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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1135058 |
審判番号 | 不服2003-13797 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-10-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-17 |
確定日 | 2006-04-13 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 56388号「放射線治療システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月 9日出願公開、特開平 7-255719〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年3月25日の出願であって、平成15年6月9日付けで拒絶査定(発送日15年6月17日)がなされ、これに対し、平成15年7月17日に審判請求がなされるとともに、平成15年8月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正内容 本件補正は、補正前の請求項1(平成15年3月7日付けの手続補正書に記載の請求項1)において、 「【請求項1】 (α)診断用の開口を有するガントリと、天板を有し且つ当該天板の位置を前記ガントリの開口に進退自在に制御可能な寝台と、この寝台に載せられた被検体をX線でスキャンして当該被検体の画像データを収集するX線CTスキャナ手段と、 (β)前記画像データをモニタに画像として表示して提示するとともに、当該画像に写り込んだ病変部を放射線治療するためのアイソセンターの位置及び照射野の形状のデータを含む治療計画データを前記画像データと与えられた操作情報とに応じて作成する治療計画手段と、 (γ)前記アイソセンターの位置のデータに基づいて当該アイソセンターの位置を表すマーキング位置を、前記寝台に載せられた前記被検体の体表に自動的に指示する位置指示手段と (δ)を統合的に備えた1つのシステムから成る放射線治療計画用CTシステムと、 (ε)前記被検体の体表上の前記マーキング位置に付されるマーカにより位置決めされた当該被検体に前記治療計画データに基づいて放射線治療を実施する放射線治療装置とを備え、 (ζ)前記位置指示手段は、前記ガントリに取り付けられ且つ光マーカで前記マーキング位置を指示可能であって当該光マーカによる指示位置を変更可能な投光手段と、この投光手段による投光位置と前記寝台の天板の位置とを前記アイソセンターの位置のデータに基づいて制御して前記マーキング位置を前記アイソセンターの位置に自動的に一致させる制御手段と有すること (η)を特徴とする放射線治療システム。」、 と記載していたのを、 補正により、 「【請求項1】 (α)診断用の開口を有するガントリと、天板を有し且つ当該天板の位置を前記ガントリの開口に進退自在に制御可能な寝台と、この寝台に載せられた被検体をX線でスキャンして当該被検体の画像データを収集するX線CTスキャナ手段と、 (β)前記画像データをモニタに画像として表示して提示するとともに、当該画像に写り込んだ病変部を放射線治療するためのアイソセンターの位置及び照射野の形状のデータを含む治療計画データを前記画像データと操作者からの当該治療計画に関する操作情報とに応じて作成する治療計画手段と、 (γ’)前記寝台に載せられた前記被検体の体表に前記アイソセンターの位置を表すマーキング位置を自動的に指示する位置指示手段と (δ’)を備えた1つのシステムから成る放射線治療計画用CTシステムと、 (ε’)前記マーキング位置に付されるマーカにより位置決めされた前記被検体に前記治療計画データに基づいて放射線治療を実施する放射線治療装置とを備え、 (ζ’)前記位置指示手段は、 前記ガントリの開口の左右の側部及び上部であって当該開口の軸方向に直交する同一平面に在る3つの位置に各別に設置され且つ前記被検体に向けて光マーカを投光する3つの投光器と、 この3つの投光器それぞれに設けられ、且つ、前記左右の側部の2台の投光器の投光端を前記軸方向に直交する上下方向に移動可能であるとともに前記上部の投光器の投光端を前記軸方向に直交する横方向に移動可能な移動手段と、 前記治療計画手段により作成されたアイソセンターの位置と前記3つの光マークにより3次元的に指示される前記マーキング位置とを一致させるように前記各投光器の投光端及び前記天板の位置を自動的に制御する制御手段とを備えたこと (η)を特徴とする放射線治療システム。」