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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C25D
管理番号 1136199
異議申立番号 異議2003-73018  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-12 
確定日 2006-01-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3416122号「浸漬型表面処理装置および浸漬式表面処理方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3416122号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3416122号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成13年2月14日(優先権主張平成12年3月15日及び平成12年11月9日)に特許出願され、平成15年4月4日にその特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、パーカーエンジニアリング株式会社より請求項1に係る発明についての特許に対し、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年7月19日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の要旨
本件訂正請求の要旨は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項aないしcのとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:特許請求の範囲の
「【請求項1】処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側及び出槽側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、
前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーとを備え、
前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、
前記処理槽の底壁が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜している浸漬型表面処理装置。」を、
「【請求項1】処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側及び出槽側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、
前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーと、
前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクとを備え、
前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、前記第1及び第2の循環系の一方を用いて前記処理槽の処理液を前記移液タンクへ移送し、
前記処理槽の底壁の入槽側から出槽側に至る全体が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜している浸漬型表面処理装置。」と訂正する。

(2)訂正事項b:明細書の段落番号【0019】に記載の、
「【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成するために、請求項1記載の浸漬型表面処理装置は、処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、前記処理槽の入槽側及び出槽側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーとを備え、前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、前記処理槽の底壁が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜していることを特徴とする。」を、
「【課題を解決するための手段】(1)上記目的を達成するために、請求項1記載の浸漬型表面処理装置は、処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、前記処理槽の入槽側及び出槽側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーと、前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクとを備え、前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、前記第1及び第2の循環系の一方を用いて前記処理槽の処理液を前記移液タンクへ移送し、前記処理槽の底壁の入槽側から出槽側に至る全体が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜していることを特徴とする。」と訂正する。

(3)訂正事項c:明細書の段落番号【0037】に記載の、
「特に、被処理物が通過する表面域及び中間域の処理液の流れが被処理物の移動方向に対向しているのに対して、底面域の塗料液の流れが被処理物の移動方向に対して同一方向となっているので、従来の表面処理装置の循環系の吹き出し方向を変更するだけで、従来の順流方式を対向流方式に改造することができる。」を、
「特に、被処理物が通過する表面域及び中間域の処理液の流れが被処理物の移動方向に対向しているのに対して、底面域の塗料液の流れが被処理物の移動方向に対して同一方向となっているので、従来の表面処理装置の循環系の吹き出し方向を変更するだけで、従来の順流方式を対向流方式に改造することができる。
また、処理糟の底壁をホッパーに向かって傾斜させることで、処理槽に収容された処理液の全量を移液タンクへ移送することができ、残留塗料を廃棄することがなくなる。さらに、移液タンクへの循環系は第1及び第2の循環系の一方を共用し、定常運転時においてこの循環系には常時処理液が循環しているので、配管内に塗料が沈降してゴミブツの原因となることを防止することができる。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された発明に、「処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンク」および「第1及び第2の循環系の一方を用いて前記処理槽の処理液を前記移液タンクへ移送する」という特定事項を付加して限定するとともに、訂正前の請求項1に記載された構成である「処理槽の底壁が、ホッパーが最下面となるように傾斜している」を「処理槽の底壁の入槽側から出槽側に至る全体が、ホッパーが最下面となるように傾斜している」にして発明を明確にするのであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、この訂正の根拠は、訂正前明細書の段落【0082】〜【0085】及び図9に記載された第3の実施形態に対応するもので、具体的には、段落【0082】の「また、電着槽1そのものやライザーなどの各種機器を清掃、保守する際に、電着塗料液Lを一時的に移液するための移液タンク5が設けられ、」、同段落の「さらに塗料配管25のポンプ26とフィルタ27との間に分岐塗料配管25aが設けられている。この分岐塗料配管25aには、開閉弁25bが設けられ、この開閉弁25bを開くことで電着槽1内の電着塗料液Lを移液タンク5へ移送することができる。」、及び段落【0085】の「なお、電着槽1の底壁の傾斜は、同図に示すように入槽側から出槽側に至る全体を傾斜させなくても、底壁の一部を傾斜させても良い。」の記載に基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
訂正事項b、cは、訂正事項aにより特許請求の範囲が訂正された関係上、これに整合させるための訂正であるから、訂正事項b、cは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、この訂正は、訂正前明細書の段落番号【0082】〜【0085】の記載に基づいており、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
そして、これらの訂正事項a〜cは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件訂正後の請求項1に係る発明
訂正後の本件請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)は、訂正明細書の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側及び出槽側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、
前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーと、
前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクとを備え、
前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、前記第1及び第2の循環系の一方を用いて前記処理槽の処理液を前記移液タンクへ移送し、
前記処理槽の底壁の入槽側から出槽側に至る全体が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜している浸漬型表面処理装置。」

4.特許異議申立について

4-1.取消理由の概要
訂正前の本件請求項1に係る発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(刊行物1〜5は、順次、特許異議申立人・パーカーエンジニアリング株式会が提出した甲第1〜3、6、7号証に対応する。)

4-2.引用刊行物の記載事項
(1)刊行物1:特開平7-18494号公報
「フルディップ式電着塗装装置及び前処理装置」の発明に関し、
(1a):「【産業上の利用分野】本発明は、ハンガーを有するオーバーヘッドコンベヤと、舟型処理槽とを備えるフルディップ式電着塗装装置及び前処理装置に関するものである。」(段落【0001】)

(1b):「ハンガーを有するオーバーヘッドコンベヤと、舟型処理槽とを備える従来のフルディップ式前処理装置においては、図8に示すように、舟型処理槽内に、舟型処理槽の側面から見て、表層がオーバーヘッドコンベヤの進行方向後方に流れる1つの大きな処理液の巡回流が作られ、舟型処理槽のオーバーヘッドコンベヤの進行方向後方端に、堰を介して1つのサブタンクが設置されている。上記フルディップ式前処理装置においては、処理液の表層流の一部が、堰を越えてサブタンク内に流入し、サブタンクから循環ポンプに吸引され、フィルターを経由して舟型処理槽内に配設された処理液噴射ノズルから噴射され、前記循環流を形成する。前記循環流により、ワークの入槽時に流入する処理液によってワークの袋状構造部分等から処理液中に舞い上げられた鉄粉等の一部は、ワークを離れた後、堰を越えて槽外に排出され、他の一部はワークを離れた後、堰の前方から槽底に向かって沈降する。また、前記循環流により、処理液の攪拌が行われて、舟型処理槽内の処理液の一様性が確保される。鉄粉等の沈降物を含む舟型処理槽底部の処理液は、舟型処理槽底壁端部に配設された吸引口から循環ポンプにより吸引され、フィルターと処理液噴射ノズルとを経由して舟型処理槽内へ還流される。舟型処理槽の底壁に堆積した鉄粉等は時々実施される清掃で除去される。」(段落【0003】)
と記載され、図8に、自動車ボディを浸漬する前処理装置が示されている。
(2)刊行物2:特開平11-92998号公報
「浸漬型表面処理装置および浸漬式表面処理方法」の発明に関し、
(2a):「【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の槽内攪拌は、電着槽1の液面側と底面側とで液流が逆になるように塗料液Lを全体的に循環させるので、ちょうどボディBが通過する槽中央部Aの液流が必然的に弱くなり、塗料の顔料や金属粉などがここに集約して浮遊する傾向があった。」(段落【0014】)

(2b):「この第1の電着液循環手段3のノズル31は、図1および図2に示されるように、電着槽1の両側壁に立設された複数本のパイプPのそれぞれに装着され、電着塗料液の吐出方向が図1の矢印方向に向かって設けられている。第1の領域11における液流は主としてこれらのノズル31からの吐出力によって生じることとなる。」(段落【0064】)

