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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1137583
審判番号 不服2003-16955  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-03 
確定日 2006-06-08 
事件の表示 特願2001- 22946「線状照明装置、およびそれを用いた画像読み取り装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月16日出願公開、特開2002-232648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成13年1月31日の出願であって、平成15年7月25日に拒絶査定がなされ、これに対して同年9月3日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同年10月2日に手続補正がなされたものである。

第2 平成15年10月2日付けの手続補正の補正の却下の決定について
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成15年10月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、「透明棒と、該透明棒の長手方向の端面に設けられた発光装置と、該透明棒を覆う白色の枠とから構成される線状照明装置において;
前記透明棒は長手方向に平行な3つの平面と1つの凸状の曲面とを有し、前記透明棒を長手方向に垂直に切断したときの断面形状の外周が直角に連続する3辺と凸状の曲線とからなり、
前記凸状の曲面に対向する平面には、光を乱反射する光拡散領域が、該平面の中心部分に長手方向に沿って形成され、
前記断面形状における前記凸状の曲線に対向する辺の長さ(L)とそれと直角につながっている辺の各々の長さ(M)との寸法比が、
0.25L ≦ M ≦ 1.5L
を満足し、
前記透明棒の長手方向の両端にそれぞれ前記発光装置が設けられ、
少なくとも前記凸状の曲面に対向する平面が前記白色の枠で覆われ、
前記透明棒が前記白色の枠内で長手方向に動く構造とし、かつ
両端に設けられた前記発光装置が、弾力によって前記透明棒を押し合いながら、前記透明棒の長手方向の両端に接していることを特徴とする線状照明装置。」と補正された。
上記補正は、「両端の発光装置が透明棒を押し合いながら」を、「両端に設けられた前記発光装置が、弾力によって前記透明棒を押し合いながら」と限定したもの等であって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
1.引用例
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-112782号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
ア 「【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、長さをX方向、幅をY方向、高さをZ方向とする四角棒状物のYZ断面のZ方向の一方の端部(頂部)が凸曲線に成形された透明導光体1、この透明導光体のX方向の少なくとも一方の端面に配置された光源2及び透明導光体の収納容器3で構成され、透明導光体の凸曲線で構成される凸曲面が光出射面であって、透明導光体の底面または側面においてX方向に向かって、反射面となる切り欠き部が複数個設けられた線状照明体にある。
【発明の実施の形態】透明導光体1としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック類、または無機ガラス等の公知のものが使用される。透明導光体の頂面には凸曲面が形成されており、これが光出射面となる。またこの凸曲面は集光機能を有する。
光源2としては、LED等公知の光源が使用される。透明導光体の長さが短い場合はX方向の一方の端部にのみ光源が配置される。光源の種類、光量に依存するが、一方の端部に対して1〜5個程度の光源が配置される。
収納容器3は、通常、透明導光体の凸曲面(光出射面)側にのみ開口部を有するものである。光反射機能を有する材質のもの、または内面が光反射機能を有するように加工されたものが使用される。収納容器は、透明導光体に光反射機能を発揮させるべく、透明導光体を密着状態で収納できるサイズであることが好ましい。光源を配置する側の収納容器端部には、必要に応じて光源挿入用の開口部が設けられる。
透明導光体の底面または側面に設けられる切り欠き部は、光源から導入された光をその凸曲面(光出射面)に反射する機能を有する。切り欠き部の反射面で反射された光は光出射面のレンズ作用によって集光される。光源から透明導光体中に入射された光のうち、切り欠き部の反射面に到達しなかった光はその底面、側面や端面で反射された後に切り欠き部の反射面に到達し光出射面から出射される。
