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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1139032 |
審判番号 | 不服2001-22311 |
総通号数 | 80 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-10-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-13 |
確定日 | 2006-06-29 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 60936号「レバー嵌合式コネクタのロック構造」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 3日出願公開、特開平 9-259971号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成8年3月18日の出願であって、平成13年10月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年12月13日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年1月15日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 II.平成14年1月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年1月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「相嵌合する一対のコネクタハウジングの一方のコネクタハウジングにカム溝を有するレバーを回動自在に装着し、他方のコネクタハウジングに被駆動ピンを設け、該カム溝に該被駆動ピンを係入して該レバーを回動することにより双方のコネクタハウジングの嵌合、離脱を行うようにしたレバー嵌合式コネクタのロック構造であって、 前記レバーの操作部に、該操作部に結合して交差方向に突出した基部と、該基部に交差して続き、該操作部に相対向して平行に延び、撓み時に該操作部に当接可能に離間して位置する自由端部と、を備えた可撓係止腕が付設されるとともに、該可撓係止腕には係止部が設けられ、該一方のコネクタハウジングの外周壁に、該係止部と係合する係止突部が設けられ、該係止突部に該係止部が係合することにより、該一方のコネクタハウジングに対し該レバーの回動をロックするようにしたことを特徴とするレバー嵌合式コネクタのロック構造。」 2.補正の目的 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「可撓係止腕」に関して、その操作部に結合する基部の突出方向について、基部が操作部に「交差方向に突出」する点を限定するとともに、その基部に連接する自由端部の配置について、「基部に交差して続き、該操作部に相対向して平行に延び、撓み時に該操作部に当接可能に離間して位置する」点を限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないので、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-13129号公報(以下「引用例」という。)には、「レバー付コネクタ」について図面と共に次の事項が記載されている。 a.(4ページ6欄【0023】段落) 「本発明の第2実施例では、雌コネクタを雄コネクタに挿入し始めるとカムピンがレバーのカム溝に摺動する力により、仮係止位置にあるレバー先端の可撓係止片が離脱しレバー先端が操作し易い位置まで回動し、レバーを回動させて小さい力で両コネクタを嵌合させ、該可撓係止片を本係止突起に係止するよう構成した。」 b.(5ページ8欄【0033】段落〜6ページ9欄【0035】段落) 「図6は本発明による第2実施例の分解斜視図である。A′は雄コネクタ、B′は雌コネクタ、C′はレバーを示す。雄コネクタA′の合成樹脂からなるハウジング1′は、内部に複数の端子収容室2′を有し、両側壁の前方にカムピン3′を突設してあり、前記端子収容室2′には図示しない雌ターミナルが収容されている。 雌コネクタB′は、前記雄ターミナルに対応する雄ターミナルを収容したハウジング本体4′の前方に雄コネクタA′を受け入れるフード5′を備えている。フード5′には、その両側壁にカムピン3′に対するピン案内溝6′が形成されるとともに、レバーC′を軸支するピン7′がそれぞれ連設されている。更にフード5′の他方の側壁端部には両側にスリット9a′形成された本係止部材たる本係止突起9′が設けられるとともに、ハウジング本体4′の該側壁下端よりの前記本係止突起9′と対向する位置に仮係止部材たる仮係止突起10′が設けられ、下端に突起4a′が形成されている。 レバーC′は一対の側板11′の端部を操作部を兼ねた連結バー12′で連結し、該連結バー12′から可撓係止片12a′が連設され、側板11′には円弧状のカム溝13′が設けられるとともに、側板11′のほぼ中央に支点孔14′が設けられ前記雌コネクタB′のピン7′と軸支手段を構成している。」 c.(6ページ9欄【0037】段落〜【0038】段落) 「次いで、図7(B)に示すように雄コネクタA′を雌コネクタB′に挿入する、この時雄コネクタA′のカムピン3′はフード5′のピン案内溝6′に挿入されるとともに、レバーC′のカム溝13′に挿入され摺動する為、レバーC′にCWのトルクD′を与える。