ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G03G |
---|---|
管理番号 | 1136183 |
異議申立番号 | 異議2003-73329 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2002-10-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-22 |
確定日 | 2006-02-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3454257号「静電荷像現像用トナー」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3454257号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第3454257号の請求項1ないし7に係る発明は、平成13年4月23日に出願され、平成15年7月25日に特許の設定登録がなされ、その後、オリヱント化学工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年7月1日に意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、これに対し異議申立人から回答書が提出されたものである。 第2.訂正の適否についての判断 1.訂正事項 本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正の内容は次のとおりである。 a.明細書の段落【0018】における「本発明のニグロシン染料は、例えば、下記の方法で製造される。原料としてアニリン、アニリン塩酸塩を塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで160〜180℃で酸化して反応させることにより粗製ニグロシンを得る。この時のFe含有量は残さから求めると4〜6%程度である。この粗製ニグロシンにアニリン、水と水酸化ナトリウムを加えることにより、ニグロシンはベース化処理され、塩化鉄は水酸化鉄(Fe(OH)n)として溶解・沈殿し、また塩化ナトリウムが生じる。このとき水相中に、塩化ナトリウムは溶解している。これらの水酸化鉄はスクリューデカンタ、シャープレス等の遠心分離機を用いて除去することにより、乾燥後のニグロシン染料中のFe量を低減、調整することができる。水相中の塩化ナトリウムは水相を分離することで除去できる。」を、 「本発明のニグロシン染料は、下記の方法で製造される。すなわち、まず原料としてアニリン、アニリン塩酸塩を塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで160〜180℃で酸化して反応させることにより粗製ニグロシンを得る。この時のFe含有量は残さから求めると4〜6%である。こうして得られた本発明における粗製ニグロシンにアニリン、水と水酸化ナトリウムを加えることにより、ニグロシンはベース化処理され、塩化鉄は水酸化鉄(Fe(OH)n)として溶解・沈殿し、また塩化ナトリウムが生じる。このとき水相中に、塩化ナトリウムは溶解している。これらの水酸化鉄はスクリューデカンタ、シャープレス等の遠心分離機を用いて除去することにより、乾燥後のニグロシン染料中のFe量を1.0重量%以下に低減、調整する。水相中の塩化ナトリウムは水相を分離することで除去できる。」と訂正する。 b.明細書の段落【0029】における「C.I.No52015」を「C.I.No.52015」と訂正し、かつ「C.I.45435」を「C.I.No.45435」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項aにおけるは、「ニグロシン染料の製法」の説明において、例示であることを示す「例えば」の語を削除すると共に、「原料としてアニリン、・・・」の前に「すなわち、まず」を加え、粗製ニグロシン中のFe含有量を「4〜6%程度」から「4〜6%」に訂正し、「この粗製ニグロシン・・・」を「こうして得られた本発明における粗製ニグロシンに・・・」に訂正する訂正は、特許請求の範囲に記載の「粗製ニグロシン」の製法を限定し、「粗製ニグロシン」の内容を明確にするものであり、「ニグロシン染料中のFe含有量を・・・」の記載においてFe含有量を「1.0重量%以下」に限定する訂正は、本発明のニグロシン染料中のFe含有量を明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。 訂正事項bは、明らかな誤記を正すものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。 そして、訂正事項aにおいて、Fe含有量を「1.0重量%以下」に限定する訂正は、願書に添付した明細書の【請求項1】、段落【0019】の記載に基づくものであり、その他の訂正は、同じく段落【0018】の記載に基づくものであるから、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。また、訂正事項bは、願書に最初に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 3.訂正の適否についての結論 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3.特許異議申立についの判断 1.本件特許発明 上記のように訂正が認められるから、本件の請求項1ないし7に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲、請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりものである。 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、ニグロシン染料が、粗製ニグロシンにアニリン、水、水酸化ナトリウムを加えてベース化処理し、その際に生じる水酸化鉄を遠心分離を用いて除去したFe含有量が1.0重量%以下のニグロシン染料であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 【請求項2】 トナーが、磁性トナーであることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項3】 トナーが、非磁性トナーであることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項4】 ニグロシン染料の含有量が、結着樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項5】 ニグロシン染料の体積平均粒子径が、1〜20μmであることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項6】 疎水化処理された無機微粉末が、流動化剤として外添されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項7】 トナーが、正帯電性を有していることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。」 2.取消理由の概要 当審で通知した取消理由通知の理由1は、次のようなものである。 「本件出願の請求項1〜7に係る発明は、その本件出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1〜5に記載された発明であるか、下記の刊行物1〜5に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、又、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1 特開平2-232611号公報(異議申立人提出の甲第1号証) 刊行物2 特開平5-11496号公報(同じく甲第2号証) 刊行物3 特開平9-114132号公報(同じく甲第6号証) 刊行物4 特開平9-288368号公報(同じく甲第7号証) 刊行物5 特開平3-7948号公報(同じく甲第8号証) (参考資料) 参考資料1 「PRODUCT LIST」オリヱント化学工業株式会社(異議申立人の提出した甲第3号証) 参考資料2 「90年代 機能性色素の開発と市場動向」90〜96頁、(株)シーエムシー、1990年4月25日(同甲第4号証) 参考資料3 古塚寛による2003年12月17日付け「実験成績証明書」(同甲第5号証)」 3.