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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1134098
審判番号 不服2003-13590  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-17 
確定日 2006-04-03 
事件の表示 平成9年特許願第278252号「平行軸式変速機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年4月9日出願公開、特開平11-94078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成9年9月25日の出願であって、平成15年6月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年8月18日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成15年8月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成15年8月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
エンジン等の出力を車両の駆動系に変速して伝達する平行軸式変速機において、メインシャフト上に配設された複数のスリーブと各々対応する位置に配設された複数のシフトフォークと、該複数のシフトフォークに緩く挿入された一本のシフトレールと、上記シフトレールを周方向に回動させることで上記変速機のセレクト操作を行う回動手段と、上記シフトレールを軸方向に移動することにより上記変速機のシフト作動を行う移動手段と、上記シフトフォークのシフトレール挿入孔内周に固定されたピン部と、上記シフトレールの上記各々のシフトフォークに対応する複数の位置にそれぞれ形成され、上記回動手段による周方向の回動後、上記複数のシフトフォークの何れか一つとピン部を介して係合し該シフトレールとともに軸方向に移動可能で且つシフトフォークの幅より両側に長く延在させた溝部とを備え、上記シフトレールは上記回動手段により回動させられた後、上記複数のシフトフォークのうち一つのシフトフォークとのみ前記ピン部を介して係合し上記移動手段により上記シフトフォークを軸方向に動かすように構成されたことを特徴とする平行軸式変速機。」と補正された。なお、下線は対比の便のため当審において付したものである。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であり上位概念である「位置に複数形成され、」を同等又は下位概念である「複数の位置にそれぞれ形成され、」へと変更するとともに、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「溝部」について「シフトフォークの幅より両側に長く延在させた」との限定を直列的に付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開昭58-189716号公報
(2)刊行物2:特開昭50-76466号公報
(3)刊行物3:特開平7-332490号公報
(4)刊行物4:特開平9-210200号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「ギヤシフト装置」に関して、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、大文字を小文字で表記した箇所がある。
(a)「本発明は自動車の変速装置におけるギヤシフト装置に関する。」(第1頁右下欄第11〜12行)
(b)「自動車の変速装置においては、変速段数によって異なるが、通常3本又は4本のシフトレールが必要である。従って、当然部品の種類・点数も多くなっている。従来より自動車の構造の簡素化が図られ、その一環として変速装置における上記シフトレールの減少化の可能性が追求されていた。
本発明は、上記可能性の実現即ち変速装置におけるシフトレールを一本とし、なお且つ従来と同様の変速段数の得られるギヤシフト装置の提供を目的としてなされたもので」(第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第3行)
(c)「シフトレール1は、トランスミッションケースの上部に設けられたギヤシフトケース2に軸心回りに回転可能且つ軸方向移動可能に支持されており、図示されていないその端部には当該シフトレール1を軸方向移動或いは回転させるためのチェンジレバーが直接或いは間接的に連結されている。シフトレール1にはそのチェンジレバーの連結されている側と反対の側より順に4速・5速用のシフトフォーク3、2速・3速用のシフトフォーク4、1速・後退用のシフトフォーク5がそのスリーブ部3a,4a,5aで取付けられている。各シフトフォーク3,4,5のフォーク部3b,4b,5bはそれぞれ主軸(出力軸)上に摺動可能に設けられた変速用の歯車に係合している。各シフトフォーク3,4,5のスリーブ3a,4a,5aに対しシフトレール1は回転可能となっており、各スリーブ3a,4a,5aとシフトレール1或いはギヤシフトケース2との係合は鋼球と溝との組合せによりなされている。」(第2頁右上欄第18行〜左下欄第15行)
