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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1136211
異議申立番号 異議2003-73304  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-24 
確定日 2006-04-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3449958号「印刷システム、印刷方法および印刷プログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記録媒体」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3449958号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第3449958号の請求項1ないし6に係る発明についての出願は、平成12年1月18日に出願され、平成15年7月11日に設定登録され、その後、特許異議申立人山口十四治より特許異議の申立てがなされため、特許の取消しの理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。

2 本件発明
本件特許第3449958号の請求項1ないし6に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】 ネットワークに接続した複数のプリンタの中から所望のプリンタを選択し、選択したプリンタにおいて印刷処理を行う印刷システムにおいて、印刷開始時に起動され、前記複数のプリンタの中から印刷データの印刷に最適なプリンタのプリンタドライバを選択し、選択した前記プリンタドライバを起動して対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる仮想プリンタドライバを備え、
前記仮想プリンタドライバは、
印刷処理をカラー又はモノクロで行うかの別、印刷枚数、印刷用紙サイズ、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法、アプリケーションの種類、および解像度を含む印刷データの各プロパティについて優先順位を設定し、印刷データのプリンタ毎の印刷条件を設定し、設定した各プロパティの優先順位とプリンタ毎の印刷条件を記憶する印刷条件記憶部と、
前記印刷データの各プロパティの優先順位が高い順に前記プリンタ毎の印刷条件に合致するプリンタのプリンタドライバを選択するプリンタドライバ選択部と、
選択されたプリンタドライバに対応するプリンタの状況を判別する状況判別部とを備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】 前記プリンタドライバ選択部は、選択した前記プリンタドライバに対応するプリンタの状況がビジー又はエラーである時には前記対処方法に従ってプリンタドライバを選択することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】 ネットワークに接続した複数のプリンタの中から所望のプリンタを選択し、選択したプリンタにおいて印刷処理を行う印刷システムにおいて、印刷開始時に起動され、前記複数のプリンタの中から印刷データの印刷に最適なプリンタのプリンタドライバを選択し、選択した前記プリンタドライバを起動して対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる仮想プリンタドライバによる印刷方法であって、
印刷処理をカラー又はモノクロで行うかの別、印刷枚数、印刷用紙サイズ、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法、アプリケーションの種類、および解像度を含む印刷データの各プロパティについて優先順位を設定し、印刷データのプリンタ毎の印刷条件を設定し、設定した各プロパティの優先順位とプリンタ毎の印刷条件を印刷条件記憶部に記憶しておくステップと、
印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力するステップと、
前記印刷データの各プロパティの優先順位が高い順に前記プリンタ毎の印刷条件に合致するプリンタのプリンタドライバを選択するステップと、
選択した前記プリンタドライバを起動し対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させるステップとを有することを特徴とする印刷方法。
【請求項4】 前記プリンタドライバを選択するステップにおいて、選択した前記プリンタドライバに対応するプリンタの状況を判別し、ビジー又はエラーである時には前記対処方法に従ってプリンタドライバを選択することを特徴とする請求項3に記載の印刷方法。
【請求項5】 ネットワークに接続した複数のプリンタの中から所望のプリンタを選択し、選択したプリンタにおいて印刷処理を行う印刷システムにおいて、印刷開始時に起動され、前記複数のプリンタの中から印刷データの印刷に最適なプリンタのプリンタドライバを選択し、選択した前記プリンタドライバを起動して対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる仮想プリンタドライバプログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記録媒体であって、
印刷処理をカラー又はモノクロで行うかの別、印刷枚数、印刷用紙サイズ、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法、アプリケーションの種類、および解像度を含む印刷データの各プロパティについて優先順位を設定し、印刷データのプリンタ毎の印刷条件を設定し、設定した各プロパティの優先順位とプリンタ毎の印刷条件を印刷条件記憶部に記憶しておくステップと、
印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力する処理と、
前記印刷データの各プロパティの優先順位が高い順に前記プリンタ毎の印刷条件に合致するプリンタのプリンタドライバを選択する処理と、
選択した前記プリンタドライバを起動し対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる処理とを含み、
これらの処理をコンピュータに実行させることを特徴とする仮想プリンタドライバプログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項6】 前記プリンタドライバを選択する処理において、選択した前記プリンタドライバに対応するプリンタの状況を判別し、ビジー又はエラーである時には前記対処方法に従ってプリンタドライバを選択することを特徴とする請求項5に記載の仮想プリンタドライバプログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記録媒体。

