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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02C |
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管理番号 | 1135498 |
審判番号 | 不服2002-12834 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-12-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-11 |
確定日 | 2006-04-27 |
事件の表示 | 平成10年特許願第159183号「ガスタービン燃焼器用燃料ノズルパージ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月21日出願公開、特開平11-350978〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成10年6月8日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年2月8日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。(なお、本願明細書について、平成14年8月9日付けで手続補正がなされたが、これは平成17年9月13日付けで却下された。) 「【請求項1】液体燃料を燃料として使用し、運転しているガスタービンを停止させたとき、若しくは前記液体燃料を使用して運転しているガスタービンを気体燃料を燃料とする運転に切り替えるとき、燃料ノズルに前記液体燃料を供給するように配設された液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を、燃焼室内にパージするようにした燃料ノズルパージ装置において、前記液体燃料系統内に水を噴射して、噴射された前記水によって前記液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズルから前記燃焼室内にパージするようにしたことを特徴とするガスタービン燃焼器用燃料ノズルパージ装置。」 2.刊行物記載の発明 2-1.刊行物1 (1)当審において平成17年9月29日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開昭60-104728号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 ア.「〔発明の利用分野〕本発明は、燃料油と燃料ガスとの切替運転ができるように(燃料油と燃料ガスとの混合使用を含む)構成されたガスタ-ビン設備において、燃料油の使用を停止して燃料ガス運転に切り替えた際の、燃料油ライン中の燃料油をパ-ジ空気によつてパ-ジする方法に関するものである。」(第1頁左欄第13行〜第19行) イ.「燃料油から燃料ガスへ燃料切替を行なう場合、燃料切替操作により第1図に示したガス遮断弁27が開き、燃料ガス26は、ガス流量制御弁28によつて流量を調節されガスマニホ-ルド29より各燃料噴射装置8へ導かれ、第2図に示す燃料ガス通路33を通りガス噴射口36より燃焼器内筒10へ噴射される。一方、燃料油1の流量は、第1図に示した燃料流量調整弁4によつて次第に減少せられ、完全に燃料ガス運転に切替後、燃料遮断弁2が閉じられる。同時に、電磁弁制御信号25によつて電磁弁(A)18が励磁され圧縮空気11により噴霧空気バイパス弁17が開き、燃料噴霧空気12は噴霧空気バイパスライン16へバイパスされる。また、電磁弁(B)19も励磁され、パ-ジ弁22が開き、パ-ジ空気20は、パージフィルタ21を通りパ-ジマニホ-ルド23よりパ-ジ逆止弁24を通り各燃料噴射装置8へ導かれ、第2図に示した燃料油通路32及び燃料噴射弁31内に残留している燃料油をパ-ジし、燃料油の炭化による燃料噴射弁31及び燃料油通路32の詰まりを防止し、燃料噴射弁31の先端部の冷却を行なうものである。(略) 〔発明の目的〕本発明は上述の事情に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、パ-ジ開始時における急激な燃焼温度上昇およびこれに伴う負荷変動を防止し得るパ-ジ方法を提供し、タ-ビン高温部品の損傷防止並びにガスタ-ビン設備の信頼性向上に貢献しようとするものである。」(第2頁左上欄第2行〜第2頁左下欄第9行) (2)上記2-1.