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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1133436
審判番号 不服2002-23324  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-04 
確定日 2006-03-23 
事件の表示 平成7年特許願第86671号「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月1日出願公開、特開平8-288681〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年4月12日の出願であって、原審において、平成14年7月29日付で拒絶理由が通知され、これに対して、請求人(出願人)は平成14年10月3日に意見書及び手続補正書を提出したが、平成14年10月29日付で拒絶査定がなされた。この査定を不服として、平成14年12月4日に本件審判請求をすると共に、当該請求の日から30日以内の平成14年12月18日付で手続補正がなされたものである。

【2】平成14年12月18日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年12月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成14年12月18日付でなされた手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、平成6年改正前の特許法第17条の2第1項第5号に規定する拒絶査定不服審判請求に伴ってなされたものであって、特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、
「【請求項1】
内部に素子を有するキーボード側筐体と、このキーボード側筐体に対して開閉可能なディスプレー側筐体とを備えた電子機器において、前記素子の熱を吸収する受熱板と、この受熱板から伸びる第1の冷媒流路と、前記ディスプレー側筐体内に設けられた第2の冷媒流路と、この第2の冷媒流路と前記第1の冷媒流路とを接続するフレキシブルコネクタと、前記受熱板から第2の冷媒流路へ液体を循環させるためのポンプとを備え、このフレキシブルコネクタは前記開閉部分に位置するとともに、前記第2の冷媒流路は、二枚のプレートの貼り合わせ面のうち未接合部分が空間となり、この空間が冷媒流路であって、この冷媒流路が前記ディスプレー側筐体の強度を維持して前記ディスプレー側筐体の前面に液輸送可能となるよう前記ディスプレーの面に対して幅方向横方向に配列されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第2の冷媒流路は前記ディスプレー側筐体の内面に接続可能に配列されていることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記第2の冷媒流路は前記ディスプレー側筐体の前面に液輸送可能となるよう前記ディスプレーの面に対して幅方向に複数本、横方向に複数本配列さていることを特徴とする請求項1記載の電子装置。」
と補正された。

2.補正の目的について
本件手続補正は、特許請求の範囲についてする補正において、新たに、請求項2及び請求項3を付け加える補正をも含むものである。
してみると、特許請求の範囲について補正する本件手続補正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではないし、また、「請求項の削除」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものとも認められないから、本件手続補正による特許請求の範囲の補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第1〜4号のいずれにも該当しない。

3.むすび
したがって、本件手続補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

【3】本願の発明について
1.本願発明
平成14年12月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年10月3日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「内部に素子を有するキーボード側筐体と、このキーボード側筐体に対して開閉可能なディスプレー側筐体とを備えた電子機器において、前記素子の熱を吸収する受熱板と、この受熱板から伸びる第1の冷媒流路と、前記ディスプレー側筐体内に設けられた第2の冷媒流路と、この第2の冷媒流路と前記第1の流路とを接続するフレキシブルコネクタと、前記受熱板から前記第2の冷媒流路へ液体を循環させるためのポンプとを備え、このフレキシブルコネクタは前記開閉部分に位置するとともに、前記第2の冷媒流路は、二枚のプレートの貼り合わせ面のうち未接合部分が空間となり、この空間を冷媒流路としたことを特徴とする電子機器。」
なお、請求項1には「前記第2のヒートパイプ」と記載されているが、当該「前記第2のヒートパイプ」は「前記第2の冷媒流路」の誤記と認められるので(平成14年10月22日付の上申書、参照)、本願発明を上記のように認定した。

2.引用例及びその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-266474号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。
(イ)「本発明の電子機器装置は、発熱部材に高熱伝導性材料を介して設けたヘッダと筐体内の空きスペースに設けられた放熱部材との接続に細径のフレキシブルチュ-ブを用いている。これにより、実装密度を向上させ装置の小型化を図った電子装置においても、放熱部材の設置位置が限定されているにも拘らず、配線基板や記憶装置等の電子部品を避けてフレキシブルチュ-ブにより放熱経路を確保でき筐体外への放熱が可能となる。そして、発熱部材と放熱部材とが熱的に直接接続されることになる。……冷媒液はヘッダと放熱部材間で往復動あるいは循環しているので、発熱部材に接続されたヘッダから放熱部材に効率よく熱が輸送される。」(第3頁第4欄第42行〜第4頁第5欄第5行)
(ロ)「図3に、本発明の他の実施例を示す。電子機器はラップトップ型のパーソナルコンピュータやワードプロセッサであり、複数の半導体素子を搭載した配線基板2、キ-ボ-ド36、ディスク装置31、表示装置35などからなる。配線基板2に搭載された半導体素子のうち、発熱量の特に大きい半導体素子1には……ヘッダ5が接続されている。半導体素子1とヘッダ5とはサ-マルコンパウンドあるいは高熱伝導シリコンゴムなどを挟んで接触させており、さらに、半導体素子1に接続されたヘッダ5はフレキシブルチュ-ブ9によって、十分な放熱スペ-スが確保できる筐体37の端部に設置された熱交換放熱部材32に接続されている。ヘッダ5の内部には液体が封入されており、液駆動機構34によりヘッダ5と熱交換放熱部材32との間で液が移送される。」(第4頁第6欄第27〜41行)
(ハ)「図4に、扁平なヘッダ5と熱交換放熱部材32とが複数のフレキシブルチュ-ブ9で接続され、内部に液体例えば水が封入されている例を示す。液体は、小型ポンプによってヘッダ5と熱交換放熱部材32との間を循環する。」(第5頁第7欄第1〜5行)
(ニ)「図5に示した実施例では、扁平なヘッダ5と熱交換放熱部材32とがコネクタ42を介し複数のフレキシブルチュ-ブ9a,9bで接続されている。」(第5頁第7欄第22〜24行)
(ホ)「図8は本発明の他の実施例であり、図7と同様な電子機器の場合である。配線基板2に搭載された半導体素子のうち、発熱量の特に大きい半導体素子1にヘッダ5が接続されている。また、半導体素子1に接続されたヘッダ5はフレキシブルチュ-ブ9によって、表示装置35の背面の表示器83のわきのスペ-スを利用して取り付けられた放熱フィン82に設けられたヘッダ81に接続されている。ヘッダ5,81の内部には液体が封入されており、ヘッダ81に内蔵された液駆動機構により、両ヘッダ間で液が移送される。」(第6頁第9欄第10〜19行)
(ヘ)「図9に、本発明のさらに他の実施例を示す。電子機器は、図3、8に示した実施例とは金属製の表示装置の筐体92に液流路用の金属パイプ91を溶接している点が相違している。金属パイプ91の一方は、液駆動機構72に接続され、他方は、コネクタを介してフレキシブルチュ-ブ9に接続され、さらに、ヘッダ5と液駆動機構72もフレキシブルチュ-ブで接続されている。液駆動機構72は、内封されている液体をヘッダ5と金属パイプ91との間で往復振動あるいは循環させる。」(第6頁第10欄第1〜10行)