切り欠き部の形状は光反射機能を有する形状であれば特に限定されない。代表的ものとして三角柱形状、半円柱形状、半楕円柱形状等が例示される。尚、三角柱等はその頂部が上側で柱(長手)方向がY方向となるように切り取られる。切り欠き部には必要に応じて光反射機能を有する膜状物、フィルム状物等を塗布、積層等することができる。」(2頁2欄2行〜2欄45行、【0004】〜【0009】)、
イ 「透明導光体のZ方向中心軸方向に出射させる場合は、切り欠き部は底面の中央部に設けられる。透明導光体のZ方向中心軸に対して所定角度をもって出射させる場合は、切り欠き部は側面または底面の中央部以外の位置に設けられるが、この場合は、製造の容易さ等から側面の最下部に設けることが好ましい。」(3頁3欄13行〜18行、【0011】)、
ウ 「この導光体を内側サイズ6mm×2mm×227mmのポリカーボネート樹脂製の白色のケースに収納し、LED光源(シチズン(株)製CL-190YG-CD)を導光体の一方の端部において縦方向(Z方向)に4個配置した。」(3頁4欄12行〜16行、【0015】)、
エ 「【図4】本発明の線状照明体の模式的なYZ断面図である。」(4頁6欄40行〜41行、【図面の簡単な説明】)が記載されている。
これらの記載ア〜エ及び図面図1〜7によれば、刊行物1には、「透明導光体1と、該透明導光体1のX方向(長さ)の少なくとも一方の端面に設けられた光源2と、該透明導光体1を収納する収納容器3(白色のケース)とから構成される線状照明体において;前記透明導光体1は四角棒状物のYZ断面のZ方向(高さ)の一方の端部(頂部)が凸曲線とからなり、前記凸曲線で構成される凸曲面に対向する底面の中央部には、X方向に向かって、反射面となる切り欠き部が複数個設けられ、少なくとも前記凸曲面に対向する底面が前記収納容器3で覆われることを特徴とする線状照明体」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
(2) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-14414号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
ア 「【課題を解決するための手段】そこで本発明では、棒状の透明体において、その表面のうち一側面を光散乱面(1a)とし、その光散乱面(1a)に対向する面を光出射面(1c)とし、残りの側面を光反射面として、かつ透明体の両方の端面(1d)にそれぞれ光源(2)を配置することにより上記光散乱面を発光面となす照明体において、以下の条件をすべて満たす棒状照明体を作製した。
(イ)光散乱面(1a)は散乱部分(1e)と光を散乱しない部分(1f)が混在しており、上記光散乱面の散乱部分の割合は、透明体の長さ方向の位置に対して変化する。
(ロ)上記散乱部分の割合は、透明体の長さ方向の中心に対して対称である。
(ハ)上記光散乱面における散乱部分の割合をFとおいて、その変化は、透明体の長さをL、片側端面を原点とする長さ方向の位置をpとして、以下の式で表わされる。」(4頁6欄5行〜22行、【0028】)、
イ 「図1に示すような散乱部分のパターンは、例えば白色の塗料あるいはインクを透明体の平滑面に印刷することにより簡単につくることができる。同様の効果は、例えば白色ドット模様の密度を変化させる、といった方法によっても得ることができる。」(5頁8欄15行〜19行、【0043】)、
ウ 「つぎに、出射面のレンズ化について述べる。図7に示すように、透明体から出射した散乱光は、透明体の出射面の幅より、広がって原稿面を照明する。この広がりを小さくして、散乱光を原稿面上のより狭い範囲に集中させるためには、図13に示すように、透明体1の光出射面1cに凸レンズ状の曲面を形成することが可能である。」(7頁11欄2行〜12欄2行、【0069】)、
エ 「具体的には、透明体端面部1dと光源2とを一体化することにより、両者の境界に空気層5をつくらないことで実現することができる。この一体化の方法としては、透明体端部1dと光源2とを接着あるいは融着したり、また透明体1を合成樹脂で作成する場合には、例えば所望の棒状透明体の成形型の片端部もしくは両端部に光源を配置して、この中に流動性を持つ透明材料を充填固化して、透明体と光源とを一体化した棒状照明体を作製すればよい。」(7頁11欄30行〜38行、【0074】)が記載されている。
(3) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-354134号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
ア 「このとき通常導光体124からの照明は、LED部材123に近い側の照度分布が相対的に高くなり、これとは逆にLED部材123から遠い側の照度分布が低くなる(このことを図9(b)に破線で示した。)。したがって、この照度分布を均一にするために通常、導光体の底面部に反射パターン124bを設ける。この反射パターン124bは、アクリル等の透明な樹脂からなる導光体124の表面に対して白印刷等で白い反射面を形成したものである。