(1)の記載、及び図面の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。「燃料油を燃料として使用し、前記燃料油を使用して運転しているガスタービンを燃料ガスを燃料とする運転に切り替えるとき、燃料噴射弁31に前記燃料油を供給するように配設された燃料油系統内に残留する前記燃料油を、燃焼器内筒10内にパージするようにした燃料油パージ装置において、燃料油系統内にパージ空気を噴射して、噴射された前記パージ空気によって前記燃料油系統内に残留する前記燃料油を前記燃料噴射弁31から前記燃焼器内筒10内にパージするようにしたガスタービン燃焼器用燃料油パージ装置。」 2-2.刊行物2 (1)同じく当審において平成17年9月29日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開平7-269372号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 ア.「【0003】現在、このようなガスタービンは、天然ガスなどのガス燃料を使用するものが多いが、エネルギ源の多様化の要求もあり、今後はガス燃料だけてなく、石油系の液体燃料も必要となってくる。従ってガスタービン燃焼器及びその燃料供給系統はガス燃料だけではなく、液体燃料も使用できる構造や系統が要求される。 【0004】天然ガスなどの比較的清浄な燃料の場合には問題は比較的少ないが、燃料によっては燃焼により多くの硫黄酸化物などを生成し、これらの生成物すなわちスケールが燃焼器の燃料ノズルに付着したり、その後流の燃焼器の内面の各部に付着したりする。これによる悪影響としては以下のようなものがある。 【0005】燃料ノズルに付着したスケールは、燃焼器における空気と燃料の割合を変化させ、失火の原因となる外、ケーシングの周方向に多数の燃焼器を有する形式のガスタービンでは各燃焼器の出口温度にばらつきが生じ、タービン排気ガス温度にもばらつきを生じることとなる。(略)」 イ.「【0007】さらに、燃料ノズルだけでなく燃焼器に付着したスケールは、燃焼方法や燃焼器構造等でその付着を防止することは、現状では困難である。従って、付着したスケールを除去する方法を考えなければならない。しかし、燃焼器を分解して洗浄するのは多大な労力を要し、その間ガスタービンを停止しなければならず、ガスタービンの稼働率を下げ、電力供給能力を下げることになる。そこで、ガスタービンを分解せずに付着したスケールを除去する技術の開発が望まれている。」 ウ.「【0009】次に、従来のガスタービンの水洗を図6を参照して説明する。この図6はガスタービンの水洗方法を説明するものであるため燃焼器部分は簡略化して記載しているが、周知のとおり燃焼ガスの窒素酸化物の低減を図るため燃料ノズルは多数配備し稀薄な燃焼を図ったり、あるいは燃焼温度を下げるために蒸気噴射を行ったりしてる。(略)」 エ.「【0010】さて、圧縮機1では吸い込み空気5aが圧縮されて圧縮空気5bとなり、この圧縮空気5bは燃焼器2に流入し、燃料ノズル3から噴射する燃料6と混合して燃焼される。(略)」 オ.「【0023】【実施例】以下、本発明の実施例を図を参照して説明する。図1は本発明の一実施例(請求項1対応)の構成図であり、同図はガス燃料あるいは液体燃料をガスタービンの燃焼器2の燃料ノズル3まで導く燃料供給系統が示されている。燃料ガス母管や燃料タンクから導かれた燃料は、燃料流量を調整する各種の燃料調節弁11を経由し、燃料ノズル3に導かれる。蒸気導入系統12が燃料ノズル3の上流側に接続している。(略)」 カ.「【0029】図2は本発明の他の実施例(請求項2対応)の構成図であり、本実施例が図1の実施例と異なる点は、図1の蒸気導入系統の代わりに水導入系統を用いた点である。 【0030】次に、本実施例の作用について説明する。ガスタービンの水洗を実施するときには、水導入系統17の弁18を開く。水洗の時はガスタービンは起動装置等により回転されており、燃料を導入していないため燃料調節弁11は閉じている。従って、水導入系統17の弁18を開くと、燃料ノズル3から水19が吹き出る状態となる。この水19は燃料ノズル3に付着したスケールを洗い落すと同時に、燃焼器2の内部に吹き出しこの部分についたスケールも洗い落す。水洗実施の時は、車室吸い込み部分から噴射された水洗水が圧縮機の汚れを落とした後燃焼器部分にその一部が流入するが、燃料ノズルからは水を噴射しているため、圧縮機の汚れの混じった水洗水が燃料ノズルから燃料供給系統内に入ることがない。