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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1137040
審判番号 不服2004-85  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-05-22 
事件の表示 特願2000-129581「半導体発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 9日出願公開、特開2001-313417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年4月28日に特許出願したものであって、その請求項に係る発明は、平成14年11月13日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「【請求項1】窒化物系化合物半導体から成る発光層を有する発光素子と、発光波長変換部材とを備えた半導体発光装置において、
前記発光波長変換部材は、前記発光素子からの発光の少なくとも一部を吸収して前記発光素子からの発光波長より長い波長の光を発生する(Y1-x、Gdx)3(Al1-y、Gay)5O12:Cez、Prwの一般式で表される蛍光体であり、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.099及び0.001≦w≦0.5であることを特徴とする半導体発光装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.先願明細書の記載事項
原査定の拒絶理由に引用した、その出願の日前の、先の出願の時にされたものとみなされる特許出願(パリ条約による優先権主張1999年10月27日)であって、その出願後に出願公開がされた特願2000-329130号(特開2001-192655号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【0027】【実施例】
本発明による発光物質の1つの実施例は、以下の組成:
(SE1-x-yPrxCey)3(Al、Ga)5O12〔式中、SEは、Y、Gd、Tb、Sc、La及び/又はLuであり;
0.00005≦x≦0.05;
0.01≦y≦0.2である〕
を有している。
【0028】この発光物質は、400〜500nmの領域内で吸収し、青色LEDの光線(発光最大値430〜470nm)によって効率的に励起させることができる該発光物質の発光は、約550〜570nmで最大値を有する黄色の広帯域と、プラセオジムに分類すべき609nm及び611nmでの付加的に先鋭な線とからなっている。Prのもう1つのより弱い線は、637nmの長波長の赤色に存在する。
【0029】図3は、純粋なYAG:Ce発光物質(1)と、2種のPr含有発光物質(2、3)との比較を示している。数字(2)の第一の発光物質は、Prを0.1モル%含有しており、数字(3)の第二の発光物質は、Prを1モル%含有しているが、Ceの割合は、それぞれ4モル%である。高いPr含量(数字(3))の場合、濃度低下は、より低い効率によって明白に見分けがつくようになっている。他方、Pr線の種々の部分は、スペクトル全体において明白に見分けがつく。Pr約0.5モル%の場合、この線は、637nmで僅かにのみ認められる。純粋なYAG:Ce発光物質に比して、発光した光線の一部は、Prの赤色線に入り込んでいる。
【0030】白色光用の光源の構造は、図4中に明瞭に示してある。この光源は、465nmのピーク発光波長を有し、凹部9の領域の光透過性基礎ケーシング8の中へ埋設されている第一及び第二の電気的接続2、3を有するInGaNタイプの半導体構造素子(チップ1)である。・・・
【0035】製造のための1つの実施例は、以下の通りである:成分
Y2O3 32.48g
CeO2 2.07g
Pr6O11 0.051g
Al2O3 26.41g
BaF2 0.149g
H3BO3 0.077g
を混合し、250mlのPE-広口瓶中で、直径10mmの酸化アルミニウム球150gと一緒に微粉砕する。この混合物を、蓋をしたコランダム坩堝中で、形成ガス(水素2.3容量%を含有する窒素)中1550℃で3時間灼熱させる。この灼熱物を、自動すり鉢型粉砕機中で微粉砕し、メッシュ幅53μmの篩いによって篩別する。引き続き、第二の灼熱を形成ガス(水素0.5容量%を含有する窒素)中1500℃で3時間行う。この後、第一の灼熱によるのと同様に微粉砕及び篩別する。
【0036】得られた発光物質は、(Y0.959Ce0.04Pr0.001)3Al5O12に相応している。これは、強い黄色の物体色を有している。反射スペクトル及び発光スペクトルは、図1及び2として再現してある。」

