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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1138609
審判番号 不服2003-17705  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-11 
確定日 2006-06-22 
事件の表示 特願2001-51085号「ICソケット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月6日出願公開、特開2002-252068号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月26日の出願であって、平成15年8月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年10月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年10月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成15年10月8日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「集積回路素子の電極と基板上の電極の間の電気的接続に用いるICソケットであって、上記電極間に配置される楕円リング状のコンタクトを複数備え、これらコンタクトは前記基板面に対し所定の同一の角度で傾いて配置される複数の第1のコンタクトと複数の第2のコンタクトを備え、第1および第2のコンタクトが前記基板面に対して傾く向きが互いに逆向きとなるように各コンタクトの外周部の両側を直接保持しかつ列状に配列せしめるコンタクト保持部を備え、該ソケットを基板の所定位置に設置するためのボス部を備えることを特徴とするICソケット。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「コンタクト保持部」について、「各コンタクトの外周部の両側を直接保持しかつ列状に配列せしめる」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-88061号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 LGAパッケージのICに備えられたLGA電極と基板に備えられた基板電極との間を接続するコンタクトを含むコネクタにおいて、前記コンタクトが、前記LGA電極及び前記基板電極に対して斜めに配置され、且つ前記LGA電極と前記基板電極とを接続する対の経路を有し、該対の経路は、該対の経路でそれぞれ発生する磁場が互いに相殺するように形成されていることを特徴とする低インダクタンスコネクタ。
【請求項2】 前記コンタクトがリング状であることを特徴とする請求項1記載の低インダクタンスコネクタ。
【請求項3】 前記コンタクトが楕円リング状であることを特徴とする請求項2記載の低インダクタンスコネクタ。
【請求項4】 前記LGAパッケージのICと前記基板との間に介在し、前記コンタクトを保持する保持部材が備えられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の低インダクタンスコネクタ。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【産業上の利用分野】本発明は、コネクタに関し、特に、LGA(ラウンド グリッド アレイ)パッケージのICに備えられたLGA電極と基板に備えられた基板電極との間を接続するコンタクトを含む低インダクタンスコネクタに関するものである。」(段落【0001】)
(ウ)「図1に示すように、基板1とLGAパッケージ6は所定の間隔をおいて離間平行に配置されており、且つ基板1の基板電極2とLGAパッケージ6のLGA電極5は、水平方向にずれた位置で対向するように配置されている。
上述の基板電極2とLGA電極5とは楕円リング状のコンタクト3によって接続されている。そして、基板1の基板電極2とこの基板電極2に接触するLGAパッケージ6のLGA電極5との間の寸法は、コンタクト3の直径より小さい寸法に設定されており、且つ両電極2,5が水平方向にずれた位置で対向するようになっているため、コンタクト3の姿勢(コンタクト3の両電極2,3に接触する点を結んだ線分)が斜めになっており、この状態でコンタクト3は、両電極2,5を接続している。
各基板電極2と各LGA電極5とを接続する楕円リング状のコンタクト3は、板状の絶縁弾性体から成り且つ基板1とLGAパッケージ6の間に介在する保持部材4によって保持されている。
尚、図1は本実施例を模式的に示したものであり、一次元配列として示しており、押え構造などを省略して表している。」(段落【0012】〜【0015】)
(エ)図1には、コネクタはLGA電極5及び基板電極2の間に配置される楕円リング状のコンタクト3を複数備え、これらコンタクト3は基板面に対し所定の同一角度で傾いて列状に配列せしめる保持部材4を備えることが図示されている。

引用例1の図1には、楕円リング状のコンタクトが1列しか図示されていないが、LGAパッケージに用いられるコンタクトの列は複数列からなることは明らかなことである(必要であれば特開平9-330774号公報、特開平10-326653号公報等参照)から、引用例1に記載されたLGAパッケージに用いられるコンタクトは、少なくとも図1に記載される複数の第1のコンタクトが列状に配列されたものと、それとは別の複数の第2のコンタクトが列状に配列されたものとの複数列が配置されているものであるといえる。
したがって、これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、
「LGAパッケージ6のICに備えられたLGA電極5と基板1に備えられた基板電極2の間を接続するコネクタであって、LGA電極5及び基板電極2の間に配置される楕円リング状のコンタクト3を複数備え、これらコンタクト3は基板面に対し所定の同一角度で傾いて配置される複数の第1のコンタクトと複数の第2のコンタクトを備え、第1および第2のコンタクトを保持しかつ列状に配列せしめる保持部材4を備えるコネクタ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「LGAパッケージ6のICに備えられたLGA電極5」が、その機能・構造等からみて前者における「集積回路素子の電極」に相当し、以下同様に、「基板1に備えられた基板電極2」が「基板上の電極」に、「間を接続する」が「間の電気的接続に用いる」に、「コネクタ」が「ICソケット」に、それぞれ相当している。
また、後者の「第1および第2のコンタクトを保持しかつ列状に配列せしめる保持部材4」と前者の「第1および第2のコンタクトが前記基板面に対して傾く向きが互いに逆向きとなるように各コンタクトの外周部の両側を直接保持しかつ列状に配列せしめるコンタクト保持部」とは、「第1および第2のコンタクトを保持しかつ列状に配列せしめるコンタクト保持部」という概念で共通している。