、 とすることを含むものである。 そのうちでの補正事項を摘記すると次のア)、イ)、ウ)、エ)である。[注:(α)、(β)、……、(η)の表示は、便宜上、当審で付与したものである。] ア)補正前に(γ)で「前記アイソセンターの位置のデータに基づいて当該アイソセンターの位置を表すマーキング位置を、前記寝台に載せられた前記被検体の体表に自動的に指示する位置指示手段と」と記載していたのを、(γ’)「前記寝台に載せられた前記被検体の体表に前記アイソセンターの位置を表すマーキング位置を自動的に指示する位置指示手段と」と補正する。 イ)補正前に(δ)で、「を統合的に備えた……」と記載していたのを、「(δ’)「を備えた……」と補正する。 ウ)補正前に(ε)で「前記被検体の体表上の前記マーキング位置に付されるマーカにより位置決めされた当該被検体に……」と記載していたのを、(ε’)「前記マーキング位置に付されるマーカにより位置決めされた前記被検体に……」と補正する。 エ)補正前に(ζ)で「前記位置指示手段は、前記ガントリに取り付けられ且つ光マーカで前記マーキング位置を指示可能であって当該光マーカによる指示位置を変更可能な投光手段と、この投光手段による投光位置と前記寝台の天板の位置とを前記アイソセンターの位置のデータに基づいて制御して前記マーキング位置を前記アイソセンターの位置に自動的に一致させる制御手段と有する」と記載していたのを、補正により(ζ’)「前記位置指示手段は、前記ガントリの開口の左右の側部及び上部であって当該開口の軸方向に直交する同一平面に在る3つの位置に各別に設置され且つ前記被検体に向けて光マーカを投光する3つの投光器と、この3つの投光器それぞれに設けられ、且つ、前記左右の側部の2台の投光器の投光端を前記軸方向に直交する上下方向に移動可能であるとともに前記上部の投光器の投光端を前記軸方向に直交する横方向に移動可能な移動手段と、前記治療計画手段により作成されたアイソセンターの位置と前記3つの光マークにより3次元的に指示される前記マーキング位置とを一致させるように前記各投光器の投光端及び前記天板の位置を自動的に制御する制御手段とを備えた」と補正する。 (2)補正の目的の適否 補正事項ア)、イ)、ウ)はいずれも、その記載を明りょう簡潔化したものであって、不明りょうな記載の釈明を目的とする補正と認められ、補正事項エ)は、補正前の投光手段について、その構成や配置について限定するものであり、その限定内容は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)本願補正発明 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定(独立特許要件)に適合するか)について以下で検討する。 (3).1 刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物は、 刊行物1:特開平3-32649号公報 刊行物2:特開平2-124143号公報 刊行物3:特開平3-286783号公報 である。 刊行物1には、 A)「図において、1は被検体の断層写真を撮影するための通常用いられているX線CT装置で、その本体であるガントリ2には、X線管、X線検出装置が納められており、その中央の空間部にテーブル3を出入りさせる構造になっている。テーブル3には載置された被検体をテーブルと共に長手方向に移動させるためのテーブル駆動機構が内蔵されている。」(第2頁左上欄第12-19行)、 B)「4はテーブル3の位置制御、ガントリ2の各種制御、得られたデータからの画像再構成演算、画像中の関心領域の指定等を行うオペレータコンソールである。」(第2頁左上欄第19行-同頁右上欄第2行)、 C)「他の目的はコリメータを手作業で設定することなく自動的に行って、治療装置の照射野の設定を自動的に行い得る放射線治療システムを実現することにある。」(第2頁左下欄第19行-同頁右下欄第2行)、 D)「図中20は本発明者が特願平1-106687号により出願ずみの放射線照射基準点表示装置(以下位置決め装置という)である。」(第3頁右上欄第3-6行)、 E)「21はオペレータコンソール4から断層像及び関心領域のデータを受取り、投影画像の計算及び関心領域の3次元データからその中心位置の3次元座標データを計算する計算装置である」(第3頁右上欄第6-10行)、 F)「投光器23,24,25の配置を第2図に示す。……。図に明らかなように、投光器23は天井に取り付けられ、被検体の上部から3次元座標の中、…軸データにより十字マークを投影する。