引用刊行物と参考資料の記載事項 刊行物2(特開平5-11496号公報)には、電子写真用現像剤に関し次の事項が記載されている。 (2a)「【実施例】つぎに本発明を実施例、製造例にもとづきさらに具体的に説明する。 トナーの製造 [製造例(1-a)] トナー 成 分 重量部 スチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂 (軟化点:132℃、ガラス転移温度:60℃) 100 カーボンブラック (MA#8:三菱化成工業社製) 8 磁性粉 (TDK(株)製;MFP-2) 10 ニグロシン系染料 (ボントロンN-01:オリエント化学工業社製) 5 上記材料をボールミルで充分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混練物を放置冷却後、粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。次に、風力分級し、平均粒径6μmの微粒子を得た。さらにここで得られた微粒子を図1に示す瞬間加熱装置を用いて250℃の熱気流中で0.5秒間加熱処理し平均粒径6μmの黒色トナーを得た。得られたトナーをトナー(1-a)とする。」(段落【0037】、【0038】)、 (2b)「上記トナー(1-a)〜(1-f)トナー100重量部に対して、疎水性シリカR-974(日本アエロジル社製)0.3重量部をヘンシェルミキサーにより後処理し評価に用いた。」(段落【0045】)、 (2c)「つぎのトナー(2-a)〜(2-c)を用いて本発明の後記キャリア(2-A)〜(2-D)を評価を行った。」(段落【0046】)、 (2d)「[製造例(2-a)] トナー 成 分 重量部 スチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂 (軟化点:132℃、ガラス転移温度:60℃) 100 カーボンブラック (MA#8:三菱化成工業社製) 8 低分子量ポリプロピレン (ビスコール 550P:三洋化成工業社製) 3 ニグロシン系染料 (ボントロンN-01:オリエント化学工業社製) 5 上記材料をボールミルで充分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混練物を放置冷却後、粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。次に、風力分級し平均粒径6μmのトナー(2-a)を得た。」(段落【0047】)、 (2e)「上記トナー(2-a)〜(2-c)それぞれ100重量部に対して、疎水性シリカR-974(日本アエロジル社製)0.3重量部をヘンシェルミキサーを用いて後処理し評価に用いた。」(段落【0050】)、 (2f)「キャリアの製造 前記トナー(1-a)〜(1-f)の評価に供するため、つぎのバインダー型キャリア(1-A)および(1-B)を製造した。」(段落【0051】)、 (2g)「(3)帯電量(Q/M)および飛散量 得られたトナー100重量部に対してコロイダルシリカR-974(日本アエロジル社製)0.1重量部を用いて後処理を行い、帯電量(Q/M)および飛散量を測定した。 帯電量は表1および表2に示す組合わせでトナー2gと前記キャリア28gとをポリエチレンビン(50cc)に入れて回転架台にのせ、1,200rpmにて回転し、10分間撹拌後に測定した。」(段落【0063】、【0064】)、 参考資料1(「PRODUCT LIST」オリヱント化学工業株式会社)には、 (参1-a)「アニリン・ニトロベンゼンを縮合したアジン化合物であるニグロシン”NIGROSINE”は、有機黒色染料として長年にわたって広範囲な用途に利用されて降ります。・・・」(2頁)、 (参1-b)「BONTRON N-01」が、アジン化合物(ニグロシンベース)であり、「平均粒径μm」が10-15であること(18頁)、 が記載されている。 参考資料2(「90年代 機能性色素の開発と市場動向」90〜96頁)には、正電荷制御剤Bontron Nシリーズの中で「N-01」は、アジン化合物であり、「強熱残分」(実測値)が0.6%、「アニリン」(実測値)が1.5%であること(93頁、「表1」)が記載されている。 参考資料3(2003年12月17日付け「実験成績証明書」)には、「BONTRON N-01」のFe含有量(重量%)が、サンプルNo.1で0.27、サンプルNo.2とNo.3で0.28であったこと(2頁、「実験結果」の項)が記載されている。 4.対比、判断 (1)請求項1に係る発明について 刊行物2には、実施例として、次のようなトナーが記載されている。 (a)スチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂、カーボンブラック、磁性粉及びニグロシン系染料(ボントロンN-01:オリエント化学工業社製)を含有し、ニグロシン系染料の含有量がスチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂100重量部に対し5重量部であるトナーにおいて、疎水性シリカを外添してなる電子写真用のトナー(以下「トナーa」という。)。 (b)スチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂、カーボンブラック及びニグロシン系染料(ボントロンN-01:オリエント化学工業社製)を含有し、ニグロシン系染料の含有量がスチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂100重量部に対し5重量部であるトナーにおいて、疎水性シリカが外添されてなる電子写真用のトナー(以下「トナーb」という。)。 上記トナーa及びトナーbはいずれも、「スチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂、カーボンブラック及びニグロシン系染料(ボントロンN-01:オリエント化学工業社製)を含有し、ニグロシン系染料の含有量がスチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂100重量部に対し5重量部であるトナーであって、さらに疎水性シリカを外添してなる電子写真用のトナー」である。 そこで、請求項1に係る発明と上記刊行物2に記載の発明とを対比すると、刊行物2に記載の「スチレン-n-ブチルメタクリレート樹脂」、「カーボンブラック」、「ボントロンN-01」は、本件発明1の「結着樹脂」、「着色剤」、「ニグロシン染料」にそれぞれ相当することから、両者は、 「少なくとも結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有する静電荷像現像用トナー。」である点で一致し、次の点で一応相違する。 相違点1:請求項1に係る発明では、ニグロシン染料が、粗製ニグロシンにアニリン、水、水酸化ナトリウムを加えてベース化処理し、その際に生じる水酸化鉄を遠心分離を用いて除去したFe含有量が1.0重量%以下のニグロシン染料であるのに対し、刊行物2の発明では、ニグロシン染料の製法、及び、ニグロシン染料の鉄分含有量が不明な点。 上記相違点について検討する。 ア.まず、刊行物2に記載の、「ボントロンN-01」のFe含有量について検討する。 本件特許明細書の段落【0023】には、ニグロシン染料中のFe含有量について、「ニグロシン染料中のFe含有量は、燃焼させて残さを求めることにより簡単に求めることができる。ニグロシン染料の合成において使用する原料の中で燃焼により残る成分はわずかな不純物を除くと鉄分だけである。すなわち残さ率からFe含有量を求めることができる。このとき残さ物はFe2O3になるため、これよりFe2O3で換算してFe含有量を算出することができる。・・・Fe2O3の分子量は159.7であり、うちFeの原子量が55.85であるからFe2が占める原子量は111.7である。これよりFe2O3のFeの割合は69.9%である。残さ率の69.9%がFe含有量となる。」と記載されている。 一方、参考資料2にはオリヱント化学工業社製の「ボントロンN-01」について、「強熱残分」の実測値が0.6%であることが記載されている。本件明細書の上記記載に従うと、強熱残分が0.6%である「ボントロンN-01」のFe含有量は当然それよりも小さものとなり、1%以下であることは明らかである。 このことは、オリヱント化学工業社製のニグロシン染料「商品名:ボントロンN-01」を分析した結果を示す参考資料3によっても裏付けられる。 イ.次に、「ボントロンN-01」の製法について検討する。 