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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1134229
審判番号 不服2003-18046  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-10-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-18 
確定日 2006-04-10 
事件の表示 特願2001- 21113「半導体装置およびその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月4日出願公開、特開2002-289768〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成13年1月30日(優先権主張 平成12年7月17日、平成12年10月23日、平成13年1月22日)の出願であって、平成14年3月19日付で拒絶理由通知がなされ、同年6月17日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成14年3月19日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、平成15年7月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月20日付で手続補正書が提出されたものである。

[2]平成15年10月20日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成15年10月20日付手続補正を却下する。

<理由>
[2-1]補正の内容
平成15年10月20日付手続補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】第1の半導体チップと、第2の半導体チップとがそれぞれの半導体チップに設けられるバンプを介して接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプが第1の金属からなり、前記第1および第2の半導体チップのそれぞれに設けられるバンプの接合部は、該第1の金属と、前記第1および第2の半導体チップの少なくとも一方のバンプ表面に設けられ、前記第1の金属の溶融温度より低い温度で溶融して前記第1の金属と合金化し得る材料からなる第2の金属との合金層、または前記第1および第2の半導体チップの少なくとも一方のバンプに設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属層からなり、かつ、前記合金層または第3の金属層は前記第1および第2の半導体チップのそれぞれに設けられるバンプの少なくとも一方のバンプ側面まで付着してなる半導体装置。
【請求項2】第1の半導体チップの電極端子上に設けられるバンプと、第2の半導体チップの電極端子または該電極端子と接続した配線とが接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプが第1の金属からなり、該バンプの接合部は、該第1の金属と、前記バンプもしくは前記第2の半導体チップの電極端子または配線上に設けられ、前記第1の金属の溶融温度より低い温度で溶融して前記第1の金属と合金化し得る材料からなる第2の金属との合金層、または前記バンプもしくは前記第2の半導体チップの電極端子または配線上に設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属層からなり、かつ、前記接合部の合金層または第3の金属層が前記バンプの側面までフィレットを形成して付着してなる半導体装置。
【請求項3】第1の半導体チップと、第2の半導体チップとがバンプを介して接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプが第1の金属からなり、該バンプを介した前記第1および第2の半導体チップの接合部が該第1の金属と該第1の金属より融点の低い第2の金属との合金層、または前記第1の金属より融点の低い第3の金属層からなり、該接合部に合金化しなかった前記第2の金属の層もしくは第3の金属層が残存し、または前記合金層の前記第2の金属の割合が大きい層を有するように前記第1および第2の半導体チップが接合されることにより、280〜500℃で該接合部が溶融することにより前記第1および第2の半導体チップを分離し得る半導体装置。
【請求項4】第1の半導体チップと、第2の半導体チップとが、該第1および第2の半導体チップの両方にそれぞれ形成されるバンプを介して接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプを介した前記第1および第2の半導体チップのバンプ同士の接合部が、280〜500℃で溶融することにより前記第1および第2の半導体チップを分離し得る構造に形成されてなる半導体装置。
【請求項5】前記第1および第2の半導体チップの一方に前記バンプが形成され、他方の半導体チップに前記第1の金属からなる金属膜が形成され、該バンプと前記金属膜とが接合されてなる請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】前記第1および第2の半導体チップの接合部に、前記第1の金属と第2の金属との合金層または前記第3の金属層からなるフィレットが形成されてなる請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】前記第1の金属がAuからなり、前記第2の金属がSnからなり、前記接合部がAu-Sn合金を有する請求項1、2または6記載の半導体装置。
【請求項8】前記第3の金属がAu-Sn合金からなる請求項1、2または6記載の半導体装置。
【請求項9】第1の半導体チップと、第2の半導体チップとが、それぞれの電極端子および配線が形成される側が向き合されて電気的に接続されると共に接合される半導体装置であって、前記第1の半導体チップと第2の半導体チップとの接合が配線同士の接合で、該配線同士の接合部に低融点金属層が設けられ、該接合部以外の前記第1の半導体チップと第2の半導体チップの配線の間隙部に、第1の絶縁層が設けられ、前記低融点金属層により接合されてなる半導体装置。
【請求項10】前記配線の表面が平坦化されるように、前記半導体チップ表面のパシベーション膜上に第2の絶縁層を介して前記配線が形成されてなる請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】前記配線が、電極端子に接続して設けられるバリアメタル層を介したAu配線であり、前記低融点金属層がAu-Sn合金からなる請求項9または10記載の半導体装置。
【請求項12】前記配線が、電極端子と同時に形成されるCuからなり、該配線上にバリアメタル層およびAu層を介してAu-Sn合金からなる前記低融点金属層により接合されてなる請求項9または10記載の半導体装置。
【請求項13】前記配線が、電極端子と同時に形成されるAuからなり、該配線上でAu-Sn合金からなる前記低融点金属層により接合されてなる請求項9または10記載の半導体装置。
【請求項14】前記接合部を構成するAu-Sn合金が、Auを65wt%以上含有するAuリッチの合金を有する請求項7、8、11、12または13記載の半導体装置。
【請求項15】前記接合部のAu-Sn合金層が0.8μm以上5μm以下である請求項7、8、11、12、13または14記載の半導体装置。
【請求項16】前記第1の半導体チップと第2の半導体チップとの接合部の間隙部に、弾性率が前記バンプとほぼ同じ弾性率を有する絶縁性樹脂が充填されてなる請求項1ないし8のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項17】前記第1の半導体チップと第2の半導体チップとの接合部の間隙部に、熱収縮率が5%以下の絶縁性樹脂が充填されてなる請求項1ないし8のいずれか1項または16記載の半導体装置。
【請求項18】前記第1の半導体チップおよび第2の半導体チップの少なくとも一方の前記接合部における半導体層に回路素子が形成されてなる請求項1ないし17のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項19】第1の半導体チップまたは基板と、第2の半導体チップとを向き合せて、前記第1の半導体チップまたは基板と第2の半導体チップのそれぞれに設けられるバンプ間で接合する半導体装置の製法であって、前記バンプの少なくとも一方に、該バンプの金属より低融点の低融点金属層を設け、前記第1の半導体チップまたは基板と前記第2の半導体チップとを完全には位置合せをすることなく接合部が向き合うように重ね、前記低融点金属層が溶融する温度まで上げることにより、セルフアラインで位置合せをして前記第1の半導体チップまたは基板と第2の半導体チップとを接合することを特徴とする半導体装置の製法。」とする補正を含むものである。

