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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1135222 |
審判番号 | 不服2005-18256 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-04-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-22 |
確定日 | 2006-04-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第277190号「電子部品検出方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月13日出願公開、特開2001-102799〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年9月29日の出願であって、平成17年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月22日付けで審判請求がなされるとともに、同年10月24日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年10月24日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年10月24日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に記載された発明 平成17年10月24日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「【請求項1】 投光器と受光器とから成るラインセンサを用いて、撮像対象の吸着ノズルおよびその吸着ノズルに吸着された電子部品を撮像してその状態の画像を実像として取得する実像取得工程と、 前記ラインセンサを用いて、前記撮像対象の吸着ノズルおよび電子部品がない状態の画像を撮像環境を示す空像として取得する空像取得工程と、 前記実像と前記空像との差分を差像として取得する差像取得工程と、 前記差像に基づいて、前記吸着ノズルに吸着された電子部品の下端位置の検出値を取得し、電子部品の下端位置の正常値として予め定められた基準値と比較することにより、前記電子部品が正常状態か否かを検出する状態検出工程と、を備えたことを特徴とする電子部品検出方法。」 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「撮像対象」について「吸着ノズルおよび」との限定を付加するとともに、同じく「撮像対象」たる「電子部品」について「その吸着ノズルに吸着された」との限定を、同じく「検出値」及び「正常値」について、それぞれ「前記吸着ノズルに吸着された電子部品の下端位置の」、「電子部品の下端位置の」との限定を付加するものであって、この補正に係る事項は新規事項を含むものとは認められないから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した「特開平6-174449号公報」(以下、「引用例」という。)には、「部品選別方法」に関し、図1〜5図とともに次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は部品実装機において部品を保持して移載する際に部品自体又は保持状態の異常な部品を選別する部品選別方法に関するものである。」(第2頁第1欄第12〜14行) (イ)「部品実装機(特に部品装着機)において、部品供給部で部品を保持して実装位置に移載する際に部品を立った状態や斜めの状態で保持し、部品移載が正常な形態で行われない場合が発生し、実装品質を低下させるという問題があった。・・・そこで、従来から移載経路と交差するように配設した一次元ラインセンサにて部品高さを計測することによって異常な移載形態の部品を選別する方法が実施されている。」(第2頁第1欄第16〜24行) (ウ)「・・・一次元ラインセンサを用いて最大値を検出値とする部品選別方法では、実装機の使用環境や作業者の行うメンテナンスのレベルによって一次元ラインセンサの検出面に塵が付着したり、傷が発生していることがあるとそれらによる誤検出によって部品を無駄に廃棄してしまうことがあるという問題があり・・・本発明は上記従来の問題点に鑑み、・・・一次元ラインセンサの誤検出を防止できる部品選別方法を提供することを目的とする。」(第2頁第1欄第43行〜第2欄第9行) (エ)「図1において、1は部品を吸着保持して移載する吸着ノズルであり、2は吸着ノズル1を水平移動させる駆動系である。3は吸着ノズル1にて吸着保持した部品5の移載経路の途中に配設された一次元ラインセンサであり、その検出視野3aが移載経路を横断するように配設されている。4は検出のタイミングと信号を制御する制御装置であり、6は部品5を供給する部品供給部である。」