• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1134220
審判番号 不服2002-21346  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-28 
確定日 2006-04-10 
事件の表示 平成11年特許願第325916号「異常プロジェクションナットの排出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月17日出願公開、特開2001-106332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成11年10月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年11月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】パーツフィーダのボウルの周囲に外周側が低くなった段構造の螺旋通路が設けられ、前記螺旋通路を移動してきたプロジェクションナットが螺旋通路の外周寄りに形成した円弧状の判別溝で所定の向きかどうかが判別され、所定の向き以外のものは前記判別溝の外側に配置した回収箱へ転落させられてからボウル内へ返還されるパーツフィーダにおいて、寸法・形状が同じとされた一種類のプロジェクションナットの中で溶着用突起の変形で高さが低くなっている異常プロジェクションナットが排出の対象とされており、前記円弧状の判別溝の上流側に異常プロジェクションナットの選別手段が設置され、この選別手段は螺旋通路の外周部に起立させた規制板の下部に異常プロジェクションナットは通過させるが正常プロジェクションナットは通過させない高さの規制空隙を形成したもので、規制板の外側に出口のない構造の蓄積ボックスが設置してあり、前記規制空隙を通過した異常プロジェクションナットは出口のない蓄積ボックス内に転落させられることを特徴とする異常プロジェクションナットの排出装置。」

2.引用文献記載の発明
2-1.引用文献1
これに対して、当審における、平成17年9月28日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された「実願昭59-38479号(実開昭60-151821号)のマイクロフィルム」(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「1.考案の名称
プロジエクシヨンナツト用パーツフイーダー」(明細書第1頁第2〜3行。)

イ.「3.考案の詳細な説明
この考案は、プロジエクシヨンナツト用パーツフイーダーに関するもので、特にナツトの表裏状態を確実に判定すると共に円滑なナツト流動を求めることを目的としている。」(明細書第1頁第13〜17行。)

ウ.「本考案は、溶着用突起が下側に位置したいわゆる表出し方式に係るもので・・・ある。以下、図示の実施例にしたがつて詳しく説明する。第1図はパーツフイーダー1の外観図であつて、起振部2の上側にボウル3が設置されている。ボウル3は円形であつてその内周部に螺旋形段部が設けてあり、その終端部から送出用の供給管4が伸びている。第2図は螺旋形段部(以下段部と略称する)5の上部終端付近の拡大平面図であつて、段部5の終端付近は図示のごとく拡幅され、その段部5に沿つてガイド溝6が形成してある。・・・(5)-(5)断面の個所では外周側が高くなつた傾斜状態になつている。(5)-(5)断面部における傾斜は、異状な表裏状態、すなわち裏向きのナツトが滑り落るようにするための傾斜であつて、隣設の円弧状の排出口7内に落下して通口8からボウル3内にもどされる。図示のものは排出口7と通口8を経由するものである・・・9は受箱である。」(明細書第2頁第10行から第3頁第13行。)

エ.「円周方向と上下方向との合成された振動によつて、ナツトNは段部5上を表裏がまちまちの状態で移動して来る。(4)-(4)断面部においても段部傾斜が外周側低位であるために、該断面部では拡幅された個所の外周側に向つて移動し、もう少し(第2図の下方へ)進むとナツトの突起11がガイド溝6内にはまり込んで(5)-(5)断面部のように逆傾斜となつて、ガイド溝6に保持されながらチエツクゲージ10の方へ送られて行く。・・・ナツトNが裏向きになつているときには、(5)-(5)断面部以降のような傾斜によつて、チエツクゲート10に接触するまでに排出口7内へ滑り落る。」(明細書第4頁第19行から第5頁第16行。)

これらの記載によれば、引用文献1には、「パーツフイーダー1のボウル3の周囲に内周側が低くなった段構造の螺旋通路が設けられ、パーツフイーダー1の螺旋形段部5を移動してきたナツトNが、螺旋形段部5の内周寄りに形成した円弧状のガイド溝6で所定の向きかどうかが判別され、所定の向き以外のものは受箱9へ転落させられてからボウル3内へ返還されるパーツフイーダー1。」との発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