[2-2]補正の目的
上記補正前の請求項1に記載される「該バンプの接合部は、該第1の金属と前記バンプの少なくとも一方に設けられ、」を「前記第1および第2の半導体チップのそれぞれに設けられるバンプの接合部は、該第1の金属と、前記第1および第2の半導体チップの少なくとも一方のバンプ表面に設けられ、」と限定し、同「前記バンプの少なくとも一方に設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属」を「前記第1および第2の半導体チップの少なくとも一方のバンプに設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属層」と限定し、同「前記バンプの少なくとも一方の側面まで前記合金層または第3の金属層が充分に付着して接合されてなる」を「前記合金層または第3の金属層は前記第1および第2の半導体チップのそれぞれに設けられるバンプの少なくとも一方のバンプ側面まで付着してなる」と限定し、
同請求項2に記載される「前記バンプもしくはその相手方」(2箇所)を「前記バンプもしくは前記第2の半導体チップの電極端子または配線上」(2箇所)と限定し、同「第3の金属からなり、かつ、前記バンプの側面まで前記合金層または第3の金属層が充分に付着して接合されてなる」を「第3の金属層からなり、かつ、前記接合部の合金層または第3の金属層が前記バンプの側面までフィレットを形成して付着してなる」と限定し、
同請求項3に記載される「前記バンプを介した前記第1および第2の半導体チップの接合部が280〜500℃で前記第1および第2の半導体チップを容易に分離し得る構造からなる」を「前記バンプが第1の金属からなり、該バンプを介した前記第1および第2の半導体チップの接合部が該第1の金属と該第1の金属より融点の低い第2の金属との合金層、または前記第1の金属より融点の低い第3の金属層からなり、該接合部に合金化しなかった前記第2の金属の層もしくは第3の金属層が残存し、または前記合金層の前記第2の金属の割合が大きい層を有するように前記第1および第2の半導体チップが接合されることにより、280〜500℃で該接合部が溶融することにより前記第1および第2の半導体チップを分離し得る」と限定し、
同請求項4に記載される「前記第1および第2の半導体チップの両方にそれぞれ前記バンプが形成され、該バンプ同士が接合されてなる請求項3記載の半導体装置。」を「第1の半導体チップと、第2の半導体チップとが、該第1および第2の半導体チップの両方にそれぞれ形成されるバンプを介して接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプを介した前記第1および第2の半導体チップのバンプ同士の接合部が、280〜500℃で溶融することにより前記第1および第2の半導体チップを分離し得る構造に形成されてなる半導体装置。」と限定し、
同請求項12、13に記載される「請求項9、10または11記載の」、「請求項9、10または11項記載の」を共に「請求項9または10記載の」と限定し、
同請求項19に記載される「接合部が向き合うように重ね、」を「完全には位置合せをすることなく接合部が向き合うように重ね、」と限定する補正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[2-3]独立特許要件
次いで、上記の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正後の請求項1〜4、12、13、19に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

