• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1135099
審判番号 不服2003-2442  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-14 
確定日 2006-04-19 
事件の表示 平成 9年特許願第175661号「電気的接続装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月30日出願公開、特開平10-177886号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成9年7月1日(パリ条約による優先権主張1996年7月2日、米国)の出願であって、その請求項8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)
「第1のターミナルを同第1のターミナルから離間した第2のターミナルに対して電気的に接続する装置であって、
(a)第1の面及び第2の面を有する弾性エレメントと、前記第1の面及び第2の面は弾性エレメントの互いに対向する複数の側部上にそれぞれ配置され、前記弾性エレメントは同弾性エレメントの第1の面及び第2の面の間に形成されたコンタクト収容スロットを有することと、
(b)前記弾性エレメントのコンタクト収容スロット内に収容されたコンタクトと、前記コンタクトは第1のターミナルに対して係合する第1の部分と、第2のターミナルに対して第1の側部にて係合する第2の部分とを有することと、
(c)前記コンタクトは前記コンタクトの第1の部分が第1のターミナルに対して係合していない際にも予荷重をコンタクトの第2の部分及び第2のターミナルの間に形成すべく弾性エレメントの第2の面はコンタクトの第2の部分の第1の側部と対向する第2の側部に対して係合していること
を含む装置。」

2.引用例
これに対して、平成13年11月29日付けの拒絶理由通知書に引用した、本願優先権主張の日前に頒布された特開平4-137373号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載され、また、図示されている。
(ア)【課題を解決するための手段】
本発明に係る領域アレイコネクタ装置は、一の形態として、第1回路基板の表面上に配列された複数の第1接点パッドと、これに対応して第2回路基板の対向面上に配列された複数の第2接点パッドと、を相互接続するための領域アレイコネクタ装置であって、
該装置は、
弾性エラストマ物質を含有し、各回路基板間に装着され、前記第1及び第2回路基板の各表面とそれぞれ対向した支持面を持つ非導電性支持部材と、
本体が回転可能な複数の導電性相互接続素子と、を含み、
該各導電性相互接続素子は、
弾性エラストマ支持部材の略厚み方向に伸長し、軸方向に長手側を持つ剛性本体部と、
第1端末部と、
第2端末部と、を有し、
該各端末部は、前記エラストマ支持部材からの相互接続素子の外れに抗するために前記剛性本体部の径よりも十分大きな幅を持つと共に、前記本体部と略同心状に配置され、また各相互接続素子のその軸に対する向きに拘りなく各接点パッドと適切に当接できるよう、前記支持部材の厚み方向に対して鋭角状に配置された前記パッド当接面を通って突出した線である前記軸の周囲にパッド当接触面が形成され、
前記第1及び第2端末部は、更に前記軸の周囲で少なくとも前記支持部材の支持面に近接対向して形成された支持部材当接面を持ち、該支持部材当接面は前記相互接続素子の本体の回転中前記支持面と当接し、
前記領域アレイコネクタ装置が各回路基板間でその各対応当接パッドに割り当てられた前記各相互接続素子とクランプ関係で配置され、該クランプ作用の結果各相互接続素子本体が回転し、これによって各素子のパッド当接面を介して突出した前記線が鋭角状に位置し、前記各相互接続素子は前記エラストマ支持部材により支持されて各接点パッド上に被押圧状態で配置されることを特徴とする。(段落【0006】)
(イ)本体部は、剛性本体部の径にほぼ対応した円形断面の孔部中に配置されている; 相互接続素子及び支持部材は予め形成されており、相互接続素子は本体部に相対して拡大された状態に予め形成された端末部を有し、支持部材は端末部よりも小さく予め形成されたスルーホールを有し、相互接続素子及び支持部材は支持部材のスルーホールの壁部をエラストマ降伏によって剛性本体部を挿入させるよう協働する構成である;(段落【0011】)
(ウ)再び図6に戻る。回路10は組立状態で示されており、領域アレイコネクタ12は両回路基板14、16間に配置されている。相互接続素子22は支持部材13内を貫通伸長し、その端末部27、29の接点パッド当接面26、28が接点パッド38、40と当接した状態にある。導電状態で相互接続される対向した両接点パッドの中心は、互いに距離、例えば約2.032mm(0.080インチ)だけオフセットされている。そして、支持部材当接面は、支持部材13の各平滑面30、32と当接する。この非圧縮状態では、接点パッドとだけ当接する相互接続素子により、各回路基板は支持部材13の非圧縮時の厚みTの約136%に等しい距離N(例えばN=2.769mm(0.109インチ))を介して隔てられている。
図6aに於て、対向した基板に矢印で示される圧縮力Pを印加すると、両基板面15、17間のギャップは距離Gに減少する。距離GはTの130%-75%に等しく、約118%に設定することが好適である(例えば、図示例ではGは約2.413mm(0.095インチ))。(段落【0027】〜【0028】)
(エ)図6には、支持部材に傾斜して設けられたスルーホールに、相互接続素子22が挿入され、相互接続素子22の両端末部の支持部材当接面がそれぞれ、支持部材に食い込み、それ故、第2端末部の接点パッド当接面が、第2接点パッドに付勢された状態で当接する様子が図示されている。