この水噴射は燃料ノズルや燃焼器の汚れを落とすだけではなく、汚れた水洗水が燃料ノズルから入り燃料ノズルを詰まらせたり、燃料配管を腐食する事を防止する役目も果たす。(略)」 キ.「【0033】図3は本発明のさらに他の実施例(請求項3対応)の構成図であり、本実施例が図1の実施例と異なる点は、蒸気導入系統及びドレン排出系統の代わりに空気導入系統を設けた点にある。 【0034】次に、本実施例の作用について説明する。 ガスタービンの水洗を実施するときには、空気導入系統20の弁21を開く。水洗の時はガスタービンは起動装置等により回転されており、燃料を導入していないため燃料調節弁11は閉じている。従って空気導入系統20の弁21を開くと燃料ノズル3から空気22が吹き出る状態となる。 【0035】この空気は燃料ノズル3に付着したスケールを吹き飛ばす。燃焼器2の内部に吹き出した空気は、車室吸い込み部分から噴射された空気の一部は燃焼器内にまで至るためこの部分についたスケールも洗い落す。(略)」 ク.「【0044】【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、燃焼器の燃料ノズルや燃焼器ライナ等に付着したスケールを洗い落とすことができる。この場合、洗浄用として蒸気を用いると、洗浄時に汚れた水洗水が燃料系統内部に入ることがなく、燃料ノズルを詰まらせて燃焼温度の不均一や失火等の問題をもたらすこともなく、また燃料系統内に水が滞留してもドレン抜き系統によって簡単に抜くことができる。 【0045】また、洗浄用として水を用いると、水洗時に水洗水が燃料供給系統に入り込み燃料ノズルを詰まらせて燃焼温度の不均一や失火等の問題をもたらすこともなく、燃料系統内に汚れた水が残留し燃料配管を腐食したりすることを防止することができ、燃料系統内に水が滞留してもドレン抜き系統によって簡単に抜くことができる。 【0046】さらに、洗浄用として空気を用いると、水や蒸気に比較するとスケールを落す点では劣るが、空気は容易に得られ、かつ燃料系統に水や蒸気を入れないという点では優位性を持ち、燃焼温度の不均一や失火等の問題はなくなる。」 (2)上記記載事項2-2.(1)および図面から、次のことがわかる。 ア.上記2-2.(1)および図面の記載から、液体燃料を、燃焼器2内に噴射するようにした燃料供給装置において、燃料を導入していないため燃料調節弁11は閉じているとき、液体燃料系統に介装された燃料調整弁11と前記燃料ノズル3との間の同液体燃料系統内に水または空気を導入し、前記燃料ノズル3から前記燃焼室内に吹き出すようにしたガスタービンの燃料供給装置であることがわかる。 イ.上記2-2.(1)および図面の記載から、燃料調節弁11から燃料ノズル3までの間の燃料供給系統内において、燃料調節弁11を開けると、燃料調節弁11の下流と燃料ノズル3の下流との間に圧力差が発生することで、燃料供給系統内である燃料調節弁11から燃料ノズル3へ燃料が流れることがわかる。 ウ.上記2-2.(1)、2-2.(2)ア.〜イ.および図面の記載から、燃料調節弁11を閉じれば、燃料調節弁11から燃料ノズル3までの間の燃料供給系統内に燃料は導入されないことになり、燃料調節弁11の下流と燃料ノズル3の下流との間に圧力差が発生しないため、燃料の流れを生じないので、燃料調節弁11から燃料ノズル3までの間の燃料供給系統内に存在する燃料は、そのまま燃料調節弁11から燃料ノズル3までの間の燃料供給系統内に残留することがわかる。 エ.上記2-2.(1)、上記2-2.(2)ア.〜ウ.および図面の記載から、ガスタービンの洗浄を実施するときには、燃料を導入していないため燃料調節弁11が閉じており、燃料調節弁11から燃料ノズル3までの間の燃料供給系統内に燃料が残存していると認められる。そして、燃料供給系統内に接続された水導入系統17の弁18または空気導入系統20の弁21を開くと、燃料供給系統内に導入された水または空気によって、燃料供給系統内に残留する液体燃料が燃料ノズル3から燃焼室内に吹き出すものと認められる。 (3)刊行物2記載の発明 上記記載事項2-2.(1)および2-2.(2)より、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「液体燃料を、燃焼器2内に噴射するようにした燃料供給装置において、液体燃料系統に水または空気を導入して、導入された前記水または空気によって前記液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズル3から前記燃焼室内に吹き出すようにしたガスタービンの燃料供給装置。」 3.