3 刊行物記載の発明
当審が通知した特許の取消しの理由に引用された特開平11-53142号公報(特許異議申立人山口十四治の提出した甲第1号証)(以下、「刊行物1」という。)には、次のような記載がある。

【0015】
【発明の実施の形態】次に添付図面を参照して本発明のネットワークプリント装置の実施の形態を詳細に説明する。図1から図3を参照すると本発明のネットワークプリント装置の実施形態が示されている。
【0016】<第1の実施形態>図1は本発明のネットワークプリント装置の実施形態の構成を示す構成図である。図1において1はプリント制御部、2はネットワークプリンタ群である。プリント制御部は通常のパーソナルコンピュータをベースに構築されている。またプリント制御部とネットワークプリント部とはネットワーク接続されており、プリント制御部はネットワークI/Fを持ち、ネットワークプリンタと通信が可能である。またネットワークプリンタはTPC/IPプリンタなどであり、ネットワークで接続されたプリント制御部に自身の機能を示す機能パラメータをネットワークにより通知することができる。通知方法は通常のプロトコルに従って実施されるものとする。
【0017】図2はプリント制御部1からネットワークインターフェースを経由して選択されたネットワークプリンタに印刷データが出力される様子を示している。尚、プリンタの機能パラメータの送出時には逆の流れとなる。
【0018】次に、ネットワークにつながれた複数のプリンタの各プリンタ毎の機能、例えば、カラー印刷可能、印刷可能な用紙のサイズや枚数、高速印刷可能などの印刷性能、ソーティング可能、ユーザーからの距離等、をネットワークに通知する手段について説明する。
【0019】これは各プリンタが備えている機能を予めプリンタ内部に格納し、プリント制御部の問い合わせに応じてレスポンスを返すものとする。尚、プリンタの備えている機能を格納する手段としては、ROMを用いてもよいし、ファイルとして記憶装置に格納しても構わないものとする。
【0020】次にネットワークに通知するプリンタの備えた機能の一例を示す。本実施形態では以下のようなフォーマットを想定している。
カラー モノクロ
印刷方式 レーザー
モデル名 NX100
バージョン 1.10
搭載フォント 明朝,ゴシック
エミュレーション RPDL
IPアドレス 133.139.153.122
MACアドレス 0:a0:92:58:3:86
プリンタ名称 経理部のプリンタ1号
印刷可能サイズ はがき,B5,A4,B4,A3
最大給紙枚数 1000
残り給紙枚数 200
印刷性能 20PPM
オプション ソータ
レイアウト 5階中央
【0021】尚、この情報はプリント制御部で解析されるので、上記例は便宜上文字で記述したが実際は数字や識別コードなどを使用することとなる。
【0022】次にプリント命令を解析して印刷文書属性を判定する方法について説明する。尚、印刷文書属性とは、印刷する色、印刷する用紙のサイズや枚数、ユーザが図示しない入力部により設定する再生紙出力指定、高速出力指定、低価格出力指定等である。
【0023】プリント命令はプリント制御部1内の図示しないCPUにより解析される。尚、本実施形態のプリント命令は印刷情報と制御情報から成立している。印刷情報は文字/図形/絵などの命令が集合したものであり、色も含まれるいわゆるオペレータが見ている文書情報である。
【0024】制御情報とは用紙サイズ、解像度、変倍率、部数、印刷頁数など、印刷に際してオペレータが指定した情報である。制御情報の項目はそのプリント環境に依存する。本発明ではオペレータの抽象的な要求をプリント制御部が受け取り実行することを考えているので制御情報に「高速印刷指定」「低価格指定」などという情報が含まれることもある。
【0025】プリント制御部内のCPUは印刷情報の解析結果及び制御情報からプリンタ選択に必要な「色数」「印刷頁数」「高速印刷」などの印刷文書属性を導き出す。印刷文書属性はメモリに格納してもよいしHDD(HARD DISK DRIVE)へ格納しても構わない。
【0026】次に印刷文書属性とプリンタ機能及びプリンタを対応付ける手段について説明する。プリント制御部1は解析した印刷文書属性と送られてきたプリンタの機能から1つ(あるいは複数)のプリンタを選択する。選択方法は、単純な比較テーブルでも構わないし、各条件に重みを付け数値処理して決定する手法でも構わないものとする。尚、以下では機能テーブルを用いたプリンタの選択方法について説明する。
【0027】まずプリント制御部が印刷文書属性の各項目を参照するときの優先順位を設定しておく。この優先順位は使用者の都合に合わせて随時変更可能であるものとする。尚、以下では、「フルカラー(色数)」「100頁(頁数)」「高速印刷指定(印刷モード)」の順に優先順位が付けられたものと仮定して説明する。
【0028】プリント制御部1はネットワークを通じて送られてきた各プリンタの機能を表すパラメータを図示しないRAM等のメモリに格納して上記で設定した印刷文書属性の優先度の高い順に参照していく。尚、各プリンタから送られてきたプリンタを選択するためのプリンタ機能パラメータをまとめた機能テーブルの一例を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】上記の機能テーブルと印刷文書属性の優先順位に従ったプリンタの選択について説明する。プリント制御部1は印刷文書の属性を優先度の高い方から順に参照する。属性の「フルカラー」で参照した時点でモノクロプリンタは候補から外れる。次の「100頁」で参照すると給紙枚数100頁未満のプリンタは候補から外れる。
【0031】この時点でプリンタ3、5が残る。最後の「高速印刷指定」により印刷性の高いプリンタ3が選択される。このようにして印刷を行うプリンタを決定する。
【0061】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明のネットワークプリント装置によれば、プリント制御部がプリント命令を解析して印刷文書属性を判定し、印刷文書属性とプリンタ機能及びプリンタを対応付ける手段によって印刷文書属性に適したプリンタを選択し、文書に最適な印刷を行うことにより文書の性質(属性)に応じたプリンタを選択することができ、利便性が向上する。さらに高価な紙と安価な紙を用途に応じて使い分けるなどコスト効果のある印刷が可能になる。

