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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1136883
審判番号 不服2004-12824  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-23 
確定日 2006-05-15 
事件の表示 平成 7年特許願第224577号「2,6-ジクロロベンゾニトリルマイクロカプセル化除草製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月25日出願公開、特開平 9- 52805〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年8月10日の出願であって、平成16年5月10日付けで手続補正がなされたところ、同年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月23日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年7月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1〜3は、
「【請求項1】 カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体中に、芯物質としての2,6-ジクロロベンゾニトリルを、生成マイクロカプセルの75〜85%となる量を分散させ、これに1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化尿素および/または1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化メラミンを加えて、pHを3.6〜6に調整し30〜60℃で重縮合してなるアミノプラスト樹脂を膜材とする、長期に亘り効果が持続する2,6-ジクロロベンゾニトリルマイクロカプセル化除草製剤。
【請求項2】 生成マイクロカプセルを10〜40%含むスラリーである請求項1に記載の除草製剤。
【請求項3】 カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体中に、芯物質としての2,6-ジクロロベンゾニトリルを、生成マイクロカプセルの75〜85%となる量を分散させ、これに1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化尿素および/または1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化メラミンを加えて、pHを3.6〜6に調整し30〜60℃で重縮合してなるアミノプラスト樹脂を膜材とする、長期に亘り効果が持続する2,6-ジクロロベンゾニトリルマイクロカプセル化除草製剤の製造方法。」
と補正された。
上記補正は、実質的に、マイクロカプセル化を行うにあたり、芯物質として用いられる「2,6-ジクロロベンゾニトリル」を、「2,6-ジクロロベンゾニトリルを、生成マイクロカプセルの75〜85%となる量」と限定し、「メチロール化尿素」、「メチロール化メラミン」をそれぞれ、「1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化尿素」、「1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化メラミン」と限定し、さらに「重縮合」について、「pHを3.6〜6に調整し30〜60℃で重縮合」と限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1〜3には以下の事項が記載されている。

A.引用文献1(特開昭58-124705号公報)
(a)「水に対する溶解度が20℃に於いて水100mlに対し1g以下であり、且つ60℃に於ける蒸気圧が760mmHg以下である農薬を芯物質とし、尿素、メラミン及びチオ尿素から選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒドより成る樹脂プレポリマーと、水溶性カチオニック尿素樹脂とを、アニオニック界面活性剤の存在のもとに重縮合させてなる樹脂を膜材とするマイクロカプセル化農薬。」(特許請求の範囲第1項)、
(b)「本発明のカプセルでは膜厚を一定にして芯物質の放出速度を調整することも可能である。このためには例えば、膜材に占めるホルムアルデヒドの割合を変えることにより達成できる。」(4頁右上欄4〜8行)、
(c)「本発明でマイクロカプセル化し得る疎水性農薬としては、所謂殺虫剤、殺菌剤、除草剤、抗ウイルス剤、昆虫誘因剤などをあげることができ」(4頁左下欄5〜7行)、
(d)「次に本発明の微小カプセルの製造法を具体的に説明する。先ず、少なくとも水溶性カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤の存在する水系混合液と疎水性農薬とを適当な手段、例えば、ホモジナイザー、攪拌機、超音波等を用いて疎水性農薬が適当な大きさの液滴になるように乳化分散させる。樹脂プレポリマーはこの乳化前の混合液中に予め存在させておいてもよいが、乳化の途中又は乳化後に一度に又は数回に分けて添加してもよい。この樹脂プレポリマーを含む分散液をゆるやかに撹拌しながら酸触媒を加えて、pH2.5〜6.0、反応温度15〜60℃で2〜50時間反応させることにより微小カプセル化は終了する。」(5頁右下欄5〜18行)、
(e)「本発明で使用する樹脂プレポリマーは具体的には、尿素ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー(以下UFプレポリマーと略す)、メラミンホルムアルデヒド樹脂プレポリマー(以下MFプレポリマーと略す)、・・・を意味する。」(6頁左上欄5〜18行)、
(f)「MFプレポリマーとは、モノメチロールメラミンからヘキサメチロールメラミンに至るメチロールメラミン」(6頁右上欄1〜3行)、
(g)「UFプレポリマーはモノメチロール尿素からテトラメチロール尿素に至るメチロール化尿素」(6頁右上欄14〜15行)、
(h)「カプセル化に際し用いられる樹脂プレポリマーの量は、農薬1gに対して0.03〜1.0gの範囲で用いるのが好ましい。」(6頁右下欄13〜16行)、
(i)「実施例5 ユーラミンP1500-25gと水200gを加えpH5.0に調整した中へネオペレックス水溶液2.5mlを加えた後、プロペナゾール150gをよく分散させる。次いで分散液を40℃でゆつくり撹拌しながら実施例1で作成したM4Fプレポリマー80g、U1.8Fプレポリマー40gを加え10%クエン酸でpHを3.6に調整した。2時間経過後、再び10%クエン酸でpHを3.0に調整し反応を続けて1時間後、10%レゾルシノール10mlを加え、さらに水180gを加えた後、温度を30℃に下げそのまま15時間熟成させプロペナゾールマイクロカプセルスラリーを得た。このマイクロカプセル中のプロペナゾール量は71%であった。」(8頁右下欄1〜16行)、
(j)「第4図は本発明のマイクロカプセル化MEPの経時変化を示すグラフ、第5図は本発明のマイクロカプセル化MEPの殺虫効力の持続性を示すグラフである。」(12頁右上欄14〜17行)、なお、第4図は、C(マイクロカプセル化MEP)、Z(市販MEP水和剤)の経過日数とMEP残存率のグラフであり、Cは35日において40%、Zは22日において0%であることが、また、第5図は、同じくZとCについて、経過日数と24時間致死虫率を示すグラフであり、Cは35日において60%、Zは22日において0%であることが示されている。