参考資料1には、「ボントロンN-01」はアニリン・ニトロベンゼンを縮合したアジン化合物(ニグロシンベース)であることが記載されている。 ところで、ニグロシンを合成する場合、アニリン、アニリン塩酸塩を塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで160〜180℃で酸化して反応させることにより粗製ニグロシンを得ることは、本件の出願前周知の技術であり(例えば、特許権者の提出した意見書に乙第2号証として添付された「合成染料の化学」(槇書店 平成元年2月28日発行 313〜314頁)、乙第3号証として添付された特開昭52-135336号公報参照)、また、粗製ニグロシンの「ベース化処理」が、染料の塩酸塩を水酸化ナトリウム等でアルカリ処理することによりニグロシン中に存在する塩酸を除去し塩酸塩の存在しない状態となった染料とする処理であることもこの分野ではすでに周知であるから(例えば、上記特開昭52-135336号の2頁左上欄参照)、刊行物2に記載された「ボントロンN-01」(ニグロシンベース)もアニリン、アニリン塩酸塩を塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで160〜180℃で酸化して反応させることにより粗製ニグロシンを製造し、水とアルカリ性化合物でベース化処理されたものと解することができる。 そして、「ボントロンN-01」は上記のとおり、Fe含有量が1%以下であるから、粗製ニグロシンの「ベース化処理」に際し生成した水酸化鉄等が除去されていることは明らかである。 また、参考資料2によると、「ボントロンN-01」中にはアニリンが含有されているので(参2-a)、「ボントロンN-01」のベース化処理はアニリンの存在下において行われたと解される。 以上のことから、上記「ボントロンN-01」は、アニリンの存在下に粗製ニグロシンに水とアルカリ性化合物を加えてベース化処理し、生成した水酸化鉄を除去した、Fe含有量が1.0重量%以下のニグロシン染料であると認められる。 ウ.そして、ベース化処理に使用するアルカリ性化合物として水酸化ナトリウムは上記のとおり周知の化合物であるから、ベース化処理に水酸化ナトリウムを使用することは周知技術を適用したにすぎない。 また、水酸化鉄は水系で沈殿物として生成されることは明らかであり、これを除去するのに遠心分離を行うことも周知の手段を適用したにすぎない。 さらに、粗製ニグロシンに対する通常のベース化処理を、ベース化処理の段階でアニリンを加えて行っても、粗製ニグロシンがアニリンを含有する状態で行っても、どちらもアニリンの存在下で粗製ニグロシンをベース化処理することには変わりがないから、処理の結果生じる生成物は同じになる。 エ.以上のとおりであるから、本件発明1におけるニグロシン染料は、参考資料1、2及び本件出願前の上記周知技術を勘案すると、刊行物2に記載された「ボントロンN-01」と実質的な差異があるとすることはできない。 特許権者は、意見書において、粗製ニグロシンにアニリンを添加してベース化処理を行うことによってFe成分が除去され易くなり、アニリン相中にニグロシン染料が安定した状態で保たれると主張し、さらに乙第1号証として実験成績証明書を提出し、本件明細書の実施例に記載のトナーと「ボントロンN-01」とは特性が異なるから、同一のものではないと主張する。 しかし、上記のとおり「ボントロンN-01」は、アニリンの存在下でベース化処理されていることは明らかであり、また、仮にアニリンを添加してベース化処理を行うことによってFe成分が除去され易くなるとしても、請求項1ないし7に係る発明は、粗製ニグロシンに添加されるアニリンの量を限定しておらず、ニグロシンの合成に使用したアニリンが残存しているものと区別することが出来ない。 さらに、請求項1ないし7に係る発明は、実施例のものに限定されないから、1実施例との比較のみで、「ボントロンN-01」が請求項1ないし7に係る発明のニグロシン染料と異なるとすることはできない。 したがって、請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明である。 (2)請求項2に係る発明について 請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明においてトナーを磁性トナーに限定したものである。 一方、刊行物2に記載の発明に含まれる「トナーa」は磁性粉を他成分と共に含むから「磁性トナー」であり、請求項2に係る発明と刊行物2に記載の発明(トナーa)を対比すると、両者は、いずれも磁性トナーである点で差異がない。 また、引用した請求項1の特定事項に関しては上記4(1)で述べたように両者の間に実質的な差異がない。 したがって、請求項2に係る発明は、刊行物2に記載された発明である。 (3)について 請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明においてトナーを非磁性トナーに限定したものである。 一方、刊行物2に記載の発明に含まれる「トナーb」は磁性粉を含まないものであるから非磁性トナーであることは明らかである。 そこで、請求項3に係る発明と刊行物2に記載の発明(特にトナーb)を対比すると、両者は、いずれも非磁性トナーである点で差異がない。 また、引用した請求項1の特定事項に関しては上記4(1)で述べたように両者の間に実質的な差異がない。 したがって、請求項3に係る発明は刊行物2に記載された発明である。 (4)請求項4に係る発明について 請求項4に係る発明は、請求項1ないし3に係る発明においてニグロシン染料の含有量を結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲に限定したものであるが、刊行物2に記載の発明のトナーは、ニグロシン系染料の含有量を、結着樹脂を100重量部としたときに5重量部とするものであるから、請求項4に係る発明の範囲に含まれるものである。また、引用した請求項1の特定事項に関しては上記4(1)で述べたように両者の間に実質的な差異がない。 したがって、請求項4に係る発明は、刊行物2に記載された発明である。 (5)請求項5に係る発明について 請求項5に係る発明は、請求項1ないし4に係る発明において、ニグロシン染料の体積平均粒子径を1〜20μmに限定したものである。 そこで、請求項5に係る発明と刊行物2に記載の発明とを対比すると、刊行物2に記載の「ボントロンN-01」の平均粒径は、参考資料1によると10〜15μmであるから(参1-b)、体積平均粒子径は1〜20μmの範囲である。 そうすると、両者はニグロシン染料の粒子径に関して差異がなく、また、請求項5において引用した請求項1の特定事項に関しても上記4(1)で述べたように実質的な差異がない。 したがって、請求項5に係る発明は、刊行物2に記載された発明である。 (6)請求項6に係る発明について 請求項6に係る発明は、請求項1ないし5に係る発明において、疎水化処理された無機微粉末が流動化剤として外添されているという限定を付したものである。 一方、刊行物2に記載のトナーa、トナーbはいずれもトナーに対し疎水性シリカが加られているから疎水化処理された無機微粉末を外添したものである。 そこで、請求項6に係る発明と刊行物2に記載の発明とを対比すると、両者は、疎水化処理された無機微粉末が流動化剤として外添されている点に関して差異がなく、また、請求項6において引用した請求項1の特定事項に関しては上記(1)で述べたように「刊行物2発明a」との間に実質的な差異がない。 したがって、請求項6に係る発明は、刊行物2に記載された発明である。 (7)請求項7に係る発明について 請求項7に係る発明は、請求項1ないし6に係る発明において、正帯電性を有しているという限定を付したものである。 そこで、本件発明7と刊行物2に記載の発明とを対比すると、刊行物2に記載の発明のトナーは、「ボントロンN-01」を含有するから明らかに正帯電性のものであり、両者は帯電性において差異がない。 また、請求項7において引用した請求項1の特定事項に関しては上記4(1)で述べたように刊行物2に記載の発明との間に実質的な差異がない。 したがって、請求項7に係る発明は、刊行物2に記載された発明である。 第4.むすび 以上のとおり、本件の請求項1ないし7に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。 