また、表1には、色(モノクロ、カラー)、最大サイズ(A3)、給紙枚数(100、500、1000)、印刷性能(5、10、15、20、30)、消費電力(150、200、300、400)というプリンタ機能パラメータが示されている。

以上の記載によれば、刊行物1には、次のような発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が開示されていると認められる。

通常のパーソナルコンピュータをベースに構築されているプリント制御部1とネットワークプリント群2とがネットワーク接続され、プリント制御部1がプリント命令を解析して印刷文書属性を判定し、プリンタから送られてきたプリンタを選択するためのプリンタ機能パラメータをまとめた機能テーブルを用いて、印刷文書属性に適したプリンタを選択することができるネットワークプリント装置において、
プリント制御部1内のCPUにより解析されるプリント命令は、印刷情報と制御情報から成り、
印刷情報は、文字/図形/絵などの命令が集合したものであり、色も含まれるいわゆるオペレータが見ている文書情報であり、
制御情報は、用紙サイズ、解像度、変倍率、部数、印刷頁数など、印刷に際してオペレータが指定した情報であり、「高速印刷指定」「低価格指定」などというオペレータの抽象的な要求が含まれることもあり、
プリント制御部内のCPUは、印刷情報の解析結果及び制御情報からプリンタ選択に必要な、印刷する色、印刷する用紙のサイズや枚数等の印刷文書属性を導き出し、メモリに格納し、
プリント制御部1が印刷文書属性の各項目を参照するときの優先順位(この優先順位は使用者の都合に合わせて随時変更可能であるものとする。尚、以下では、「フルカラー(色数)」「100頁(頁数)」「高速印刷指定(印刷モード)」の順に優先順位が付けられたものと仮定して説明する。)を設定しておき、
プリント制御部1はネットワークを通じて送られてきた各プリンタの機能を表す色(モノクロ、カラー)、最大サイズ(A3)、給紙枚数(100、500、1000)、印刷性能(5、10、15、20、30)、消費電力(150、200、300、400)というプリンタ機能パラメータをまとめた機能テーブルをRAM等のメモリに格納して上記で設定した印刷文書属性の優先度の高い方から順に参照し、属性の「フルカラー」で参照した時点でモノクロプリンタは候補から外れ、次の「100頁」で参照すると給紙枚数100頁未満のプリンタは候補から外れ、残ったプリンタ3、5のうち、最後の「高速印刷指定」により印刷性の高いプリンタ3が選択されるようにして印刷を行うプリンタを決定するネットワークプリント装置。