B.引用文献2(「農薬ハンドブック 1992年版」(平成4年7月30日 社団法人日本植物防疫協会発行)、399〜401頁)
DBN剤(ジクロベニル剤)について、「ニトリル系除草剤」(399頁下から2行)であり、「蒸気圧が高い」(400頁4行)、「本剤は揮散しやすい」(同頁9行)と記載されている。

C.引用文献3(「農薬ハンドブック 1992年版」(平成4年7月30日 社団法人日本植物防疫協会発行)、599頁)
DBNが「2,6-ジクロロベンゾニトリル」であり、白色結晶、融点が145〜146℃、水に対する溶解度が20℃で18ppmであることが記載されている。

(3)対比・判断
引用文献1には、その特許請求の範囲第1項に摘記(a)のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているところ、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)と引用発明を対比すると、本願補正発明の2,6-ジクロロベンゾニトリルは、引用文献2、3の記載からみて、引用発明の「水に対する溶解度が20℃に於いて水100mlに対し1g以下であり、且つ60℃に於ける蒸気圧が760mmHg以下である農薬」に相当する除草剤であり、引用発明においても除草剤が例示され(摘記(c)参照)、また、本願補正発明の「1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化尿素」、「1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化メラミン」は、引用発明の「尿素、メラミンとホルムアルデヒドより成る樹脂プレポリマー」に相当し(摘記(e)〜(g)参照)、両者ともに、上記メチロール化尿素および/またはメラミンをカチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤の存在下で重縮合させ、その際に、pHを3.6〜6の範囲とし、温度を30〜60℃の範囲とすることは共通している(摘記(d)参照)から、両者は、
「カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤の存在下、2,6-ジクロロベンゾニトリルを芯物質として、これに1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化尿素、1〜数個のメチロール基が結合しているメチロール化メラミンを加えて、pHを3.6〜6に調整し30〜60℃で重縮合してなる樹脂を膜材とするマイクロカプセル化除草剤」
である点で一致し、以下の(i)〜(iii)の点で相違している。
(i)マイクロカプセル化を行うにあたり、本願補正発明では、カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体中に、2,6-ジクロロベンゾニトリルを分散させ、これにメチロール化尿素および/またはメチロール化メラミンを加えて、重縮合しているのに対し、引用発明ではこのような順序が特定されていない点、
(ii)本願補正発明では、2,6-ジクロロベンゾニトリルを、生成マイクロカプセルに対し75〜85%となる量を使用するのに対し、引用発明では使用量が特定されていない点、
(iii)本願補正発明では、マイクロカプセル化除草剤が、「長期に亘り効果が持続する」ものであるのに対し、引用発明ではその旨が明示されていない点。