この為図7(C)に示すように両コネクタの離脱深度が進むに連れて、レバーC′の可撓係止片12a′は仮係止突起10′から離脱し、図7(D)に示す位置まで回動しレバーC′の連結バー12′はフリーとなり指を容易にかけられる範囲に位置する。次いで、レバーC′をCWに回動して連結バー12′の可撓係止片12a′を図8に示すように本係止突起9′に係止し雄コネクタA′と雌コネクタB′との嵌合は完了する。 雄コネクタA′を雌コネクタB′から離脱させるには、レバーC′の連結バー12′を下方に押し下げると可撓係止片12a′は、可撓係止片12a′自身の撓みとスリット9a′により可撓性をもった本係止突起9′の両方の撓みにより容易に可撓係止片12a′の先端のテーパー部12b′が本係止突起9′から離脱する。次いで、レバーC′をCCWに回動すると、カム溝13′をカムピン3′が摺動する為めカムピン13′を外方即ち雄コネクタA′を雌コネクタB′から離脱する方向の力が生じて離脱は進行する。可撓係止片12a′の先端12b′が仮係止突起10′に係止された位置でカム溝13′の開口部とピン案内溝6′とが重なり離脱は完了し雄コネクタを取り出せば良い。」 d.(4ページ5欄【0019】段落) 「さらに、・・・中略・・・一方のコネクタの前記レバーに係止部材を設けるとともに、該コネクタに前記係止部材と係合する仮係止部材及び本係止部材を設け、少なくとも前記何れか一方の係止部材に可撓性を持たせた構成とした。」 e.(7ページ11欄【0046】段落) 「・・・前略・・・コネクタの挿入,離脱のときは小さな力で操作でき、嵌合したときは確実に本係止突起とロック溝とにより2重にロック出来ることを特徴とする。」 そして、図6〜図8には、第2実施例が図示されており、レバーC′の操作部である連結バー12′に結合して交差方向に突出した可撓係止片12a′と、これに交差して続き、連結バー12′に離間して位置する先端12b′とが図示され、特に図8には、先端12b′が本係止突起9′に係合してロックした状態が図示されている。 記載a〜cによれば、引用例には、発明の第2実施例として、雌コネクタB′を雄コネクタA′に挿入し、雄コネクタA′のカムピン3′を、雌コネクタB′に軸支したレバーC′のカム溝13′に摺動させてレバー先端を操作し易い位置まで回動させた後、操作部である連結バー12′に指をかけてレバーC′を回動させると、両コネクタが嵌合し、嵌合が完了するとレバーC′の可撓係止片12a′に交差して続く先端12b′が雌コネクタB′の本係止突起9′に係止するようにした、レバー付コネクタが記載されており、記載eによれば、この時、レバーC′が本係止突起9′にロックすることが記載されていると言える。 また、記載dによれば、レバーの係止部材とコネクタの本係止部材の少なくとも何れか一方の係止部材に可撓性を持たせれば良いのであるから、引用例には、レバーC′の可撓係止片12a′のみに可撓性を持たせ、雌コネクタB′の本係止突起9′には特に可撓性を持たせないものが示唆されていると言える。 これら記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。 「相嵌合する雌コネクタB′のハウジング本体4′と雄コネクタA′のハウジング1′のうち、雌コネクタB′のハウジング本体4′に、カム溝13′を有するレバーC′を回動自在に装着し、雄コネクタA′のハウジング1′にカムピン3′を設け、該カム溝13′にカムピン3′を係入して該レバーC′を回動することにより雄コネクタA′のハウジング1′と雌コネクタB′のハウジング本体4′の嵌合、離脱を行うようにしたレバー付コネクタのロック構造であって、 前記レバーC′の連結バー12′に、該連結バー12′に結合して交差方向に突出した可撓係止片12a′と、これに交差して続き連結バー12′に離間して位置する先端12b′と、を備えた係止部材が付設されるとともに、該係止部材には係止部である先端12b′が設けられ、該雌コネクタB′のハウジング本体4′のフード5′に、該先端12b′と係合する本係止突起9′が設けられ、該先端12b′に該本係止突起9′が係合することにより、該雌コネクタB′のハウジング本体4′に対し該レバーC′の回動をロックするようにしたレバー付コネクタのロック構造。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「雌コネクタB′のハウジング本体4′」は、本願補正発明の「一方のコネクタハウジング」に相当し、以下同様に、「雄コネクタA′のハウジング1′」は「他方のコネクタハウジング」に、「カム溝13′」は「カム溝」に、「レバーC′」は「レバー」に、「カムピン3′」は「被駆動ピン」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「連結バー12′」は、レバーC′の一対の側板11′の端部を連結するものであるとともに、レバーC′の操作部を兼ねたものであるから(記載b参照)、本願補正発明の「操作部」に相当する。 さらに、引用発明の係止部材は、本係止突起9′に係合することにより、雌コネクタB′のハウジング本体4′に対しレバーC′の回動をロックするようにしたものであり、一方、本願補正発明の可撓係止腕は、係止突部に係合することにより一方のコネクタハウジングに対し該レバーの回動をロックするようにしたものであるから、引用発明の「係止部材」は、その機能からみて本願補正発明の「可撓係止腕」に対応し、「本係止突起9′」は「係止突部」に相当する。 そして、引用発明の係止部材は、操作部に相当する連結バー12′に結合して交差方向に突出した可撓係止片12a′と、これに交差して続き連結バー12′に離間して位置する先端12b′とを備えているが、「可撓係止片12a′」は係止部材の基端側にあるので、本願補正発明の「基部」に対応する部分であり、また、「先端12b′」は、係止部材の自由端側にあるので、本願補正発明の「自由端部」に対応する部分である。