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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1137510 |
審判番号 | 不服2004-21423 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-09-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-14 |
確定日 | 2006-06-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 43029号「車両用カメラの露光制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月17日出願公開、特開平 8-240833〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年3月2日の出願であって、平成16年9月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年10月27日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年10月27日付けの手続補正について 平成16年10月27日付けの手続補正は、補正前特許請求の範囲の請求項4を削除するものであり、特許法第17条の2第3項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであるから、特許法第17条の2第4項の規定に適合する。 よって、当該補正を認める。 3.本願発明 平成16年10月27日付けの手続補正は上記のとおり認められたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年10月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「光を集光するレンズと、このレンズからの光の輝度に応じて信号を出力する撮像手段と、この撮像手段に入射する光の強度を調節するアイリスと、前記撮像手段に入射する光の露光時間を調節するシャッターと、走行路に描かれ走行車線を区分する区分線を検出する区分線検出手段と、この区分線検出手段の検出出力に基づき前記撮像手段で得られる画面のうち所定領域を選択する選択手段と、前記所定領域の輝度を検出する輝度検出手段と、前記所定領域の輝度と予め定められた目標輝度とに基づき前記所定領域の輝度が前記目標輝度となるよう前記アイリスあるいはシャッターを調節する露光制御手段とを備えたことを特徴とする車両用カメラの露光制御装置。」 4.引用例 これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-183784号公報(以下、「引用例1」という。)には、 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、車両に搭載される車載装置に関するものであって、2次元撮像装置により撮像された道路画像から車両の進行方向の道路状況を解析するのに用いられる道路画像解析装置および、その解析結果から前記撮像装置の撮像条件を制御するための撮像制御装置に関する。」(段落【0001】)、 「【0002】 【従来の技術】近年、走行車両の進行方向の画像を生成し、画像処理により白線方向などの道路状態を認識して、障害物の検出などを行う車載装置が提案されている。この種の車載装置は、車両の進行方向に向けて視野設定される2次元撮像装置と、この撮像装置により撮像された道路画像を取り込んで車両の進行方向の道路状況を解析する解析処理装置とから成るもので、この解析処理装置による解析結果に従って前記撮像装置のシャッタ速度やアイリス値などの撮像条件を自動制御する。 【0003】前記撮像装置は、撮像レンズより入射した光を光学絞りで調整した後、CCDなどの撮像素子により光電変換する。また前記解析処理装置は、その画像信号を取り込んで例えば画像全体の輝度レベルまたは画像の一部の輝度レベルを計測した後、その輝度レベルを基準レベルと比較してその差電圧によりアイリス値やシャッタ速度値を制御する。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の装置では、画像の道路部分のみならず道路外の部分の画像情報(輝度などに関する特徴量)も解析の対象に含んでいるため、例えば道路とその周辺環境(道路外の物体や背景など)との輝度差が大きいような場合、この周辺環境の影響により道路部分の画像が露出不足となったり、露出過多となったりして、道路部分の最適な画像を生成できず、認識に不都合を招く虞がある。 