以下、上記相違点について検討する。
(i)について
引用文献1には、マイクロカプセルの製造法として、水溶性のカチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤の存在する水系混合液と疎水性農薬とを適当な手段を用いて疎水性農薬を乳化分散させ、樹脂プレポリマーを乳化後に添加してもよいと記載されており(摘記(d)参照)、具体的には実施例5において、ユーラミンP1500(水溶性カチオニック尿素樹脂)とネオペレックス水溶液(アニオニック界面活性剤)との水系混合液にプロペナゾール(農薬)を分散させた後に、M4Fプレポリマー(メチロール化メラミン)、U1.8Fプレポリマー(メチロール化尿素)を加えて重縮合を行っている(摘記(i)参照)。そうしてみると、本願補正発明の重縮合における処理の順序は引用発明でも採用されるものであるから、この点に実質的相違はない。
(ii)について
引用文献1には、カプセル化に際し用いられる膜材となる樹脂プレポリマーの量は、農薬1gに対して0.03〜1.0gの範囲で用いるのが好ましいと記載されており(摘記(h)参照)、この数値から芯物質となる農薬の量は97〜50%と算出することができる。また、引用文献1の実施例1〜7において、製造されるマイクロカプセル化農薬中の農薬の量は41.5〜95%の範囲にある。そうしてみると、本願補正発明における「生成マイクロカプセルの75〜85%となる量」との特定は、引用発明で採用される範囲内で数値を設定したものにすぎず、当業者が容易に想到し得ることといえる。
(iii)について
引用文献1において、市販MEP水和剤であるZが22日経過後で24時間致死虫率が0%であるのに対し、マイクロカプセル化MEPであるCが35日経過後においても60%であることが示されており(摘記(j)参照)、さらに、引用文献1に引用発明のマイクロカプセルが、膜材に占めるホルムアルデヒドの割合を変えること等により芯物質の放出速度を調整することが可能である(摘記(b)参照)と記載されていることからすれば、引用発明のマイクロカプセル化MEPにおいても所望に応じて効果をより長期に持続させることができるものである。そうしてみると、「長期に亘り効果が持続する」ということも引用文献1に十分示唆されているから、これを発明特定事項とすることは当業者が適宜なし得るところである。

そして、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明と比べて格別の予期し得ない効果を奏するものとすることもできない。

なお、請求人は、平成16年11月12日付けで上申書及び実験成績報告書を提出し、本願補正発明のジクロベニル(2,6-ジクロロベンゾニトリル)マイクロカプセルとして、本願明細書実施例1及び2に記載されるように「(カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体)→ジクロベニル分散→プレポリマー(メチロール尿素、メチロール化メラミン)添加→重縮合」の順序で得られたアミノプラスト樹脂を膜材とするジクロベニルマイクロカプセル化除草剤を用い、比較例として、引用文献1の実施例1の製造順序をそのままジクロベニルに適用し、「プレポリマー(メチロール化尿素、メチロール化メラミン)→(カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体)添加→ジクロベニル添加→重縮合」の順序で得られたジクロベニルマイクロカプセル化除草剤を用いて、ジクロベニルの揮散度試験及び水溶出試験を行った結果、本願補正発明の順に3成分を加えて重縮合させる場合には、ジクロベニルの揮散度および水中溶出量が引用文献1のそれにくらべていちじるしく低くなることをもって、これらの成分の使用順序に大きな技術的意味があり、本願補正発明の効果は引用文献1の記載からは容易に予測し得ない旨を主張する。
しかしながら、引用文献1には、本願補正発明と同じ「(カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体)→疎水性農薬分散→プレポリマー(メチロール化尿素、メチロール化メラミン)添加→重縮合」の順序でマイクロカプセル化することが記載され、具体的な実施例も記載されている(摘記(d)、(i)参照)ことから、本願補正発明と引用発明とではマイクロカプセル化における順序が相違することを前提とする請求人の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年7月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成16年5月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されるとおりのものであるところ、その請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】 カチオニック尿素樹脂とアニオニック界面活性剤を含む媒体中に、芯物質としての2,6-ジクロロベンゾニトリルを分散させ、これにメチロール化尿素および/またはメチロール化メラミンを加えて重縮合してなる、アミノプラスト樹脂を膜材とする長期に亘り効果が持続する2,6-ジクロロベンゾニトリルマイクロカプセル化除草製剤。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、本願補正発明から、2,6-ジクロロベンゾニトリルに関しての「生成マイクロカプセルの75〜85%となる量」という特定事項と、重縮合の際の「pHを3.6〜6に調整し30〜60℃で」という特定事項とを除いたものであり、本願補正発明を包含するものであるところ、本願補正発明は、前記2.(3)に記載したとおり、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を包含する本願発明も、同様の理由により、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、請求項2、3に係る発明を検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-14 
結審通知日 2006-03-20 
審決日 2006-04-04 
出願番号 特願平7-224577
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01N)
P 1 8・ 575- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 原田 隆興
木村 敏康
発明の名称 2,6-ジクロロベンゾニトリルマイクロカプセル化除草製剤  
代理人 藤野 清也  
代理人 藤野 清也  
代理人 藤野 清也  

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