投光器24は左壁面に投光器25は右壁面に取り付けられてz軸データいよりそれぞれ被検体の左側面と右側面とに十字マークを投影する。」(第3頁右上欄第13行-同頁左下欄第1行)、 G)「コントローラ22は計算装置21からのデータ、又はリモートコントローラ33からの入力により、各投光器23,24,25を次に説明するように移動させる。モータ26と位置検出センサ29により投光器23による十字マークの投影位置が前記関心領域の中心位置x座標に合致するように移動させる。また、同様にして、モータ27,28及び位置検出センサ31,32により投光器24,25による十字マークの投影位置が関心領域の中心位置のz座標に合致するように移動させる。また計算装置21はオペレータコンソール4に前記中心位置のy座標を送り、オペレータコンソール4はテーブル3の駆動機構を制御して、投光器23の十字マークの投影位置が前記のy座標に合致するようにテーブル3をその長手方向に移動させる。このようにして、各投光器による十字マークの投影位置を関心領域の中心位置に合致させ、被検体の体表に投光された位置にマジックペン等でマークする。」(第4頁左上欄第8行-同頁右上欄第6行)、 H)「次に、計算装置21から治療装置コリメータコントローラ36に治療位置情報及びシミュレーションイメージデータを転送する。」(第4頁右上欄第7-9行)、 I)「被検体を治療装置の9のテーブルに載置し、位置決め装置20により被検体にマークを付けた位置にガントリの中心を合わせる。」(第4頁右上欄第9-12行)、 J)「被検体の位置が正しく設定されたら、治療装置コリメータコントローラ36は計算装置21から受けた照射範囲のデータに基づきコリメータ41の切片42を動かして、その開口の形状を関心領域の形状に合わせるべく多重絞りの調整を自動的に行う。」(第4頁右上欄第15-20行)、 が記載されている。 (3).2 対比・検討 本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比する。 本願補正発明は、(α)、(β)、(γ’)、(δ’)、(ε’)、(ζ’)、(η)の構成要件からなるが、それぞれ刊行物1記載の発明と次のように対応している。 (α)について X線CT装置は、寝台に載せられた被検体をX線でスキャンして当該被検体の画像データを収集するX線CTスキャナ手段を具備するのは自明のことであるから、刊行物1のA)の記載内容は、本願補正発明の(α)に相当する。 (β)について 刊行物1のB)の記載「4は……、得られたデータからの画像再構成演算、画像中の関心領域の指定等を行うオペレータコンソールである。」という記載は、画像再構成演算で作成された断層画像を表示し、断層画像の中の関心領域の指定をオペレータコンソール4で行うと意味と認められる。 [例えば、刊行物2の第2頁右下欄第2-5行に「即ち、CT装置による断層像は被検体内部を高いコントラスト分解能で表示することができ、放射線を照射すべき領域(関心領域)を断層像上において比較的容易に特定できる。」、第3頁右下欄第13-16行に「第3図(b)に示す各断層画像70を……表示部で見ながら、その病変部50をキーボード及びマウス26を利用して関心領域8として指定して入力する。」と記載されているとおりである。] そしてE)の記載「21はオペレータコンソール4から断層像及び関心領域のデータを受取り、投影画像の計算及び関心領域の3次元データからその中心位置の3次元座標データを計算する計算装置である」において、中心位置というのは、関心領域の中心位置のことであって、本願補正発明でいう「アイソセンター」に相当するものである。 また、J)で「治療装置コリメータコントローラ36は計算装置21から受けた照射範囲のデータに基づきコリメータ41の切片42を動かして、その開口の形状を関心領域の形状に合わせるべく多重絞りの調整を自動的に行う。」において、「照射範囲のデータ」は、本願補正発明でいう「照射野の形状のデータ」に相当するものである。 よって、前記B),E),J)に記載の事項を整理すると、刊行物1には、断層画像データ(画像データ)をモニタに画像として表示して提示するとともに、断層画像データ(画像データ)と、オペレータコンソール4の操作情報とともに用いて、計算装置21で、「関心領域の中心」(アイソセンター)及び、「照射範囲のデータ」(照射野の形状のデータ)を決定することが記載されており、これは、本願補正発明の(β)に相当する。 (γ’)について 刊行物1のG)には、コントローラ22が、計算装置21からのデータにより投光器23,24,25及びテーブル3を移動制御し、各投光器による十字マークの投影位置を関心領域の中心位置に合致させることが記載されており、これは本願補正発明の(γ’)に相当する。 (δ’)について 刊行物1記載の発明において、X線CT装置が、関心領域の中心(アイソセンター)及び、「照射範囲のデータ」(照射野の形状のデータ)を作成する治療計画手段と、各投光器による十字マークの投影位置を関心領域の中心位置に合致させる位置指示手段と組み合わされており、これらが、1つのシステムからなる放射線治療計画用システムを構成しており、これは本願補正発明の(δ’)に相当する。 (ε’)について 刊行物1のI)に「被検体を治療装置の9のテーブルに載置し、位置決め装置20により被検体にマークを付けた位置にガントリの中心を合わせる。」が記載されており、J)に「被検体の位置が正しく設定されたら、治療装置コリメータコントローラ36は計算装置21から受けた照射範囲のデータに基づきコリメータ41の切片42を動かして、その開口の形状を関心領域の形状に合わせるべく多重絞りの調整を自動的に行う。」ことが記載されており、これらI),J)に係る放射線治療装置は、本願補正発明の(ε’)に相当する。 (ζ’)について 刊行物1のG)には、コントローラ22(制御手段)の指令により、投光器23による十字マーク投影位置が関心領域の中心位置x座標[ここでx方向は、被検体の体軸方向(y方向)、上下方向(z方向)に対して垂直な方向であると認められる]に合致するように移動させられ、投光器24,25による十字マークの投影位置が関心領域の中心位置のz座標に合致するように移動させられ、テーブル3は、投光器23の投影位置が、関心領域の中心位置のy座標に合致するように長手方向(体軸方向である)に移動させられ、各投光器による十字マークの投影位置を関心領域の中心位置に合致させることが、記載されており、このような位置合わせは、それら投光器は、y軸方向に直交する同一平面にあるのが前提になっているからできるのであることは自明のことであるから、このことは、 本願補正発明の(ζ’)のうちで「前記位置指示手段は、ガントリの開口の軸方向に直交する同一平面に在る3つの位置に各別に設置され且つ前記被検体に向けて光マーカを投光する3つの投光器と、この3つの投光器それぞれに設けられ、且つ、前記左右の側部の2台の投光器の投光端を前記軸方向に直交する上下方向に移動可能であるとともに前記上部の投光器の投光端を前記軸方向に直交する横方向に移動可能な移動手段と、前記治療計画手段により作成されたアイソセンターの位置と前記3つの光マークにより3次元的に指示される前記マーキング位置とを一致させるように前記各投光器の投光端及び前記天板の位置を自動的に制御する制御手段とを備えた」という構成に相当する。 (η)について 刊行物1記載の発明は、前記したとおり、1つのシステムからなる放射線治療計画用システムを具備するものであり、該システムと、放射線治療装置とで、放射線治療システムを構成しており、これは本願補正発明の(η)に相当する。 以上を整理記載すると、両者は、 診断用の開口を有するガントリと、天板を有し且つ当該天板の位置を前記ガントリの開口に進退自在に制御可能な寝台と、この寝台に載せられた被検体をX線でスキャンして当該被検体の画像データを収集するX線CTスキャナ手段と、 前記画像データをモニタに画像として表示して提示するとともに、当該画像に写り込んだ病変部を放射線治療するためのアイソセンターの位置及び照射野の形状のデータを含む治療計画データを前記画像データと操作者からの当該治療計画に関する操作情報とに応じて作成する治療計画手段と、 前記寝台に載せられた前記被検体の体表に前記アイソセンターの位置を表すマーキング位置を自動的に指示する位置指示手段とを備えた1つのシステムから成る放射線治療計画用CTシステムと、 前記マーキング位置に付されるマーカにより位置決めされた前記被検体に前記治療計画データに基づいて放射線治療を実施する放射線治療装置とを備え、 前記位置指示手段は、 前記ガントリの開口の軸方向に直交する同一平面に在る3つの位置に各別に設置され且つ前記被検体に向けて光マーカを投光する3つの投光器と、 この3つの投光器それぞれに設けられ、且つ、前記左右の側部の2台の投光器の投光端を前記軸方向に直交する上下方向に移動可能であるとともに前記上部の投光器の投光端を前記軸方向に直交する横方向に移動可能な移動手段と、 前記治療計画手段により作成されたアイソセンターの位置と前記3つの光マークにより3次元的に指示される前記マーキング位置とを一致させるように前記各投光器の投光端及び前記天板の位置を自動的に制御する制御手段とを備えたことを特徴とする放射線治療システム、 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点a 本願補正発明は、ガントリの開口の左右の側部及び上部に、3つの投光器を設けたのに対し、刊行物1記載の発明は、被検体の体軸方向のどの位置において、左右の側部及び上部に、3つの投光器を設けたか、明示記載がなく、実施例として、各投光器を天井と左右の壁にそれぞれ設けたものが記載されているに過ぎない点。 