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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A61C
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A61C
管理番号 1133420
審判番号 訂正2003-39091  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-20 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-05-07 
確定日 2006-03-08 
事件の表示 特許第2857088号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2857088号発明(平成7年11月9日特許出願、平成10年11月27日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、訂正内容として、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした請求項1に係る訂正事項を含むものである。
上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「患者の各処置部位毎の歯科処置情報を登録して記憶する登録手段と、
患者に対する治療時に処置を行なう処置部位を入力する処置部位入力手段と、
前記処置部位入力手段より入力された処置部位に対する処置情報を入力する処置情報入力手段と、
前記処置情報入力手段により入力された処置情報が同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報入力であったか否かを前記登録手段の登録内容を基に判別する判別手段と、
前記判別手段による判別の結果、入力された処置情報が不適切な処置情報入力であった場合に、不適切な入力項目を対応する過去の入力項目を含めて一覧表表示する一覧表表示手段と、
前記一覧表表示手段の表示を確認して一覧表表示された前記入力項目の中から再入力する項目が選択された場合に、当該選択項目の入力画面を表示して当該項目の入力を可能とする入力項目許可手段と、
前記入力項目許可手段による入力のあった項目に対する入力情報を対応する部位の過去の対応する全ての入力に対して一括変換して前記登録手段に再登録する再登録手段とを備えることを特徴とする歯科情報処理装置。」
(上記請求項1に係る発明を、以下、「本件訂正発明」という。)

2.訂正拒絶理由
一方、平成17年2月25日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。
本件訂正発明は、下記の引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、他の訂正事項について検討するまでもなく、本件訂正発明に係る訂正事項を含む当該訂正は、平成15年改正前の特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(引用刊行物)
株式会社ジーシー製のマニュアル「歯科医院用コンピュータシステム
RECEFISII MANUAL」

3.引用刊行物に記載の発明
上記引用刊行物には、「歯科医院用コンピュータシステム」に関し、以下の事項が記載されている。
(ア)
『情報登録機能は次の3種類の登録をすることができます。
●患者登録
患者名、保険者番号などの患者個人に関する情報を登録します。患者が
新規に来院した時に作成・登録し、以降は登録済みの患者登録表を呼び出
し使用します。
●病名、処置登録
治療した後に、部位病名・療法、処置などを入力します。ここに入力し
たデータが合算され、レセプトなどに印刷されます。
●口腔内情報登録
患者の口腔内の情報を登録します。初診時と最終時の情報が表示されま
すが、初診時に一度入力すると処置を入力するごとに最終情報が自動的に
更新されます。』(第15頁第2〜11行)
(イ)
『〔4〕(注:マル数字の替わりに、数字を〔〕で括って表記した。)部位・病名・処置入力欄
・画面左側は部位・病名入力欄、画面右側は処置入力欄になります。欄間の
カーソルの移動は、カーソル移動キーで行います。』(第24頁下から第12〜10行)
(ウ)
『〔vf・3〕(注:「vf・3」キーのマークを、このように表記した。以下、同様。):チェック機能
入力済みの病名・処置内容の間違いをチェックします。
〈操作〉
1.病名、処置名入力後、〔vf・3〕を押すと画面下に間違って入力した内
容が一覧表に表示されます。(誤入力がない場合、「チェック項目はあり
ません」というメッセージが表示されます。)
2.一覧表内の項目にカーソルを移動し〔┘〕(注:「ENTER」キーのマー
クをこのように表記した。)を押すと、病名欄・処置欄の誤入力部分に
カーソルが移動します。
3.誤入力部分を訂正します。
4.訂正後、まだ誤入力が残っている場合、〔HOME CLR〕(注:「HOME
CLR」キーのマークを、このように表記した。)を押しカーソルをチェッ
クウインドウに戻し操作を繰り返します。』(第29頁下から第2行〜第30頁第9行)

これらの記載事項を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「患者名、保険者番号などの患者個人に関する情報を登録する患者登録機能と、治療した後に、部位病名・療法、処置などを入力する病名、処置登録機能と、患者の口腔内の情報を登録する口腔内情報登録機能と、入力済みの病名・処置内容の間違いをチェックするチェック機能を備え、当該チェックを行う際には、間違って入力した内容が画面に一覧表で表示され、該一覧表内の項目の誤入力部分にカーソルを移動して誤入力部分を訂正し、情報を更新することができるようにした歯科医院用コンピュータシステム。」