(2c):「【0090】第3実施形態
図7は本発明の浸漬型表面処理装置の実施形態である電着塗装装置さらに他の形態を示す断面図である。
【0091】本実施形態では、第1の領域11における液流方向がボディBの移動方向に対向した方向とされている点で上述した第1実施形態と相違する。すなわち、電着槽1その他の電着塗装装置の構成は第1実施形態と同様であるが、オーバーヘッドコンベアCによるボディBの搬送方向が逆となっている。また、オーバーフロータンクTも入槽側に設けられている。
【0092】こうした電着塗装装置にあっても、同様の槽内循環が生じ、電着有効領域において電着塗料液Lが滞留することのない適正な液流が確保される。そして、これにより顔料沈降の防止あるいは顔料分散の均一化、気泡や熱の除去および異物の付着防止を達成することができる。
【0093】また、電着槽1全体の液流を一の方向にするのではなく、電着槽1内において大きな循環がなされるので、こうした電着槽1のように大容量の処理槽にあっても、高能力あるいは多数のポンプ、配管などからなる循環系を必要とせず、設備費やランニングコストの点においても有利となる。
【0094】さらに、第2の領域12,12のそれぞれの終端、すなわちホッパー15と開口部14aとの分岐点では、電着塗料液Lに含まれた金属粉などが停滞し易くなり、これをそのままホッパー15で集約し、フィルタFで系外へ除去することができる。
【0095】このような効果に加え、第1の領域11の液流方向とボディBの移動方向とが対向した電着塗装装置では、電着塗料液LとボディBとの相対速度を高めることができるので、金属粉などの異物の付着をより効果的に防止することができ、また、ボディ表面で生じる気泡や熱を効果的に除去することができる。
【0096】さらに、電着槽1の入槽側にオーバーフロータンクTが設けられているので、ボディBの入槽時に持ち込まれた異物をそのままオーバーフロータンクTへ流し出すことができ、槽内に金属粉などが混入することが少なくなる。これにより「ブツ」などの塗膜欠陥を減少させることができる。」(段落【0090】〜【0096】)
と記載され、図7に浸漬型表面処理装置の実施形態である電着塗装装置が示されている。

(3)刊行物3:特開平11-106996号公報
「電着塗装装置およびこれを用いた電着塗装方法」の発明に関し、
(3a):「【0074】また、図2に示すもう一方の循環経路に連結された吐出口は、電着槽内部、特に液表面近傍あるいは槽中央部などの任意の位置に設けてなる(複数設ける場合には適当な間隔で設ける)ものである。かかる例としては、図2に示すように、電着槽211の被塗物出槽側の上部に複数のノズル式の吐出口222を配置するものである。
【0075】より詳しくは、電着槽211の長手方向の全域ないし一部域の上方より、図2に示す例では、電着槽211の被塗物出槽側の上方より搬送装置210の可動中に(特に被塗物の搬送に)障害とならないスペース(具体的には、被塗物の上部側および両側面部側)に一定の間隔で循環経路221を構成する塗液吐出用の分岐配管226を設置して、これらの分岐配管226の先端部を塗料液面下(例えば、液表面および/または槽中程)に位置させ、当該先端部にノズル式の吐出口222を配設することにより、好適に電着槽211の被塗物出槽側(本発明では、図2に示した例のほかに、被塗物入槽側を含む槽長手方向の全域ないし一部域、例えば、被塗物出槽側から槽長手方向の中央部に至る部分までを含む域の上部〜下部(本発明では、図2に示した例のほかに、槽底面部まで至るものであってもよいが、この場合には、併設される壁面および底面に沿って配置した吐出口との塗料液の流れが乱れないように留意する必要がある。したがって、通常は、槽底面部を除く、液表面から槽高さ方向の中央部に至る部分までを含む部位に設ければ足りる)に複数のノズル式の吐出口222を配置することができる。かかる構成とすることにより、電着槽211の長手方向の全域ないし一部域(例えば、被塗物出槽側)の上部〜下部に配置した複数のノズル式の吐出口222の各個の流量および流速を調整可能になり、ゴミの沈下しやすい個所、塗料液がよどみになりやすい個所など(ここでは、特に塗料液がよどみになりやすい個所)の流量や流速を調整することができ、確実にしかも均一な一方向の収斂する流れを作ることが可能となるものである。」(段落【0074】〜【0075】)

(3c):「【0088】さらに、(1)電着槽出槽側にオーバーフローされる塗料液、および(2)電着槽外に取り出した被塗物に付着して持ち出され水洗系内に搬送される途中に流れ落ちた塗料液や水洗系内の水洗水で電着槽外に取り出した被塗物上から洗い流された塗料液、の両方を集め回収するための好ましい実施形態の1つとしては、図5に示すように、電着槽の出槽側にも入槽側オーバーフロー槽とは別にオーバーフロー槽を設けた塗料循環方式の撹拌機構を備えてなるものがある。なお、図5においては、電着槽出槽側にオーバーフロー槽を設けた塗料循環方式の撹拌機構のうち、主として電着槽出槽側のオーバーフロー槽周辺の構成をわかりやすく説明するものであって、それ以外の当該撹拌機構の装置構成や図2に示したものと同じ他の塗料循環方式の撹拌機構などに関する装置構成に関しては、説明の都合上、その一部を省略ないし簡略化している・・」(段落【0088】)

(4)刊行物4:井出哲夫編著「(第二版)水処理工学-理論と応用-」1990年4月20日2版1刷 技報堂出版発行、26頁
(4a):底面が排泥部へ向けて傾斜した沈殿池が図1.38、図1.39に示されている。

(5)刊行物5:水処理管理便覧編集委員会編「水処理管理便覧」平成10年9月30日、丸善発行、132頁
(5a):底面が排泥部に向けて傾斜した沈殿池が図2.26、図2.27に示されている。

4-3.当審の判断

4-3-1.刊行物1の記載から認定される発明
刊行物1には、「舟型処理槽内に、舟型処理槽の側面から見て、表層がオーバーヘッドコンベヤの進行方向後方に流れる1つの大きな処理液の巡回流が作られ、舟型処理槽のオーバーヘッドコンベヤの進行方向後方端に、堰を介して1つのサブタンクが設置され、処理液の表層流の一部が、堰を越えてサブタンク内に流入し、サブタンクから循環ポンプに吸引され、フィルターを経由して舟型処理槽内に配設された処理液噴射ノズルから噴射され、前記循環流を形成する」と共に、「舟型処理槽底壁端部には吸引口が配設された自動車ボディ用フルディップ式前処理装置」(1b、図8)が記載され、その装置の作用は、「前記循環流により、ワークの入槽時に流入する処理液によってワークの袋状構造部分等から処理液中に舞い上げられた鉄粉等の一部は、ワークを離れた後、堰を越えて槽外に排出され、他の一部はワークを離れた後、堰の前方から槽底に向かって沈降する」ものであって、「また、前記循環流により、処理液の攪拌が行われて、舟型処理槽内の処理液の一様性が確保され」、「鉄粉等の沈降物を含む舟型処理槽底部の処理液は、舟型処理槽底壁端部に配設された吸引口から循環ポンプにより吸引され、フィルターと処理液噴射ノズルとを経由して舟型処理槽内へ還流され」て、「舟型処理槽の底壁に堆積した鉄粉等は時々実施される清掃で除去される」(1b)、と記載されている。
そして、刊行物1の「舟型処理槽」は本件発明の「処理槽」に相当し、同様に、「サブタンク」は「入槽側に設けられたオーバーフロー槽」に、「吸引口」は「ホッパー」に各相当するから、刊行物1に記載される事項を本件発明の用語と文章表現に倣って表記すると、刊行物1には、
「処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とする第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側に設けられたオーバーフロー糟と、
前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーとを備え、
前記第1及び第2の循環系は、前記ホッパー及び前記オーバーフロー槽から処理液を吸引するようにしている浸漬型表面処理装置。」の発明が記載されているものと認められる。