(d)「第5〜7図には、シフトレール1のシフトフォーク3,4,5のスリーブ部3a,4a,5aで囲まれた部分(円周面)に形成されている溝の形状及び配置状態を示す。これらの溝のうち中間に位置する2速・3速用の溝を基準に説明すると、(中略)位置決め・ロック用溝6と180°位相がずれた位置にはシフトレール1の周方向を向くロック用溝7が形成してあり、その両端にはシフトレール1の軸方向両側に延びるスライド用溝8a,8bが形成してある。これらロック用溝7,スライド用溝8a,8bはここに嵌合するロック・スライド鋼球(後述する)が転動し得る大きさとされる。1速・後退用の位置決め・ロック用溝9(中略)と180°位相のずれた位置には円周方向を向く1速・後退用のロック用溝10が形成してあり、このロック用溝10につなげ且つ前記2速・3速用のロック用溝7及びスライド用溝8aと同一直線上に1速・後退用のスライド用溝11a,11bが形成してある。(中略)4速・5速用の位置決め・ロック用溝12と180°位相のずれた位置には円周方向を向く4速・5速用のロック用溝13が形成してあり、このロック用溝13につなげ且つ前記2速・3速用のロック用溝7とスライド用溝8b並びに1速・後退用のスライド用溝11bとロック用溝10と同一直線上にスライド用溝14a,14bが形成してある。以上からわかるように、ある変速段用のロック用溝7若しくは10若しくは13(「12」は誤記)は必ず他の変速段用のスライド用溝11b,14a若しくは8b,14b若しくは8a,11aと一直線上になっているのである。」(第2頁左下欄第16行〜第3頁左上欄第20行)
(e)「各シフトフォーク3,4,5のスリーブ部3a,4a,5aの下側にはシフトレール1上のロック用溝13,7,10又はスライド用溝14a若しくは14b,8a若しくは8b,11a若しくは11bに嵌合するロック・スライド用鋼球33,34,35がボルト36,37,38で止めて設けられている。」(第3頁左下欄第1〜9行)
(f)「第1図に示す状態は、2速或いは3速にシフトし得る状態で、(中略)上記状態からチェンジレバーを操作してシフトレール1を軸方向(例えば右方向)にスライド(シフト移動)させると、ロック・スライド用鋼球34を介して2速・3速用のシフトフォーク4も右方向に移動し、その先端に係合している変速用の歯車もスライドされて変速例えば2速への変速がなされる。(中略)ロックスライド用鋼球33,35はスライド用溝14a,11bに嵌合しているので、シフトレール1が右方向にスライドしても鋼球33,35とスライド用溝14a,11bとの摺動若しくは転動によりシフトフォーク3,5には力は伝わらない。つまり、2速・3速用のシフトフォーク4がシフトされる場合には他の二つのシフトフォーク3,5はギアシフトケース2に固定され、同時に二つのシフトフォークが作動することはあり得ない構造となっているのである。」(第3頁右下欄第4〜第4頁右上欄第6行)
(g)「このギヤシフト装置にあっては、1本のシフトレール1を回転させることによりセレクト操作が行なえ、シフトレール1を軸方向に移動させることでシフト操作が行えるようになっているのである。」(第4頁右下欄第13〜17行)
(h)「本発明に係るギヤシフト装置によれば、今までと同様の変速段の変速操作を一本のシフトレールの軸方向移動及び回転により行うことができるので、従来のギヤシフト装置に比べ部品の種類及び点数を減少させることができる。」(第5頁右上欄第20行〜左下欄第4行)
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
【引用発明】
自動車の変速装置におけるギヤシフト装置において、主軸上に配設された複数の摺動可能に設けられた変速用の歯車と各々対応する位置に配設された複数のシフトフォーク3,4,5と、該複数のシフトフォーク3,4,5に緩く挿入された一本のシフトレール1と、上記シフトレール1を周方向に回動させることで上記ギヤシフト装置のセレクト操作を行う回動手段と、上記シフトレール1を軸方向に移動することにより上記ギヤシフト装置のシフト作動を行う移動手段と、上記シフトフォーク3,4,5のシフトレール1挿入孔内周にボルト36,37,38で止めて設けられたロック・スライド用鋼球33,34,35と、上記シフトレール1の上記各々のシフトフォーク3,4,5に対応する複数の位置にそれぞれ形成され、上記回動手段による周方向の回動後、上記複数のシフトフォーク3,4,5の何れか一つとロック・スライド用鋼球33,34,35を介して係合し該シフトレール1とともに軸方向に移動可能なロック用溝7,10,13及びスライド用溝8a,8b,11a,11b,14a,14bとを備え、上記シフトレール1は上記回動手段により回動させられた後、上記複数のシフトフォーク3,4,5のうち一つのシフトフォーク3,4,5とのみ前記ロック・スライド用鋼球33,34,35を介して係合し上記移動手段により上記シフトフォーク3,4,5を軸方向に動かすように構成されたギヤシフト装置。

(刊行物2)
刊行物2には、「車両用歯車変速装置の変速操作装置」に関して、図面(特に、第5図及び第6図に関する変形例を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、大文字を小文字で表記した箇所がある。
(i)「本発明は車両用歯車変速装置の変速操作装置に関し、従来においては複数本のシフトフォーク軸とこれらの何れか1本を変速レバーに連動するセレクト軸を使用していたが、本発明はシフトフォーク軸を1本に減少すると同時にセレクト軸を不要にしたものである。」(第1頁右下欄第7〜12行)