前記相違点aについて記載すると、 刊行物3の第3頁左下欄第6-14行に「21はX線CT1を備えていて、治療装置9による治療を受ける被検者に対して治療部位にマーキングを行い、その位置に関するデータを作成するためのCTシミュレーションシステムである。22は被検者のある固定位置に基準位置のマーキングを行うマーキング手段で、X線CT1の空洞部の上部と左右に設けられて、被検者の位置合わせ等に用いられるレーザポインタが用いられる。」と記載があり、レーザポインタ22の配置位置が、「X線CT1の空洞部の上部と左右」であると明示されており、また、第4頁右下欄第4-6行に「マーキング手段22は別途設けられたマーカにより直接治療部位についてマーキングするようにすることもできる。この場合、マーキング位置のデータが送られた治療装置コントローラ27はそのデータに基づいて治療装置9を制御する。」と記載があり、これは、マーキング手段22で、治療部位のマーキングができるという意味であるから、刊行物1記載の発明において、X線CT装置のガントリの空洞部の左右の側部及び上部に、マーキング手段たる3つの投光器を設けることは、当業者が容易に想到できたものであり、その際、テーブル3(寝台)が挿入される開口(本願明細書段落【0036】で記載の、寝台12側に位置するフロントカバー11aの内側である。)に3つの投光器を設けることは当業者が普通に採用する設計的事項である。 したがって、本願補正発明は刊行物1-3に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 (4)むすび よって、本願補正発明は刊行物1-3に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定を満足せず、独立して特許を受けることができないものであり、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定(独立特許要件)に適合しないから、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 平成15年8月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成13年3月26日付け、平成15年3月7日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下で、「本願発明」という)は、前記2.(1)の段落で記載したとおりのものである。 4.刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物は、前記2.(3).1の段落で記載したとおりのものである。 5.対比・検討 本願発明と刊行物1に記載された発明を対比する。 本願発明は、(α)、(β)、(γ)、(δ)、(ε),(ζ),(η)の構成要件からなるが、それぞれ刊行物1記載の発明と次のように対応している。 (α),(β),(η)について 前記2.(3).2で、記載したとおりである。 (γ),(ε)について (γ’)と(γ)、ならびに(ε)’と(ε)は、文章表現の相違はあっても実質的に同一内容である。 したがって、(γ),(ε)の刊行物1記載の発明との対応関係は、前記2.(3).3で、(γ’),(ε’)について示した対応関係と同じである。 (ζ)について 刊行物1のG)には、位置指示手段が、光マーカたる投光器23,24,25により、マーキング位置を指示可能であって、当該光マーカによる指示位置が、投光器23,24,25を移動させることで変更可能になっている投光手段と、この投光手段による投光位置と、テーブル3の位置とを、関心領域の中心位置のデータに基づいて制御して、マーキング位置を、関心領域の中心位置に自動的に一致させるコントローラ22(制御手段)を有するものであるから、このことは、 本願発明の「前記位置指示手段は、光マーカで前記マーキング位置を指示可能であって当該光マーカによる指示位置を変更可能な投光手段と、この投光手段による投光位置と前記寝台の天板の位置とを前記アイソセンターの位置のデータに基づいて制御して前記マーキング位置を前記アイソセンターの位置に自動的に一致させる制御手段と有する」という構成に相当することが明らかである。 