(1)補正後の本願発明
上記補正後の請求項1〜4、12、13、19に係る発明(以下、夫々「本願補正発明1」〜「本願補正発明4」、「本願補正発明12」、「本願補正発明13」、「本願補正発明19」という。)は、平成15年10月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜4、12、13、19に記載された事項により特定される、上記[2-1]の【請求項1】〜【請求項4】、【請求項12】、【請求項13】、【請求項19】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された下記刊行物には、以下の事項が記載されている。

刊行物1:特開平9-326465号公報
刊行物2:特開平9-213702号公報

(2-1)刊行物1:特開平9-326465号公報
刊行物1には、
「【請求項1】第1の電極を有する第1の半導体素子と、前記第1の半導体素子上の保護膜上に形成された第2の電極と、前記保護膜上に形成されるとともに前記第1の電極と前記第2の電極とを接続する配線層と、前記第2の電極及び前記配線層を介して前記第1の電極との電気的な接続を行う第3の電極を有するとともに前記第1の半導体素子に積層された第2の半導体素子とを有する半導体装置。
【請求項3】第2の電極と第3の電極とが突起電極を介して接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】、【請求項3】)、
実施の態様として、図5〜7が示されるとともに、「【0031】まず図5(a)に示すように、拡散まで終了したウエハの保護膜35上からフォトレジスト51を塗付し配線層36に対応した部分のみが抜けたパターン52を形成する。次に図5(b)に示すように最上層に形成されたAl電極53の自然酸化膜54を除去する・・・そして図5(c)に示すようにパターン52内のAl電極53、および保護膜35上に無電解めっきで金属膜を析出させるための下地処理を行い、置換反応膜55を形成する。・・・
【0032】次に図5(d)に示すように置換反応膜55上に無電解めっき法でNiめっき膜56を析出させる。・・・この後Niめっき膜56上からさらに無電解Auめっきを行い、Au膜57を得る。このAu膜57を形成する目的はNi表面が酸化するのを防ぐためと、電気的に安定した接触抵抗を得るためである。この後図5(e)に示すようにフォトレジスト51を除去して、配線層36付の第1の半導体素子31を得る。・・・
【0033】次に第2の半導体素子32上の第2の電極34に突起電極38を形成する方法を説明する。形成方法は上記の図5で示した方法とほぼ同様の方法で形成する。ただしこの場合は、配線層は形成しないためフォトレジストは不要となる。すなわちAl電極上に選択的にジンケート処理またはアクチベート処理を行い、無電解Niめっき、ついで無電解Auめっきで突起電極を得るのである。高さは3〜10μm程度であり、このうちAuめっき膜厚は0.1〜0.3μm程度で十分である。
【0034】次に上記のようにして形成された第1及び第2の半導体素子(LSIチップ)の2つのチップ同士を張合せて、積層化する方法について説明する。
【0035】まずは図6を用いてその一例について説明する。各々のチップには配線層36や第3の電極37、突起電極38が前述した方法ですでに形成されている。これら2つのチップの第3の電極37と突起電極38を位置合わせする。次に両者のチップを張合せて熱と圧力を加える。このことにより第3の電極37表面のAuと突起電極38表面のAuを反応させて金属的な接合を行う。そして最終的には機械的強度を得るために両者のチップの間に樹脂61を流し込んで補強を行い、図6に示した最終構造を得る。
【0036】また、異なるメタラジーでの接合も可能である。その一例を図7を用いて説明する。第1の半導体素子31上に形成された配線層36と第3の電極37の最表面の処理をAuまたはSnなどの低融点金属と簡単に共晶合金を作り易い金属71としておく。この処理もまた無電解めっきにて形成することが可能である。一方第2の半導体素子32上の突起電極38の最表面処理はSnや半田の低融点金属72とする。このような材料組み合わせで行うと図5に示した構造より、さらに低温で両者のチップ同士を張合せて、積層化することができる。また、必要に応じて機械的強度をもたすために図5と同様な方法で樹脂を介在させても良い。」(段落【0031】〜【0036】)が記載されている。