したがって、本件請求項1ないし7に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 静電荷像現像用トナー (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】少なくとも結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、ニグロシン染料が、粗製ニグロシンにアニリン、水、水酸化ナトリウムを加えてベース化処理し、その際に生じる水酸化鉄を遠心分離を用いて除去したFe含有量が1.0重量%以下のニグロシン染料であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 【請求項2】トナーが、磁性トナーであることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項3】トナーが、非磁性トナーであることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項4】ニグロシン染料の含有量が、結着樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項5】ニグロシン染料の体積平均粒子径が、1〜20μmであることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項6】疎水化処理された無機微粉末が、流動化剤として外添されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【請求項7】トナーが、正帯電性を有していることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、電子写真法、静電記録法等を利用して画像の形成がなされる電子複写機、レーザービームプリンタ等における静電潜像を現像するために用いられるトナーに関する。詳しくは、コピー品質に優れ、且つ耐久性、安定性のある電子写真用トナーに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より電子写真法を利用する電子写真複写機やレーザービームプリンタ、静電記録法を利用する静電記録装置などを用いて、複写画像や記録画像(以下では両者を併せて、単に「複写画像」という。)を得ることが広く行われている。例えば、電子写真法を利用する電子写真複写機やレーザービームプリンタにおいて、画像形成は通常次のように行われている。すなわち、まず、アモルファスシリコン、セレン、有機半導体等の感光体ドラムからなる静電潜像担持体を、帯電器により正または負に帯電させ、次いでこの帯電された静電潜像担持体をスリット露光またはビーム露光することにより、静電潜像担持体上に静電荷像を形成する。形成された静電荷像は現像剤によって現像され、現像後のトナー画像は紙等の被転写体に転写され、転写されたトナー画像は熱ロール、圧力ロールなどにより定着されて複写画像とされる。前記静電荷像を現像する方法としては、(a)鉄粉やガラス粉などのキャリアと、樹脂及び着色剤を主成分とするトナーとを含む二成分系乾式現像剤を用いる、磁気ブラシ法やカスケード法等の二成分乾式現像法、(b)キャリアを用いずトナーのみを用いて現像を行う一成分現像法、および(c)絶縁性キャリア液体を用いる液体現像法などがある。上記二成分現像法では、黒色用現像剤としてトナー中にカーボンブラックを含有する絶縁性非磁性トナーを用いる非磁性二成分現像法が一般的である。なお、上記二成分現像法および一成分現像法に用いられるトナーは、通常、結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤を成分として、また必要に応じて外添剤と称される添加剤を加えた着色微粒子である。 【0003】 これらのトナー成分で荷電制御剤は、トナーに摩擦帯電性を付与する能力があり、正または負の電荷を保有させるものである。そのうち正帯電性荷電制御剤としては、一般に四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染顔料あるいはニグロシン系染料などがある。また負帯電性荷電制御剤としては、一般にモノアゾ染料の金属錯体、含クロム有機染料のごとき含金属染料があげられる。 【0004】 近年、電子写真複写機あるいはプリンタの感光体として、有機感光体を用いるものが多く見られるようになり、この有機感光体を用いる複写機などの現像剤として、正帯電性トナーが求められている。そのため正帯電性荷電制御剤の担う役割は非常に大きい。 【0005】 しかし四級アンモニウム塩を単独で用いた場合、トナーに摩擦帯電性を付与する能力が低く、複写機やプリンターなどで繰り返し、連続複写して用いると、カブリと称される白地部分の地汚れ(以下カブリと称する)が増加したり、画像濃度低下等の好ましくない現象が発生する。 【0006】 またトリフェニルメタン系染顔料を単独で用いた場合、低温低湿下および常温常湿下ではトナーに優れた摩擦帯電性を付与する能力があるが、高温高湿下では帯電量が低下し、カブリが増加したり、画像濃度低下等の好ましくない現象が発生する。 【0007】 これに対して、ニグロシン系染料は、トナーに比較的優れた摩擦帯電性を付与する能力があるが、しかし、その製造法により、摩擦帯電性能あるいは熱的性能などの性質が大きく異なり、トナーに必要とされる性能をすべて満足させることが難しい。またニグロシン系染料は、バインダー樹脂中に一様に分散しにくく、トナー化したときにニグロシンの分散、分配不良を引き起こしてしまう問題を持っている。このようなトナーは帯電量分布が均一ではなく、そのため複写初期には優れた画像特性を示すが、複写枚数を重ねると、カブリが増加してしまう。また低温低湿下では、高帯電量のトナーの割合が過度になり、スリーブ表面にトナーによる波模様が発生し、それが画像に現れてしまうことがある。 【0008】 また更に、トナーを長時間高温(40〜50℃)の状態で放置しておくことによりトナーの表面状態が経時変化を引き起こし複写画像の品質の悪化、トナーの紙等の被転写体へ転写される量の割合を示す数値である転写率の低下及び複写機やプリンターの機内のトナーの飛散を引き起こしてしまう問題がある。すなわち製造したばかりの状態では画像の品質に優れ、カブリが少なく、トナーの転写率も高く、また機内のトナーの飛散も少ないが、長時間高温の状態にさらされることによりトナーが経時変化を起こしてしまい、複写枚数の増大とともに、かぶりが増大し、トナーの転写率が著しく低下してしまい、更に機内飛散が増大してしまう。転写率の低下は、実際に転写されるトナーの割合が低くなることによりトナーを多く使うことになる経済的な欠点だけでなく、転写されない多くのトナーが画像担持体に残り過剰に回収部へ行ったり、あるいはトナーの機内飛散を引き起こす原因になってしまう。そのため転写率はトナーの要求品質として重要である。 【0009】 これらの欠点を改良する試みとして従来、着色剤の種類や添加量、荷電制御剤の添加量、流動化剤や研磨剤などの外添剤の種類や添加量、製造条件、更に二成分現像剤の場合は、キャリア粒子の粒度分布や抵抗、コーティング剤の選択等の材料の選択や組み合わせの改良が行われて来たが必ずしも満足の行く結果が得られていないのが現状である。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 このように、ニグロシン系染料は比較的優れた荷電制御剤であるが、種々の問題も有している。これらの問題を解決し、帯電性が十分に高く、現像時の温度及び湿度依存性が少なく、使用前の熱ストレスによるトナー特性の劣化がなく、結着樹脂に対する分散性が良好で、現像特性に優れ、かつ持続性も優れた荷電制御剤及びこれを含む正帯電性トナーが求められている。 【0011】 本発明の目的は、上記の問題を解決した静電荷像現像用トナーを提供することにある。即ち、本発明の目的は、トナーの摩擦帯電量が高く、安定であり、カブリが増加したり、画像濃度低下等の現象が発生しない静電荷像現像用トナーを提供することにある。 【0012】 また本発明の目的は、トナーの摩擦帯電量が温度および湿度の変化を受けずに安定であり、カブリが増加したり、画像濃度低下等の現象が発生しない静電荷像現像用トナーを提供することにある。 【0013】 また本発明の目的は、複写機やプリンターなどで繰り返し連続複写して用いた場合、カブリが増加したり、画像濃度低下等の現象が発生しない静電荷像現像用トナーを提供することにある。 【0014】 また本発明の目的は、トナーが高温環境下での放置による経時変化を受けてもカブリが増大せず、転写率の低下が起こらず、また機内飛散の起こらない、耐久性、安定性のある優れた静電荷像現像用トナーを提供することにある。 