なお、上記引用刊行物については、本件特許に対する異議11-73044号事件において、異議申立人鍵野豊祐が証拠として提出したものであり、同じく提出した参考資料1(歯科臨床家のための総合誌「ザ・クインテッセンス vol.11 no.11」1992年11月10日発行の広告頁)及び参考資料2(歯科の総合情報誌「Dental Diamond VOL.17 NO.228」1992年11月1日発行の広告頁)によれば、上記の「歯科医院用コンピュータシステム RECEFISII」が本件特許の出願前に既に販売されていたものと認められるから、その操作マニュアルである上記引用刊行物も、同様に頒布されていたものと解するのが相当である。

4.対比
本件訂正発明と引用発明とを対比すると、その作用・機能からみて後者の「部位病名・療法、処置などを入力する病名、処置登録機能」に係る構成及び「患者の口腔内の情報を登録する口腔内情報登録機能」に係る構成が前者の「患者の各処置部位毎の歯科処置情報を登録して記憶する登録手段」、「患者に対する・・・処置部位を入力する処置部位入力手段」及び「処置部位入力手段より入力された処置部位に対する処置情報を入力する処置情報入力手段」に相当し、以下同様に、後者の「入力済みの病名・処置内容の間違いをチェックするチェック機能」に係る構成が前者の「処置情報入力手段により入力された処置情報が・・・不適切な処置情報入力であったか否かを登録手段の登録内容を基に判別する判別手段」に、後者の「間違って入力した内容が画面に一覧表で表示」するための構成が前者の「判別手段による判別の結果、入力された処置情報が不適切な処置情報入力であった場合に、不適切な入力項目を・・・一覧表表示する一覧表表示手段」に、後者の「一覧表内の項目の誤入力部分にカーソルを移動して誤入力部分を訂正」するための構成が前者の「一覧表表示手段の表示を確認して一覧表表示された入力項目の中から再入力する項目が選択された場合に、・・・当該項目の入力を可能とする入力項目許可手段」に、後者の「情報を更新する」ための構成が前者の「登録手段に再登録する再登録手段」に、後者の「歯科医院用コンピュータシステム」が「歯科情報処理装置」に、それぞれ相当している。
したがって、両者は、
「患者の各処置部位毎の歯科処置情報を登録して記憶する登録手段と、
患者に対する処置部位を入力する処置部位入力手段と、
前記処置部位入力手段より入力された処置部位に対する処置情報を入力する処置情報入力手段と、
前記処置情報入力手段により入力された処置情報が不適切な処置情報入力であったか否かを前記登録手段の登録内容を基に判別する判別手段と、
前記判別手段による判別の結果、入力された処置情報が不適切な処置情報入力であった場合に、不適切な入力項目を一覧表表示する一覧表表示手段と、
前記一覧表表示手段の表示を確認して一覧表表示された前記入力項目の中から再入力する項目が選択された場合に、当該項目の入力を可能とする入力項目許可手段と、
前記登録手段に再登録する再登録手段とを備える歯科情報処理装置」である点で一致し、次の点で相違している。
(相違点a)
患者に対する処置部位の入力時期に関し、本件訂正発明が、「治療時に処置を行なう」としているところから、治療前であるのに対し、引用発明は、治療した後としている点。
(相違点b)
不適切な処置情報に関し、本件訂正発明が、「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない」ものとしているのに対し、引用発明は、単に、入力済みの病名・処置内容の間違いとしている点。
(相違点c)
不適切な入力項目を一覧表表示する一覧表表示手段に関し、本件訂正発明が、「対応する過去の入力項目を含めて」表示するとしているのに対し、引用発明は、かかる表示態様が明確にされていない点。
(相違点d)
再入力する項目が選択された場合に、当該項目の入力を可能とする入力項目許可手段に関し、本件訂正発明が、「当該選択項目の入力画面を表示して」入力を行うとしているのに対し、引用発明は、かかる入力態様が明確にされていない点。
(相違点e)
再登録に関し、本件訂正発明が、「入力項目許可手段による入力のあった項目に対する入力情報を対応する部位の過去の対応する全ての入力に対して一括変換」するとしているのに対し、引用発明ではそのような対応がなされていない点。

5.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
・相違点aについて
一般に、コンピュータシステムにおいて、データの入力は使用者がキーボード等の入力手段を直接操作することにより行い得るものであるから、データ入力を行う時期に関しては使用者の都合に応じて適宜変更し得るものである。
そうすると、コンピュータシステムを採用した引用発明における処置部位というデータの入力時期については、本来歯科情報処理装置の使用者が任意に選定し得るものであって、「治療した後」以外の時期に行えないとする根拠も何等見出せない以上、患者に対する治療時に行うようにすることに格別の発明力を要するとは認められない。