(2-2)刊行物2:特開平9-213702号公報
刊行物2には、
「【0032】・・・図3(A)に示すように、ICチツプ1の各パツド2上にめつき法又はワイヤーボンデイング法により金塊32を形成した後、当該金塊32の表面上にめつき法等により錫からなる錫層33を積層形成するようにしてバンプ34を形成する。次いで図3(B)に示すように、このICチツプ1を位置決めしてプリント配線基板6上にマウントし、この後当該ICチツプ1を、210 〜350 〔℃〕程度に加熱されたツール31を用いて所定圧力でプリント配線基板6に押しつけることによりICチツプ1の各バンプ34を加圧し、加熱する。
【0033】この結果ICチツプ1の各バンプ34では、金塊32を形成する金が錫層33へ急速に拡散し、融点217〔℃〕の低温共晶組成が次々に反応し、かくして形成された溶融した低温共晶組成物(錫の含有量が90〔%〕のAu-Sn合金)がバンプ34の外に流れ出す。これにより図3(C)に示すように、ICチツプ1の各バンプ34とプリント配線基板6の対応するランド7との接合部に金の含有量が60〜90〔%〕のAu-Sn合金層35が形成され、かくしてICチツプ1の各パツド2がプリント配線基板6の対応するランド7とそれぞれ金塊34及びAu-Sn合金層35を順次介して接合される。」(段落【0032】、【0033】)、
「【0035】以上の構成によれば、・・・ICチップ1の各バンプ34をそれぞれプリント配線基板6の対応するランド7にフラックスを用いることなく確実に接合することができ、かくしてICチップ1及びプリント配線基板6間を高品質にかつ信頼性高く接合することができる。」(段落【0035】)、
「【0037】・・・まず図4(A)に示すように、ICチツプ1の各パツド2上にめつき法又はワイヤーボンデイング法等を用いて金塊40を形成すると共に、図4(B)に示すように、プリント配線基板6の対応するランド上にめつき法等により錫からなる錫層41を形成する(錫を皮膜する)。次いでICチツプ1をプリント配線基板6上に位置決めマウントし、この後このICチツプ1を、210 〜350 〔℃〕程度に加熱されたツール31を用いてプリント配線基板6上にパツド当たり0〜数十〔g〕程度の圧力で押し当てることにより、ICチツプ1及びプリント配線基板6の接合部を加熱及び加圧する。
【0038】この結果第2実施例と同様に、特にICチツプ1の各バンプ40の先端部に錫の含有量が60〜90〔%〕のAu-Sn合金でなるAu-Sn合金層43が生成され、当該Au-Sn合金層43を介してICチツプ1の各バンプ40がそれぞれプリント配線基板6の対応するランド7と接合される。これによりICチツプ1をプリント配線基板6上に実装することができる。
【0039】以上の構成によれば、・・・ICチップ1の各バンプ40をそれぞれプリント配線基板6の対応するランド7にフラックスを用いることなく確実に接合することができ、かくしてICチップ1及びプリント配線基板6間を高品質にかつ信頼性高く接合することができる。」(段落【0037】〜【0039】)が記載されている。
また、図2には、Sn100〜60%のSn及びAu-Sn合金の融点が示されており、また、図3(A)〜(C)、図4(A)〜(C)には、上記段落に記載された実装手順が図示され、同図3(C)、図4(C)には更に、接合部のSn層乃至Au-Sn合金層が、バンプ側面までフィレットを形成して付着している点も示されている。