反射パターン124bを長手方向に形成するとともに、照度分布の低いLED部材123から遠い側では連続的に設け、また照度分布の高いLED部材123に近い側では反射パターン124bに切れ目を設け不連続にする。これにより全体的な照度分布を均一化している(このことを図9(b)に実線で示した。)。このようにすることで光量の長手方向の照度分布の均一化を図るとともに、光利用効率を高めていた。」(3頁3欄13行〜29行、【0011】〜【0012】)が記載されている。
(4) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-43633号公報(以下、「刊行物4」という。)には、
ア 「まず、光線透過率が80%以上で屈折率が1.4〜1.7である、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニ-ル樹脂、あるいはガラスのような透光性材料を用いて成形した導光体1の側面の表面に光拡散部2を形成する。但し、導光体1の光拡散部2以外の全表面は滑面である必要があり、インジェクション成形法や押しだし法で成形し、必要があればその後、研磨等の処理を行う。又この時、光拡散部2は導光体1の側面の表面に成形した溝としてもよい。次に、導光体1の底面4に例えば、図2に示したような発光角度分布(指向特性)が30度〜150度である発光体3(例えば発光ダイオード)を密着させ、発光体3を点灯させると、発光体3が放出した光は、底面4から導光体1の内部に入射し、図3に示すようなスネルの法則に従った振舞いをする。・・・(中略)・・・又、ここでは第一の実施例として図1に示すような円柱形状の導光体1を例としたが、形状は多角柱等の柱状であってもよい。又、光拡散部2は、図1では導光体1の一側面の表面に、一定幅で連続的に形成したが、照明ムラのない均一な照明光を出すために導光体1の両端から中央部にかけて光拡散部2の幅や面積を変化させ、例えば図4に示したように発光体3が設置されている導光体1の底面4から中央部に向かって次第に大きくなるように連続的に形成したり(図4a)、導光体の一側表面に、不連続的に一定ピッチで、かつ一定形状で形成したり(図4b)、あるいは導光体の一側表面に、不連続的に一定ピッチで、かつ光拡散層面積が導光体1の底面4から中央部に向かって次第に大きくなるように形成したり(図4c)、導光体1の一側表面に、不連続的に一定形状で、かつ導光体1の底面4から中央部に向かって次第にピッチが狭くなるように形成(図4d)してもよい。さらに導光体1の表面は、導光体1の一側表面に設けた光拡散部2と、光出射面5と、発光体3を備えた底面4以外は完全光反射層41を形成する(図4e)方法もある。ここで完全反射層41はパラジウム、鉄、クロム、アルミニウム、銀、ニッケル等の金属やこれら合金の金属薄膜、あるいはこれらの合金片や粒子を含むインキ等を蒸着法、スパッタ法、転写法、メッキ法、塗装法、印刷法によって形成する。又、導光体1の表面の光拡散部2の表面状態は、JIS規格B0601に示されている表面の粗さで中心線平均粗さRaが(100〜0.013)a、最大高さRmaxが(400〜0.05)Sの粗面や、図5に示すようなピッチ50μm〜2000μmで山の高さ20μm〜800μmの三角波面(あるいはのこぎり波面)とするとよい。又、本実施例に示したように導光体1が円柱状であれば、導光体1の断面形状は図6に示すように 導光体1の光出射面5に、二面の平面部を形成し、その二平面による挟角が90度である形状としてもよい。」(5頁7欄2行〜8欄17行、【0015】)が記載されている。
(5) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-126581号公報(以下、「刊行物5」という。)には、
ア 「上記実施例5と比較例3から、発光ユニットと棒状透明導光体の一端との間にはできるだけ隙間を設けないようにすることが好ましい。このための具体的な構成として凹凸係合が考えられる。」(6頁9欄40行〜43行、【0048】)、
イ 「次に、ケースから導光体の一部がはみ出した場合の相対照度について実験した結果を以下の実施例6に示す。・・・(中略)・・・(評価)ケースから導光体の一部がはみ出ていると、図15に示すようにはみ出した部分で照度が極端に低下することが分かる。」(6頁9欄44行〜10欄4行、【0049】〜【0050】)、
ウ 「実施例7、比較例4,5,6を総合的に評価すると、以下のことが言える。先ず、光源として3原色(R,G,B)を用いた場合には、ケース内面の色を赤、黄等の有彩色とした場合には、照度の均一性が長さ方向において不均一になる。一方、実施例7及び比較例4からも分るように、無彩色の場合には均一性を保つことができる。しかしながら、無彩色であっても、暗い色を用いた場合には照度の絶対値が低下してしまうので、明るい色特に白色を用いることが好ましい。」(6頁10欄48行〜7頁11欄6行、【0056】)が記載されている。