4-3-2.対比
本件訂正発明1と、上記刊行物1の記載から認定される発明(以下、刊行物1発明という。)を比較検討する。
本件訂正発明1の属する技術分野は、「・・・本発明の浸漬型表面処理装置には、被処理物又は被塗物を全没させるフルディップ法と、被処理物又は被塗物の一部を浸漬するハーフディップ法とが含まれる。また、本発明の浸漬型表面処理装置における表面処理には、脱脂処理、表面調整処理、化成処理などの前処理と、電着塗装とが含まれる。本発明の浸漬型表面処理装置は、自動車ボディ、自動車部品など、各種金属製部品の表面処理に適用することができる。」(本件明細書の段落【0034】【0035】参照)であり、他方、刊行物1発明のそれは、「ハンガーを有するオーバーヘッドコンベヤと、舟型処理槽とを備えるフルディップ式電着塗装装置及び前処理装置」(1a)に関し、この装置は自動車用のもの(図8)と認められるから、本件訂正発明1も刊行物1発明も共に、同一用途に用いられる浸漬型表面処理装置である。
そして、刊行物1発明は、上記4-3-1.に記載したように、
「処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とする第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側に設けられたオーバーフロー槽と、
前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーとを備え、
前記第1及び第2の循環系は、前記ホッパー及び前記オーバーフロー槽から処理液を吸引するようにしている浸漬型表面処理装置。」なる特定事項を有する点で、本件訂正発明1と一致している。
しかしながら、刊行物1発明には、本件訂正発明1の構成である次のa〜dが記載されていない点で相違する。
a.第1の循環系で、自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む点。
b.前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクを備える点
c.
(c-1).前記処理槽の出槽側にはオーバーフロー槽が設けられておらず、かつ、第1及び第2の循環系を、ホッパー及び一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引する系と、他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引する系の2つに分けるようになっている点。
(c-2).第1及び第2の循環系の一方を用いて処理槽の処理液を移液タンクに移送する点。
d.処理槽の底壁が、入槽側から出槽側に至る全体が前記ホッパーが最下面となるように傾斜している点。

4-3-3.相違点の検討
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点aについて、
本件発明において、自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを設ける目的と作用は、従来から、処理液の均一化、気泡、熱、異物等の除去及び付着防止等の観点から槽内の撹拌をするようにしている(本件明細書段落【0009】)が、本件発明は、表面域の対向流と底面域の順流との間の中間域に生じがちな処理液の停滞を防止し(同段落【0023】)、表面域及び底面域の処理液の流れと相俟って、処理液流と被処理物との相対速度を高めて異物の付着をより効果的に防止し、ゴミ、泡等の消失を速め、自動車ボディ各部の塗膜厚さを均一にすること(同段落【0036】、【0067】)である。
しかしながら、本件発明と技術分野が共通する刊行物2には、循環流では側壁部の流れが弱くなる(2a)という問題認識があり、この課題解決のための態様の1つとして、「図1および図2に示されるように、第1の電着液循環手段3のノズル31は、電着槽1の両側壁に立設された複数本のパイプPのそれぞれに装着され、電着塗料液の吐出方向が図1の矢印方向に向かって設けられている。第1の領域11における液流は主としてこれらのノズル31からの吐出力によって生じる」(2b)ようにしたノズルの配置構造が示されている。
このノズル配置構造は、刊行物2の(2c)によれば、本件発明と同じ対向流方式のものにも適用され、この構造により液の均一化、異物の付着防止等を達成でき、槽内において大きな循環がなされるとされているのである。
また、同様に、本件発明と技術分野が共通する刊行物3の表面処理装置にも、(3a)に、「図2に示すように、電着槽211の被塗物出槽側の上部に複数のノズル式の吐出口222を配置するものである。
【0075】より詳しくは、・・・塗液吐出用の分岐配管226を設置して、これらの分岐配管226の先端部を塗料液面下(例えば、液表面および/または槽中程)に位置させ、当該先端部にノズル式の吐出口222を配設することにより、好適に電着槽211の被塗物出槽側(本発明では、図2に示した例のほかに、・・・この場合には、併設される壁面および底面に沿って配置した吐出口との塗料液の流れが乱れないように留意する必要がある。したがって、通常は、槽底面部を除く、液表面から槽高さ方向の中央部に至る部分までを含む部位に設ければ足りる)に複数のノズル式の吐出口222を配置することができる。・・・かかる構成とすることにより、電着槽211の長手方向の全域ないし一部域(例えば、被塗物出槽側)の上部〜下部に配置した複数のノズル式の吐出口222の各個の流量および流速を調整可能になり、ゴミの沈下しやすい個所、塗料液がよどみになりやすい個所など(ここでは、特に塗料液がよどみになりやすい個所)の流量や流速を調整することができ、確実にしかも均一な一方向の収斂する流れを作ることが可能となる」と記載されるように、複数のノズルを表面域だけでなく中間域にも配しており、この図2に示されるようなノズル配置構造は(3b)に記載のように、処理液が被処理物と対向流式で且つ入槽側と出槽側に各オーバーフロータンクを有する図5の装置にも共通するから、結局、刊行物3には、両側にオーバーフロータンクを有する装置において、表面域だけでなく側面の中間域にもノズルを配して、表面域と側面の中間域を対向流式とし、処理液がよどみになりやすい個所の流量や流速を調整し、均一流を形成させるようにした電着塗装装置が示されているといえる。
したがって、上記の刊行物2、3に例示のように、表面域だけでなく自動車ボディの側面を流れる中間域にもよどみがなく均一な循環流を形成し、異物の付着等を防止するために、処理槽の側壁にも処理液の流れを形成するノズルを設けることは公知の技術であるから、本件訂正発明1のように中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを側壁に設けることは当業者が適宜になし得ることである。

(2)相違点bについて
本件訂正発明1は、処理槽や各種機器を清掃点検のために、前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクを備えている(同段落【0082】)が、刊行物1の(1b)の末部に「・・処理槽の底壁に堆積した鉄粉等は時々実施される清掃で除去される・・」と記載されるように、この種の処理槽は時々清掃され、その際には処理槽内の処理液は一時的に処理槽外に移す必要があるから、当然に該処理液を受容する移替えタンクのようなものが設置されるものである。(例えば、異議申立人が回答書で提示した特開平7-243096号公報を参照されたい。)
よって、該構成は当然の事項を記載したにすぎない。

(3)相違点cについて
・相違点c-1:刊行物1にも示されるようにこの種処理装置の循環撹拌機構は機能上、オーバーフロー槽、ホッパー、ポンプ、フィルター及び処理槽のノズルは連結されて循環系を形成するものであるところ、刊行物3の第5図には、処理槽である電着槽の出槽側にも入槽側オーバーフロー槽とは別にオーバーフロー槽を設けた循環撹拌機構を備えたもの(3b)が示されており、この第5図のものも、各オーバーフロー槽、吸込口(本件のホッパーに相当)、ポンプ、フィルター、処理槽のノズルは連結されて循環系を形成している。
したがって、気泡や異物を速やかにオーバーフローさせて処理槽外に流し出す(本件明細書の段落【0024】参照)ために、処理槽の出槽側にもオーバーフロー槽を設けることは当業者が適宜になし得る設計事項であり、この処理槽の両側にオーバーフロー槽を設けた循環系において、処理液を吸引する系を各オーバーフロー槽毎に、第1、第2の独立した2つからなる循環系とするか、両方のオーバーフロー槽を共通の1つの循環系とするかは、当業者が二者択一的に適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
・相違点c-2:上記「相違点bについて」で述べたように、処理槽内の処理液を一時的に処理槽外に移す必要上移液タンクが設けられるが、処理液をタンクに移しかえる作業の際に、上記処理液の循環系を用いることは至極当たり前のことであるから、前記循環系の一方を用いて処理槽の処理液を移液タンクに移送することに格別の困難性は認められない。
したがって、前記処理槽の入槽側だけでなく出槽側にもオーバーフロー槽を設け、かつ、ホッパー及び一方のオーバーフロー糟から処理液を吸引する系と、他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引する系の2つの第1、第2の循環系に分けること、及び、第1、第2の循環系の一方を用いて処理槽の処理液を移液タンクに移送することは、当業者が適宜になし得る設計事項と認められる。