さらに、引用発明の係止部材は、先端12b′によって、係止突部に相当する本係止突起9′と係合するので、「先端12b′」は、その機能からみて本願補正発明の「係止部」にも対応する。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「相嵌合する一対のコネクタハウジングの一方のコネクタハウジングにカム溝を有するレバーを回動自在に装着し、他方のコネクタハウジングに被駆動ピンを設け、該カム溝に該被駆動ピンを係入して該レバーを回動することにより双方のコネクタハウジングの嵌合、離脱を行うようにしたレバー嵌合式コネクタのロック構造であって、 前記レバーの操作部に、該操作部に結合して交差方向に突出した基部と、該基部に交差して続き、該操作部に離間して位置する自由端部と、を備えた可撓係止腕が付設されるとともに、該可撓係止腕には係止部が設けられ、該一方のコネクタハウジングの外周壁に、該係止部と係合する係止突部が設けられ、該係止突部に該係止部が係合することにより、該一方のコネクタハウジングに対し該レバーの回動をロックするようにしたレバー嵌合式コネクタのロック構造。」 そして、両者は次の相違点1,2で相違する(対応する引用例記載の用語を( )内に示す)。 (相違点1) 本願補正発明の可撓係止腕は、基部に交差して続き、操作部に相対向して平行に延びる自由端部と、係合突部と係合する係止部とを備えるのに対し、引用発明の可撓係止腕(係止部材)は、基部(可撓係止片12a′)に交差して続く先端12b′を自由端部に対応するものとして備えるが、先端12b′は、操作部に相対向して平行に延びるものではなく、また先端12b′は、係止突部(本係止突起9′)と係合する係止部にも対応する点。 (相違点2) 本願補正発明の可撓係止腕の自由端部は、撓み時に該操作部に当接可能に離間して位置するものであるのに対し、引用発明の可撓係止腕(係止部材)の先端12b′は、操作部(連結バー12′)に離間して位置するものではあるが、撓み時に該操作部に当接可能なものではない点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) コネクタのレバーのロック構造において、底部に結合して交差方向に突出した基部と、基部に交差して続き、底部に相対向して略平行に延び、底部に離間して位置する自由端部と、係止部とを備えた可撓係止腕を、レバーとハウジングとのロックに用いるものは、例えば実願平2-114303号(実開平4-72479号)のマイクロフィルム(レバー固定手段86参照)、特開平7-235343号公報(係止部7参照)、特開平7-235342号公報(レバーロック部4、参照)にそれぞれ示すように周知であるので、引用発明の係止部材に該周知技術を適用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) 引用発明に上記周知技術を適用するにあたり、可撓係止腕の寸法や弾性をどのようにし、ロック・アンロック時に、可撓係止腕をどのくらい撓ませるようにするかは、当業者が必要に応じ適宜設定し得た設計的事項であるので、撓み時に、可撓係止腕の自由端部を、操作部に当接可能にすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 平成14年1月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成13年6月1日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「相嵌合する一対のコネクタハウジングの一方のコネクタハウジングにカム溝を有するレバーを回動自在に装着し、他方のコネクタハウジングに被駆動ピンを設け、該カム溝に該被駆動ピンを係入して該レバーを回動することにより双方のコネクタハウジングの嵌合、離脱を行うようにしたレバー嵌合式コネクタのロック構造であって、 前記レバーの操作部に、該操作部に結合する基部と、該基部に連接し該操作部に対して平行に延びる自由端部と、を備えた可撓係止腕が付設されるとともに、該可撓係止腕には係止部が設けられ、一方のコネクタハウジングの外周壁に、該係止部と係合する係止突部が設けられ、該係止突部に該係止部が係合することにより、一方のコネクタハウジングに対しレバーの回動をロックするようにしたことを特徴とするレバー嵌合式コネクタのロック構造。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明から、可撓係止腕の操作部に結合する基部の突出方向について、基部が操作部に「交差方向に突出」するとの限定事項を省いて「該操作部に結合する基部」とするとともに、可撓係止腕の基部に連接する自由端部の配置について、「基部に交差して続き、該操作部に相対向して平行に延び、撓み時に該操作部に当接可能に離間して位置する」との限定事項を省いて「該基部に連接し該操作部に対して平行に延びる」としたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-26 |
結審通知日 | 2006-05-02 |
審決日 | 2006-05-15 |
出願番号 | 特願平8-60936 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 哲男、山田 由希子、金丸 治之 |
特許庁審判長 |
山崎 豊 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 北川 清伸 |
発明の名称 | レバー嵌合式コネクタのロック構造 |
代理人 | 松村 貞男 |
代理人 | 越智 浩史 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 垣内 勇 |