(6) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-55464号公報(以下、「刊行物6」という。)には、
ア 「上記回路基板6は、ケース4の底部に設けられた凹部49内に、上記ケース4の下方から嵌合されている。上記アタッチメント69は、上記回路基板6をケース4に対して取付けるためのものあり、ケース4に対してその下方から外嵌し、ケース4の左右外側面に設けられている係合用突起48,48に係止させられることにより、上記回路基板6が下方へ脱落することを防止する。上記アタッチメント69は、たとえば薄肉金属板をプレス加工するなどして形成されており、適度な弾力性を発揮するものである。」(9頁15欄46行〜16欄5行、【0060】)、
イ 「図18に示す導光部材1Cは、透明部材10の長手方向両端部のそれぞれの端面10F,10Gを光入射部とした構成である。このように、本願発明では、透明部材10の長手方向端部の端面を光入射部とすることもできる。」(10頁18欄45行〜49行、【0072】)が記載されている。
(7) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-95360号公報(以下、「刊行物7」という。)には、
ア 「<請求項4の実施例>図9〜13は請求項4に係る光源装置の構成例を示す図である。この実施例の光源装置は、透光板5と、光源部6(6a,6b)と、コネクタ7aおよび疑似コネクタ7bとを有しており、図9に示すように、透光板5の左右の端部に光源部6a,6bを取り付けた後、図10に示すように光源部6a,6bを覆うようにコネクタ7aおよび疑似コネクタ7bを取り付けることによって構成される。
以下、詳細に構成を説明する。
図11(A)、(B)、(C)はそれぞれ透光板5の正面図、背面図、側面図である。また、図12(D)は光源部6の外観図であり、図12(A)、(B)、(C)はそのA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図である。さらに図13はコネクタ7aの外観図である。
透光板5はポリカーボネート等の透明樹脂、または透明ガラス等からなり、横長の四角柱形状に構成されている。この透光板5の下面にはフレネルミラー51が形成されている。フレネルミラー51は、透光板5の下面部を鋸歯状に形成し、この鋸歯状部に光反射率の高い材料、例えばアルミニウム等の金属膜を付加したものである。透光板5の左右の端面にはそれぞれ、光源部6を取り付けるための凹状の挿入穴53(53a,53b)が形成されている。この挿入穴53に、図12に示す光源部6が挿入される。
光源部6は、遮光性の高い樹脂液晶ポリマー等の樹脂からなる基板61上に、複数個のLED1を実装し、その上を、光透過性の良いエポキシ樹脂等でモールドしたものである(モールド部62)。このモールド部62が凸状になっており、この凸状の部分が前記透光板5の挿入穴53に嵌入される。
コネクタ7aは、樹脂成形により光源部6aおよび透光板5の端部を覆うようにほぼ箱型に形成されたものであり、透光板5に光源部6aを取り付けた後その上にはめ込まれる。なお、疑似コネクタ7bもほぼ同様に構成される。
上記のように構成される光源装置を点灯させると、光源部6のLED1から発せられた光は透光板5のフレネルミラー51で反射され、透光板5の上面の光出力面52から出力される。」(4頁6欄33行〜5頁7欄22行、【0042】〜【0048】)が記載されている。
(8) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-196819号公報(以下、「刊行物8」という。)には、
ア 「【従来の技術】従来、原稿画像を読み取る画像読取装置として、原稿と密着しながら原稿を走査することで画像を読み取る密着型イメージセンサがあった。このような密着型イメージセンサの一例を図14に示す。
図14において、導光体2の端面に配置されたLED等の発光素子からなる光源1から照射された光は導光体2の内部に入射し、導光体2の内面反射を繰り返すことにより導光体2の長手方向に導光される。導光体2の一部には長手方向に沿って拡散面4が設けられており、長手方向に内面反射を繰り返した光が拡散面4に入射すると入射した光は散乱され、その一部が原稿を照明する照明光として寄与する。
ここで導光体2の外側には、光の利用効率を向上させるために図15に示すような導光体カバー3が設けられており、導光体2から原稿照射方向と異なる方向に漏れた光を導光体中に再び戻すために導光体を空気層を介して覆うように取付けられている。そのため導光体カバー3は、光反射性の良い例えば白色の材料で形成されている。導光体カバー3の開口部16における導光体2の射出面5(射出した光が被照明体である原稿の照明に寄与する導光体2の面)から照射された光は、読み取りライン6に位置する不図示の原稿を照射し、その反射光がロッドレンズアレイ7によりセンサアレー9に配置されたラインセンサ11上に結像される。そしてラインセンサ11が結像された光情報を電気信号に変換して出力することで、原稿の読み取りが行われる。