【0005】この発明は、上記問題に着目してなされたもので、障害物の認識などに必要な道路部分の画像情報のみを取り込むことより、道路部分の最適な画像を生成でき、適正な認識が可能な車載用道路画像解析装置および車載用撮像制御装置を提供することを目的とする。」(段落【0002】〜【0005】)、 「【0008】さらに請求項3の発明にかかる車載用撮像制御装置は、前記2次元撮像装置により撮像された道路画像から車両の進行方向の道路の明るさを解析して前記撮像装置の撮像条件を制御するものである。そしてこの車載用撮像制御装置は、車両の車幅にほぼ一致する幅で車両の進行方向に延びる画像上の領域を記憶する記憶手段と、前記記憶手段が記憶する領域内の画像より道路の明るさの解析に必要な特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により抽出された特徴量に基づいて前記撮像装置のシャッタ速度値およびアイリス値を決定する撮像条件決定手段と、前記撮像条件決定手段により決定された前記シャッタ速度値およびアイリス値に前記撮像装置を設定する撮像条件設定手段とを備えている。 【0009】 【作用】画像の道路部分から特徴量を抽出するので、車両の進行方向の道路状況を正確に解析できる。また画像の道路部分より抽出した特徴量に基づき道路部分の撮像に最適な撮像条件に2次元撮像装置を設定するので、信頼性の高い道路部分の画像が得られ、適正な認識が可能である。さらにたとえ道路部分とその周辺環境との輝度差が大きいような場合でも、撮像装置のシャッタ速度値やアイリス値を適正に設定でき、良質な画像が得られる。 【0010】 【実施例】図1は、この発明の一実施例にかかる車載用撮像制御装置の構成を示す。この車載用撮像制御装置は、CCDカメラなどの2次元撮像装置1と解析処理装置2とから成り、前記解析処理装置2は道路画像解析部3と画像処理部4とを含む。 【0011】前記撮像装置1は、白黒画像またはカラー画像を生成することが可能であって、シャッタ速度値を外部から数段階に調整することが可能な電子シャッタ機能を有している。この撮像装置は、図2に示すように、車両5内部のフロントウィンドウの中央位置、すなわちフェンダミラーの位置に設置されており、車両5の進行方向に向けて道路の路面ができる限り視野6内に入るよう適当な角度に固定される。なお図1中、7はアイリス値を無段階に調整することが可能な撮像レンズである。」(段落【0008】〜【0011】) との記載が認められ、これらの記載によれば、引用例1には、 「車両の進行方向に向けて視野設定される2次元撮像装置と、撮像レンズより入射した光を調整する光学絞りやシャッタを備え、前記撮像装置により撮像された道路状況を解析する解析処理により、画像信号を取り込んで例えば画像の一部の輝度レベルを計測した後、その輝度レベルを基準レベルと比較してその差電圧によりアイリス値やシャッタ速度値を制御する車載用撮像制御装置」 との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。 同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-341821号公報(以下、「引用例2」という。)には、 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、車両が走行中の走行レーンを検出するために用いられる走行レーン検出装置に関するものである。」(段落【0001】)、 「【0014】図1は、請求項1の本発明の一実施例を示すブロック図である。 【0015】図に示すように、ビデオカメラ1は車両前方の道路を撮像し道路画像を得るものであり、左白線エッジ抽出手段2は道路画像の左半分のエッジ成分を抽出する。左白線閾値設定手段3は白線輪郭抽出に用いる閾値を設定するものであり、左白線輪郭抽出手段4は左白線エッジ抽出手段2によって処理されたエッジ画像に対して左白線閾値設定手段3によって設定された閾値を用い、路面上の左白線輪郭を抽出する。左白線直線近似手段5は左白線輪郭抽出手段4によって抽出された左白線輪郭を直線で近似する。 【0016】右白線エッジ抽出手段6は道路画像の右半分のエッジ成分を抽出し、右白線閾値設定手段7は白線輪郭抽出に用いる閾値を設定するものである。右白線輪郭抽出手段4は右白線エッジ抽出手段6によって処理されたエッジ画像に対して右白線閾値設定手段7によって設定された閾値を用い、路面上の右白線輪郭を抽出し、右白線直線近似手段9が右白線輪郭抽出手段8によって抽出された右白線輪郭を直線で近似する。 【0017】走行レーン検出手段10は左白線直線近似手段5と右白線直線近似手段9とによって直線近似された2本の白線を用いて走行レーンの検出を行う。」(段落【0014】〜【0017】)、 「【0028】ステップ25とステップ30の両方の処理が終了した後ステップ31に進み、走行レーン検出手段10による走行レーン検出処理が行われる。