(4)相違点dについて
刊行物1の(1a)に示されるように、「鉄粉等の沈降物を含む舟型処理槽底部の処理液は、舟型処理槽底壁端部に配設された吸引口から循環ポンプにより吸引され、フィルターと処理液噴射ノズルとを経由して舟型処理槽内へ還流される。」、すなわち、処理槽底面域の処理液の流れ方向の先端に形成された吸引口(本件のホッパーに相当)から汚れた処理液が吸引されフィルタ等で清浄化された後に再び処理槽に戻されるのであるから、その機能・作用を考えれば、ホッパー部に鉄粉等の沈降物を含む処理液が集まる必要があることは明らかである。
したがって、液の吸引口となるホッパーが処理槽の底壁の最下面となるように設計することは、刊行物4,5を例示するまでもなく当然のことであるから、処理槽の底壁が、入槽側から出槽側に至る全体が前記ホッパーが最下面となるように傾斜させることは当業者が適宜に採用しうる設計事項にすぎない。
結局、これらの相違点a〜dの構成は、当業者が公知及び周知の技術水準に基づいて容易に想到し得るものである。

4-3-4.本件訂正発明1の作用効果について、
本件訂正発明1は、上述した自動車ボディの各部に均一な塗膜を形成する等の効果の他に、「電着槽内の液流方向をボディの移動方向に対して対向させるとともに、電着槽1の入槽側にオーバーフロータンクTを配置することで、液流とボディとの相対速度が速くなり気泡や反応熱の除去効果が高まるとともに、ボディによって持ち込まれたゴミを入槽部からそのままオーバーフロータンクTへ排出することができるが、この電着塗装装置では、設備を新規に設置する際には問題ないが、従来の順流方式の電着塗装装置を対向流方式に改造するには多大な設備費用を要し、現実的ではなかった。」という問題点(本件明細書段落【0016】、【0017】)に対し、「既存設備を僅かに改造することで対向流式に変更できる浸漬型表面処理装置を提供すること」(同段落【0018】)ができる点も特徴の1つである。
しかしながら、製造ラインの組み替え、変更、新設等が行われる際に、使用する各種装置の改変、改良は日常的に留意される事項であるところ、本件訂正発明1の属する技術分野において、均等に循環する対向流を形成するためのノズル配置や、オーバーフロータンクを両側に配置した表面処理装置は既に上記各刊行物に示されるように公知であるから、これらの公知の構造を採用して本件訂正発明1に係る構成の装置に改造することに格別の困難性があったとはいえず、その作用効果も格別とは認められない。