3.対比・判断
本願発明と先願明細書に記載された事項(以下、「先願発明」という)とを対比する。
(ア)先願明細書の「光源」は、「465nmのピーク発光波長を・・・有するInGaNタイプの半導体構造素子」(【0030】参照)であるから、先願発明は、本願発明の「窒化物系化合物半導体から成る発光層を有する発光素子を備えた半導体発光装置」に相当する事項を有することは明らかである。
(イ)先願明細書の「発光物質」は、「400〜500nmの領域内で吸収し、青色LEDの光線(発光最大値430〜470nm)によって効率的に励起させることができる該発光物質の発光は、約550〜570nmで最大値を有する黄色の広帯域と、プラセオジムに分類すべき609nm及び611nmでの付加的に先鋭な線とからなっている。Prのもう1つのより弱い線は、637nmの長波長の赤色に存在する。」(【0028】参照)のであるから、先願発明は、本願発明の「発光素子からの発光の少なくとも一部を吸収して前記発光素子からの発光波長より長い波長の光を発生する」、「発光波長変換部材」に相当する事項を有する。
(ウ)先願明細書には、
「本発明による発光物質の1つの実施例は、以下の組成:
(SE1-x-yPrxCey)3(Al、Ga)5O12〔式中、SEは、Y、Gd、Tb、Sc、La及び/又はLuであり;
0.00005≦x≦0.05;
0.01≦y≦0.2である〕」(【0027】参照)
と記載されている。
ここで、SEをYとし、本願発明のような一般式の形に書き直すと、
Y3(Al、Ga)5O12:Pr3x,Ce3yとなり、、この発光物質に含まれる
Prは、0.00015≦3x≦0.15;
Ceは、0.03≦3y≦0.6となる。
一方、本願発明の(Y1-x、Gdx)3(Al1-y、Gay)5O12:Cez、Prw;0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.099及び0.001≦w≦0.5において、x=0(Gdを含まない)とした場合、Y3(Al1-y、Gay)5O12:Cez、Prw;0≦y≦0.5、0.001≦z≦0.099及び0.001≦w≦0.5となる。
よって、先願発明の組成のうち、Prは、0.001≦w≦0.15、Ceは、0.03≦z≦0.099の範囲で、本願発明とそれぞれ重複するから、先願発明は、「Y3(Al1-y、Gay)5O12:Cez、Prw」との一般式に相当する事項を有すると認めることが出来るとともに、w及びzの数値範囲においても相違しない。

したがって、先願明細書には、本願発明の技術的事項が全て記載されているから、本願発明と先願発明は同一である。

なお、審判請求人は、先願発明の具体的な実施例として記載されたもの(先願明細書の【0029】及び【0036】参照)におけるCeの濃度は、0.12のみであり、本願発明とは異なる旨主張している。
しかし、先願発明のCeの濃度は、先願明細書の【0027】に記載された実施例と同様の数値範囲が請求項6に係る発明として明記されており、この数値範囲を裏付けるものとして0.12が記載されているだけであって、先願発明は上記数値範囲を有するものとして明記されているのであるから、先願発明のCeの濃度を0.12のみに限定すべき理由はない。(なお、0.12から0.099に変えたとしても格別の差異が生じるとも認められない。)
ちなみに、本願の願書に最初に添付した明細書の【0010】には、「また、z値が0.001より小さいと賦活剤のCeの割合が低下して輝度が減少する反面、z値が0.5より大きいと賦活剤の濃度の増大により発光強度が低下する濃度消光が生じて輝度が低下するおそれがあるため、0.001≦z≦0.5が好適である。」と記載されている。しかも、本願明細書の【0040】及び【0042】には、(Y1-z/3―w/3Cez/3Prw/3)3Al5O12に基づく組成比及び相対輝度の結果を示す表4が記載され、該表に示された試料A6〜A10において、Prを0.001(3wを0.003)の一定とし、Ceを0.01〜0.1(3zを0.03〜0.3)に変化させた場合の相対輝度をみても、本願発明が除外した試料A8〜A10と、本願発明の範囲内である試料A6及びA7との間に格別の相違は認められない。即ち、表4には、本願発明の範囲内であるCeを0.03とした試料A6と、先願の実施例に相当するCeを0.12とした試料A8とを比較すると、相対輝度は、試料A6が88.2%、試料A8が90.3であり、試料A8の方がむしろ高いことが示されている。
よって、本願発明の数値範囲が格別の臨界的意義を有するものでもないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-24 
結審通知日 2006-03-27 
審決日 2006-04-11 
出願番号 特願2000-129581(P2000-129581)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 稲積 義登
吉野 三寛
発明の名称 半導体発光装置  
代理人 清水 敬一  
代理人 清水 敬一  
代理人 清水 敬一  

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