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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1136937 |
審判番号 | 不服2003-17948 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-04-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-09-17 |
確定日 | 2006-05-18 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第269691号「赤外顕微測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 4月 8日出願公開、特開平 6- 94613〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成4年9月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年10月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】 赤外域の光源から射出された赤外光を集光光学系により一点に集光して試料に照射し、この照射赤外光と前記試料との相互作用を経た光を顕微対物光学系により結像してこの結像光を光電検出することにより前記試料の局所的なスペクトルを測定する赤外顕微測定装置において、 赤外域において透明でかつ屈折率が2.7以上であり、前記試料の一面と密接可能な平面を有する半球形状のプリズムを備え、前記集光光学系による集光点が前記プリズムによって小径化され、小径化された集光点に集光される光束には少なくとも前記プリズムの屈折率と前記試料の屈折率とで決まる全反射の臨界角以上の入射角をもって入射される光を含む、ことを特徴とする赤外顕微測定装置。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-223847号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「(課題を解決するための手段) 本発明は、従来の赤外顕微鏡の反射対物鏡と試料台の間に、・・・ATR(全反射)プリズムと、・・・を設けたものである。 (作用) ・・・ATRプリズムを・・・測定対象物上に密着させ、赤外反射測定モードで測定を行なう。入射赤外線はATRプリズムによって測定対象物の表面で全反射され、測定対象物の赤外分光分析が行なわれる。・・・」(第2頁左上欄7行〜20行) イ.「第1図は一実施例を表わす。図の状態は、ATRプリズムを使用する赤外反射測定モードを示している。 2は赤外測定を行なう際の測定モードを切り替える透過/反射切替え鏡、4は平面鏡、6は球面鏡、8は平面鏡、10は反射対物鏡である。反射対物鏡10の下部には試料台12が設けられている。14は試料上の焦点位置である。反射対物鏡10で試料上に照射された赤外線による反射赤外線は再び反射対物鏡10で集光される。16は反射対物鏡10で集光された赤外線を通す可変アパーチャ、18は赤外測定と可視観察を切り替える切替え鏡、20,22は平面鏡、24は軸外し楕円面鏡、26は赤外検出器であるMCT検出器である。」(第2頁右上欄7行〜左下欄1行) ウ.「ATRプリズム52は円錐台状をしており、・・・ATRプリズム52の材質としては、・・・Geなどを使用することができる。」(第2頁右下欄10行〜13行) エ.「第1図に示される赤外反射測定モードで測定を行なう。赤外線は切替え鏡2から平面鏡4、球面鏡6、平面鏡8を経て反射対物鏡10によって測定対象物上に照射される。赤外入射光はATRプリズム52によって第2図で記号55で示されるように測定対象物60に入射し、記号56で示されるように反射する。反射光56は再び反射対物鏡10で集光され、平面鏡8、アパーチャ16、切替え鏡18、平面鏡20,22、軸外し楕円面鏡24を経てMCT検出器26で検出される。」(第3頁左上欄5行〜15行) 3.対比・判断 本願発明と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比する。 刊行物1の赤外反射測定モードの測定は、上記摘記事項及び図面を斟酌すると、単反射ATR法(単反射式の全反射吸収スペクトル法)であることは明らかであるから、両者は、 「赤外域の光源から射出された赤外光を集光光学系により一点に集光して試料に照射し、この照射赤外光と前記試料との相互作用を経た光を顕微対物光学系により結像してこの結像光を光電検出することにより前記試料の局所的なスペクトルを測定する赤外顕微測定装置において、 赤外域において透明でかつ屈折率が2.7以上であり、前記試料の一面と密接可能な平面を有するプリズムを備え、前記集光光学系による集光点に集光される光束には少なくとも前記プリズムの屈折率と前記試料の屈折率とで決まる全反射の臨界角以上の入射角をもって入射される光を含む、赤外顕微測定装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明は、赤外域において透明でかつ屈折率が2.7以上で、試料一面と密接可能な平面を有する半球形状のプリズムを用いており、該プリズムによって集光光学系による集光点を小径化しているのに対し、刊行物1発明は、ゲルマニウム(Ge)から形成され、試料一面と密接可能な平面を有する円錐台状のプリズムを用いており、該プリズムによって集光光学系による集光点を小径化しているかは不明である点。 上記相違点について検討する。 赤外顕微測定装置のATRプリズムに、赤外域において透明かつ高屈折率で、試料一面と密接可能な平面を有する半球形状のプリズムを用いることは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-16748号公報(第2頁右上欄16行〜左下欄2行,第2図,第3図)、特開昭62-220834号公報(第2頁右下欄6行〜7行,第3頁右上欄1行〜3行)、特開平4-116452号公報(特許請求の範囲)、特開平4-138340号公報(第3頁左上欄第4行〜8行,第3頁右上欄14行,第3図(B))などを参照。)であり、高屈折率の半球形状プリズムを用いていることからして、該プリズムによって集光光学系による集光点を小径化していることは明らかであって、この周知技術は刊行物1発明と同じ技術分野に属するものであるから、刊行物1発明の円錐台状のプリズムに換えて上記周知技術を用いることで上記相違点の構成を得ることは、当業者が容易に為し得ることである。 そして、本願発明の作用効果は、刊行物1発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2に係る発明についての検討・判断を示すまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-08 |
結審通知日 | 2006-03-14 |
審決日 | 2006-03-29 |
出願番号 | 特願平4-269691 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋口 宗彦 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 赤外顕微測定装置 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 小野 尚純 |