したがって、両者は、
「集積回路素子の電極と基板上の電極の間の電気的接続に用いるICソケットであって、上記電極間に配置される楕円リング状のコンタクトを複数備え、これらコンタクトは基板面に対し所定の同一の角度で傾いて配置される複数の第1のコンタクトと複数の第2のコンタクトを備え、第1および第2のコンタクトを保持しかつ列状に配列せしめるコンタクト保持部を備えるICソケット。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]第1および第2のコンタクトを保持しかつ列状に配列せしめるコンタクト保持部に関し、本願補正発明では、第1および第2のコンタクトが前記基板面に対して傾く向きが互いに逆向きとなるように各コンタクトの外周部の両側を直接保持しているのに対し、引用発明では、そのような構成となっているか否かが明確でない点。
[相違点2]本願補正発明では、ソケットを基板の所定位置に設置するためのボス部を備えているのに対し、引用発明では、そのようなボス部を備えているか否かが明確でない点。

(4)判断
そこで上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
複数の第1のコンタクトと複数の第2のコンタクトの向きが逆向きとなるように保持部で保持することは周知技術(必要であれば特開平10-177886号公報の図6,8、特開平10-50432号公報の図3,4、特開平8-236237号公報の図10等参照)であり、必要に応じて第1および第2のコンタクトの基板面に対する傾きを逆向きとすることは上記周知技術に基づいて当業者であれば容易に想到し得ることである。また、コンタクトの保持の仕方としてその外周部の両側を直接保持するような保持の仕方はごく普通に行われているもの(必要であれば特開2000-357570号公報の図6(a)参照)にすぎず、必要に応じてこのような保持の仕方を保持部に採用する程度のことは単なる設計的事項にすぎない。

次に相違点2について検討する。
ソケットと基板との位置決めをするためにボス部を設けることは周知技術(必要であれば特開平6-349557号公報の【0032】及び図12参照)であり、必要に応じて該周知技術を採用して上記相違点2のような発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願補正発明の効果についても、引用発明及び周知技術から当業者の予測し得る範囲内のことである。

なお、審判請求人は、請求の理由の中で、隣接するコンタクトが互いに逆向きに配置された例として引用された公報にはコンタクトのハウジング部におけるせん断応力の緩和という本発明の目的について何ら認識がない旨主張しているが、例えば、特開平10-177886号公報には、互いに相反する方向に配向されているコンタクトの複数の列について、これらの互いに対向する複数のコンタクト・ポイントは介在する力を分配し、さらには装置を接続装置に対して中心に位置決めするセルフセンタリング動作を提供し得ることが記載(段落【0046】参照)されており、このような接続装置に対するセルフセンタリング動作からせん断応力の緩和は十分認識できるものであるから請求人の上記主張は採用することができない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年10月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項5に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「集積回路素子の電極と基板上の電極の間の電気的接続に用いるICソケットであって、上記電極間に配置される楕円リング状のコンタクトを複数備え、これらコンタクトは前記基板面に対し所定の同一の角度で傾いて配置される複数の第1のコンタクトと複数の第2のコンタクトを備え、第1および第2のコンタクトは前記基板面に対して傾く向きが互いに逆向きであることを特徴とするICソケット。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明の発明を特定するために必要な事項である「各コンタクトの外周部の両側を直接保持しかつ列状に配列せしめるコンタクト保持部を備え、該ソケットを基板の所定位置に設置するためのボス部を備える」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-24 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-09 
出願番号 特願2001-51085(P2001-51085)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 平上 悦司
北川 清伸
発明の名称 ICソケット  
代理人 工藤 雅司  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  

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