2-2.引用文献2
当審における、平成17年9月28日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された「実願昭57-64169号(実開昭58-166886号)のマイクロフィルム」(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「1 考案の名称 パーツフイーダにおける不良品排出装置
2 実用新案登録請求の範囲
1.パーツフイーダ本体の周壁(1)に、供給部品の排出口(2)を、その下端を供給部品通路(3)の上面と同一面とし、上端を、供給部品通路(3)上を通る供給部品(4)の高さよりわずかに低くし、横幅を供給部品(4)の横幅より長くして形成したことを特徴とするパーツフイーダにおける不良品排出装置。
2.排出口(2)の上端が、その上部における周壁(1)に調節板(5)を上下動可能に設けて変位調節できるようになつている実用新案登録請求の範囲第1項記載のパーツフイーダにおける不良品排出装置。」(明細書第1頁第2〜16行。)

イ.「3 考案の詳細な説明
本考案はナツトフイーダ等のパーツフイーダにおいて、供給される部品中に、高さの短い不良部品がある場合に、この不良部品を所定供給部へ供給される以前に排出除去できる装置を提案することを目的とするものである。
すなわち本考案は、パーツフイーダ本体(1)の周壁(1)に供給部品の排出口(2)を、その下端を供給部品通路(3)の上面と同一面とし、上端を、供給部品通路(3)上を通る供給部品(4)の高さよりわずかに低くし、横幅を供給部品(4)の横幅より長くして形成したことを特徴とするものである。図面に示す実施例において、供給部品通路(3)は、周知の如く、周壁(1)の内面に、上方へ幾分傾斜して設けられており、供給部品(4)が周壁(1)に支承されつゝ移動するようになつている。」(明細書第1頁第17行から第2頁第12行。)

ウ.「(6)は排出口(2)より排出された不良品の受け箱である。
以上のようであるから、例えば、供給部品(4)が、図示のように、底面に熔接用の足(4a)を有するナツトである場合には、排出口(2)の上端位置、すなわち調節板(5)の下端位置を、良品のナツトの高さより幾分下方位置で、かつ熔接用の足(4a)がない不良品のナツトの高さより高い位置にセツトすれば、良品のナツトは、調節板(5)の内面に支承されて流下し、また、不良品のナツトは排出口(2)より落下排出される。 したがって熔接用の足(4a)のある良品のナツトのみ供給でき、不良品のナツトを熔接して製品全体が不良品になることを防止できる。」(明細書第3頁第1〜14行)

エ.「以上のように本考案によれば、極めて簡易な構造で、供給部品の不良品を排出でき・・・る。(明細書第3頁第17行から第4頁第1行)

これらの記載によれば、引用文献2には、「パーツフイーダ本体の周囲に外周側が低くなった供給部品通路3が設けられたパーツフイーダにおいて、寸法・形状が同じとされた一種類の、底面に熔接用の足4aを有するナットの中で、熔接用の足4aがない不良品のナットが排出の対象とされており、不良品のナットの選別手段が設置され、この選別手段は供給部品通路3の外周部に起立させた周壁1及び調節板5の下部に不良品のナットは通過させるが熔接用の足4aのある良品のナットは通過させない高さの排出口2を形成したもので、周壁1及び調節板5の外側に出口のない構造の受け箱6が設置してあり、前記排出口2を通過した不良品のナットは出口のない受け箱6内に転落させられる不良品のナットの排出装置」なる技術が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「パーツフイーダー1」、「螺旋形段部5」、「ナツトN」、「ガイド溝6」、「受箱9」、「ボウル3」は、それぞれ、本願発明の「パーツフィーダ」、「螺旋通路」、「プロジェクションナット」、「判別溝」、「回収箱」、「ボウル」に相当する。

したがって、両発明は、「パーツフィーダのボウルの周囲に段構造の螺旋通路が設けられ、前記螺旋通路を移動してきたプロジェクションナットが螺旋通路に形成した円弧状の判別溝で所定の向きかどうかが判別され、所定の向き以外のものは回収箱へ転落させられてからボウル内へ返還されるパーツフィーダ。」である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
本願発明においては、螺旋通路は、外周側が低くなった螺旋通路であって、円弧状の判別溝は「螺旋通路の外周寄りに形成した円弧状の判別溝」であり、回収箱が「判別溝の外側に配置した回収箱」であるのに対し、引用文献1記載の発明においては、螺旋通路は、内周側が低くなった螺旋通路であって、円弧状の判別溝は、螺旋通路の内周寄りに形成した円弧状の判別溝であり、回収箱が「判別溝の外側に配置した」ものではない点。