(j)「上述した一実施例ではシフトフォークの摺動内周面に円周方向溝と軸方向溝を設け、シフトフォーク軸の摺動外周面にボール即ち突子を設けていたが、その逆にシフトフォーク軸の摺動外周面に円周方向溝と軸方向溝とを設け、シフトフォークの摺動内周面に突子を設けてもよい。
第5図及び第6図はその例を示し、シフトフォーク軸111の摺動外周面には円周方向溝111aと該溝に直交する2本の軸方向溝111b,111cが設けられ、その溝111aにはシフトフォーク112に螺着されたボルト118の先端118aが摺動可能に嵌入している。而して図示の如くボルト118の先端118aがシフトフォーク軸111の円周方向溝111a内で軸方向溝111bと111cとの間に位置している場合には円周方向溝111aの側壁とボルト118の先端118aとの当接によりシフトフォーク112はシフトフォーク軸111の摺動に直結するが、シフトフォーク軸111の回動変位によりボルト118の先端118aが円周方向溝111aと軸方向溝111bまたは111cとの交叉点内に位置している状態ではシフトフォーク112はシフトフォーク軸111の摺動に連動しない。」(第3頁右下欄第11行〜第4頁左上欄第14行)
(k)「叙上の如く本発明によればシフトフォーク軸が1本で足り且つセレクト軸を必要としないから、従来に比して安価に製造することができる。」(第4頁左上欄第15〜18行)
(l)第5図の記載から、シフトフォーク軸111に設けられた軸方向溝111bが、シフトフォーク112の右側端部よりも右側に延在している構成が看取できる。

2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「自動車の変速装置におけるギヤシフト装置」は本願補正発明の「エンジン等の出力を車両の駆動系に変速して伝達する平行軸式変速機」に相当し、以下同様に、「主軸」は「メインシャフト」に、「摺動可能に設けられた変速用の歯車」は「スリーブ」に、「シフトフォーク3,4,5」は「シフトフォーク」に、「シフトレール1」は「シフトレール」に、「ギヤシフト装置」は「変速機」及び「平行軸式変速機」に、「ロック用溝7,10,13及びスライド用溝8a,8b,11a,11b,14a,14b」は「溝部」に、にそれぞれ相当するとともに、引用発明の「ロック・スライド用鋼球33,34,35」は、その有する機能からみて、本願補正発明の「ピン部」と係合手段である限りにおいて対応するので、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
エンジン等の出力を車両の駆動系に変速して伝達する平行軸式変速機において、メインシャフト上に配設された複数のスリーブと各々対応する位置に配設された複数のシフトフォークと、該複数のシフトフォークに緩く挿入された一本のシフトレールと、上記シフトレールを周方向に回動させることで上記変速機のセレクト操作を行う回動手段と、上記シフトレールを軸方向に移動することにより上記変速機のシフト作動を行う移動手段と、上記シフトフォークのシフトレール挿入孔内周に設けられた係合手段と、上記シフトレールの上記各々のシフトフォークに対応する複数の位置にそれぞれ形成され、上記回動手段による周方向の回動後、上記複数のシフトフォークの何れか一つと係合手段を介して係合し該シフトレールとともに軸方向に移動可能な溝部とを備え、上記シフトレールは上記回動手段により回動させられた後、上記複数のシフトフォークのうち一つのシフトフォークとのみ前記係合手段を介して係合し上記移動手段により上記シフトフォークを軸方向に動かすように構成された平行軸式変速機。
<相違点>
(1)相違点1
上記係合手段に関して、本願補正発明は、「上記シフトフォークのシフトレール挿入孔内周に固定されたピン部」であるのに対し、引用発明は、シフトフォークのシフトレール挿入孔内周にボルトで止めて設けられたロック・スライド用鋼球である点。
(2)相違点2
上記溝部に関して、本願補正発明は、「シフトフォークの幅より両側に長く延在させた」ものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を具備していない点。

3.判断
そこで、上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
平行軸式変速機に係る点で、引用発明と同じ技術分野に関するといえる刊行物2には、「上述した一実施例ではシフトフォークの摺動内周面に円周方向溝と軸方向溝を設け、シフトフォーク軸の摺動外周面にボール即ち突子を設けていたが、その逆にシフトフォーク軸の摺動外周面に円周方向溝と軸方向溝とを設け、シフトフォークの摺動内周面に突子を設けてもよい。
第5図及び第6図はその例を示し、シフトフォーク軸111の摺動外周面には円周方向溝111aと該溝に直交する2本の軸方向溝111b,111cが設けられ、その溝111aにはシフトフォーク112に螺着されたボルト118の先端118aが摺動可能に嵌入している。而して図示の如くボルト118の先端118aがシフトフォーク軸111の円周方向溝111a内で軸方向溝111bと111cとの間に位置している場合には円周方向溝111aの側壁とボルト118の先端118aとの当接によりシフトフォーク112はシフトフォーク軸111の摺動に直結するが、シフトフォーク軸111の回動変位によりボルト118の先端118aが円周方向溝111aと軸方向溝111bまたは111cとの交叉点内に位置している状態ではシフトフォーク112はシフトフォーク軸111の摺動に連動しない。」(上記摘記事項(j)参照)と記載されていることからみて、シフトフォークの摺動内周面、即ちシフトレール挿入孔内周に突子(ボルト)を設けた構成が記載又は示唆されている。