(第2頁第2欄第30〜37行) (オ)「制御装置4は一次元ラインセンサ3に対して部品5及び吸着ノズル1がその視野3aを通過する前のタイミングAで事前計測を行わせる(ステップ#2)。その計測値をXとする。次に、制御装置4は一次元ラインセンサ3に対して部品5及び吸着ノズル1がその視野3aを通過するタイミングBに合わせて一定時間毎に複数回(図では3回)の本計測を行わせる(ステップ#3)。この一定時間毎の計測値の最大値をYとする。」(第2頁第2欄第42〜50行) (カ)「XとYの関係より一次元ラインセンサ3から制御装置4に対して次のような検出結果dm とエラー信号Eのオン・オフを出力する(ステップ#4〜#7)。・・・ 1)X=0の場合 dm =Y 、E=オフ 2)X<Yの場合 dm =Y 、E=オン 3)X≧Yの場合 dm =Z 、E=オン そして、制御装置4は、1)の場合はエラー信号Eがオフであるので、一次元ラインセンサ3の検出面には塵等の異物が付着していず、正常な検出値が出力されていると判断し、正常処理を行う(ステップ#8、#11)。2)の場合にはエラー信号Eはオンであるが、通常の検出値dm が出力されているので、検出面に異物が付着しているが出力されたdmは正常値であると判断し、作業者に対して注意を促す警告を出力する一方で正常処理を行う(ステップ#9、#12)。・・・ 3)の場合には、エラー信号Eがオンであるとともに検出値dmとして通常出力されない一定値Zが出力されているので、検出面に異物が付着して正常に測定できなかったと判断し、異常処理を行う(ステップ#10、#13)。」(第3頁第3欄第4〜27行) (キ)「正常処理の場合は、制御装置4は検出結果の最大値dm =Yと、予め設定されている部品5の厚みdと吸着ノズル部分のdn の合計d+dn を比較し、 dm >d+dn の関係が成立する場合、斜めあるいは立った状態で移載されていると判断する。」(第3頁第3欄第28行〜第4欄第2行) 引用例に記載のものにおいて、一次元ラインセンサを投光器と受光器とで構成するとともに、一次元ラインセンサでの計測に当たり、撮像対象である吸着ノズル1及び吸着された部品5を撮像してその画像を取得することは、部品実装機の分野における技術常識である。そして、かかる技術常識に照らせば、上記記載事項(オ)中「一次元ラインセンサ3に対して部品5及び吸着ノズル1がその視野3aを通過する前のタイミングAで事前計測を行わせる(ステップ#2)。」には、「撮像対象の吸着ノズル1および部品5がない状態の画像を取得するステップ」が、上記記載事項(オ)中「制御装置4は一次元ラインセンサ3に対して部品5及び吸着ノズル1がその視野3aを通過するタイミングBに合わせて一定時間毎に複数回(図では3回)の本計測を行わせる(ステップ#3)。」には、「撮像対象の吸着ノズル1およびその吸着ノズル1に吸着された部品5を撮像してその状態の画像を取得するステップ」がそれぞれ含まれているものと認められる。 また、上記記載事項(オ)〜(キ)及び図1〜5の記載に照らせば、計測値Xと計測値(の最大値)Yとの大小関係に基づき取得された、「正常な検出値」としての「検出値dm=Y」又は「正常値dm」は、部品5の下端位置を検出した値であると認められ、「部品5の厚みdと吸着ノズル部分のdnの合計d+dn」は、部品5の下端位置の正常値として予め定められた基準値であると認められ、上記記載事項(キ)には、「正常値dm」と「基準値d+dn」との比較により「部品5の保持状態が正常状態か否かを検出するステップ」が記載されているものと認められる。 したがって、上記記載事項(ア)〜(キ)及び図1〜5図の記載を総合すると、引用例には、 「投光器と受光器とから成る一次元ラインセンサ3を用いて、撮像対象の吸着ノズル1およびその吸着ノズル1に吸着された部品5を撮像してその状態の画像を取得するステップと、前記一次元ラインセンサ3を用いて、前記撮像対象の吸着ノズル1および部品5がない状態の画像を取得するステップと、計測値Xと計測値Yとの大小関係に基づき、前記吸着ノズル1に吸着された部品5の下端位置の正常値dmを取得し、部品5の下端位置の正常値として予め定められた基準値d+dnと比較することにより、前記部品5が正常状態か否かを検出するステップと、を備えた部品選別方法。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「一次元ラインセンサ3」、「吸着ノズル1」、「部品5」、「下端位置の正常値dm」、「基準値d+dn」、「部品選別方法」は、それぞれ本願補正発明の「ラインセンサ」、「吸着ノズル」、「電子部品」、「下端位置の検出値」、「基準値」、「電子部品検出方法」に相当する。 また、引用発明の「撮像対象の吸着ノズル1およびその吸着ノズル1に吸着された部品5を撮像してその状態の画像を取得するステップ」は、実質的に本願補正発明の「撮像対象の吸着ノズルおよびその吸着ノズルに吸着された電子部品を撮像してその状態の画像を実像として取得する実像取得工程」に、引用発明の「撮像対象の吸着ノズル1および部品5がない状態の画像を取得するステップ」は、実質的に本願補正発明の「撮像対象の吸着ノズルおよび電子部品がない状態の画像を撮像環境を示す空像として取得する空像取得工程」に、引用発明の「部品5が正常状態か否かを検出するステップ」は、実質的に本願補正発明の「電子部品が正常状態か否かを検出する状態検出工程」にそれぞれ相当する。