以上を整理記載すると、両者は、 診断用の開口を有するガントリと、天板を有し且つ当該天板の位置を前記ガントリの開口に進退自在に制御可能な寝台と、この寝台に載せられた被検体をX線でスキャンして当該被検体の画像データを収集するX線CTスキャナ手段と、 前記画像データをモニタに画像として表示して提示するとともに、当該画像に写り込んだ病変部を放射線治療するためのアイソセンターの位置及び照射野の形状のデータを含む治療計画データを前記画像データと与えられた操作情報とに応じて作成する治療計画手段と、 前記アイソセンターの位置のデータに基づいて当該アイソセンターの位置を表すマーキング位置を、前記寝台に載せられた前記被検体の体表に自動的に指示する位置指示手段とを統合的に備えた1つのシステムから成る放射線治療計画用CTシステムと、 前記被検体の体表上の前記マーキング位置に付されるマーカにより位置決めされた当該被検体に前記治療計画データに基づいて放射線治療を実施する放射線治療装置とを備え、 前記位置指示手段は、光マーカで前記マーキング位置を指示可能であって当該光マーカによる指示位置を変更可能な投光手段と、この投光手段による投光位置と前記寝台の天板の位置とを前記アイソセンターの位置のデータに基づいて制御して前記マーキング位置を前記アイソセンターの位置に自動的に一致させる制御手段と有することを特徴とする放射線治療システム、 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点b 本願発明は、投光手段が、ガントリに取り付けられるのに対し、刊行物1記載の発明は、投光手段(光マーカによる指示位置を変更可能な投光器23,24,25)は、ガントリに取り付けられておらず、天井および左右の壁に取り付けられている点。 前記相違点bについて検討すると、 i)刊行物1記載の発明は、X線CT装置のガントリの開口の手前(テーブルが開口に入る手前)の位置において、その左右の側部及び上部に各別に投光手段を設置するに際し、それら投光手段の取り付け対象として動かない足場である天井や壁を採用したものと認められるが、例えばガントリの架台ないしケーシング等も動かないものであるから、刊行物1記載の発明において、投光手段を、天井や壁に取り付けるのに代えて、ガントリの架台ないしケーシング等の動かないものを足場にして取り付けるようにすることは、当業者が容易に想到できたものと認められ、そのようにすることを阻害する要因もない。 ii)刊行物3の第3頁左下欄第10-14行に「22は被検者のある固定位置に基準位置のマーキングを行うマーキング手段で、X線CT1の空洞部の上部と左右に設けられて、被検者の位置合わせ等に用いられるレーザポインタが用いられる。」と記載があり、ここで、マーキング手段22の配置が「X線CT1の空洞部の上部と左右」であるというのは、マーキング手段22を、X線CTのガントリの内部に取り付けることを示唆する記載であると認められ(というのは、ガントリのハウジングないしカバーは普通は光遮蔽材であるから、ガントリの空洞部の上部と左右にマーキング手段22を配置するならば、マーキング手段22はそれら光遮蔽材の手前であるハウジング内ないしカバー内に取り付けるのが普通だからである。)、また、第4頁右下欄第4-6行に「マーキング手段22は別途設けられたマーカにより直接治療部位についてマーキングするようにすることもできる。」との記載は、基準位置のマーキングを行うマーキング手段22が、治療部位のマーキングに用いることができることを示唆しており、さらにまた、被検体の診断位置を、診断装置、治療装置間で正確に授受させることのできる位置設定法の発明に係る特開平3-155837号公報の第2頁右下欄第8-10行に「ガントリ2には基準位置設定のためのレーザマーカが内蔵されている」と記載があるから、刊行物1記載の発明において、投光手段を、天井や壁に取り付けることに代えて、ガントリに取り付けることは、当業者が容易に想到できたものである。 すなわち、i)、ii)で記載したいずれの理由によっても、刊行物1記載の発明において、投光手段を、ガントリに取り付けることは、当業者が容易に想到できたものである。 6.むすび したがって、本願発明は、刊行物1,2,3に記載された発明および従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-10 |
結審通知日 | 2006-02-14 |
審決日 | 2006-02-27 |
出願番号 | 特願平6-56388 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 菊井 広行 |
発明の名称 | 放射線治療システム |
代理人 | 関口 俊三 |
代理人 | 波多野 久 |