また、当審が通知した特許の取消しの理由に引用された特開平10-340165号公報(特許異議申立人山口十四治の提出した甲第2号証)(以下、「刊行物2」という。)には、次のような記載がある。

【0026】図1は、本発明の好適な実施の形態に係るプリンタシステムの構成を示す図である。このシステムは、コンピュータ100と複数のプリンタ201〜203とを接続してなる。
【0027】コンピュータ100は、印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部(例えば、アプリケーションプログラム)110、キーボード等の入力部120、プリンタドライバ130を有する。
【0028】プリンタドライバ130は、複数のプリンタ201〜203の夫々と接続するプリンタI/F132〜134と、印刷ジョブ生成部110から供給される印刷ジョブ情報、入力部120を介して操作者から与えられるプリンタの選択条件情報、各プリンタの機能に関するプリンタ情報131a、各プリンタに割当てられた印刷ジョブの実行状況等のうち必要な情報に基づいて、印刷ジョブを実行させるプリンタを選択するプリンタ選択部131とを有する。
【0029】ここで、印刷ジョブ情報とは、例えば、当該印刷ジョブに係る総ページ数、ファイルサイズ、用紙サイズその他の、プリンタを選択するために考慮する印刷ジョブに関する情報をいう。
【0030】また、選択条件情報とは、プリンタを選択するために考慮する条件であって操作者が指定するものをいう。この選択条件としては、例えば、最も短時間に印刷ジョブの実行が完了するプリンタであること、カラー印刷が可能なプリンタであること、両面印刷が可能なプリンタであること、印刷ジョブによって指定される用紙サイズを使用可能なプリンタであることなどが挙げられる。
【0031】また、プリンタ情報131aは、例えばプリンタ選択部131等の内部に予め設定しても良いし、例えばシステムの起動の際にプリンタドライバ130が各プリンタI/Fを介して各プリンタより取得しても良いし、他の手段により準備しても良い。プリンタ情報131aとしては、例えば、プリンタの製品名、メーカ名、印刷方式(例えば、インクジェット方式、電子写真方式)、カラー印刷機能の有無、両面印刷機能の有無、印刷速度(例えば、ページ当たりの印刷時間)と、印刷可能な用紙サイズ、解像度、解釈可能なページ記述言語等が挙げられる。
【0032】図2は、図1に示すシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータ100は、CPU151と、RAM152と、プログラムメモリ153と、ハードディスク(HD)154と、ディスプレイ155と、キーボード156と、ネットワークI/F157とをCPUバス158により接続してなる。
【0033】プログラムメモリ153には、コンピュータ100を、印刷ジョブ生成部110、入力部120及びプリンタドライバ130を備える装置として動作させるためのプログラム153aが格納されている。このプログラムメモリ153は、フロッピーディスク、ハードディスク、CD-ROMその他のメモリ媒体で構成することができ、プログラム153aを格納したプログラムメモリ153自体が法上の発明を構成する。