5.むすび
したがって、本件訂正発明1は、上記刊行物1〜5に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正発明1についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件訂正発明1についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
浸漬型表面処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側及び出槽側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、
前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーと、
前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクとを備え、
前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、前記第1及び第2の循環系の一方を用いて前記処理槽の処理液を前記移液タンクへ移送し、
前記処理槽の底壁の入槽側から出槽側に至る全体が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜している浸漬型表面処理装置。
【請求項2】処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、
前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、
前記処理槽のうち、前記処理槽の底堅から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、
前記処理槽の入槽側に設けられたオーバーフロー槽と、
前記処理槽の出槽側に設けられ、前記処理槽の前記底面域で連通するサクション槽とを備え、
前記第1及び第2の循環系の一方は、前記サクション槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記オーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、
前記第1の循環系及び/又は前記第2の循環系に設けられたポンプが、竪型ポンプである浸漬型表面処理装置。
【請求項3】非稼働時において、前記第1の循環系及び/又は前記第2の循環系に設けられたポンプに対し、稼働時に供給される電力とこの電力の40%〜70%の電力とを交互に繰り返し供給する請求項1又は2に記載の浸漬型表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車ボディや自動車部品の塗装ラインに設置されるフルディップまたはハーフディップの浸漬型表面処理装置、なかでも電着塗装装置に関し、特に既存設備を僅かに改造することで対向流式に変更できる浸漬型表面処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車ボディの塗装には、下塗り塗装、中塗り塗装および上塗り塗装からなる3コート塗装系が採用されているが、このうちの下塗り塗装工程には、たとえば脱脂処理、化成処理あるいは電着塗装などの工程において、自動車ボディを処理液または塗料液中に全没させるディッピング塗装法が広く用いられている。
【0003】
この種のディッピング塗装法においては、連続的に搬送される自動車ボディを所定の時間だけ全没させる必要があるため、処理槽や塗料槽には大量の処理液や塗料液が収容されている。
【0004】
なかでも、電着塗料液は、低固形分に希釈されているので、常時あるいは間欠的に攪拌しないと顔料沈降が生じ、また槽内収容量が大量であることから、いったん顔料が沈降すると再分散させるのはきわめて困難である。電着塗料液において顔料の分散が不均一であると、塗膜がブツ状になり、これが上塗り塗膜にまで影響を及ぼすことになる。
【0005】
また、電気泳動作用により塗膜形成を行う電着塗装においては、塗膜形成時、すなわちディッピング時に被塗面で反応ガスが発生し、この気泡をそのまま放置すると析出中の塗膜内に残留して塗膜欠陥になる。この意味からも、槽内の電着塗料液に適当な流速を与え、これにより反応ガスを被塗面から除去する必要がある。
【0006】
さらに、電着塗装においては、塗膜形成時に反応熱が生じるため、被塗面近傍の塗料温度が上昇し塗膜抵抗が低下するが、これを放置すると局部的に厚膜になる。電着膜厚が不均一であると、塗膜表面品質、たとえば鮮映性や塗り肌も不均一となる他、厚膜すぎるとコスト的にも問題がある。したがって、被塗面に適温の塗料液を送って冷却する意味からも、槽内攪拌が必要となる。
【0007】
一方、塗装工程の前工程である溶接工程では、車体パネルをスポット溶接やアーク溶接などにより接合して組み立てるので、スポット溶接時のスパッタ等の金属粉が自動車ボディに付着したまま塗装工程に搬入される。電着塗装工程の前処理工程では、このような異物を洗浄するために多段の洗浄工程が設けられているが、微細な金属粉や室内に付着した異物を完全に洗い落とすことはできない。
【0008】
こうした金属粉が電着槽内に持ち込まれると、これが自動車ボディの特に水平部などに再付着し、電着塗膜内に入りこんで塗膜欠陥を引き起こすことになる。このため、被塗面に付着しようとする金属粉などの異物を除去し、また濾過器により槽外へ排出する意味からも、槽内攪拌が利用されている。
【0009】
このように、顔料沈降の防止あるいは顔料分散の均一化、気泡や熱の除去および異物の付着防止などの諸観点から、電着槽内の攪拌が行われている。
【0010】
この種の槽内攪拌については、従来より特開平6-272091号公報、特開平6-272092号公報、特開平8-41687号公報等に記載された塗料循環方式が知られている。
【0011】
従来の塗料循環方式による槽内攪拌は図11に示すが、概ね以下のとおりである。
すなわち、同図に示されるように、被塗物である自動車ボディBは、ハンガHに搭載され、電着塗料液Lが投入された電着槽1内へ、オーバーヘッドコンベアCにより一定速度で搬入される。
【0012】
電着槽1における自動車ボディBは、約30°の角度で入槽し、3分以上の全没時間を確保して槽内を通過したのち、約30°の角度で出槽する。この間、カチオン型電着塗料では、電着槽1の側壁および底壁に配置された電極板(図示を省略する。)を介して、電着槽内の電着塗料Lに300V前後の直流電圧が印加され、これによりアース側であるボディBとの間で塗料粒子の電気泳動が生じ、ボディBの内外板や袋構造内面に電着塗膜が形成される。
【0013】
従来の槽内攪拌としては、大きく2つの循環系が設けられている。その一つは、電着槽1の出槽部(図において右端)に設けられたオーバーフロータンクTから塗料液Lを吸引し、濾過後にこれを槽内のノズル21から吐出する循環系2であり、他の一つは、電着槽1自体から塗料液Lを吸引し、濾過後に再び槽内のノズル31から吐出する循環系3である。図において二重矢印で示すように、何れの循環系2,3も、槽内に大きな塗料液Lの循環が生じるようにノズル21,31から吐出され、この大きな塗料液Lの循環によって槽内攪拌が行われる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電着塗装装置のように、表面流方向とボディBの移動方向とを同一方向とすると、ボディBによって持ち込まれたゴミが入槽部(図において左端)において電着槽1全体に拡がる傾向がきわめて強く、しかも、オーバーフロータンクTに至るまでの間、ボディBの移動にともなって浮遊するので、電着塗膜が形成される際にこうしたゴミが塗膜内に埋没するといった問題があった。
【0015】
また、表面流方向とボディBの移動方向とを同一方向とすると、上述した気泡や反応熱の除去効果を維持するためには、液流とボディBとの相対速度を一定以上に設定する必要があり、これにより攪拌に要するエネルギーが多大となるという問題もあった。しかも、電着槽1内の液流を高め過ぎると泡の巻き込みが生じ易くこれがボディBに付着するという問題もあって、液流を高めるにも上限があった。通常の自動車ボディの塗装ラインではコンベア速度が0.1m/sec、液流速度が0.2m/secであり、これにより相対速度は0.1m/secとなる。
【0016】
そこで、本願出願人は、電着槽内の液流方向をボディの移動方向に対して対向させるとともに、電着槽1の入槽側にオーバーフロータンクTを配置することを先に提案した(特開平11-200092号公報参照)。こうすることで、液流とボディとの相対速度が速くなり気泡や反応熱の除去効果が高まるとともに、ボディによって持ち込まれたゴミを入槽部からそのままオーバーフロータンクTへ排出することができる。
【0017】
ところが、この電着塗装装置では、設備を新規に設置する際には問題ないが、従来の順流方式の電着塗装装置を対向流方式に改造するには多大な設備費用を要し、現実的ではなかった。
【0018】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、既存設備を僅かに改造することで対向流式に変更できる浸漬型表面処理装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、請求項1記載の浸漬型表面処理装置は、処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、前記処理槽の入構側及び出棺側のそれぞれに設けられたオーバーフロー槽と、前記底面域の処理液の流れ方向の先端に形成され、流下した処理液の一部を集約するホッパーと、前記処理槽の処理液を一時的に移液するための移液タンクとを備え、前記第1及び第2の循環系の一方は、前記ホッパー及び前記一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、前記第1及び第2の循環系の一方を用いて前記処理槽の処理液を前記移液タンクへ移送し、前記処理槽の底壁の入槽側から出槽側に至る全体が、前記ホッパーが最下面となるように傾斜していることを特徴とする。
【0020】