上記記載及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1回路基板の表面上に配列された複数の第1接点パッドと、これに対応して第2回路基板の対向面上に配列された複数の第2接点パッドと、を相互接続するための領域アレイコネクタ装置であって、
弾性エラストマ物質を含有し、各回路基板間に装着され、前記第1及び第2回路基板の各表面とそれぞれ対向した支持面を持つ非導電性支持部材と
弾性エラストマ支持部材のスルーホールに略厚み方向に伸長するように挿入され、軸方向に長手側を持つ剛性本体部と、前記剛性本体部の径よりも十分大きな幅を持つと共に、接点パッド当接面と、支持部材当接面を持つ第1及び第2端末部を有し、第2端末部の支持部材当接面が支持部材に食い込むことにより、接点パッド当接面が第2接点パッドに付勢されて当接する相互接続素子
を備えた装置。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「第1接点パッド」、「第2接点パッド」、「領域アレイコネクタ装置」、「弾性エラストマ支持部材」、「スルーホール」、「相互接続素子」、「第1端末部」、「第2端末部」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ、前者の「第1のターミナル」、「第2のターミナル」、「電気的に接続する装置」、「弾性エレメント」、「コンタクト収容スロット」、「コンタクト」、「第1の部分」、「第2の部分」に相当する。
そして、後者の弾性エラストマ支持部材は、第1及び第2回路基板の各表面とそれぞれ対向した支持面を持つから、「第1の面及び第2の面を有」し、該面は、互いに対向する複数の側部上にそれぞれ配置されており、スルーホールは「第1の面及び第2の面の間に」形成されていると言える。
また、後者の「第1及び第2端末部」の「接点パッド当接触面」はそれぞれ、第1接点パッド、第2接点パッドに当接しているから、「相互接続素子」は、「第1のターミナルに対して係合する第1の部分と、第2のターミナルに対して第1の側部にて係合する第2の部分とを有する」と言える。
更に、後者の「相互接続素子」は、その第2端末部の支持部材当接面が、「接点パッド当接触面」と対向しており、支持部材に食い込むことにより、接点パッド当接面が第2接点パッドに付勢されて当接するから、「予荷重をコンタクトの第2の部分及び第2のターミナルの間に形成すべく弾性エレメントの第2の面はコンタクトの第2の部分の第1の側部と対向する第2の側部に対して係合している」と言える。
そうすると、両者は、
「第1のターミナルを同第1のターミナルから離間した第2のターミナルに対して電気的に接続する装置であって、
(a)第1の面及び第2の面を有する弾性エレメントと、前記第1の面及び第2の面は弾性エレメントの互いに対向する複数の側部上にそれぞれ配置され、前記弾性エレメントは同弾性エレメントの第1の面及び第2の面の間に形成されたコンタクト収容スロットを有することと、
(b)前記弾性エレメントのコンタクト収容スロット内に収容されたコンタクトと、前記コンタクトは第1のターミナルに対して係合する第1の部分と、第2のターミナルに対して第1の側部にて係合する第2の部分とを有することと、
(c)前記コンタクトは予荷重をコンタクトの第2の部分及び第2のターミナルの間に形成すべく弾性エレメントの第2の面はコンタクトの第2の部分の第1の側部と対向する第2の側部に対して係合していること
を含む装置。」である点で一致しており、次の点で相違が認められる。
相違点:本願発明は、「コンタクトの第1の部分が第1のターミナルに対して係合していない際にも」予荷重をコンタクトの第2の部分及び第2のターミナルの間に形成しているのに対し、引用発明においては、「コンタクトの第1の部分が第1のターミナルに対して係合していない際」に、「予荷重」を「コンタクトの第2の部分及び第2のターミナルの間に形成」しているのか否か明らかでない点。

上記相違点について検討する。
記載事項(ウ)によれば、図6は、両回路基板と領域アレイコネクタ装置との組立状態を示すもので、基板と、相互接続素子は単に接触しているのみで、圧縮力Pは印加されていないものと認められる。
そして、その状態で、支持部材は、図6が示すように相互接続素子の両端末部により変形させられ、相互接続素子の第2端末部及び第2接点パッドの間に予荷重を形成している。この場合、第1回路基板の重量が圧縮力として印加されているとも考えられるので、この図示事項から直ちに、「コンタクトの第1の部分が第1のターミナルに対して係合していない際にも、予荷重をコンタクトの第2の部分及び第2のターミナルの間に形成している」と言うことはできないが、図6のように支持部材に傾斜するように設けたスルーホールに、拡大された端末部を持つ相互接続素子を挿入した構成とする時に、該両端部が支持部材を変形させた状態とする、即ち、予荷重が形成されるような構成とすることに何ら支障はないから、そのような構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、そのことによる効果も格別のものとは言えない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-17 
結審通知日 2005-11-22 
審決日 2005-12-05 
出願番号 特願平9-175661
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之井上 哲男  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 増沢 誠一
一色 貞好
発明の名称 電気的接続装置  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