【0034】ハードディスク154には、前述のプリンタ情報131aが保持されている。なお、前述のように、プリンタ情報131aは、例えば、システムの起動時等にネットワークI/F157を介して各プリンタより取得する形態も有効である。
【0035】ここで、図1に示す構成要素と図2に示す構成要素との対応関係を示すと次のようになる。すなわち、印刷ジョブ生成部110はプログラム153aに、入力部120はキーボード156及びプログラム153aに、プリンタドライバ130のプリンタ選択部131はプログラム153aに、プリンタI/F132〜134はネットワークI/F157及びプログラム153aに対応する。ここで、ネットワークI/F157は、ネットワークケーブル210に接続された複数のプリンタ201〜203を夫々のアドレスにより特定し、これにより論理的に複数のプリンタI/F132〜134を構成している。
【0036】次に、プログラム153aに基づくコンピュータ100の印刷処理に関する動作を説明する。図3は、プログラム153aに基づく印刷処理の流れを示すフローチャートである。この印刷処理は、例えば不図示のアプリケーションプログラムより印刷要求が発行されることにより起動される。
【0037】先ず、ステップS100では、印刷要求に基づいて印刷ジョブを生成する。具体的には、この印刷ジョブの生成では、アプリケーションプログラムにより指定された解像度、用紙サイズ等に適合したPDLデータ等の印刷情報の他、その印刷ジョブに係る総ページ数、ファイルサイズ、用紙サイズその他の、プリンタを選択するために考慮する印刷ジョブ情報が生成される。
【0038】ステップS110では、ステップS100において生成された印刷ジョブ情報を取得する。具体的には、例えば、ステップS100において生成された印刷ジョブ情報をRAM152上の所定領域(ステップS140において参照する領域)にコピーする。
【0039】ステップS120では、キーボード156より選択条件情報を取得する。具体的には、例えば、ディスプレイ155に選択条件情報の入力を促すメッセージを表示し、これに応答して操作者により入力される情報を選択条件情報として取り込み、RAM152上の所定領域に格納する。
【0040】ここで、操作者が指定可能な選択条件は、複数のプリンタ201〜203の少なくとも1つが該選択条件を満たす範囲に制限することが望ましい。これにより、ステップS140において、プリンタを選択する際に、選択条件を満たすプリンタが存在しないこととなる事態を回避することができる。このような制限を設ける方法としては、例えば選択可能な選択条件のみをディスプレイ155に表示し、その中から操作者に所望の選択条件を決定させる方法が好ましい。
【0041】ステップS130では、プリンタ情報を取得する。具体的には、例えば、ハードディスク154に格納されたプリンタ情報131aをRAM152上の所定領域にコピーする。
【0042】ステップS140では、RAM152上の所定領域に保持された印刷ジョブ情報、選択条件情報及びプリンタ情報の他、必要に応じて印刷ジョブの実行状況をも踏まえて、印刷ジョブを実行するプリンタを選択する。なお、このステップで、ネットワークケーブル210に接続された各プリンタ201〜203の動作状態をネットワークI/F157を介して確認し、例えば選択したプリンタが動作不能の状態にある場合には、当該プリンタを除くプリンタの中から当該印刷ジョブを実行するプリンタを決定し直すことが好ましい。

