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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1133462
審判番号 不服2003-14006  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-22 
確定日 2006-03-23 
事件の表示 特願2000-70770「車両制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-318634〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年5月17日(優先権主張平成5年3月17日)に出願した特願平5-114919号の一部を平成12年3月14日に新たな特許出願としたものであって、本願の請求項1〜10に係る発明は、平成15年8月4日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜10に記載されたものであるところ、その請求項4に係る発明は、次のとおりのもの(以下、請求項4に係る発明を「本願発明」という。)と認める。
「【請求項4】現在位置に基づき特定した道路情報と、道路状態を推定する際の判断材料となる外部情報とを用いて、現在位置付近の道路の状態を推定する道路状態推定手段を有し、
該道路状態推定手段により推定した道路状態に応じて、少なくとも車両の4WD制御装置、サスペンション制御装置、パワーステアリング制御装置、エンジン制御装置、変速機の何れか複数の制御対象に対する車両制御を行うことを特徴とする車両制御装置。」

2.引用刊行物およびその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開平4-236699号公報(以下、「引用例」という。)には「自動車の走行システム」に関して、図1〜9とともに以下の記載がある。
A)「【0017】この第1実施例では、後述するように、カーブ路に接近した事実の検出と当該カーブ路の道路特性(曲率半径や路面μ)に応じた適正(安全)な進入速度情報の提供を、GPS航法衛星を使用した車両用ナビゲーション装置によって行うようにしていることを特徴とするものである。」
B)「【0021】そして、上記ナビゲ-ションコントロ-ルユニット10に組み合わされる外部装置としては、先ず上述した地図形式の走行案内情報を多数枚複数種の縮尺でメモリしているCD-ROM・・・1の当該地図情報を読み出すための車載用CDプレ-ヤ2、目的地の設定や変更、再設定、最適経路の変更、地図内容の詳細表示等の各種操作を行なう操作スイッチ部3、現在の自車位置Pn(Xn,Yn)を検出する自車位置認識装置4、上記CPU11からの画像信号出力を入力して例えば運転席メ-タ・クラスタ部の液晶ディスプレイ(表示器)6の画面上に表示する表示制御回路5・・・等が各々設けられている。」
C)「【0025】さらに、現在の自車位置を認識する自車位置認識装置4は、本実施例の場合、例えば図3に示すように地磁気方式の所謂、推測航法による第1の自車位置認識手段4Aと、前述したGPSS方式の衛星航法による第2の自車位置認識手段4Bとの2組の異った自車位置認識手段を組み合わせて構成されており、それらの各出力を切換回路20を介して選択的にCPU11に入力するようになっている。」
D)「【0041】・・・本実施例では、例えば図1に示すように、上記のナビゲーション装置22に各道路のカーブ路の曲率半径Rをも道路データとして具備せしめ、該データを当該ナビゲーション装置22によって検出された上記自車位置Pnとの関係から読み出してさらに車速センサ24によって検出された車速及び路面湿度センサ25によって検出された路面の湿度等道路の路面状態をも入力パラメータとして同車速コントローラ23に取り込んだ上で、自動的に適正な車両進入速度VBを演算し、上記車速センサ24によって検出された実際の車両速度VAが当該演算された適正な車両進入速度VBを超えている時は、例えばワーニング手段28でワーニングを行ったり、ブレーキ駆動手段26で自動的にブレーキを掛け、またスロットル制御手段27でスロットル開度を小さくするなどの減速処理を行って適正な進入車速VBに自動制御する車速低減システムが設けられている。」
E)「【0043】先ずステップS1で、上記ナビゲーション装置22からの自車位置データPn(図8のA1位置)と該自車位置データPnから見て今から進入しようとしている(接近している)急カーブ路21の曲率半径・・・Rのデータとを入力し演算する。続いてステップS2で各種センサ出力等車両側の情報を入力する。
・・・
【0045】次にステップS4に進み、上記ステップS2で入力した車両側各種センサからの情報に基いて路面のアスファルト又はコンクリート等素材による摩擦抵抗μoと実車速VAを、また続くステップS5で同じく車両側の情報から外気温tと路面湿度wを各々検出する。
【0046】そして、次のステップS6で上記検出された路面の摩擦抵抗μoをベースに外気温tと路面湿度wをパラメータとして路面の凍結状態等を判定し、その判定結果に基いて最終的な実際の路面μを判定する。該判定は、例えば上記ベースとなる路面自体の摩擦抵抗μoと外気温t、路面湿度wの組合せに基いてマップ値との照合により3段階(μ1,μ2,μ3)のレベルの路面μの値が判定されるようになっている。
【0047】その後、ステップS7に進み、上記急カーブ路21の半径Rと上記路面μ、そして実車速VAとを演算パラメータとして上記急カーブ路21に進入するA2地点における適正な(安全な)進入速度VBを演算する。」
F)「【0056】次に、ステップS8に進み、図8の急カーブ路21の手前A1地点における現在の実車速VAと上記ステップS7で演算された適正進入速度VBとを比較し、その偏差VA-VB=ΔVを求めた上で先ず当該偏差ΔVが0よりも大である否かを判定する。そして、該判定結果が、YES(ΔV>0)の場合には更にステップS9に進んで上記速度偏差ΔVがスロットル開度の制御だけでは速やかに減速し得ないような所定の速度オーバ値ΔV1以上であるか否かを判定する。そして、該判定の結果がYES(ΔV>ΔV1)の時は、・・・上記ブレーキ駆動手段26を作動させてブレーキを掛ける。それによって、図8のA1地点(現在の走行地点)から急カーブ路21への進入地点A2までの間に適正車速(安全車速)VBになるように減速(VA-VB=ΔV以上落す)する。」
G)「【0058】また、上記ステップS9の判定でNOと判定された時、・・・図1のスロットル制御手段27を作動させてスロットル弁を所定量閉弁し、それによって速度超過分VA-VB=ΔVだけをA2地点までの間に減速することによってA2地点での適正な進入速度VBを実現する。その結果、上述のΔV>V1の場合同様に安全な急カーブ路21の走行が可能となる。」
H)「【0059】なお、上記の実施例では、路面μ等路面状態の検出に外気温センサ29や路面湿度センサ25を使用して積雪や凍結状態等を判定するようにしたが、該判定は例えば上記GPS衛星から撮影した衛星カメラ像を基に画像解析して判定するようにしてもよい。」