(3)対比・判断
(3-1)本願補正発明2について
上記(2-1)に摘記した事項を総合すると、刊行物1には、「第2の半導体素子の第2の電極上の突起電極と、第1の半導体素子の電極及び配線層とが接合される半導体装置であって、前記突起電極は電極上に無電解Niめっき、ついで無電解Auめっきを行って形成され、該突起電極の最表面処理はSnや半田の低融点金属とし、前記第1の半導体素子の電極及び配線層は無電解Niめっき、その後無電解Auめっきを行って形成され、その最表面処理はAuまたはSnなどの低融点金属と簡単に共晶合金を作り易い金属とし、両半導体素子を位置合わせし、張合わせて熱と圧力を加えて接合した半導体装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
そして、本願補正発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における「第2の半導体素子」、「第2の半導体素子の第2の電極上の突起電極」、「第1の半導体素子」、「第1の半導体素子の電極及び配線層」は夫々、本願補正発明2における「第1の半導体チップ」、「第1の半導体チップの電極上に設けられるバンプ」、「第2の半導体チップ」、「第2の半導体チップの電極端子または該電極端子と接続した配線」に相当し、また、引用発明では、「前記突起電極は電極上に無電解Niめっき、ついで無電解Auめっきを行って形成され」るのであるから、該突起電極の「Ni」又は「Au」は本願補正発明2における「第1の金属」に相当する。
また、引用発明における「該突起電極の最表面処理はSnや半田の低融点金属とし、」の「Snや半田の低融点金属」は、該突起電極の「Ni」、「Au」よりも低融点であり、また、該低融点金属と該突起電極の「Au」との合金化により、又は該低融点金属と引用発明における「第1の半導体素子の電極及び配線層」上の「AuまたはSnなどの低融点金属と簡単に共晶合金を作り易い金属」との接合後の合金化により、該突起電極の「Ni」、「Au」よりも低融点の合金を接合部に生成し得るものである。一方、本願明細書の「なお、第3の金属層も、前述の第1および第2の金属と同様に、単独の金属のみならず、合金などを含む意味であり、とくに接合後には第1の金属および第2の金属との化合、合金化により均一な組成とは限らない。」(段落【0012】)との記載によれば、本願補正発明2における「第3の金属層」は、接合に伴って接合部に生成する低融点の合金をも含み、均一な組成とは限らないものと理解できるので、引用発明における突起電極上の「Snや半田の低融点金属」、及び上記合金化によって突起電極上又は「第1の半導体素子の電極及び配線層」上に生成する低融点の合金は、本願補正発明2における「前記バンプもしくは前記第2の半導体チップの電極端子または配線上に設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属層」に相当する。
そうすると、両発明は、「第1の半導体チップの電極端子上に設けられるバンプと、第2の半導体チップの電極端子または該電極端子と接続した配線とが接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプが第1の金属からなり、該バンプの接合部は、前記バンプもしくは前記第2の半導体チップの電極端子または配線上に設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属層からなる半導体装置」の点で一致し、次の点で相違する。(イ)本願補正発明2では、バンプの接合部の第3の金属層が該バンプの側面までフィレットを形成して付着してなるのに対し、引用発明では、それが明記されていない点。

そこで、上記相違点(イ)について検討するに、刊行物2には、ICチップのバンプと配線基板のランドとの接合部にSn層乃至Au-Sn合金層を該バンプ側面までフィレットを形成して付着させ、確実に信頼性高く接合することができる旨記載されているので、引用発明におけるバンプの接合部のSnや半田の低融点金属、及び該接合部に上記合金化によって生成する低融点の合金を該バンプ側面までフィレットを形成して付着させることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願補正発明2の上記相違点(イ)に係る発明特定事項によってもたらされる、低温で強固に接合でき、半導体層にダメージが殆どかからないという効果も、引用発明及び刊行物1、2の記載から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明2は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明2が特許出願の際独立して特許を受けることができないため、本願補正発明1、3、4、12、13、19について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[3]本願発明
平成15年10月20日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1〜19に係る発明は、平成14年6月17日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は以下のとおりである。
「【請求項2】第1の半導体チップの電極端子上に設けられるバンプと、第2の半導体チップの電極端子または該電極端子と接続した配線とが接合されることにより形成される半導体装置であって、前記バンプが第1の金属からなり、該バンプの接合部は、該第1の金属と前記バンプもしくはその相手方に設けられ、前記第1の金属の溶融温度より低い温度で溶融して前記第1の金属と合金化し得る材料からなる第2の金属との合金層、または前記バンプもしくはその相手方に設けられる前記第1の金属より融点の低い第3の金属からなり、かつ、前記バンプの側面まで前記合金層または第3の金属層が充分に付着して接合されてなる半導体装置。」

[4]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平9-326465号公報)、同刊行物2(特開平9-213702号公報)には、夫々上記[2-3](2-1)、(2-2)に摘記した事項が記載されている。

[5]対比・判断
本願発明2における「前記バンプもしくはその相手方に設けられ」の「相手方」には、本願補正発明2における「前記第2の半導体チップの電極端子または配線上」が含まれ、また、本願発明2における「前記バンプの側面まで前記合金層または第3の金属層が充分に付着して接合されてなる」には、本願補正発明2における「前記接合部の合金層または第3の金属層が前記バンプの側面までフィレットを形成して付着してなる」が含まれるので、本願発明2は、本願補正発明2を包含するものといえる。
そして、本願発明2は、引用発明に対し、上記相違点(イ)の「バンプの接合部の第3の金属層が前記バンプの側面までフィレットを形成して付着してなる」を「前記バンプの側面まで第3の金属層が充分に付着して接合されてなる」と読み替えた相違点を有するものの、上記[2-3](3-1)で説示したとおり、本願補正発明2が、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明2も、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおり、本願発明2は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明2が特許を受けることができないため、本願の請求項1、3〜19に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-20 
結審通知日 2006-01-17 
審決日 2006-02-06 
出願番号 特願2001-21113(P2001-21113)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正加藤 浩一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
日比野 隆治
発明の名称 半導体装置およびその製法  
代理人 河村 洌  

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