以上の記載によれば、刊行物2には、次のような発明(以下、「刊行物2記載発明」という。)が開示されていると認められる。

コンピュータ100と複数のプリンタ201〜203とを接続してなるプリンタシステムにおいて、
コンピュータ100は、印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部(例えば、アプリケーションプログラム)110、キーボード等の入力部120、プリンタドライバ130を有し、
プリンタドライバ130は、複数のプリンタ201〜203の夫々と接続するプリンタI/F132〜134と、印刷ジョブ生成部110から供給される印刷ジョブ情報(例えば、当該印刷ジョブに係る総ページ数、ファイルサイズ、用紙サイズその他の、プリンタを選択するために考慮する印刷ジョブに関する情報)、入力部120を介して操作者から与えられるプリンタの選択条件情報(例えば、最も短時間に印刷ジョブの実行が完了するプリンタであること、カラー印刷が可能なプリンタであること、両面印刷が可能なプリンタであること、印刷ジョブによって指定される用紙サイズを使用可能なプリンタであることなど)、各プリンタの機能に関するプリンタ情報131a(例えば、プリンタの製品名、メーカ名、印刷方式(例えば、インクジェット方式、電子写真方式)、カラー印刷機能の有無、両面印刷機能の有無、印刷速度(例えば、ページ当たりの印刷時間)と、印刷可能な用紙サイズ、解像度、解釈可能なページ記述言語等)、各プリンタに割当てられた印刷ジョブの実行状況等のうち必要な情報に基づいて、印刷ジョブを実行させるプリンタを選択するプリンタ選択部131とを有し、
RAM152上の所定領域に保持された印刷ジョブ情報、選択条件情報及びプリンタ情報の他、必要に応じて印刷ジョブの実行状況をも踏まえて、印刷ジョブを実行するプリンタを選択し、
ネットワークケーブル210に接続された各プリンタ201〜203の動作状態をネットワークI/F157を介して確認し、例えば選択したプリンタが動作不能の状態にある場合には、当該プリンタを除くプリンタの中から当該印刷ジョブを実行するプリンタを決定し直すプリンタシステム。

4 本件発明1について
(1)本件発明1と刊行物1記載発明との対比
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と刊行物1記載発明とを対比すると、刊行物1記載発明の「ネットワークプリント群2」、「ネットワークプリント装置」、「印刷する色、印刷する用紙のサイズや枚数」、「印刷文書属性」、「プリント制御部1が印刷文書属性の各項目を参照するときの優先順位」、「各プリンタの機能を表すプリンタ機能パラメータ」は、それぞれ、本件発明1の「ネットワークに接続した複数のプリンタ」、「印刷システム」、「印刷処理をカラー又はモノクロで行うかの別、印刷枚数、印刷用紙サイズ」、「印刷データの各プロパティ」、「各プロパティの優先順位」、「プリンタ毎の印刷条件」に相当する。
また、刊行物1記載発明のプリント制御部1は、ネットワークを通じて送られてきた各プリンタの機能を表すプリンタ機能パラメータをまとめた機能テーブルをRAM等のメモリに格納し、プリント制御部1が印刷文書属性の各項目を参照するときの優先順位を設定しているから、プリンタ機能パラメータと印刷文書属性の各項目を参照するときの優先順位を記憶する記憶部を有していることは明らかであり、そのような記憶部は、本件発明1の「設定した各プロパティの優先順位とプリンタ毎の印刷条件を記憶する印刷条件記憶部」に相当する。
また、刊行物1記載発明において、プリント制御部1はネットワークを通じて送られてきた各プリンタの機能を表すパラメータをまとめた機能テーブルをRAM等のメモリに格納して上記で設定した印刷文書属性の優先度の高い方から順に参照し、属性の「フルカラー」で参照した時点でモノクロプリンタは候補から外れ、次の「100頁」で参照すると給紙枚数100頁未満のプリンタは候補から外れ、残ったプリンタ3、5のうち、最後の「高速印刷指定」により印刷性の高いプリンタ3が選択されるようにして印刷を行うプリンタを決定するから、刊行物1記載発明は、ネットワークに接続した複数のプリンタの中から所望のプリンタを選択し、選択したプリンタにおいて印刷処理を行う印刷システムである。
したがって、両者は、ネットワークに接続した複数のプリンタの中から所望のプリンタを選択し、選択したプリンタにおいて印刷処理を行う印刷システムにおいて、印刷処理を印刷データの各プロパティについて優先順位を設定し、印刷データのプリンタ毎の印刷条件を設定し、設定した各プロパティの優先順位とプリンタ毎の印刷条件を記憶する印刷条件記憶部とを備え、印刷データの各プロパティの優先順位が高い順に前記プリンタ毎の印刷条件に合致するプリンタを選択する印刷システムである点で一致し、以下の相違点1、2について相違する。