<相違点2>
本願発明においては、「寸法・形状が同じとされた一種類のプロジェクションナットの中で溶着用突起の変形で高さが低くなっている異常プロジェクションナットが排出の対象とされており、前記円弧状の判別溝の上流側に異常プロジェクションナットの選別手段が設置され、この選別手段は螺旋通路の外周部に起立させた規制板の下部に異常プロジェクションナットは通過させるが正常プロジェクションナットは通過させない高さの規制空隙を形成したもので、規制板の外側に出口のない構造の蓄積ボックスが設置してあり、前記規制空隙を通過した異常プロジェクションナットは出口のない蓄積ボックス内に転落させられること」なる構成を有する「異常プロジェクションナットの排出装置」であるのに対し、引用文献1記載の発明においては、この構成を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について。>
プロジェクションナット用パーツフィーダーにおける、所定の向き以外のナットを回収箱へ転落させてからボウル内へ返還する構造において、螺旋通路を、外周側が低くなるように形成し、該螺旋通路の外周寄りに円弧状の判別手段を形成し、所定の向き以外のナットを螺旋通路の外周側に転落させて、螺旋通路の外側に配置した回収箱へ転落させられてからボウル内へ返還されるように構成することは、本願出願前に周知の技術的事項である(実願昭58-109438号(実開昭60-16420号)のマイクロフィルム(特に、大部品選別路(22)、大部品選別突条(26)、ポケット(31)を参照。)、実願昭60-164814号(実開昭62-74617号)のマイクロフィルム(特に、滑動転落部19、20、溝21、22、受箱36を参照。))。したがって、上記周知の技術的事項を引用文献1記載の発明に適用し、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

<相違点2について。>
引用文献2に記載された「パーツフイーダ本体」、「底面に溶接用の足4aを有するナット」、「熔接用の足4aがない不良品のナット」、「供給部品通路3」、「周壁1及び調節板5」、「熔接用の足4aのある良品のナット」、「排出口2」、「受け箱6」は、本願発明の「パーツフィーダ」、「プロジェクションナット」、「溶着用突起の変形で高さが低くなっている異常プロジェクションナット」、「螺旋通路」、「規制板」、「正常プロジェクションナット」、「規制空隙」、「蓄積ボックス」に相当するものである。
したがって、引用文献2には、「パーツフィーダ本体の周囲に外周側が低くなった供給部品通路3が設けられたパーツフィーダにおいて、寸法・形状が同じとされた一種類のプロジェクションナットの中で溶着用突起の変形で高さが低くなっている異常プロジェクションナットが排出の対象とされており、異常プロジェクションナットの選別手段が設置され、この選別手段は螺旋通路の外周部に起立させた規制板の下部に異常プロジェクションナットは通過させるが正常プロジェクションナットは通過させない高さの規制空隙を形成したもので、規制板の外側に出口のない構造の蓄積ボックスが設置してあり、前記規制空隙を通過した異常プロジェクションナットは出口のない蓄積ボックス内に転落させられる異常プロジェクションナットの排出装置」という技術思想が記載されているものと認められる。
そして、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術は、共にプロジェクションナットのフィーダに関するものであり、また、プロジェクションナット用パーツフィーダーに、ナットが所定の向きか否かを判別する機能に加えて、他の機能を持たせたものも本願出願前に周知である(実願昭58-109438号(実開昭60-16420号)のマイクロフィルム、実願昭59-21828号(実開昭60-136888号)のマイクロフィルム、実願昭52-31088号(実開昭53-126272号)のマイクロフィルム)。
したがって、引用文献1記載の発明に対して引用文献2記載の技術思想を適用することに困難性はない。
そして、異常プロジェクションナットの選別手段とプロジェクションナットの表裏の判別手段のいずれを上流側にするかという事項は、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
したがって、引用文献1記載の発明に対して引用文献2記載の技術を適用し、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術思想及び上記周知の技術的事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-01-27 
結審通知日 2006-02-07 
審決日 2006-02-21 
出願番号 特願平11-325916
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一色 貞好  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 清田 栄章
関 義彦
発明の名称 異常プロジェクションナットの排出装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