走行レーンの検出は、ステップ25およびステップ30で左右の白線を近似した2本の直線と画像の底辺によって三角形を構成することによって行うことができる。三角形で表現された走行レーン検出結果を図8に示す。」(段落【0028】) が記載されている。 5.対比・判断 本願発明と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「撮像レンズ」、「2次元撮像装置」、「光学絞り」、「シャッタ」、「画像の一部」、「アイリス値やシャッタ速度値を制御する車載用撮像制御装置」は、本願発明の「光を集光するレンズ」、「撮像手段」、「アイリス」、「シャッター」、「所定領域」、「アイリスあるいはシャッターを調節する露光制御手段」に相当するから、両者は、「光を集光するレンズと、このレンズからの光の輝度に応じて信号を出力する撮像手段と、この撮像手段に入射する光の強度を調節するアイリスと、前記撮像手段に入射する光の露光時間を調節するシャッターと、所定領域の輝度を検出する輝度検出手段と、前記所定領域の輝度と予め定められた目標輝度とに基づき前記所定領域の輝度が前記目標輝度となるよう前記アイリスあるいはシャッターを調節する露光制御手段とを備えたことを特徴とする車両用カメラの露光制御装置。」である点で一致し、 本願発明では、「走行路に描かれ走行車線を区分する区分線を検出する区分線検出手段と、この区分線検出手段の検出出力に基づき前記撮像手段で得られる画面のうち所定領域を選択する選択手段」を備えているのに対して、引用例1発明では、そのような構成を備えていない点で相違する。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点について、 引用例1には、画像信号として取り込んだ「画像の一部」を、車両の車幅にほぼ一致する幅で車両の進行方向に延びる画像上の領域として設定することが記載されている。 また、引用例2には、撮像された道路画像から、左右の白線を近似した2本の直線と画像の底辺によって構成される三角形を走行レーンの領域として設定することが記載されている。 ところで、請求人は、審判請求の理由の「3.(1)請求項1に係る発明について」において、 『引用文献4(審決では、引用例1に対応)に示されている測光領域はカメラの仕様と取付条件によって一意的に決定される固定の領域であって、測光領域を固定領域とした場合の問題点に関しては一切言及されておらず、カーブのように道路形状が変化した際に、測光領域に道路以外の領域が入り、露光条件が適切とならないケースが発生し得る可能性があります。 ・・・。 従って、このように測光領域を固定領域とした場合の問題点に言及していない引用文献4(審決では、引用例1が対応)の露光技術と、走行レーン検出処理において誤検出を減らしたり、処理時間を削減するために処理領域を設定する引用文献1(審決では、引用例2が対応)の走行レーン検出技術とを組合わせること自体、車両用カメラにおいて適切な露出制御を行うことが通常有している課題であるとしてもその必然性に疑問があるように思われます。』 と主張する。 確かに、引用例1の「画像の一部」は、撮像された画像中で固定領域となると認められるもので、前記「画像の一部」は、自車の走行レーンを簡略的に定義したものであると言える。しかしながら、当業者ならば、引用例1の撮像装置で得られる画像領域中の走行レーンとなる領域は、走行中に変動するものであることは充分認識していると認められ、その場合において、引用例2に示されるような走行レーンを検出する技術思想に接したならば、この技術思想を引用例1発明に適用することに阻害要因があるとは認められない。 してみると、請求人の前記主張は妥当なものとは認められず、採用することができないものである。 結局、この相違点に係る本願発明の構成は、引用例2に示される技術思想を引用例1発明に適用することにより当業者が容易に想到しえたものと認められるから、格別なものとは認められない。 そして、本願発明の奏する効果も、引用例1、2に記載の各技術事項が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。 6.むすび したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-29 |
結審通知日 | 2006-04-04 |
審決日 | 2006-04-18 |
出願番号 | 特願平7-43029 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邉 勇、越河 勉 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 青木 和夫 |
発明の名称 | 車両用カメラの露光制御装置 |
代理人 | 村上 啓吾 |
代理人 | 竹中 岑生 |
代理人 | 児玉 俊英 |
代理人 | 大岩 増雄 |