相違点1
本件発明1では、印刷開始時に起動され、複数のプリンタの中から印刷データの印刷に最適なプリンタのプリンタドライバを選択し、選択した前記プリンタドライバを起動して対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる仮想プリンタドライバを備え、仮想プリンタドライバが、前記印刷データの各プロパティの優先順位が高い順に前記プリンタ毎の印刷条件に合致するプリンタのプリンタドライバを選択するプリンタドライバ選択部と、選択されたプリンタドライバに対応するプリンタの状況を判別する状況判別部とを備えるのに対して、
刊行物1記載発明では、複数のプリンタの中から印刷データの印刷に最適なプリンタを選択するが、プリンタドライバや仮想プリンタドライバについて明らかでない点。

相違点2
印刷データの各プロパティが、本件発明1では、印刷処理をカラー又はモノクロで行うかの別、印刷枚数、印刷用紙サイズ、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法、アプリケーションの種類、および解像度を含むのに対して、
刊行物1記載発明では、印刷する色、印刷する用紙のサイズや枚数等を含むが、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法、アプリケーションの種類、および解像度について明らかでない点。

(2)判断
相違点1について
特開平9-272233号公報(段落【0026】の「プリンタドライバ選択部が、デバイスID送信部から送信されたデバイスIDに基づいて複数のプリンタドライバのうちの1つを選択するため、上位装置に接続されたプリンタ装置の種別に応じたプリンタドライバが選択されることとなり、従って、プリンタ装置の種別とプリンタドライバの種別の相違による誤印刷を防止することができる。」参照)、特開平11-110161号公報(段落【0067】の「クライアント装置1において、プリンタドライバは印刷データを生成する際に必要となるソフトウェアであり、各プリンタの種類に対応して複数用意され、印刷するプリンタに適合するプリンタドライバを選択して使用する。」参照)等により、プリンタのプリンタドライバを選択し、選択した前記プリンタドライバを起動して対応するプリンタに印刷データの印刷処理を実行させることは、周知である。
また、特開平9-265362号公報(段落【0063】の「ローカルプリンタであるカラープリンタは装置のLPT1ポートにアサインされ、LPT2にはネットワークサーバ20のプリンタLBPがアサインされているものとする。そして、これらのプリンタの言語は異なり、カラープリンタは本来「DRIVER_A」というプリンタドライバによって印刷データを作成して出力し、白黒LBPプリンタは「DRIVER_B」というプリンタドライバによって印刷データを作成し、出力される…(中略)…これら2つを切り替えるための仮想的なドライバを用意し、ページ単位にこれらを切り替える」参照)、特開平11-184656号公報(段落【0009】の「複数のプリンタを共有して使用する際、各アプリケーション毎、印刷物の内容毎に、最適なプリンタ、最適なプリンタドライバを自動的に選択して、ユーザ側のプリンタ設定作業を大幅に軽減させることができるプリンタドライバ自動認識装置およびプリンタドライバ自動認識プログラム」、段落【0022】の「ユーザによってパーソナルコンピュータ2が操作されて、作業エリアとなるウインドウ8が選択され、これが最前面に配置されると、プリンタドライバ自動認識処理部9によって、最前面に配置されたウインドウ8がアクティブウインドウであると認識され、図3に示すように、このウインドウ(アクティブウインドウ)8を表示しているアプリケーション(アプリケーションプログラム)10が認識されるとともに、プリンタ切替処理部11を動作させるのに必要な仮想ドライバとなるプリンタドライバ12がアプリケーション10に実装されて、アプリケーション名(アプリケーション固有の識別子であり、OSによっては、名称でないときもある)、属性(プリントアウト処理で使用される用紙のサイズなどを示す情報)などが取得される。」参照)等により、印刷開始時に起動され、選択した前記プリンタドライバを起動して対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる仮想プリンタドライバも周知である。
また、刊行物2記載発明において、ネットワークケーブル210に接続された各プリンタ201〜203の動作状態をネットワークI/F157を介して確認し、例えば選択したプリンタが動作不能の状態にある場合には、当該プリンタを除くプリンタの中から当該印刷ジョブを実行するプリンタを決定し直すから、刊行物2記載発明は「プリンタの状況を判別する状況判別部」を備え、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法が記憶され、プリンタがビジー又はエラーである時には、前記対処方法に従ってプリンタを選択できることは明らかである。
したがって、刊行物1記載発明の複数のプリンタの中から印刷データの印刷に最適なプリンタを選択するプリント制御部1に、上記周知の印刷開始時に起動され、選択したプリンタのプリンタドライバを起動して対応するプリンタに前記印刷データの印刷処理を実行させる仮想プリンタドライバを付加すると共に、刊行物2記載発明のようにプリンタがビジー又はエラーである時には、前記対処方法に従ってプリンタを選択できるように、本件発明1のように、前記印刷データの各プロパティの優先順位が高い順に前記プリンタ毎の印刷条件に合致するプリンタのプリンタドライバを選択するプリンタドライバ選択部と、選択されたプリンタドライバに対応するプリンタの状況を判別する状況判別部とを備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

