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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1134225
審判番号 不服2003-9158  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-22 
確定日 2006-04-10 
事件の表示 特願2000-257596「プリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月20日出願公開、特開2001-109162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が平成9年4月1日である特願平9-82682号の一部を平成12年8月28日に新たな特許出願(特願2000-257596号)としたものであって、平成15年3月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成15年5月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年6月19日付で手続補正がなされた。

2.平成15年6月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]独立特許要件違反
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成15年1月20日付手続補正書の請求項1の、「導体回路が形成された基板上に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層をマスクパターンが描画されたガラス基板を介して露光し、これを現像してバイアホール形成用の開口を設け、次いで前記感光性樹脂層上に導体回路及びバイアホールを形成するとともに、前記マスクパターンが描画されたガラス基板は、遮光インクによりマスクパターンが描画されたガラス基板もしくは金属層によりマスクパターンが描画されたガラス基板であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。」から
「導体回路が形成された基板上に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層をマスクパターンが描画されたガラス基板を介して露光し、これを現像してバイアホール形成用の開口を設け、次いで前記感光性樹脂層上に導体回路及びバイアホールを形成するプリント配線板の製造方法であって、
前記マスクパターンが描画されたガラス基板は、クロム層あるいは表面に酸化膜を有するクロム層からなる金属層によりマスクパターンが描画されたガラス基板であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。」と補正された。

この補正は、「マスクパターンが描画されたガラス基板」のマスクパターンの材料について「クロム層あるいは表面に酸化膜を有するクロム層からなる金属層」と限定したもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願のもとの出願の出願前に頒布された特開平5-63366号公報(以下、引用例1という。)には、次の事項が記載されている。

ア.【0001】【産業上の利用分野】
本発明は、多層配線板の製造方法に関し、特にセラミック基板を用いるセラミック多層配線板の製造方法に関する。

イ.【0007】
本発明の特徴は、上記のようにして形成した第1の導体回路の上に絶縁層を形成する方法にある。即ち、本発明におけるこの絶縁層の形成方法は、ガラス等の無機物を含有する感光性絶縁ペーストを第1の導体回路が形成されているセラミック基板上に塗布した後、ガラスマスク等のパターンが描かれたマスクを介して紫外線等の光線で露光し、次いで溶剤等を用いて現像して絶縁層のパターン形成を行い、次いで不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中で500〜950℃で焼成して有機物を分解させ、無機物からなる絶縁層を得る方法である。

ウ.【0012】
セラミック基板1として0.3φのスルホールを有する焼成されたアルミナ基板1を用いた。この基板1の寸法は100mm×100mm×0.635mmであった。この基板1を熱リン酸に浸漬して、基板表面を均一に粗化し、次いで充分に洗浄乾燥した後、この基板1の上面及び下面の表面に無電解メッキ法で厚み10μmの銅層を形成し、得られた上下の銅層の表面を研磨機を用いて物理的に研磨した後、この研磨された銅層の表面に感光性の液状レジストを塗布し感光性レジスト層を形成し、次いでパターンが描かれたマスクを介して露光し、次いで現像してレジスト層のパターン形成を行い、さらにスプレー法で前記銅層のエッチング処理し、次いで溶剤を用いて残存していたレジスト膜の剥離を行って最小の線幅及び線間隔が50μmの第1の導体回路2を基板1の上に形成した。
【0013】
この第1の導体回路2が表面に形成された基板1上に無機物を含有する感光性絶縁ペースト(東京応化工業社製、商品名フォトインシュレーター)をスクリーンを用いベタ印刷し、乾燥後、パターンが描かれたマスクを介して紫外線で露光し、次いで1、1、1-トリクロルエタンを用いて現像して絶縁層4のパターン形成を行い、さらに100ppmの酸素を含む窒素雰囲気中、850℃で焼成して絶縁層4を形成した。
【0014】
次に、絶縁層4が形成された基板1上に無電解メッキ法で厚み10μmの銅層を形成し、この銅層の表面に感光性の液状レジストを塗布し感光性レジスト層を形成し、次いでパターンが描かれたマスクを介して露光し、次いで現像してレジスト層のパターン形成を行い、さらにスプレー法でエッチング処理し、次いで溶剤を用いて残存していたレジスト膜の剥離を行って第1の導体回路の上に絶縁層を介して第2の導体回路3を形成してセラミック多層配線板を得た。