(2)また、請求項2記載の浸漬型表面処理装置は、処理槽に満たされた処理液に被処理物である自動車ボディを浸漬する浸漬型表面処理装置において、前記処理槽のうち、液面から前記自動車ボディのルーフ近傍を流れる表面域及び前記自動車ボディの側面を流れる中間域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して対向する方向とするとともに、前記処理槽の側壁に設けられて前記中間域の処理液の流れを形成するライザーノズルを含む第1の循環系と、前記処理槽のうち、前記処理槽の底壁から前記自動車ボディの床面近傍を流れる底面域の処理液の流れを前記被処理物の移動方向に対して同一方向とする第2の循環系と、前記処理槽の入槽側に設けられたオーバーフロー槽と、前記処理槽の出槽側に設けられ、前記処理槽の前記底面域で連通するサクション槽とを備え、前記第1及び第2の循環系の一方は、前記サクション槽から処理液を吸引し、前記第1及び第2の循環系の他方は、前記オーバーフロー槽から処理液を吸引するとともに、
前記第1の循環系及び/又は前記第2の循環系に設けられたポンプが、竪型ポンプであることを特徴とする。
【0021】
この請求項1及び2記載の浸漬型表面処理装置では、被処理物が通過する表面域(液面から自動車ボディのルーフ近傍)及び中間域(自動車ボディの側面)の処理液の流れが被処理物の移動方向に対向しているので、液流と被処理物との相対速度を高めることができ、その結果金属粉などの異物の付着をより効果的に防止することができる。また、電着塗装装置に適用した場合には、被塗物表面で生じる気泡や熱を効果的に除去することができるとともに、内外板の電着付き廻り性の差が小さくなる。
【0022】
特に、被処理物が通過する表面域及び中間域の処理液の流れが被処理物の移動方向に対向しているのに対して、底面域(処理槽の底壁から自動車ボディの床面近傍)の塗料液の流れが被処理物の移動方向に対して同一方向となっているので、従来の表面処理装置の循環系の吹き出し方向を変更するだけで、従来の順流方式を対向流方式に改造することができる。
【0023】
また、第1の循環系が中間域の流れを形成するライザーノズルを含んでいるので、表面域の対向流と底面域の順流との間の中間域に生じがちな処理液の停滞を防止することができ、中間域についても被処理物と処理液との相対速度を高めることができる。
【0024】
(3)また、請求項1記載の発明では処理槽の入槽側、出槽側にオーバーフロー槽を設けているので、被処理物の入槽時に発生した気泡や持ち込まれた異物をそのままオーバーフロータンクへ流し出すことができ、これにより「ブツ」などの塗膜欠陥を減少させることができる。
【0025】
また、処理槽全体の液流を一の方向にするのではなく、処理槽内において処理液の循環がなされるので、大容量の処理槽にあっても、高能力あるいは多数の循環系を必要とせず、設備費やランニングコストの点においても有利となる。
【0026】
(4)さらに請求項1記載の浸漬型表面処理装置は、底面域の処理液の流れ方向の先端に、流下した処理液の一部を集約するホッパーが形成されているので、底面域を流下して異物を含んだ処理液の一部がホッパーに導かれ、ここに濾過器などを設けることで処理液に含まれた異物を系外へ排出することができる。本発明に係るホッパーは、異物を集約し易くする意味から、底面域の液流方向に対向し、かつ徐々に縮径する構造とすることが望ましい。
【0027】
(5)さらに請求項1記載の発明では、第1及び第2の循環系の一方は、ホッパー及び一方のオーバーフロー槽から処理液を吸引し、第1及び第2の循環系の他方は、他方のオーバーフロー槽から処理液を吸引する。
【0028】
(6)また、請求項1記載の発明では、前記処理槽の底壁を、前記ホッパーが最下面となるように傾斜させている。処理槽内をメンテナンスする際などにおいては、処理液を別途設けられたタンクに移液するが、本発明のようにホッパーが最下面となるように処理槽の底壁を傾斜させると、処理槽内の処理液を全て移液することができる。したがって、処理槽に残留した処理液を廃棄するといったコスト的無駄がなくなり、また残留した処理液が固まってゴミの原因となったりすることがなくなる。
【0029】
(7)請求項2記載の発明では、処理槽の出槽側に、処理槽の底面域で連通するサクション槽が設けられているので、被処理物の入槽時に発生した気泡や持ち込まれた異物が、底面域の連通路を介してサクション槽に集められ、ポンプの吸引力で処理槽から排出することができ、これにより「ブツ」などの塗膜欠陥を減少させることができる。
【0030】
また、請求項2記載の発明では処理槽の入槽側に、オーバーフロー槽が設けられている。処理液の対流化に伴って、処理液の表面泡や浮遊ゴミは流されて入槽側に集まってくることとなるが、入槽側にオーバーフロー槽を設けることにより、表面泡や浮遊ゴミをそのままオーバーフロータンクへ流し出すことができ、これにより「ブツ」などの塗膜欠陥を減少させることができる。また、オーバーフロー槽を入槽側のみに設けることとすれば、処理槽の液量の管理は、このオーバーフロー槽のみにおいて監視することができ、処理槽の液量の管理が容易となる。
【0031】
さらに、請求項2記載の発明では、第1の循環系及び/又は第2の循環系に設けられたポンプが、竪型ポンプであるため、ポンプ軸からの液漏れがあった場合でも、横型ポンプに比べて大きな問題とはならず、メンテナンスが容易であるという利点がある。
【0032】
(8)請求項3記載のように、非稼働時において、前記第1の循環系及び/又は前記第2の循環系に設けられたポンプに対し、稼働時に供給される電力とこの電力の40%〜70%の電力とを交互に繰り返し供給することもできる。
【0033】
非稼働時においては、ポンプなどの電力が必要とされるものはできる限り停止することが省エネの観点から好ましいが、第1又は第2の循環系を停止してしまうと処理液が沈降するので好ましくない。そこで本発明では、稼働時に供給される電力を間欠的に供給するとともに、それ以外はこの電力の40〜70%の電力を供給する。これにより、処理液の沈降防止を図りつつ最大限に省エネを達成することができる。
【0034】
(9)上述した本発明の浸漬型表面処理装置には、被処理物又は被塗物を全没させるフルディップ法と、被処理物又は被塗物の一部を浸漬するハーフディップ法とが含まれる。
また、本発明の浸漬型表面処理装置における表面処理には、脱脂処理、表面調整処理、化成処理などの前処理と、電着塗装とが含まれる。
【0035】
本発明の浸漬型表面処理装置は、自動車ボディ、自動車部品など、各種金属製部品の表面処理に適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理物が通過する表面域及び中間域の処理液の流れが被処理物の移動方向に対向しているので、液流と被処理物との相対速度を高めることができ、その結果金属粉などの異物の付着をより効果的に防止することができる。また、電着塗装装置に適用した場合には、被塗物表面で生じる気泡や熱を効果的に除去することができるとともに、内外板の電着付き廻り性の差が小さくなる。
【0037】
特に、被処理物が通過する表面域及び中間域の処理液の流れが被処理物の移動方向に対向しているのに対して、底面域の塗料液の流れが被処理物の移動方向に対して同一方向となっているので、従来の表面処理装置の循環系の吹き出し方向を変更するだけで、従来の順流方式を対向流方式に改造することができる。
また、処理槽の底壁をホッパーに向かって傾斜させることで、処理槽に収容された処理液の全量を移液タンクへ移送することができ、残留塗料を廃棄することがなくなる。さらに、移液タンクへの循環系は第1及び第2の循環系の一方を共用し、定常運転時においてこの循環系には常時処理液が循環しているので、配管内に塗料が沈降してゴミブツの原因となることを防止することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の浸漬型表面処理装置の第1の実施形態である電着塗装装置を示す断面図、図2は図1のII-II線に沿う断面図、図3は要部平面図、図4は電着付き廻り性能を測定するためのテストピースを示す斜視図及び断面図、図5は電着塗料液の相対速度に対する内外板付き廻り性の実験結果を示すグラフ、である。図6は、ゴミ消失時間、ゴミ排出割合、ボディ相対速度に関する実験結果を示す図表である。
【0039】
この第1の実施形態の電着塗装装置は、長い船状の電着槽(処理槽)1を有し、この電着槽1内に電着塗料液Lが満たされている。被塗物(被処理物)である自動車ボディBは、ハンガHに搭載された状態でオーバーヘッドコンベアCにより一定速度で搬入されるが、電着槽1内へボディBを全没させるために、オーバーヘッドコンベアCは、電着槽1の入槽側で約20°〜40°の下向き傾斜とされ、電着槽有効範囲においてはボディBが全没する高さを保ち、出槽側で約20°〜40°の上向き傾斜とされている。図1においては、図の左側が入槽側であり右側が出槽側である。
【0040】
電着槽有効範囲、つまりボディBが全没する範囲の電着槽1の長さは、3分以上の全没時間が確保されるように設定されている。ボディBが入槽されると、カチオン型電着塗料では、電着槽1の側壁および底壁に配置された電極板(図示を省略する。)を介して、電着塗料Lに300V前後の直流電圧が印加され、これによりアースされたボディBとの間で塗料粒子の電気泳動が生じ、ボディBの内外板や袋構造内面に電着塗膜が形成される。
【0041】
電着槽1の出槽側の外部には、オーバーフロー槽T1が設けられており、電着槽1とオーバーフロー槽T1との間の堰を越えた電着塗料液Lは当該オーバーフロー槽T1へ流入する。
【0042】
また、電着槽1の入槽側の外部にも、オーバーフロー槽T2が設けられており、電着槽1とオーバーフロー槽T2との間の堰を越えた電着塗料液Lは当該オーバーフロー槽T2へ流入する。このオーバーフロー槽T2を設けることで、ボディBに対向して流れてくる表面域の液流に含まれたゴミ等をそのままオーバーフロー槽T2へ導くことができる。
【0043】
ちなみに、図11にて説明したように、従来の順流方式の電着槽1では出槽側にオーバーフロー槽Tが設けられているので、こうした順流方式の電着槽を対向流方式の電着槽に改造する場合には、出槽側のオーバーフロー槽T1はそのまま流用することができ、入槽側のオーバーフロー槽T2のみを新設すれば足りる。
【0044】