上記A)〜H)の記載からみて、上記引用例の自動車の走行システムは、GPS航法衛星を使用した車両用ナビゲーション装置によって認識された現在位置に基づいて、これから進入しようとしている道の道路情報(カーブ路であるか否か、カーブ路であればその曲率半径はどれ程か)を特定し、該現在位置に基づき特定した道路情報(これから進入しようとしている道がカーブ路である場合の曲率半径R)と、道路状態を推定する際の判断材料となる外部情報(路面の摩擦抵抗μo、外気温t、路面湿度w)とを用いて、現在位置付近の道路の状態(急カーブで積雪や凍結状態等であるか否か)を推定する道路状態推定手段を有するものと認められるとともに、該道路状態推定手段により推定した道路状態に応じて、ブレーキ駆動手段26、スロットル制御手段27に対する車両制御を行っているものと認められる。
したがって、上記引用例には、
「現在位置に基づき特定した道路情報と、道路状態を推定する際の判断材料となる外部情報とを用いて、現在位置付近の道路の状態を推定する道路状態推定手段を有し、
該道路状態推定手段により推定した道路状態に応じて、ブレーキ駆動手段26、スロットル制御手段27に対する車両制御を行う車両制御装置。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願発明と引用例記載の発明との対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すれば、本願発明と引用例記載の発明は、
「現在位置に基づき特定した道路情報と、道路状態を推定する際の判断材料となる外部情報とを用いて、現在位置付近の道路の状態を推定する道路状態推定手段を有し、
該道路状態推定手段により推定した道路状態に応じて、複数の制御対象に対する車両制御を行う車両制御装置。」
である点で一致し、以下の相違点で相違しているものと認める。
<相違点>
本願発明では、車両制御を行う複数の制御対象が、少なくとも車両のサスペンション制御装置、パワーステアリング制御装置、変速機、4WD制御装置、エンジン制御装置の何れかであるのに対し、引用例記載の発明では、該複数の制御対象が、ブレーキ駆動手段26とスロットル制御手段27である点。

4.相違点の検討
道路状態推定手段により推定した道路状態等に応じて、複数の制御対象に対する車両制御を行うものにおいて、該複数の制御対象を、車両のサスペンション制御装置、パワーステアリング制御装置、変速機、4WD制御装置、エンジン制御装置の何れかすることは当業者が適宜行う設計事項(例えば、特開平2-48210号公報ではサスペンションやステアリング、エンジンのバルブ数、車高等の運転走行状態を複合的に制御し、特開平4-15799号公報では定速走行制御装置や変速制御装置、サスペンション制御装置等の運転走行状態を複合的に制御している。)である。してみれば、引用例記載の発明で、運転走行状態の制御を行う複数の制御対象を、少なくとも車両のサスペンション制御装置、パワーステアリング制御装置、変速機、4WD制御装置、エンジン制御装置の何れかとすることは、引用例記載の発明に上記設計事項を適用することにより当業者が容易に行うことができたものである。

そして、本願発明が奏する作用効果は、上記引用例記載の発明に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本願発明は、上記引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上詳述したとおり、本願の請求項4に係る発明は、上記引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、特許請求の範囲の請求項1〜3,5〜10に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-18 
結審通知日 2006-01-25 
審決日 2006-02-08 
出願番号 特願2000-70770(P2000-70770)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 ぬで島 慎二
平瀬 知明
発明の名称 車両制御装置  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 加藤 大登  

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