【発明が解決しようとする課題】図16は、端部にLED1を有する導光体2及び導光体カバー3のみを示した図である。導光体2を覆っている導光体カバー3は、主に射出成形により製造されるため、金型の抜き取りのために金型の抜き方向となる一辺は開口となっている。そのため導光体2の射出面5に対して、導光体カバー3の開口の方が大きくなり、導光体2の側面12から被照明体である原稿の照明に寄与しない光が漏れてしまい、光の利用効率を低下させる大きな原因となっていた。
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の導光体では、光不透過部材からなる導光体カバーに内蔵され、被照明体を照射するために光源からの光を長手方向に導光し光を照射する光透過部材からなる導光体であって、前記導光体カバーから露出した部分において所定方向に光を照射する射出部以外に光漏れを制限するための光漏れ防止部を設けたことを特徴とする。」(3頁3欄33行〜4欄27行、【0002】〜【0006】)が記載されている。

2.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「透明導光体1」、「X方向」、「光源2」、「収納容器3(白色のケース)」、「線状照明体」及び「底面の中央部」は、本願補正発明の「透明棒」、「長手方向」、「発光装置」、「白色の枠」、「線状照明装置」及び「平面の中心部分」に相当する。
引用発明の「透明導光体1」は、四角棒状物のYZ断面のZ方向(高さ)の一方の端部(頂部)が凸曲線とからなるのであるから、長手方向に平行な3つの平面と1つの凸状の曲面とを有し、その長手方向に垂直に切断したときの断面形状の外周が直角に連続する3辺と凸状の曲線とからなるといえる。
引用発明の「反射面となる切り欠き部が複数個設けられ(た領域)」は、ライン上照明を均一に行うための構成であるから、本願補正発明の「光を乱反射する光拡散領域」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明1は、「透明棒と、該透明棒の長手方向の端面に設けられた発光装置と、該透明棒を覆う白色の枠とから構成される線状照明装置において;前記透明棒は長手方向に平行な3つの平面と1つの凸状の曲面とを有し、前記透明棒を長手方向に垂直に切断したときの断面形状の外周が直角に連続する3辺と凸状の曲線とからなり、前記凸状の曲面に対向する平面には、光を乱反射する光拡散領域が、該平面の中心部分に長手方向に沿って形成され、少なくとも前記凸状の曲面に対向する平面が前記白色の枠で覆われていることを特徴とする線状照明装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願補正発明は、「前記断面形状における前記凸状の曲線に対向する辺の長さ(L)とそれと直角につながっている辺の各々の長さ(M)との寸法比が、0.25L ≦ M ≦ 1.5Lを満足し」ているのに対して、引用発明は、その記載がない点。
相違点2
本願補正発明は、「前記透明棒の長手方向の両端にそれぞれ前記発光装置が設けられ」ているのに対して、引用発明は、その記載がない点。
相違点3
本願補正発明は、「前記透明棒が前記白色の枠内で長手方向に動く構造とし、かつ両端に設けられた前記発光装置が、弾力によって前記透明棒を押し合いながら、前記透明棒の長手方向の両端に接している」のに対して、引用発明は、その記載がない点。

3.判断
以下、相違点1〜3について検討する。
相違点1について
引用発明の凸面は集光機能があることが記載され、そして、刊行物1の図4の左上側に図示されているものは、概略「前記断面形状における前記凸状の曲線に対向する辺の長さ(L)とそれと直角につながっている辺の各々の長さ(M)との寸法比が、0.25L ≦ M ≦ 1.5Lを満足し」ているものと認められる。
そして、透明導光体1を設計する場合、光を発散することなく収束させることは、普通のことであり(上記刊行物2)、また、小型化も望まれているとともに、光を光射出面に向かわせる切り欠き部の位置が凸面の焦点距離より大きければ光は発散することなく収束すること、及び屈折率が1.5程度の半球レンズにおいては、焦点距離は、そのレンズの直径程度に相当する距離となることは、光学の技術分野では技術常識である。
してみると、引用発明において、「前記断面形状における前記凸状の曲線に対向する辺の長さ(L)とそれと直角につながっている辺の各々の長さ(M)との寸法比が、0.25L ≦ M ≦ 1.5Lを満足し」とすることは、当業者が容易に推考することができたものと認められる。
相違点2について