電着槽1の出槽側の傾斜面の底面にはホッパー11が形成されており、このホッパー11は、図3の平面図に示されるように電着槽1の幅方向に2つ形成されている。このホッパー11は、後述する底面域を流下した電着塗料液Lの一部を集約するためのもので、その先端には塗料配管21が設けられている。底面域を流下した電着塗料液Lに含まれる金属粉などの異物の殆どは、自重および底面域からの液流の惰性力によってホッパー11側に導かれることになるので、ホッパー11を設けることでフィルタ27による濾過効果が大いに期待され、電着槽1に戻される電着塗料液Lは異物の混入が少ないものとなる。
【0045】
出槽側のオーバーフロー槽T1にも、塗料配管22が設けられ、先程のホッパー11に設けられた塗料配管22と接続されて、塗料配管25を構成する。このとき、ホッパー11を介して電着槽1から吸引する電着塗料液の量と、オーバーフロー槽T1から吸引する電着塗料液の量とを調節するために、それぞれの塗料配管21,22には流量調節弁23,24が設けられている。特に限定はされないが、たとえば電着槽1から60%、オーバーフロー槽T1から20%の電着塗料液を吸引し、残りの電着塗料液は後述する入槽側のオーバーフロー槽T2から吸引して電着槽1へ吐出する。
【0046】
塗料配管25には、吸引ポンプ26、フィルタ27、熱交換器28および複数のノズル29(簡略的に図1には1つのノズルを示す。)が設けられており、オーバーフロー槽T1及びホッパー11を介した電着槽1からの電着塗料液Lは、ポンプ26で吸引され、フィルタ27で濾過されたのち、熱交換器28で適切な温度に調節され、その一部は電着槽1の出槽側の底面近傍においてノズル29から出槽側へ向かって吐出する。また他の一部の電着塗料液Lは出槽側の側壁に設けられた複数のノズル36,37に導かれ、ここから電着槽1の入槽側に向かって吐出する。
【0047】
同様に、入槽側のオーバーフロー槽T2にも塗料配管31が設けられ、この塗料配管31に、吸引ポンプ32、フィルタ33、熱交換器34および複数のノズル35(簡略的に図1には1つのノズルを示す。)が設けられている。そして、オーバーフロー槽T2の電着塗料液Lは、ポンプ32で吸引され、フィルタ33で濾過されたのち、熱交換器34で適切な温度に調節され、その一部は電着槽1の入槽側の底面近傍においてノズル35から出槽側へ向かって吐出する。また他の一部の電着塗料液Lは入槽側の側壁に設けられた複数のノズル36,37に導かれ、ここから電着槽1の入槽側に向かって吐出する。
【0048】
図2に示すように、電着槽1の両側壁には、その長手方向に沿って複数本の保持パイプ38が固定されており、この保持パイプ38に前述したノズル36,37が取り付けられている。また同図に示すように、電着槽1の底壁にも、その長手方向に沿って複数本の保持パイプ39が固定されており、この保持パイプ39に既述したノズル29,35が取り付けられている。なお、図1においては、保持パイプ38,39及びノズル36,37は図示を省略してある。
【0049】
電着槽1の両側壁に配置されたノズル36は、電着塗料液Lの吐出方向が入槽側に沿うように設けられて、電着槽1の全体としての液流のうち、表面域を流れる入槽側へ向かう液流は、主としてこれらのノズル36からの吐出力によって生じることとなる。
【0050】
また、電着槽1の両側壁に配置されたノズル37は、電着塗料液Lの吐出方向が入槽側に沿うように設けられ、電着槽1の全体としての液流のうち、中間域を流れる入槽側へ向かう液流は、主としてこれらのノズル37からの吐出力によって生じることとなる。
【0051】
これに対して、電着槽1の底壁に配置されたノズル29,35は、電着塗料液Lの吐出方向が出槽側に沿うように設けられ、電着槽1の全体としての液流のうち、底面域を流れる出槽側へ向かう液流は、主としてこれらのノズル29,35からの吐出力によって生じることとなる。
【0052】
なお、図2に、本実施形態で言うところの表面域、中間域及び底面域を図示したが、これらの領域は厳密な境界を有する性質のものではなく、表面域とは液面からボディのルーフ近傍、中間域とはボディの側面、底面域とは底壁からボディの床面近傍をいうものである。
【0053】
次に作用を説明する。
ポンプ26を駆動し、ホッパー11から底面域を流下した電着塗料液Lとオーバーフロー槽T1の槽内の電着塗料液Lとを、流量調節弁23,24を所定の開度に調節することで吸引する。この電着塗料液Lは、フィルタ27によって濾過され、熱交換器28によって適切な温度に調節されたのち、複数のノズル29,36,37から電着槽1内へ吐出される。
【0054】
同様に、ポンプ32を駆動し、オーバーフロー槽T2から槽内の電着塗料液Lを吸引する。この電着塗料液Lは、フィルタ33によって濾過され、熱交換器34によって適切な温度に調節されたのち、複数のノズル35,36,37から電着槽1内へ吐出される。
【0055】
そして、電着槽1の底壁に設けられたノズル29,35からは、出槽側へ向かって電着塗料液Lが吐出される一方で、電着槽1の両側壁に設けられたノズル36,37からは、入槽側へ向かって電着塗料液Lが吐出されるので、これらの吐出力により、ボディBが通過する表面域及び中間域にボディBの移動方向に対向する方向の液流が生じ、ボディBの床下の底面域にボディBの移動方向と同方向の液流が生じる。
【0056】
液流は、まずボディBが通過する表面域及び中間域においては出槽側から入槽側へ向かう一の方向となり、底面域においては入槽側から出槽側へ向かう一の方向となり、電着槽1全体として一つの大きな構内循環流が生じることになる。
【0057】
この槽内循環流は、ボディBが通過する表面域及び中間域全体の液流が一の方向とされているので、電着有効領域において電着塗料液が滞留することのない適正な液流が確保される。これにより顔料沈降の防止あるいは顔料分散の均一化、気泡や熱の除去および異物の付着防止を達成することができる。さらに、表面域及び中間域の液流がボディBの対向流とされているので、ボディBに対する電着塗料液Lの相対速度を高めることができ、その結果、金属粉などの異物の付着をより効果的に防止することができる。また、ボディBの表面で生じる気泡や熱を効果的に除去することができるとともに、内外板の電着付き廻り性の差が小さくなる。
【0058】
また、電着槽1全体の液流を一の方向にするのではなく、電着槽1内において一つの大きな循環がなされるので、こうした電着槽1のように大容量の処理槽にあっても、高能力あるいは多数のポンプ、配管などからなる循環系を必要とせず、設備費やランニングコストの点においても有利となる。
【0059】
さらに、底面域の終端、すなわちホッパー11の部分では、電着塗料液Lに含まれた金属粉などが停滞し易くなり、これをそのままホッパー11で集約し、フィルタFで系外へ除去することができる。
【0060】
特に、本実施形態の電着塗装装置は、図11に示す従来の順流方式の電着塗装装置に対し、実質的にはノズルの向きと入槽側にオーバーフロー槽T2を設けるだけで実現できるので、既存設備を改造する費用、工期等に著しく有利である。
【0061】
ちなみに、被塗物Bと電着塗料液Lとの相対速度と電着付き廻り性との関係を検討した。図4に示すテストピース40は鉄製箱であり、その一面にφ8mmの電着付き廻り孔41が形成されている。また、箱の内部には等間隔で2枚の仕切り板42,43が設けられ、これらの仕切り板42,43にもそれぞれφ8mmの電着付き廻り孔44,45が形成されている。
【0062】
このテストピース40を、液温28℃の電着塗料液が満たされた電着槽内に3分間全没させ250Vの電圧(スロースタートを30秒実施)を印加して電着塗装を行った。テストピース40と電着塗料液との相対速度を種々に変更させながら複数のテストピース40に電着塗装を施し、図4(B)に示す外板a,bと袋構造内c,dの膜厚をそれぞれ測定し、その膜厚比cd/ab(%)を測定した。この結果を図5に示す。
【0063】
同図の結果からも明らかなように、相対流速が0.2m/sec以上あると内板(袋構造内)/外板の膜厚比が35%に近づき、外板の過膜厚と内板の膜厚不足が防止でき、コスト及び塗装品質の両面で理想的となる。また、0.2m/secを超えても膜厚比はさほど良好とはならない。
【0064】
さらに、第1の実施形態の浸漬型表面処理装置と従来の浸漬型表面処理装置とのゴミ消失時間(sec)、ゴミ排出割合(3分間)およびボディ相対流速(m/sec)とを比較し、検討した。この結果を図6に示す。
【0065】
ゴミ消失時間については、1/5大の実験設備を作製してゴミ消失(除去)のシミュレーションを行った。ゴミの代用として5mm径のプラスチックボール3000個を用い、このプラスチックボールを1/5大の実験設備の電着槽に投入し、電着槽から除去される時間(sec)を測定した。
実験の結果、従来の表面処理装置では、10分以上経過してもゴミは除去されなかったのに対し、本願発明の第1の実施形態の表面処理装置では、140秒で除去できた。これにより、プラスチックボールのように電着塗装液の表面に浮遊する表面泡や比重の軽いゴミは、第1の実施形態の表面処理装置を用いて短時間で除去できることがわかった。
【0066】
ゴミ排出時間については、上述したゴミ消失時間と同様に、1/5大の実験装置にてシミュレーションを行った。ゴミの代用として鉄粉ゴミを用い、この鉄粉ゴミ30gを電着槽に投入し、3分経過後、電着塗装液の循環経路に設けた金網フィルターに捕集される鉄粉量から、捕集率を算出した。
実験の結果、従来の表面処理装置では、57.1%の鉄粉ゴミが排出されたのに対し、本願発明の第1の実施形態の表面処理装置では、97.2%の鉄粉ゴミが排出された。これにより、鉄粉のように処理液の底面に沈降する金属ゴミ等は、第1の実施形態の表面処理装置を用いれば除去できることがわかった。
【0067】
また、ボディ相対流速(m/sec)を測定した結果、従来の表面処理装置の相対流速は、0.1m/secであったのに対し、本願発明の第1の実施形態の表面処理装置の相対速度は、0.24m/secであった。これは、電着槽1の底部のライザーの向きの変化による対向硫化と、サイドライザーの追加による対向硫化とに起因するものである。これにより、ボディ相対速度の向上が図られ、ボディの内板/外板へ塗着する電着塗膜の厚さのバランスが改善され、塗料利用量を節約することが期待できる。
【0068】