【0015】 さらに本発明の目的は、ニグロシン染料がバインダー樹脂中に一様に分散または相溶し、トナー化したときにニグロシンの結着樹脂中への分散、分配不良を引き起さず、トナーが均一に正に帯電する静電荷像現像用トナーを提供することにある。 【0016】 本発明者らは、トナーの帯電特性の安定化、現像特性の安定性の向上、トナーの経時変化の恒久対策及びニグロシン染料への結着樹脂中への良好な分散性、分配性を得るために鋭意検討を行った結果、荷電制御剤としてFe含有量が1.0重量%以下であるニグロシン染料を含有するトナーが、上記課題を解決することを見出して、本発明に至ったものである。 【0017】 【課題を解決するための手段】 すなわち本発明とは、以下の(1)〜(7)の発明に関するものである。 (1)少なくとも結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、ニグロシン染料が、粗製ニグロシンにアニリン、水、水酸化ナトリウムを加えてベース化処理し、その際に生じる水酸化鉄を遠心分離を用いて除去したFe含有量が1.0重量%以下のニグロシン染料であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。 (2)トナーが、磁性トナーであることを特徴とする(1)記載の静電荷像現像用トナー。 (3)トナーが、非磁性トナーであることを特徴とする(1)記載の静電荷像現像用トナー。 (4)ニグロシン染料の含有量が、結着樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする(1)ないし(3)いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 (5)ニグロシン染料の体積平均粒子径が、1〜20μmであることを特徴とする(1)ないし(4)いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 (6)疎水化処理された無機微粉末が、流動化剤として外添されていることを特徴とする(1)ないし(5)いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 (7)トナーが、正帯電性を有していることを特徴とする(1)ないし(6)いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。 【0018】 【発明の実施の形態】 以下本発明を更に詳細に説明する。本発明のニグロシン染料は、下記の方法で製造される。すなわち、まず原料としてアニリン、アニリン塩酸塩を塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで160〜180℃で酸化して反応させることにより粗製ニグロシンを得る。この時のFe含有量は残さから求めると4〜6%である。こうして得られた本発明における粗製ニグロシンにアニリン、水と水酸化ナトリウムを加えることにより、ニグロシンはベース化処理され、塩化鉄は水酸化鉄(Fe(OH)n)として溶解・沈殿し、また塩化ナトリウムが生じる。このとき水相中に、塩化ナトリウムは溶解している。これらの水酸化鉄はスクリューデカンタ、シャープレス等の遠心分離機を用いて除去することにより、乾燥後のニグロシン染料中のFe量を1.0重量%以下に低減、調整する。水相中の塩化ナトリウムは水相を分離することで除去できる。最終的にこのニグロシン染料をジェットミル等の粉砕機を用いて所望の粒度に微粉砕すればよい。 【0019】 ニグロシン染料中のFe含有量は1.0%以下であることが重要である。Fe含有量が1.0%より多くなってしまうとニグロシン染料の導電性が高くなってしまい、電荷保持能力が低下してしまう。電荷保持能力が低下すると本来の荷電制御剤としての機能が低下してしまい、これによりトナーとして帯電量が低下し、カブリの増加、画像濃度低下、機内飛散等の問題が生じてしまう。 【0020】 また残留するFe成分のほとんどは水酸化鉄の状態で存在しているためニグロシン染料を極めて不安定なものにすることとなる。これは水酸化鉄はFe(OH)2とFe(OH)3の状態で残存していて、Fe(OH)2は空気に触れると酸化されやすく、乾燥させたものは徐々に水素を発生しFe3O4に変化してしまう。またFe(OH)3は正に帯電しているが、脱水していくと酸化されFe2O3に変化してしまい極性が弱くなってしまう。このようにニグロシン染料は水酸化鉄の残存により、水分と空気の影響を受けやすく帯電性が変化してしまう。高温環境下での放置による経時変化によって品質が劣化してしまうのは、このFe(OH)2とFe(OH)3の残存物の酸化が高温により促進されることによる原因が大きいと推測される。 【0021】 またニグロシン染料中に水酸化鉄が存在することによって結着樹脂中への均一な分配が困難になってしまう。これはニグロシン染料中の水酸化鉄は粒状に存在していて、その粒子は核となって凝集をつくりやすくなる。そのためニグロシン染料の結着樹脂中への均一な分散、分配が困難になってしまうのである。特にニグロシン染料中のFe含有量が1.0重量%よりも多くなってしまうと粒状物が多くなり、トナー中へのニグロシンの分配性が損なわれてしまう。この場合分級して得られたトナー母粒子とそれよりも細かい微粉(以下分級微粉とする)とのニグロシン含有量に差が出てしまい、偏りが生じてしまう。さらに分級微粉を再度原料としてリサイクルする際にも荷電制御剤の含有量を制御することが困難になってしまう。 【0022】 これらのことからニグロシン染料中のFe含有量を1.0重量%以下にすることにより、ニグロシン染料を安定にして、その抵抗を調整し、更にニグロシン中の凝集物を除去することができる。その結果トナーとして良好な画像特性、経時安定性、リサイクルのための分配性を得ることができる。 【0023】 ニグロシン染料中のFe含有量は、燃焼させて残さを求めることにより簡単に求めることができる。ニグロシン染料の合成において使用する原料の中で燃焼により残る成分はわずかな不純物を除くと鉄分だけである。すなわち残さ率からFe含有量を求めることができる。このとき残さ物はFe2O3になるため、これよりFe2O3で換算してFe含有量を算出することができる。これはニグロシン中のFe(OH)2が空気に触れFe3O4に変化した後、空気中で熱することにより最終的にFe2O3になること、またFe(OH)3は脱水されるとFe2O3になることより導かれるものである。例えばニグロシン染料サンプルをるつぼに5g程度秤量し、電気炉を800℃に設定し空気中に2時間程放置して完全燃焼させ、冷却放置後残さ分の重量を測定することにより残さ率[%]が求められる。そのとき残さとして得られたものはFe2O3であるためこれをFeに換算して含有量を求めれば良い。Fe2O3の分子量は159.7であり、うちFeの原子量が55.85であるからFe2が占める原子量は111.7である。これよりFe2O3中のFeの割合は69.9%である。残さ率の69.9%がFe含有量となる。 【0024】 本発明の静電荷像現像用トナーにおけるニグロシン染料の粒径は、体積平均粒径で1〜20μmであることが好ましい。この粒径ならば結着樹脂中への分散、分配を良好にすることができる。これによりトナー中の荷電制御剤の偏在は起こらず、トナーは均一な安定した電荷を保持することができる。体積平均粒径が20μmを超えてしまうと結着樹脂中に良好な分散・分配を施すことが困難になってしまう。すなわち分級微粉中のニグロシン含有量がトナー母粒子中よりも多くなってしまい、再度原料としてリサイクルして使用する上で一定なニグロシン含有量を維持することができなくなってしまう。また1μmよりも小さくなってしまうとニグロシン染料の比表面積が大きくなり、トナーの過度の帯電量の上昇を引き起こしてしまい、画像濃度の低下や現像剤担持体上の層が厚くなってしまうことによる波模様の発生の問題等が生じる場合がある。 【0025】 トナー中のニグロシン含有量は吸光度分析(波長:567nm)によって定量することができる。クロロホルム中に溶解した既知のニグロシン量の標準サンプルを用いて検量線を作成して、未知サンプルのニグロシン含有量を求めることができる。この定量分析にてトナー母粒子、分級微粉及び微粉砕前のトナーチップのニグロシン含有量を求めることにより、ニグロシン染料のトナー中への分配性を数値化することができる。トナー母粒子、分級微粉及びトナーチップ中のニグロシン量の差がほとんどなく等しければ分配性は良好であることがわかる。一方トナー母粒子と分級微粉中のニグロシン含有量の差が大きいものは分配不良を起こしていることが確認できる。 【0026】 本発明におけるニグロシン染料をトナー中へ添加させる方法としては、トナー母粒子内部に添加する方法と外添する方法とがある。