引用発明においても、「少なくとも一方の端面に設けられた光源2」と記載され、透明棒の長手方向の両端にそれぞれ前記発光装置が設けることは、周知な事項(上記刊行物2,刊行物4,刊行物6,刊行物7)であるから、引用発明において、「前記透明棒の長手方向の両端にそれぞれ前記発光装置が設けられ」ることとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
相違点3について
引用発明において、「収納容器は、透明導光体に光反射機能を発揮させるべく、透明導光体を密着状態で収納できるサイズであることが好ましい」とされるが、引用発明と同一技術分野に属する刊行物8には、「導光体2の外側には、光の利用効率を向上させるために図15に示すような導光体カバー3が設けられており、導光体2から原稿照射方向と異なる方向に漏れた光を導光体中に再び戻すために導光体を空気層を介して覆うように取付けられている。」と記載されている。これを引用発明に採用した場合、透明導光体と収納容器は空気層を介するのであるから、透明導光体1を光源2側で支えることが普通に推考できる。
また、明るさを低下させないため、光源2を透明導光体1に密着させることことは周知な事項(上記刊行物2、刊行物4、刊行物5、刊行物7、特開平6-3528号公報)であり、一の物体を他の物体に密着させるために弾力による技術は慣用手段(刊行物6の薄肉金属板、電池収納容器のバネ、棒状蛍光灯の取り付け端子のバネ部分)である。棒状体を取り付けるため、両側の装置が、弾力によって棒状体を押し合いながら、棒状体の両端に接している技術も慣用手段(実願平2-28557号(実開平3-118093号)のマイクロフィルムの押圧バネを用いたもの、実願昭52-149554号(実開昭54-74857号)のマイクロフィルムの弾力性を有する発泡樹脂製の円筒状のスペーサを用いたもの)といえる。そして、弾性体で支持されるものは、弾性体の方向に動く構造となるのが一般的である。
してみると、引用発明に刊行物8に記載された発明、及び上記周知な事項、慣用手段を採用して、「前記透明棒が前記白色の枠内で長手方向に動く構造とし、かつ両端に設けられた前記発光装置が、弾力によって前記透明棒を押し合いながら、前記透明棒の長手方向の両端に接している」とすることは、当業者が容易に想到できたものである。

また、本願補正発明の奏する作用効果は、刊行物1〜8に記載された発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1〜8に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成15年10月2日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月14日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 透明棒と、該透明棒の長手方向の端面に設けられた発光装置と、該透明棒を覆う白色の枠とから構成される線状照明装置において;
前記透明棒は長手方向に平行な3つの平面と1つの凸状の曲面とを有し、前記透明棒を長手方向に垂直に切断したときの断面形状の外周が直角に連続する3辺と凸状の曲線とからなり、
前記凸状の曲面に対向する平面には、光を乱反射する光拡散領域が、平面の中心部分に長手方向に沿って形成され、
前記断面形状における凸状の曲線に対向する辺の長さ(L)とそれと直角につながっている辺の各々の長さ(M)との寸法比が、
0.25L ≦ M ≦ 1.5L
を満足し、
前記透明棒の長手方向の両端にそれぞれ発光装置が設けられ、
少なくとも前記凸状の曲面に対向する平面が白色の枠で覆われ、
前記透明棒が白色の枠内で長手方向に動くことが可能であり、かつ
両端の発光装置が透明棒を押し合いながら、透明棒の長手方向の両端に接していることを特徴とする線状照明装置。」
1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記「第2 1.」に記載したとおりである。
2.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2.」、「第2 3.」に記載したとおり、刊行物1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1〜8に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1〜8に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-28 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-04-17 
出願番号 特願2001-22946(P2001-22946)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 鈴木 明
田中 幸雄
発明の名称 線状照明装置、およびそれを用いた画像読み取り装置  
代理人 森 廣三郎  

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