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは、 「投光器と受光器とから成るラインセンサを用いて、撮像対象の吸着ノズルおよびその吸着ノズルに吸着された電子部品を撮像してその状態の画像を実像として取得する実像取得工程と、前記ラインセンサを用いて、前記撮像対象の吸着ノズルおよび電子部品がない状態の画像を撮像環境を示す空像として取得する空像取得工程と、前記吸着ノズルに吸着された電子部品の下端位置の検出値を取得し、電子部品の下端位置の正常値として予め定められた基準値と比較することにより、前記電子部品が正常状態か否かを検出する状態検出工程と、を備えた電子部品検出方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は、実像と空像との差分を差像として取得する差像取得工程を備え、前記差像に基づいて、吸着ノズルに吸着された電子部品の下端位置の検出値を取得するものであるのに対して、引用発明は、計測値Xと計測値Yとの大小関係に基づき、吸着ノズル1に吸着された部品5の下端位置の正常値dmを取得するものである点。 (4)判断 上記相違点について検討するに、一般に、画像処理の技術分野において、移動体の抽出に当たり2画面の差分画像を作ることにより背景画像(ノイズ)を除去することは、従来周知の事項である(例えば、画像処理ハンドブック編集委員会編、「画像処理ハンドブック」、初版、株式会社昭晃堂、昭和62年6月8日、p.375、又は、安居院猛、中嶋正之著、「コンピュータ画像処理」、初版、産報出版株式会社、1979年6月11日、p.152-153参照)。そして、引用発明も、ラインセンサを用いて撮像対象を撮像して画像を取得するものであって、塵等の付着による誤検出を防止するものであることに照らせば、画像を取得する上でノイズとなる塵等の悪影響を除去するために、画像処理の分野における上記背景画像を除去する周知技術を適用することに格別の困難性を見いだすことは出来ない。 してみれば、引用発明において、吸着ノズル1に吸着された部品5の下端位置の正常値dmを取得するに当たり、実像取得工程での実像と空像取得工程での空像の差像を取得するようにし、上記相違点に係る本願補正発明を構成することは、上記周知技術に接した当業者ならば容易に想到し得たことといえる。 そして、本願補正発明の効果についてみても、上記記載事項(ウ)に開示ないし示唆されており、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は上記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、本願出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 投光器と受光器とから成るラインセンサを用いて、撮像対象の電子部品を撮像してその状態の画像を実像として取得する実像取得工程と、 前記ラインセンサを用いて、前記撮像対象の電子部品がない状態の画像を撮像環境を示す空像として取得する空像取得工程と、 前記実像と前記空像との差分を差像として取得する差像取得工程と、 前記差像に基づいて、前記電子部品の状態に関する所定の検出値を取得し、その正常値として予め定められた基準値と比較することにより、前記電子部品が正常状態か否かを検出する状態検出工程と、 を備えたことを特徴とする電子部品検出方法。」 (2)引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、及びその記載事項は上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明から、「撮像対象」の限定事項である「吸着ノズルおよび」との構成、「撮像対象」たる「電子部品」の限定事項である「その吸着ノズルに吸着された」との構成、「検出値」の限定事項である「前記吸着ノズルに吸着された電子部品の下端位置の」、及び「正常値」の限定事項である「電子部品の下端位置の」との構成を省いたものである。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-08 |
結審通知日 | 2006-02-14 |
審決日 | 2006-02-27 |
出願番号 | 特願平11-277190 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 奥村 一正、内田 博之 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
平瀬 知明 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | 電子部品検出方法およびその装置 |
代理人 | 相澤 清隆 |