トナー母粒子内部に添加する方法が一般的であり好ましい方法である。 【0027】 ニグロシン染料のトナー中への使用量は、目的とするトナーの性能によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部で用いられ、0.5〜5.0重量部が優れた帯電性を保持させる上で好ましい。 【0028】 本発明においてはニグロシン染料と併用して、従来荷電制御剤として用いられたもののいずれのものをも補助剤として用いることが可能である。本発明においては正荷電制御剤を主として用いるものであり、ニグロシン染料と併用して脂肪酸金属誘導体、トリフェニルメタン系染料、四級アンモニウム塩(例えば、トリブチルベンジルアンモニウム-1-ヒドロキシ-4-ナフトスルホン酸塩、テトラブチルベンジルアンモニウムテトラフルオロボレート)、ジオルガノスズオキサイド(例えば、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド)、ジオルガノスズボレート(ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート)等を用いることができる。 【0029】 本発明に用いられる着色剤の種類としては、従来トナーの着色剤として用いられた染料、顔料のいずれのものをも用いることが可能である。このような公知の染料、顔料としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、アニリンブルー(C.I.No.50405)、カルコニルブルー(C.I.No.Azess Blue3)、クロムイエロー(C.I.No.14090)、ウルトラマリンブルー(C.I.No.77103)、メチレンブルークロライド(C.I.No.52015)、フタロシアニンブルー(C.I.No.74160)、デュポンオイルレッド(C.I.No.26015)、キノリンイエロー(C.I.No.47005)、マラカイトグリーンオキザレート(C.I.No.4200)、ランプブラック(C.I.No.77266)、ローズベンガル(C.I.No.45435)等の染料または顔料及びそれらの混合物が挙げられる。これら着色剤は、通常結着樹脂の100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜20重量部の添加量がよい。 【0030】 本発明の静電荷像現像用トナーを磁性トナーとして用いる場合に使用できる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄または二価金属と酸化鉄との化合物、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金の粉体及びこれらの混合物があげられる。これらの磁性材料は平均粒径が0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが望ましく、磁性トナー中に含有させる量としては結着樹脂100重量部に対して5〜150重量部、好ましくは10〜120重量部である。また必要に応じて磁性材料と着色剤を併用して用いることもできる。着色剤としては、例えばカーボンブラック、銅フタロシアニン、鉄黒などが用いられる。 【0031】 本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、具体的にはスチレン系重合体、例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体、スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、スチレン-α-クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体、スチレンジエチルアミノエチルアクリレート共重合体、スチレン-ブチルアクリレート-ジエチルアミノエチルメタクリレート共重合体等のスチレン系共重合体、架橋されたスチレン系共重合体など;ポリエステル樹脂、例えば、脂肪属ジカルボン酸、芳香属ジカルボン酸、芳香属ジアルコール、ジフェノール類から選択される単量体を構造単位として有するポリエステル樹脂、架橋したポリエステル樹脂など;その他ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、ロジン変性マレイン樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、キシレン樹脂、脂肪族または脂肪族炭化水素樹脂、石油樹脂などを挙げることができる。 【0032】 上記スチレンアクリル系共重合体に使用されるアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、更にはこれと共に用いることができる単量体として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、マレイン酸、マレイン酸ブチルなどのマレイン酸ハーフエステル、あるいはジエステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類を挙げることができる。 【0033】 また、上記の架橋したスチレン系重合体を製造するために用いる架橋剤としては、主として不飽和結合を2個以上有する化合物を挙げることができ、具体的には、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなどの不飽和結合を2個以上有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;および不飽和結合を3個以上有する化合物を、単独であるいは混合して使用することができる。上記架橋剤は、結着樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で用いられる。 【0034】 これらの樹脂は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これら樹脂のうち、スチレン系重合体、ポリエステル樹脂は、特に優れた帯電特性を示すため好ましいものである。また、GPC(ゲルパーミエーション・クロマトグラフー)により測定される分子量分布で1x103から5x104の領域に少なくとも一つのピークを有し、かつ105以上の領域に少なくとも一つのピークあるいはショルダーを有するスチレン系共重合体、更には2種以上の樹脂、例えば前記スチレン樹脂とスチレン-アクリル系共重合体との併用あるいは2種以上のスチレン-アクリル系共重合体の併用などによりこのような分子量分布を有するようにされた樹脂組成物が、トナーの粉砕性、定着性などの点から好ましいものである。 【0035】 更に、加圧定着方式を用いる場合には、圧力トナー用結着樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチレン、ポリウレタンエラストマー、エチレン-エチルアクリレート共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、線状飽和ポリエステル、パラフィンおよび他のワックス類を挙げることができる。 【0036】 また本発明のトナーには、実質的な悪影響を与えない限りにおいて、従来トナーを製造する際に用いられている離型剤などの添加剤を加えることができる。離型剤としては、例えば熱ロール定着時の離型性(オフセット防止性)を向上させる、脂肪族炭化水素、脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックスが挙げられる。これらの中では、重量平均分子量が1000〜10000程度の低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等のワックス類が好ましい。これらは通常0.5〜5重量%程度の量でトナー中に加えられる。 【0037】 本発明のトナーに用いられる外添剤としては流動化剤、研磨剤、導電性付与剤、滑剤などのものを、使用することができる。本発明において使用される流動化剤の基材としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、非晶質珪素-アルミニウム共酸化物、非晶質珪素-チタニウム共酸化物などの微粉末を用いることができる。また外添剤としての流動化剤はトナーに流動性を付与する目的のみならず、トナーの帯電性付与及び制御の役割をも担っている。つまり外添剤はトナーの最表部に付着することによって、トナーの帯電性に大きな影響を及ぼす。 