また、平行軸式変速機において、シフトフォークとシフトレールによる選択作動手段としてピン部を設けることは、従来周知の技術手段(例えば、刊行物3には、中空シャフト10に一体的に形成されシフトフォーク2に形成された複数の穴部44,45,46を貫通して突出する複数のピン31,32,33の構成が、また、刊行物4には、シフトロッド11に固着されシフトフォーク12に形成された切込み溝12bに対向して位置するようにされた突起部13A〜13Hの構成が記載されている。)に過ぎない。
してみれば、引用発明のシフトフォークのシフトレール挿入孔内周にボルトで止めて設けられたロック・スライド用鋼球の構成に代えて、引用発明と同じ技術分野に関するといえる刊行物2に記載又は示唆されたシフトフォークのシフトレール挿入孔内周に設けられた突子(ボルト)の構成とするとともに、上記従来周知の技術手段であるピン部の構成を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明のピン部の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
平行軸式変速機に係る点で、引用発明と同じ技術分野に関するといえる刊行物2の第5図の記載から、シフトフォーク軸111に設けられた軸方向溝111bが、シフトフォーク112の右側端部よりも右側に延在している構成が看取できる(上記摘記事項(l)参照)。
そして、当該構成によれば、シフトフォーク112の幅に拘わらず、軸方向溝111bの長さを適宜な長さに設定し得ることは技術的に自明の事項である。
してみれば、引用発明のスライド用溝の構成に上記刊行物2に記載された軸方向溝の構成を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明のシフトフォークの幅より両側に長く延在させた溝部の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到し得たものである。

また、本願補正発明の効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載された発明、及び上記従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
平成15年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年1月17日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
エンジン等の出力を車両の駆動系に変速して伝達する平行軸式変速機
において、メインシャフト上に配設された複数のスリーブと各々対応する位置に配設された複数のシフトフォークと、該複数のシフトフォークに緩く挿入された一本のシフトレールと、上記シフトレールを周方向に回動させることで上記変速機のセレクト操作を行う回動手段と、上記シフトレールを軸方向に移動することにより上記変速機のシフト作動を行う移動手段と、上記シフトフォークのシフトレール挿入孔内周に固定されたピン部と、上記シフトレールの上記各々のシフトフォークに対応する位置に複数形成され、上記回動手段による周方向の回動後、上記複数のシフトフォークの何れか一つとピン部を介して係合し該シフトレールとともに軸方向に移動可能な溝部とを備え、上記シフトレールは上記回動手段により回動させられた後、上記複数のシフトフォークのうち一つのシフトフォークとのみ前記ピン部を介して係合し上記移動手段により上記シフトフォークを軸方向に動かすように構成されたことを特徴とする平行軸式変速機。」

1.原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「II.1.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「II.」で検討した本願補正発明から、下位概念である「複数の位置にそれぞれ形成され、」を同等又は上位概念である「位置に複数形成され、」へと変更するとともに、「溝部」の限定事項である「シフトフォークの幅より両側に長く延在させた」との構成事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、さらに同等又は下位概念へと変更するとともに、他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「II.3.」に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-09 
結審通知日 2006-02-10 
審決日 2006-02-21 
出願番号 特願平9-278252
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16H)
P 1 8・ 575- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔川口 真一  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 常盤 務
平田 信勝
発明の名称 平行軸式変速機  
代理人 長屋 二郎  
代理人 高橋 昌久  

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