ところで、ラップトップ型パーソナルコンピュータ等の電子機器においては、キーボード側筐体に対し表示装置側筐体が開閉可能であることは自明な事項であるから、記載事項(イ)〜(ホ)及び図3〜5、8を参酌して、記載事項(ヘ)でいう図9に基づく実施例についてみると、この引用例には、実質的に、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内部に半導体素子1を有するキーボード36側筐体37と、キーボード36側筐体37に対して開閉可能な表示装置35側筐体92とを備えた電子機器において、半導体素子1の熱を吸収するヘッダ5と、ヘッダ5から伸びるフレキシブルチュ-ブ9と、表示装置35側筐体92内に設けられ、かつ、フレキシブルチュ-ブ9とコネクタ42を介して接続される金属パイプ91と、ヘッダ5から金属パイプ91へ液体(冷媒液)を循環させるための液駆動機構72とを備え、このフレキシブルチュ-ブ9は開閉部分においても位置する電子機器。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「半導体素子1」、「キーボード36側筐体37」、「表示装置35側筐体92」、「ヘッダ5」、「フレキシブルチュ-ブ9」、「金属パイプ91」は、それぞれ、本願発明の「素子」、「キーボード側筐体」、「ディスプレー側筐体」、「受熱板」、「第1の冷媒流路」、「第2の冷媒流路」に相当し、また、引用例の記載事項(ハ)を参酌すると、引用発明の「液駆動機構72」は、その一実施としてポンプを用いることが明らかであるから、本願発明と引用発明との一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点>
「内部に素子を有するキーボード側筐体と、このキーボード側筐体に対して開閉可能なディスプレー側筐体とを備えた電子機器において、前記素子の熱を吸収する受熱板と、この受熱板から伸びる第1の冷媒流路と、前記ディスプレー側筐体内に設けられた第2の冷媒流路と、前記受熱板から前記第2の冷媒流路へ液体を循環させるためのポンプとを備えた電子機器。」
<相違点>
(1)本願発明では、第2の冷媒流路と第1の冷媒流路とを接続するフレキシブルコネクタを備え、このフレキシブルコネクタは開閉部分に位置するように構成されているのに対し、引用発明では、第2の冷媒流路(金属パイプ91)と第1の冷媒流路(フレキシブルチュ-ブ9)とを接続するコネクタ42は備えているものの、このコネクタ42は、フレキシブルコネクタであるか否かについて言及されてなく、また、このコネクタ42は、電子機器の開閉部分に位置するようには構成されていない点。
(2)本願発明では、第2の冷媒流路は、二枚のプレートの貼り合わせ面のうち未接合部分が空間となり、この空間を冷媒流路としたのに対し、引用発明の第2の冷媒流路(金属パイプ91)は、パイプ内部の空間を冷媒流路としているから、二枚のプレートの貼り合わせ面のうち未接合部分が空間となるようには構成されていない点。

4.当審の判断
(1)の相違点について
引用発明も、第2の冷媒流路(金属パイプ91)と接続される第1の冷媒流路(フレキシブルチュ-ブ9)自体がフレキシブルであって、このフレキシブルであるチューブは、電子機器の開閉部分においても位置するようになさている以上、本願発明と比べ技術的意味に格別の差異はないから、この相違点(1)でいう本願発明の構成は、当業者が、必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎず、ここに格別の創意を見出すことができない。
(2)の相違点について
冷媒循環用の第1の冷媒流路に対応する“一対のパイプ(冷媒供給口および冷媒排出口)14”に接続される第2の冷媒流路に対応する“空間S”を、本願発明と同じように、二枚のプレート(固定基板2と金属薄板4)の貼り合わせ面のうち未接合部分により構成し、この“空間S”を冷媒流路とすることが、拒絶査定の備考の欄で示した特開平5-235572号公報に記載されているように、従来周知の技術的事項にすぎないから、この相違点(2)でいう本願発明の構成に格別の創意を見出すことができない。
そして、本願発明により得られる効果も、従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-23 
結審通知日 2006-01-24 
審決日 2006-02-06 
出願番号 特願平7-86671
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 573- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 574- Z (H05K)
P 1 8・ 571- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深澤 幹朗新海 岳  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 永安 真
柴沼 雅樹
発明の名称 電子機器  
代理人 作田 康夫  

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