【0038】 流動化剤に用いられる粒子については、表面処理を行わずそのまま用いることも可能ではあるが、吸湿性により環境安定性が損なわれてしまうことと、流動化剤が感光体ドラム表面に付着して、フィルミングを起こしてしまい画像欠陥を引き起こしてしまう問題が生じる場合がある。吸湿性による環境安定性が損なわれる問題については、高湿環境下では流動化剤が水分の影響を受けてしまい、トナーの帯電減衰を引き起こし、画像上のカブリの発生、トナーの機内飛散の原因となってしまう。そこで流動化剤に用いる粒子の表面処理を行い、疎水性持たせることが好ましい。またこの表面処理に用いる処理剤の選択により、正極性及び負極性の所望の極性を持たせトナーの帯電性を調整、制御し安定させることができる。使用する表面処理剤の選択を行う必要がある。本発明において用いられる流動化剤の表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン類、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン等のオルガノクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン等のオルガノアミノシラン類及びシリコーンオイル系の化合物を使用することができる。 【0039】 シリコーンオイル系の化合物としてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル、または変性シリコーンオイルが使用できる。変性シリコーンオイルに用いられる変性基としては、メチルスチレン基、長鎖アルキル基、ポリエーテル基、カルビノール基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、高級脂肪酸基、メルカプト基、メタクリル基等があげられる。シリコーンオイルは優れた離型性、滑り性を持っていることにより、トナー成分の感光体ドラム表面への付着、フィルミングを防ぐ効果を有している。 【0040】 本発明に使用される流動化剤以外の外添剤は滑剤、研磨剤、導電性付与剤等について以下の公知のものを使用することができる。滑剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛などが、研磨剤としては例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化ケイ素などの微粉体が挙げられる。これらの研磨剤は感光体ドラム表面へのトナー成分の付着物、フィルミング物を研磨し削ることにより、除去する効果があり、前記のシリコーンオイルで表面処理を行った流動化剤と併せて用いることにより大きな効果を見い出すことができる。導電性付与剤としては酸化スズの如き金属酸化物等を加えることもできる。しかし、これらの例は単なる例示に過ぎないものであり、本発明の電子写真用現像剤に添加混合されるものが上記具体的に例示されたものに限定されるものではない。 【0041】 本発明で用いられるトナー母粒子は、前記のトナー構成成分を、乾式ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ボールミル等により予備混合し、しかる後、この混合物を熱ロール、ニーダー、一軸または二軸のエクストルーダー等の熱混練機によって溶融混練し、得られた混練物を冷却後粉砕し、必要に応じ所望の粒径に分級する方法により製造するのが好ましい。しかし、本発明において用いられるトナー母粒子の製造方法は、この混練・粉砕法に限られるものではなく、例えば結着樹脂溶液中にトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥する方法、あるいは、結着樹脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液とした後に重合させてトナー母粒子を得る方法等の従来公知の方法のいずれの方法によってもよいことは勿論である。本発明で用いられるトナー母粒子としては、体積平均粒径が3〜35μmであることが好ましく、5〜25μmが更に好ましい。小粒径トナー母粒子の場合には、4〜15μm程度の粒径で用いられる。 【0042】 最終的にトナーを製造するには、上記より得られたトナー母粒子に外添剤を添加、混合させる必要がある。一般的にはヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどを用いてトナー母粒子に外添剤を添加し混合する。この混合工程においても、工程条件の違いによりトナーの品位、特性は大きく変わる。この混合工程での制御しうる因子としてはミキサー中への充填量、回転数、混合時間等が挙げられる。トナー母粒子と外添剤の混合条件はトナー母粒子の表面上の外添剤の付着状態に大きな影響を与えているため、適宜混合条件を調整することが好ましい。 【0043】 外添剤を添加、混合した後の最終工程として、トナー中の異物除去の目的で篩い工程を経てトナーは製造される。篩の種類としては振動篩い機、超音波振動篩い機、ジャイロシフター等を用いることができる。その際に篩いに使用するメッシュの目開き、種類がトナーの品質に影響を与えるため適宜条件を調整することが好ましい。 【0044】 本発明の静電荷像現像用トナーは二成分系現像剤としてキャリアとともに用いることもできる。本発明のトナーとともに用いられるキャリアは、従来用いられるキャリアのいずれであってもよく、例えば、鉄粉等の強磁性金属あるいは強磁性金属の合金粉、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、バリウム等の元素から構成されるフェライト粉、マグネタイト粉等が好ましいものとして挙げられる。これらキャリアは、スチレン・アクリル共重合体、スチレン・メタクリレート共重合体、スチレン重合体、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂等の樹脂或いはこれらの混合物で被覆されたものでよい。キャリアを樹脂により被覆する方法としては、被覆用樹脂を溶剤に溶解し、これを浸漬法、スプレー法、流動床法等によりコア粒子上に塗布し、乾燥させた後必要に応じ加熱して塗膜を硬化する方法等公知の任意の方法によることができる。またキャリア粒子の平均粒径は、通常15〜500μm、好ましくは20〜300μmのものを用いることができる。 【0045】 【実施例】 以下製造例、実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。 【0046】 [ニグロシン染料の製造例] アニリン、塩酸および塩化第二鉄の存在下にニトロベンゼンで160〜180℃で酸化、反応させ粗製ニグロシンを得た(この粗製ニグロシンには塩化第二鉄の残さが含まれる)。次いで粗製ニグロシンにアニリン、水および水酸化ナトリウムを加え、スクリューデカンタの遠心分離によりニグロシンと水酸化鉄の沈殿物に分離し、水酸化鉄の沈殿物を除去した。得られた液を更に水洗しその液を乾燥、粉砕することにより、ニグロシン染料を得た。得られたニグロシン染料を表1にまとめた。Fe含有量は遠心分離の条件、体積平均粒径は粉砕条件を変えることによってそれぞれ調整した。 【0047】 【表1】 【0048】 [実施例1] (成分) (配合量) スチレンアクリル共重合体 100部 磁性体(マグネタイト) 70部 低分子量ポリプロピレン 2.5部 ニグロシン染料(A)(粒径6.1μm) 2.5部 上記材料を均一に混合した後、混練しチップを得て、該チップを粉砕、分級して、平均粒径10.5μmの正帯電性トナー母粒子を得た。次いで、このトナー母粒子100部に対し、ジメチルジクロロシラン処理したシリカ微粉体0.3部、およびタングステンカーバイド微粉体0.5部を添加、混合して正帯電性磁性トナーを得た。このトナーを用い、市販の複写機NP-3050(キヤノン社製)により、常温常湿(23℃、50%RH)、高温高湿(30℃、85%RH)、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下で実写試験を行なった。いずれの環境下においても、現像初期よりベタ黒画像が均一でかぶりのない良好な画像を得ることができた。さらにトナーを補充しながら1万枚の画出し評価を行なったが、初期画像と同様に問題のない良好な画像を得ることができた。また、分級して得られたトナー母粒子およびトナー微粉粒子中のニグロシン染料の含有量を測定した。この測定結果を表2にまとめた。トナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量にほとんど差がなく、ニグロシン染料の分配性が優れていた。 