対比 そこで、本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「燃料油」は、その技術的意義からみて、本願発明の「液体燃料」に相当し、以下同様に、「燃料ガス」は「気体燃料」に、「燃料噴射弁31」は「燃料ノズル」に、「燃焼器内筒10」は「燃焼室」に、「燃料油パージ装置」は「燃料ノズルパージ装置」に、それぞれ相当する。 そして、刊行物1記載の発明の「空気」は、パージ流体の限りにおいて、本願発明の「水」に相当する。 また、液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を、燃焼室内にパージする時期に関して、本願発明における「運転しているガスタービンを停止させたとき、若しくは前記液体燃料を使用して運転しているガスタービンを気体燃料を燃料とする運転に切り替えるとき」との記載は、「運転しているガスタービンを停止させたとき」と「前記液体燃料を使用して運転しているガスタービンを気体燃料を燃料とする運転に切り替えるとき」とのどちらか一つを選択するように記載されている。 してみると、両者は、 「液体燃料を燃料として使用し、前記液体燃料を使用して運転しているガスタービンを気体燃料を燃料とする運転に切り替えるとき、燃料ノズルに前記液体燃料を供給するように配設された液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を、燃焼室内にパージするようにした燃料ノズルパージ装置において、液体燃料系統内にパージ流体を噴射して、噴射された前記パージ流体によって前記液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズルから前記燃焼室内にパージするようにしたガスタービン燃焼器用燃料ノズルパージ装置。」 という点で一致し、両者の目的は、「液体燃料系統内に残留する液体燃料を燃料ノズルから燃焼室内にパージすることで、燃料供給系統又は燃料ノズルが閉塞する(詰まる)ことを防止する」点で軌を一にする。 そして、次の点で相違している。 (1)相違点 パージ流体として、本願発明は、液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズルから前記燃焼室内にパージするために、液体燃料系統内に水を噴射したのに対して、刊行物1記載の発明は、空気を噴射した点。 4.判断 (1)相違点について検討する。 刊行物2記載の発明の「燃焼器2」は、その技術的意義からみて、本願発明における「燃焼室」に相当し、以下同様に、「前記液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズル3から前記燃焼室内に吹き出す」ことは「前記液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズルから前記燃焼室内にパージする」ことに相当するので、刊行物2には、 「液体燃料を、燃焼室内に噴射するようにした燃料供給装置において、液体燃料系統内に水または空気を導入して、導入された前記水または空気によって前記液体燃料系統内に残留する前記液体燃料を前記燃料ノズルから前記燃焼室内にパージするようにしたガスタービンの燃料供給装置。」という発明が示されているものと認められる。 よって、刊行物2記載の発明には、パージ流体として同等に「水」または「空気」を用いることが示されているから、刊行物1記載の発明のパージ流体に刊行物2記載の発明の「水」を採用することは、当業者が格別困難なく想到し得ることである。 また、本願発明の効果は、刊行物1記載の発明および刊行物2記載の発明から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明および刊行物2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願発明は、刊行物1記載の発明および刊行物2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-21 |
結審通知日 | 2006-02-28 |
審決日 | 2006-03-14 |
出願番号 | 特願平10-159183 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田澤 英昭 |
特許庁審判長 |
栗林 敏彦 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 岩瀬 昌治 |
発明の名称 | ガスタービン燃焼器用燃料ノズルパージ装置 |
代理人 | 石川 新 |