また、【図1】から、引用例1の絶縁層4には、バイアホール形成用の開口、及びそこにバイアホールが形成されていることは、明らかである。

したがって、上記記載事項、及び【図1】等から、引用例1には、「第1の導体回路2が表面に形成された基板1上に感光性絶縁ペーストを印刷し、乾燥後、パターンが描かれたガラスマスクを介して紫外線で露光し、次いで現像して絶縁層4のバイアホール形成用の開口を含むパターン形成を行い、さらに100ppmの酸素を含む窒素雰囲気中、850℃で焼成して絶縁層4を形成し、次に、絶縁層4が形成された基板1上に無電解メッキ法で厚み10μmの銅層を形成し、この銅層の表面に感光性の液状レジストを塗布し感光性レジスト層を形成し、次いでパターンが描かれたガラスマスクを介して露光し、次いで現像して、レジスト層のパターン形成を行い、さらにスプレー法でエッチング処理し、次いで溶剤を用いて残存していたレジスト膜の剥離を行って第1の導体回路の上に絶縁層を介して第2の導体回路3及びバイアホールを形成するセラミック多層配線板の製造方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、ガラスマスクのマスクパターンを、クロム層あるいは表面に酸化膜を有するクロム層からなる金属層により形成することが周知であることを示す特開平3-43736号公報(以下、周知例1という。)には、次の事項が記載されている。
エ.従来、透明ガラスの一主面上において、前記透明ガラス基板の主面側からクロム薄膜、酸化クロム薄膜の夫々を順次積層した所定パターンの積層膜を設けたハードマスク(フォトマスク又はレチクル)が提案されている。(公報第2頁左上欄)

オ.本発明は、IC等の半導体装置のウェーハプロセス、プリント配線基板の製造プロセスの夫々で使用されるハードマスクに限定されず、・・・(公報第6頁右上欄)

同様に特開昭57-54939号公報(以下、周知例2という。)には、次の事項が記載されている。
カ.一般に、光学用マスクは光学用のフィルター又は半導体集積回路やプリント基板のパターンを形成するフォトマスク等として用いられている。・・・
1はガラス基板、2は光を遮蔽するマスク(たとえばCr蒸着膜)、3はシリコン基板、4はポジ形の感光性樹脂とすると、・・・(公報第1頁右下欄)

同様に特開平1-214859号公報(以下、周知例3という。)には、次の事項が記載されている。
キ.第1図は石英基板側からクロム膜および酸化クロム膜の2層膜構造の遮光パターンを有するレチクルの断面図(公報第3頁左上欄)

同様に特公昭49-3231号公報(以下、周知例4という。)には、次の事項が記載されている。
ク.第1図に示すごとく、ガラス基板1上にクロム金属薄膜2で画像を作成したクロム・マスクが使用されている。(公報第1頁2欄)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「第1の導体回路2が表面に形成された基板1上に」は、「導体回路が形成された基板上に」に相当し、以下、同様に「感光性絶縁ペーストを印刷し」は「感光性樹脂層を形成し」に、「パターンが描かれたガラスマスクを介して紫外線で露光し」は「マスクパターンが描画されたガラス基板を介して露光し」に、「現像して絶縁層4のバイアホール形成用の開口を含むパターン形成を行い」は「現像してバイアホール形成用の開口を設け」に、「第1の導体回路の上に絶縁層を介して第2の導体回路3及びバイアホールを形成するセラミック多層配線板の製造方法」は「前記感光性樹脂層上に導体回路及びバイアホールを形成するプリント配線板の製造方法」に、それぞれ、相当する。

したがって、両者は、「導体回路が形成された基板上に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層をマスクパターンが描画されたガラス基板を介して露光し、これを現像してバイアホール形成用の開口を設け、次いで前記感光性樹脂層上に導体回路及びバイアホールを形成するプリント配線板の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点;
マスクパターンが、本願補正発明では、クロム層あるいは表面に酸化膜を有するクロム層からなる金属層により形成されているのに対し、引用発明は、その点の記載がない点。

(4)判断
相違点について
ガラスマスクのマスクパターンを、クロム層あるいは表面に酸化膜を有するクロム層からなる金属層により形成することは、上記周知例1〜4にあるように従来周知の技術事項であるので、引用発明のガラスマスクに適用して、相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明、及び従来周知の技術事項から予測される範囲のもので格別のものとは言えない。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年6月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年1月20日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「2.(1)補正後の本願発明」の項参照。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「マスクパターンが描画されたガラス基板」のマスクパターンの材料について「クロム層あるいは表面に酸化膜を有するクロム層からなる」との限定を省き、さらに択一的記載で、「遮光インク」を付加したものである。
そうすると、択一的記載である「遮光インク」を除く、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-27 
結審通知日 2006-01-24 
審決日 2006-02-06 
出願番号 特願2000-257596(P2000-257596)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03F)
P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 江塚 政弘
辻 徹二
発明の名称 プリント配線板の製造方法  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 富澤 孝  
代理人 山中 郁生  

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