・相違点bについて
引用発明は、レセプト作成を前提とするものであるから、「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報」は、レセプト作成上の重大な誤りの情報であり、引用発明においても当然誤入力として扱われるべきものといえる。
また、歯科情報処理装置の分野における技術常識を考慮すれば、かかる不適切な処置情報を歯科情報処理装置で判別するに際し、格別の技術的な困難性は何等認められない。
そうすると、引用発明において、かかる不適切な処置情報を病名・処置内容の間違いの一種として捉え、相違点bに係る本件訂正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に推考し得る程度のことである。

・相違点cについて
上記相違点bについての検討内容に基づき、引用発明において、「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報」が不適切な入力項目として一覧表表示される場合をさらに検討する。
例えば、同一処置部位に対して、異なる複数の処置日に、それぞれ『即処』という処置情報が入力されていた場合には、「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報」として、複数の処置日における処置情報(『即処』)が処置部位や処置日と共に、不適切な入力項目として一覧表表示されるものと解される。
その場合、後の処置日に係る入力項目に対して、それより前の処置日に係る入力項目は、「対応する過去の入力項目」に該当するものといえる。
そうすると、引用発明において、不適切な入力項目を「対応する過去の入力項目を含めて」一覧表表示することは、「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報」を不適切な入力項目として一覧表表示する際に、当然に想定される範囲内の事項であるというべきである。

なお、請求人は、平成17年4月1日付けの意見書において、「この一覧表表示手段において特徴的なのは、・・・単に判別手段により不適切と判別された入力項目だけでなく、それに対応する過去の入力項目、即ち、不適切と判断される根拠となった、治療履歴において関連性を有する過去の入力項目が表示されることになります。」(第9頁第7〜10行)と主張している。
しかしながら、本件訂正発明においては、単に、「不適切な入力項目を対応する過去の入力項目を含めて一覧表表示する」とされているだけであり、該「対応する過去の入力項目」が、「不適切と判断される根拠となった、治療履歴において関連性を有する過去の入力項目」に特定されているわけではないため、請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものとして到底採用できない。
また、仮に、上記「対応する過去の入力項目」が、本件の【図12】及び【図13】の治療行為表示部分に表示されているような詳細項目を意味するものであったとしても、不適切な入力項目を一覧表表示する際に、如何なる範囲の項目数で且つ如何なる詳細内容で表示するかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る設計的事項にすぎない。

・相違点dについて
引用発明において、処置情報は、もともと所定の入力画面を介して入力したものであるから、不適切な入力項目として一覧表表示された処置情報の中から項目を選択して再入力がなされる場合でも、特別な入力手段を別途備えない限り、上記所定の入力画面を介して再入力することとなるはずである。
そうすると、引用発明においても、再入力する項目が選択された場合には、当該項目の再入力を可能とするための所定の入力画面が表示されると考えるのが自然であり、情報処理技術分野における技術常識であるともいえる。
したがって、相違点dは、実質的な構成上の差異をもたらすものではない。

・相違点eについて
情報処理装置において、誤った情報(入力データ)を過去に遡って全て訂正することが望ましいのは当然のことであり、また、誤った情報(入力データ)を一つ一つ訂正する代わりに一括変換処理することは情報処理技術分野における常套手段である。
そうすると、引用発明において、再登録に際し、対応する部位に対する過去の対応する全ての入力に対して一括変換して訂正がなされるように対処できるものとすることは、当業者であれば容易に推考し得る程度のことにすぎない。

そして、本件訂正発明の奏する効果を全体的にみても、引用発明及び技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
したがって、本件訂正発明は、引用発明及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、引用発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、他の訂正事項について検討するまでもなく、本件訂正発明に係る訂正事項を含む当該訂正は、平成15年改正前の特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-15 
結審通知日 2004-03-18 
審決日 2005-05-10 
出願番号 特願平7-291110
審決分類 P 1 41・ 121- Z (A61C)
P 1 41・ 856- Z (A61C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 寛治  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 平上 悦司
山本 信平
内藤 真徳
大元 修二
登録日 1998-11-27 
登録番号 特許第2857088号(P2857088)
発明の名称 歯科情報処理方法及び装置  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  

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