相違点2について
刊行物1記載発明における「印刷文書属性」(本件発明1の「印刷データの各プロパティ」に相当)は、「高速印刷指定」「低価格指定」などというオペレータの抽象的な要求が含まれることもある制御情報から導きだせるものであり、「解像度」とか、さらに、刊行物2記載発明のような選択したプリンタが動作不能の状態にある場合には、当該プリンタを除くプリンタの中から当該印刷ジョブを実行するプリンタを決定し直すという「プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法」とか、特開平11-184656号公報(段落【0009】の「複数のプリンタを共有して使用する際、各アプリケーション毎…(中略)…に…(中略)…最適なプリンタドライバを自動的に選択」参照)等により周知の「アプリケーションの種類」とかも含むようにすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

したがって、本件請求項1に係る発明は刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 本件発明2について
本件請求項2は、請求項1に従属しており、本件請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、本件請求項1に係る発明の「プリンタドライバ選択部」について「選択した前記プリンタドライバに対応するプリンタの状況がビジー又はエラーである時には前記対処方法に従ってプリンタドライバを選択する」との限定を付加するものであるが、上記「4 本件発明1について(2)判断」で述べたように、刊行物2記載発明は「プリンタの状況を判別する状況判別部」を備え、プリンタがビジー又はエラーである時の対処方法が記憶され、プリンタがビジー又はエラーである時には、前記対処方法に従ってプリンタを選択できるものであるから、本件発明2も、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件発明3〜6について
本件請求項3、4に係る発明(以下、「本件発明3、4」という。)や本件請求項5、6に係る発明(以下、「本件発明5、6」という。)は、「印刷方法」の発明や「仮想プリンタドライバプログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記録媒体」の発明であり、本件発明3が「印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力するステップ」を有したり、本件発明5が「印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力する処理」を含んでいる点を除くと、「印刷システム」の発明である本件発明1、2と実質的に同一である。
そこで、次に、本件発明3が「印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力するステップ」を有したり、本件発明5が「印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力する処理」を含んでいる点について検討する。
刊行物1記載発明における「印刷文書属性」(本件発明1の「印刷データの各プロパティ」に相当)は、用紙サイズ、解像度、変倍率、部数、印刷頁数など、印刷に際してオペレータが指定した制御情報から導き出されるから、刊行物1記載発明も、本件発明3のように「印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力するステップ」を有したり、本件発明5のように「印刷処理を実行する印刷データの印刷プロパティを入力する処理」を含んでいるといえる。
したがって、本件発明3から6も、本件発明1、2と同様な理由により刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおり、本件請求項1ないし6に係る発明は、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1ないし6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2006-03-06 
出願番号 特願2000-9070(P2000-9070)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G06F)
最終処分 取消  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 竹井 文雄
植松 伸二
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3449958号(P3449958)
権利者 理想科学工業株式会社
発明の名称 印刷システム、印刷方法および印刷プログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記録媒体  
代理人 岩崎 幸邦  
代理人 三好 秀和  
代理人 川又 澄雄  
代理人 伊藤 正和  
代理人 高松 俊雄  
代理人 栗原 彰  
代理人 高橋 俊一  

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