【0049】 【表2】 【0050】 [実施例2] 実施例1で用いたニグロシン染料(A)の代わりにニグロシン染料(B)(粒径7.2μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして正帯電性磁性トナーを得た。このトナーを用い、市販の複写機NP-3050(キヤノン社製)により、常温常湿(23℃、50%RH)、高温高湿(30℃、85%RH)、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下で実写試験を行なった。いずれの環境下においても、現像初期よりベタ黒画像が均一でかぶりのない良好な画像を得ることができた。さらにトナーを補充しながら1万枚の画出し評価を行なったが、初期画像と同様に問題のない良好な画像を得ることができた。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量にほとんど差がなく、ニグロシン染料の分配性が優れていた。 【0051】 [比較例1] 実施例1で用いたニグロシン染料(A)をニグロシン染料(C)(粒径8.9μm)に代えることを除き、実施例1と同様にして正帯電性磁性トナーを得た。このトナーを用いて実施例1と同様の実写試験を行なったところ、常温常湿(23℃、50%RH)下では2千枚を過ぎたあたりから、高温高湿(30℃、85%RH)下で1千枚を過ぎたあたりから画像濃度が低下した。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量に差があった。 【0052】 [比較例2] 実施例1で用いたニグロシン染料(A)をニグロシン染料(D)(粒径9.1μm)に代えることを除き、実施例1と同様にして正帯電性磁性トナーを得た。この正帯電性磁性トナーを用いて実施例1と同様の実写試験を行なったところ、常温常湿(23℃、50%RH)下では1千枚を過ぎたあたりから、高温高湿(30℃、85%RH)下では500枚を過ぎたあたりから、画像濃度が低下した。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量に差があった。 【0053】 [実施例3] (成分) (配合量) スチレンアクリル共重合体 100部 カーボンブラック 9部 低分子量ポリプロピレン 5部 ニグロシン染料(A) 2部 上記材料を均一に混合した後、混練しチップを得て、該チップを粉砕、分級して、平均粒径11.7μmの正帯電性トナー母粒子を得た。次いで、このトナー母粒子100部に対し、正帯電性疎水性シリカ微粉体0.3部、およびタングステンカーバイド微粉体0.5部を添加、混合して正帯電性非磁性トナーを得た。得られたトナー6部と平均粒径60μmのシリコーン樹脂コートのキャリア100部とをボールミルを用いて混合し現像剤を作製した。次にこのトナーおよび現像剤を用いて、市販の複写機レオドライ4550(東芝社製)により、常温常湿(23℃、50%RH)の環境下で実写試験を行なった。この際トナーは経時変化の確認を促進して見極めるべく乾燥機中に50℃、72時間の条件にて加熱した。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、1万枚実写後でもカブリは少なく、画像濃度も安定しており、機内のトナー飛散も見られなかった。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量にほとんど差がなく、ニグロシン染料の分配性が優れていた。 【0054】 [実施例4] 実施例3で用いたニグロシン染料(A)の代わりにニグロシン染料(B)を用いた以外は実施例3と同様にして正帯電性非磁性トナーおよび現像剤を得た。このトナーおよび現像剤を用いて実施例3と同様の実写試験を行なった。この際トナーは経時変化の確認を促進して見極めるべく乾燥機中に50℃、72時間の条件にて加熱した。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、1万枚実写後でもカブリは少なく、画像濃度も安定しており、機内のトナー飛散も見られなかった。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量にほとんど差がなく、ニグロシン染料の分配性が優れていた。 【0055】 [実施例5] (成分) (配合量) スチレンアクリル共重合体 100部 カーボンブラック 9部 低分子量ポリプロピレン 5部 ニグロシン染料(A) 1部 四級アンモニウム塩 2部 実施例3で用いた材料に四級アンモニウム塩を併用して添加し、実施例3と同様にして正帯電性非磁性トナーおよび現像剤を得た。このトナーおよび現像剤を用いて実施例3と同様の実写試験を行なった。この際トナーは経時変化の確認を促進して見極めるべく乾燥機中に50℃、72時間の条件にて加熱した。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、1万枚実写後でもカブリは少なく、画像濃度も安定しており、機内のトナー飛散も見られなかった。また、分級して得られたトナー母粒子およびトナー微粉粒子中のニグロシン染料の含有量にほとんど差がなく、ニグロシン染料の分配性が優れていた。 【0056】 [比較例3] 実施例3で用いたニグロシン染料(A)の代わりにニグロシン染料(C)に代えることを除き、実施例3と同様にして正帯電性非磁性トナーおよび現像剤を得た。このトナーおよび現像剤を用いて実施例3と同様の実写試験を行なった。この際トナーは経時変化の確認を促進して見極めるべく乾燥機中に50℃、72時間の条件にて加熱した。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、常温常湿(23℃、50%RH)下では2千枚実写後までは実施例3と同様に良好であったものの、それ以降カブリが増大し、トナーの機内飛散が目立ち始めた。3千枚後試験を中止した。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量に差があった。 【0057】 [比較例4] 実施例3で用いたニグロシン染料(A)の代わりにニグロシン染料(D)に代えることを除き、実施例3と同様にして正帯電性非磁性トナーおよび現像剤を得た。このトナーおよび現像剤を用いて実施例3と同様の実写試験を行なった。この際トナーは経時変化の確認を促進して見極めるべく乾燥機中に50℃、72時間の条件にて加熱した。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、常温常湿(23℃、50%RH)下では初期からカブリが多く、機内飛散が見られた。また、分級して得られたトナー母粒子および分級微粉中のニグロシン染料の含有量に差があった。 【0058】 【発明の効果】 特定の組成のニグロシン染料を用いることにより、トナーの摩擦帯電量が高く、安定であり、さらに温度および湿度の変化を受けずに、カブリが増加したり、画像濃度低下等の現象が発生しない優れた静電荷像現像用トナーを得た。 【0059】 さらに、複写機やプリンターなどで繰り返し連続複写して用いた場合、カブリの増加や画像濃度の低下、また感光体表面にトナー成分の付着を起こさず、さらに高温下での放置による経時変化を受けても、カブリが増加せず、トナーの転写率低下が起こらずまた複写機、プリンターの機内飛散の起こらない耐久性、安定性のある優れた静電荷像現像用トナーを得た。 【0060】 さらに、ニグロシン染料がバインダー樹脂中に一様に分散または相溶し、トナー化したときにニグロシンの分配不良を引き起さず、トナーが均一に正に帯電する静電荷像現像用トナーを得た。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-12-13 |
出願番号 | 特願2001-123722(P2001-123722) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZA
(G03G)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 淺野 美奈 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
伏見 隆夫 阿久津 弘 |
登録日 | 2003-07-25 |
登録番号 | 特許第3454257号(P3454257) |
権利者 | 東洋インキ製造株式会社 |
発明の名称 | 静電荷像現像用トナー |
代理人 | 鐘尾 宏紀 |
代理人 | 鐘尾 宏紀 |
代理人 | 高良 尚志 |