これらの検討結果に基づき、総合評価を行った。従来の浸漬型表面処理装置は、ゴミ消失時間が長く、ゴミ排出割合が低く、ボディ相対速度も低いため、不良(×)と総合評価した。一方、第1の実施形態は、ゴミ消失時間が短く、ゴミ排出割合が高く、ボディ相対流速が早いため、良好(○)との総合評価をした。
【0069】
第2実施形態
以下、第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図7は、第2の実施形態である電着塗装装置を示す断面図である。この第2の実施形態は、電着槽1の電着塗料液LをボディBの進行方向と逆にする(対向流とする)点で、第1の実施形態と共通する。第2の実施形態が、第1の実施形態と異なる点は、処理槽1の出槽側に、電着槽1の底面域には、ホッパー11を設け、このホッパー11を介して電着槽1と連通するサクション槽T3が設けられ、さらに、このサクション槽には、竪型ポンプ26’が設けられている点である。
【0070】
これに伴い、サクション槽T3と電着槽1との堰を高くして、電着槽1とサクション槽T3とが上面で連通しないようにしている。なお、第2の実施形態における、ボディBの電着作用、及び電着塗料液Lの循環等は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
この実施形態における特徴的な作用は、電着槽1の底面域に設けられた、ホッパー11によって、電着槽1中のゴミ(主に金属ゴミ等の比重の大きいゴミ)が、電着槽1と連通するサクション槽T3に集められることとなる。ここに集まった、電着塗料液Lは竪型ポンプ26’に吸引され、第1の実施形態と同様にフィルターFを通過して電着槽1に還流される。
【0072】
特に、この実施形態によれば、サクション槽に集まった鉄粉等のゴミを多く含む電着塗料液Lをポンプ26’で吸引することとなり、ゴミを効率良く除去することができる。
【0073】
また、電着槽1と底面域で連通しているサクション槽T3とは、電着塗料液面で連通させる必要がない。このため、両槽の堰を高くしている。よって、電着槽1の電着塗料液の液面は、入槽側のオーバーフロー槽T2とのみ連絡することとなる。その結果、電着塗料液Lの液量は、入槽側のオーバーフロー槽T2の液面だけを監視すれば調節ができ、電着塗料液Lの液量の管理が容易になる。
【0074】
そして、電着槽1の対流化に伴って、電着液Lの表面泡や浮遊ゴミは、流されて入槽側に集まり、オーバーフロー槽T2に流れ込むこととなる。このオーバーフロー槽T2に流れ込んだ電着塗料液Lをろ過することで、表面泡や浮遊ゴミといった比重の低いゴミを効率良く捕集することができる。
【0075】
特に、第2の実施形態の電着塗装装置も第1の実施形態と同様に、図11に示す従来の順流方式の電着塗装装置に対し、実質的にはノズルの向きと入槽側にオーバーフロー槽T2を設けるだけで実現できるので、竪型ポンプを採用した既存設備を改造する費用、工期等に著しく有利である。
【0076】
さらに、第2の実施形態の浸漬型表面処理装置と従来の浸漬型表面処理装置とのゴミ消失時間(sec)、ゴミ排出割合(3分間)およびボディ相対流速(m/sec)とを比較し、検討した。この結果を図8に示す。実験の方法は、第1の実施形態と同様である。
【0077】
実験の結果、ゴミ消失時間は、従来の表面処理装置では、10分以上経過してもゴミは除去されなかったのに対し、本発明の第2の実施形態の表面処理装置では、140秒で除去できた。
【0078】
また、ゴミ排出割合については、従来の表面処理装置では、57.1%の鉄粉ゴミが排出されたのに対し、本発明の第2の実施形態の表面処理装置では、97.2%の鉄粉ゴミが排出された。
【0079】
さらに、ボディ相対流速(m/sec)を測定した結果、従来の表面処理装置の相対流速は、0.1m/secであったのに対し、本発明の第2の実施形態の表面処理装置の相対速度は、0.24m/secであった。
【0080】
これらの検討結果に基づき、総合評価を行った。従来の浸漬型表面処理装置は、ゴミ消失時間が長く、ゴミ排出割合が低く、ボディ相対速度も低いため、不良(×)と総合評価した。一方、本第2の実施形態は、ゴミ消失時間が短く、ゴミ排出割合が高く、ボディ相対流速が早いため、良好(○)との総合評価をした。
【0081】
このように、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の実験結果が得られた。これにより、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用により、同様の効果が得られることがわかった。
【0082】
第3の実施形態
図9は、第3の実施形態である電着塗装装置を示す断面図である。この第3の実施形態は、電着槽1の電着塗料液LをボディBの進行方向と逆にする(対向流とする)点で、第1および第2の実施形態と共通する。第3の実施形態が、第1および第2の実施形態と異なる点は、電着槽1の底壁を、ホッパー11が最下面となるように、入槽側から出槽側に向かって鉛直下向きに傾斜させた点である(同図に傾斜角αにて示す)。また、電着槽1そのものやライザーなどの各種機器を清掃、保守する際に、電着塗料液Lを一時的に移液するための移液タンク5が設けられ、さらに塗料配管25のポンプ26とフィルタ27との間に分岐塗料配管25aが設けられている。この分岐塗料配管25aには、開閉弁25bが設けられ、この開閉弁25bを開くことで電着槽1内の電着塗料液Lを移液タンク5へ移送することができる。
【0083】
このように電着槽1の底壁をホッパー11に向かって傾斜させることで、電着槽1に収容された電着塗料液Lの全量を移液タンク5へ移送することができ、残留塗料を廃棄することがなくなる。
【0084】
また、本例では、移液タンク5への循環系は塗料配管25を共用し、定常運転時においてこの塗料配管25には常時電着塗料液Lが循環しているので、配管内に塗料が沈降してゴミブツの原因となることを防止することができる。
【0085】
なお、電着槽1の底壁の傾斜は、同図に示すように入槽側から出槽側に至る全体を傾斜させなくても、底壁の一部を傾斜させても良い。
【0086】
他の実施形態
図10は本発明に係るポンプの駆動例を示すグラフである。このポンプは図1に示す例で言えばポンプ26および/またはポンプ32に相当する。塗装ラインの表面処理装置では、ボディなどのワークが処理槽内へ搬入されていない場合はできる限り省エネ運転することが望ましいが、電着塗料液Lなどのように沈降しやすい処理液を取り扱う装置においては沈降防止をも考慮する必要がある。
【0087】
そこで、本例では、表面処理装置が非稼働時、つまりワークが搬入されていないときは、サイクルタイムをt2として稼働時と同じ電力W1をポンプに供給する。そして、それ以外の時間は、稼働時に供給される電力W1のたとえば70%〜40%程度の電力W2をポンプに供給する。ここで電着塗料液を例に取ると、稼働時と同じ電力W1を供給する時間t1は、たとえば30秒〜60秒、サイクルタイムt2は、たとえば30分〜60分である。
【0088】
これにより、処理槽内の処理液はサイクルタイムt2の間隔で稼働時と同じ循環量となり、それ以外の時間は70%〜40%の循環量で循環する。この結果、処理液の沈降が効率よく防止され、しかも30%〜60%の省エネを達成することができる。
【0089】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0090】
たとえば、入槽側に設けたオーバーフロー槽T2の液面低下を防止するために、図1に示すような連通管12を当該オーバーフロー槽T2と電着槽1との間に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浸漬型表面処理装置の第1の実施形態である電着塗装装置を示す断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す電着塗装装置の要部平面図である。
【図4】電着付き廻り性能を測定するためのテストピースを示す斜視図及び断面図である。
【図5】電着塗料液の相対速度に対する内外板付き廻り性の実験結果を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態のゴミ消失時間、ゴミ排出割合、ボディ相対速度に関する実験結果を示す図表である。
【図7】本発明の浸漬型表面処理装置の第2の実施形態である電着塗装装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のゴミ消失時間、ゴミ排出割合、ボディ相対速度に関する実験結果を示す図表である。
【図9】本発明の浸漬型表面処理装置の第3の実施形態である電着塗装装置を示す断面図である。
【図10】本発明の浸漬型表面処理装置に用いられるポンプの駆動例を示すグラフである。
【図11】従来の電着塗装装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1…電着槽
11…ホッパー
T1,T2…オーバーフロー槽
T3…サクション槽
L…電着塗料液
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-12-06 
出願番号 特願2001-36692(P2001-36692)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C25D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 日比野 隆治  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 酒井 美知子
吉水 純子
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3416122号(P3416122)
権利者 日産自動車株式会社 株式会社大気社
発明の名称 浸漬型表面処理装置  
代理人 前田 均  
代理人 前田 均  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 西出 眞吾  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 坂口 嘉彦  
代理人 西出 眞吾  
代理人 前田 均  
代理人 西出 眞吾  

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