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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1138385
審判番号 不服2004-12392  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-08-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-17 
確定日 2006-06-15 
事件の表示 特願2001- 18532「携帯電話緊急通報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 9日出願公開、特開2002-223322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年1月26日の出願であって、平成16年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年7月16日に手続補正がなされたものである。

2.平成16年7月16日付けの手続補正について
【請求項1】中の「登録者以外の声紋で発信したとき、緊急通報を発信する機能」を「登録者以外の声紋で発信したときには緊急通報を発信する機能」とする、平成16年7月16日付けの手続補正は、誤記の訂正ないし不明りょうな記載の釈明に該当するので、特許法第17条の2第4項第3ないし4号の規定に適合する。

3.本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1〜17に係る発明は、平成16年7月16日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「携帯電話機と、通報センタ用装置と、からなり、携帯電話機保持者が緊急時に通報センタに通報することができるシステムであって、
前記携帯電話機は、周囲の状況を録音・録画する機能と、ワンタッチ操作で緊急通報を発信するとともに通報先へ録音・録画データを送信する機能と、声紋を登録する機能と、登録者以外の声紋で発信したときには緊急通報を発信する機能とを有することを特徴とする携帯電話緊急通報システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-41669号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a.「【0001】
【産業上の技術分野】この発明は、デジタルカメラやGPS機能などを内蔵した携帯電話機と受信装置とからなる防犯携帯電話システムに関する。」(第2頁2欄第39〜42行)

b.「【0016】デジタルカメラ2としては、本実施例ではCCD(電荷結合素子)カメラが用いられており、内部メモリM1の容量により異なるが、静止画または動画を内部メモリM1に取り込めるようになっている。マイクロフォン5は、携帯電話機の通話用と兼用であって、後述の実行キーK2の投入によって所定時間、マイクロフォン5から入力された音声を内部メモリM1にデジタル録音することができる録音装置(図示せず)が設けられている。ここでマイクロフォン5は、携帯電話機用のものと別に録音装置専用のものを用いてもよい。
【0017】携帯電話機1にはマイクロコンピュータ構成の防犯システムコントローラC1が設けられており、内部メモリM1に上記のようにデジタルカメラ2で撮影した画像データと、マイクロフォン5から入力された音声データとを一時的に記録する。この携帯電話機1には、送信スイッチの一例として、準備キーK1と実行キーK2がそれぞれ設けられている。
【0018】準備キーK1の投入によって、前記コントローラC1は、携帯電話機機能を制御して予め設定されている電話番号を自動ダイヤルし、無線公衆電話回線を利用して相手局との通信路を形成し、自宅等に置かれた受信装置10の電話機(モデム)に自動的に接続する。
【0019】次いで、実行キーK2が投入されると、前記コントローラC1は、デジタルカメラ2を作動させて撮影を行い、静止画像を内部メモリM1に取り込む。これと同時にマイクロフォン5に吹き込まれた所定時間の音声データも上記メモリM1に取り込む。本実施例では準備キーK1と実行キーK2とに分けたが、1つのキースイッチで両者の機能を行わせてもよい。
【0020】そして、コントローラC1は、内部メモリM1に取り込まれた上記画像データおよび音声データをモデム8で変調して、前記開通した通信路を通って、受信側のモデムを介して受信装置10のメモリM2に転送される。」(第4頁5欄第18行〜同6欄第1行)

c.「【0025】上記構成からなっているので、前記携帯電話機1を保持している使用者は、自分の身に危険を感じたら準備キーK1を押す。これにより携帯電話機1と受信装置10とは無線公衆電話回線を通じて接続される。そして、危険な人物なり状況が近づいたら実行キーK2を押す。これにより、デジタルカメラ2と録音装置のマイクロフォン5がONとなって、例えば危険人物の顔や身体的特徴、乗用車等の種々の画像データと、相手の声または自分の声等の種々の音声データを取り込み一旦、内部メモリM1に記録する。
【0026】そして記録された上記データはモデム8で変調されて相手局との通信路が形成されている前記電話回線を通じて受信装置10に送信され、受信装置10側のモデム18で復調されてメモリM2に記憶させる。ここで、受信装置10や再生装置は、使用者の自宅に置いてもよいが、専門の留守番電話センターやデータ管理センターなどに設けておいてもよい。」(第4頁6欄第35行〜第5頁7欄第1行)

上記摘記事項a.記載の「受信装置」は、上記摘記事項c.の記載から「通報センタ用装置」といえる。
上記摘記事項c.記載の「前記携帯電話機1を保持している使用者」は、「携帯電話機保持者」といえる。
上記摘記事項a.記載の「防犯携帯電話システム」は、上記摘記事項c.記載から、緊急時に通報する「携帯電話緊急通報システム」といえる。
上記摘記事項b.の記載から、内部メモリM1に静止画または動画である画像データと音声データとを一時的に記録していることから、「携帯電話機」は「録音・録画する機能」を有するといえ、内部メモリM1に一時的に記録された画像データおよび音声データは、「録音・録画データ」といえる。
上記摘記事項b.の「本実施例では準備キーK1と実行キーK2とに分けたが、1つのキースイッチで両者の機能を行わせてもよい。」との記載から、「携帯電話機」は「ワンタッチ操作」で行うものといえる。

よって、上記摘記事項a.〜c.の記載、関連する図面及びこの分野の技術常識を考慮すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)
「携帯電話機と、通報センタ用装置と、からなり、携帯電話機保持者が緊急時に通報センタに通報することができるシステムであって、
前記携帯電話機は、周囲の状況を録音・録画する機能と、ワンタッチ操作で緊急通報を発信するとともに通報先へ録音・録画データを送信する機能とを有することを特徴とする携帯電話緊急通報システム。」

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「携帯電話機と、通報センタ用装置と、からなり、携帯電話機保持者が緊急時に通報センタに通報することができるシステムであって、
前記携帯電話機は、周囲の状況を録音・録画する機能と、ワンタッチ操作で緊急通報を発信するとともに通報先へ録音・録画データを送信する機能とを有することを特徴とする携帯電話緊急通報システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明は「声紋を登録する機能と、登録者以外の声紋で発信したときには緊急通報を発信する機能とを有する」のに対し、引用発明はそのような機能を有していない点

(4)判断
上記相違点について検討する。
携帯電話の使用者の認証を行って、不正使用であったときには連絡先に通知することで緊急通報を行うものは、特開平9-322246号公報【0016】等に示されているように、周知技術である。
また、電話機の使用者である話者の認証を行うために、声紋を登録する機能を有し、登録者以外の声紋で発信したか否かを判断するものも、特開平8-84190号公報【0003】等に示されているように、周知技術である。
したがって、引用発明に上記緊急通報を行う周知技術を追加する際に、認証技術として上記周知技術を適用して、「声紋を登録する機能と、登録者以外の声紋で発信したときには緊急通報を発信する機能とを有する」よう構成することは、当業者が容易なし得ることと認められる。

また、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明および周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-12 
結審通知日 2006-04-18 
審決日 2006-05-01 
出願番号 特願2001-18532(P2001-18532)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀樹稲葉 和生  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 宮下 誠
畑中 博幸
発明の名称 携帯電話緊急通報システム  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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