さの試料の使用を妨げるものではないから、500μm以下の厚さの試料をも包含するものと理解するのが自然である。 よって、先願発明はμmオーダーの厚さの試料を包含するものである。 〈相違点b〉について 本願補正発明においては、段落【0018】に「透過観察を用いる際は、粒子分散材料を薄片試料化する。この時の技術的要件は、用いる光源や電子線源からの単色光などが透過できる厚さにすることのみであり、その方法についても、特に制限されない。」と記載されているように、単色光の波長の違いによって格別の効果の差違を生じるものではなく、請求人が審判請求理由において主張する「本願発明は、出願1に記載の赤外線(粉体粒子の直径より赤外線の波長が充分長い場合)を使用することなく、通常光(単色光)を使用することで所期の目的を達成し得る利点を有している。」も、赤外線を積極的に排除することによって積極的な効果を奏するというものではなく、単色光が透過できる程度に試料の厚さを薄くすることによって波長依存性を考慮する必要がないというだけのものである。 一方。先願発明では、粒子の大きさによって透過できる波長が決められるのであって、長い波長を用いるほどより大きな粒子によっても散乱されることなく透過できるのであるから、透過できる試料もより厚いものとなる。逆に言えば、試料が薄ければ、従来どおり短い波長でも透過できることとなる。 そこで、先願発明としては、従来のものに比べて効果を期待できる波長として0.65〜20μmを選択したものである。 ここで、上記波長のうち0.65〜0.70μmは一般に可視光領域とされているから、この範囲においては本願補正発明の単色光(赤外線を除く)の範囲に属するものである。 以上のとおり、本願補正発明と先願発明とは、上記相違点a、bに係る構成に関して共通する部分を有するものであるから、上記相違点aおよびbは実質的な相違とはいえない。 また、本願補正発明と先願発明とは、粒子分散材料の内部構造を光学的異方性を利用して可視化して観察するという共通の作用・効果を奏するものである。 したがって、本願補正発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた上記先願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記先願に係る発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成15年7月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年11月5日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 不定形マトリックスを持つ粒子分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をその光学的異方性に基づいて観察し、測定する方法であって、(1)粒子状材料を原料とし、樹脂系材料に混合、混練し、粒子-樹脂・分散材料を作製する、(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を薄片化して薄片試料を作製する、(3)上記試料に単色光を照射してその透過・偏光像を観察し、粒子-樹脂・分散材料の内部構造(粒子状材料の充填構造又は分散状態)をin-situで測定する、ことを特徴とする粒子分散材料の内部構造の測定方法。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-318713号(特開2001-141647号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(先願明細書)の記載事項は、上記「2.(3)(3-1)引用例」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記「2.(3)(3-2)対比」「2.(3)(3-3)判断」で検討した本願補正発明における「光学的異方性に基づいて可視化して観察し、」の記載から「可視化して」の限定事項を省いて「光学的異方性に基づいて観察し、」とすると共に、「(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を単色光が透過できるμmオーダの厚さに薄片化して透過観察用薄片試料を作製する、(3)上記試料に単色光(赤外線を除く)を偏光化して照射してその透過・偏光像を、輝部として検出される光学的異方性に基づいて観察し、」の記載から、「単色光が透過できるμmオーダーの厚さ」、「単色光(赤外線を除く)を偏光化して」、「輝部として検出される光学的異方性に基づいて」等の限定事項を省いて「(2)得られた粒子-樹脂・分散材料を薄片化して薄片試料を作製する、(3)上記試料に単色光を照射してその透過・偏光像を観察し、」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)(3-3)」に記載したとおり、先願明細書に記載された発明であるから、上記限定事項を省いた本願発明も、同様の理由により、先願明細書に記載された発明であるということができる。 (4)むすび 以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた上記先願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記先願に係る発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-23 |
結審通知日 | 2006-01-24 |
審決日 | 2006-02-07 |
出願番号 | 特願2000-246644(P2000-246644) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋口 宗彦 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 粒子分散材料中の粒子充填構造の測定技術、及びそれを用いた評価装置 |
代理人 | 須藤 政彦 |