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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1139093
審判番号 不服2004-10966  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-26 
確定日 2006-06-30 
事件の表示 平成10年特許願第240888号「管体接続構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月14日出願公開、特開2000- 74274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成10年8月26日の特許出願であって、原審において平成15年11月12日付けで拒絶理由通知がなされ、平成16年1月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成16年4月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年5月26日付けで審判請求がなされるとともに、平成16年6月25日付けで、この審判請求書を補正対象とする手続補正と、明細書を補正対象とする手続補正の2つの手続補正がなされ、その後、特許法第162条による審査がなされ、平成16年10月12日付けで特許庁長官への報告がなされたものであり、その後、平成17年4月8日付けで審尋がなされたが、審判請求人からの応答はなかった。



第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年6月25日付けの、明細書を補正対象とする手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の各請求項に係る発明
補正後の請求項1ないし7に係る発明は、平成16年6月25日付けの、明細書を補正対象とする手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】 管端部に雌嵌合面若しくは雄嵌合面から成る嵌合面を接続部として備えるか又は雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた一方の管体を、管端部に雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた他方の管体に対して接続可能とする管体接続構造であって、
短管状を成し、管軸方向の一端側に前記一方の管体との接続用の少なくとも2種の接続機能部を有するとともに、他端側に前記他方の管体との接続用の接続機能部を有するアダプタを介してそれら一対の管体を接続するようになし、且つ該他端側の接続機能部と前記一端側の2種の接続機能部のうちの何れかとをそれぞれ雄ねじ部若しくは雌ねじ部から成るねじ部となすとともに、該2種の接続機能部のうちの他を、管軸方向に平滑に延び、前記一方の管体に備えられた雌嵌合面若しくは雄嵌合面に対して管軸方向に差し込まれて嵌合する雄嵌合面若しくは雌嵌合面から成る嵌合面となし、前記アダプタの他端側を前記他方の管体に対してねじ接続するようになすとともに、前記一端側を前記一方の管体に対してねじ接続するか又は前記嵌合面において嵌合した状態に接続して該アダプタの一端側と該一方の管体とを第一の抜止手段により管軸方向に抜止めするようになしたことを特徴とする管体接続構造。
【請求項2】 請求項1に記載の管体接続構造において、前記第一の抜止手段が、前記アダプタと前記一方の管体とにそれぞれ設けられた管軸と直角方向外向きに突出する鍔状部と、それら鍔状部を管軸方向にクランプするクランプ部材とを有していることを特徴とする管体接続構造。
【請求項3】 請求項1,2の何れかに記載の管体接続構造において、前記アダプタの他端側には該他端側の前記接続機能部と別種の接続機能部を更に具備させたことを特徴とする管体接続構造。
【請求項4】 請求項3に記載の管体接続構造において、前記他端側の別種の接続機能部を、管軸方向に平滑に延びる雄嵌合面若しくは雌嵌合面から成る嵌合面となし、該アダプタの他端側を前記ねじ部を接続部として有する前記他方の管体に対してねじ接続するか又は雌嵌合面若しくは雄嵌合面から成る嵌合面を接続部として有する他方の管体に対して該アダプタの嵌合面を該他方の管体の嵌合面に嵌合させた状態に接続して第二の抜止手段により管軸方向に抜止めするようになしたことを特徴とする管体接続構造。
【請求項5】 請求項4に記載の管体接続構造において、前記第二の抜止手段が、前記アダプタと前記他方の管体とにそれぞれ設けられた管軸と直角方向外向きに突出する鍔状部と、それら鍔状部を管軸方向にクランプするクランプ部材とを有していることを特徴とする管体接続構造。
【請求項6】 請求項2,5の何れかに記載の管体接続構造において、前記鍔状部の外周面に前記雄ねじ部が設けてあることを特徴とする管体接続構造。
【請求項7】 管端部に雌嵌合面若しくは雄嵌合面から成る嵌合面を接続部として備えるか又は雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた一方の管体と、管端部に雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた他方の管体とを接続する管体接続構造であって、
前記一方の管体と他方の管体とを、短管状を成すアダプタを介して接続するようになし、該アダプタには管軸方向の一端側に接続機能部を具備させるとともに他端側に2種の接続機能部を具備させて、該一端側の接続機能部と該他端側の2種の接続機能部のうちの何れかとをそれぞれ同種の雄ねじ部又は雌ねじ部から成るねじ部となし、該アダプタを該他方の管体に対して管軸方向に180°異なった正,逆両方向の何れの向きにおいても接続可能となすとともに、前記2種の接続機能部のうちの他を、管軸方向に平滑に延び、前記一方の管体の雌嵌合面又は雄嵌合面に対して管軸方向に差し込まれて嵌合する雄嵌合面又は雌嵌合面から成る嵌合面となし、該アダプタを前記他方の管体に対してねじ接続するとともに、前記一方の管体に対してねじ接続するか又は前記嵌合面において嵌合した状態に接続して該アダプタと該一方の管体とを第三の抜止手段により管軸方向に抜止め状態に接続可能となしたことを特徴とする管体接続構造。」

上記補正は、補正前の請求項1及び7に記載されていた「一対の管体を接続する(ための)管体接続構造」を、「管端部に雌嵌合面若しくは雄嵌合面から成る嵌合面を接続部として備えるか又は雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた一方の管体」と、「管端部に雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた他方の管体」とを接続(可能と)する管体接続構造と限定すると共に、これらの限定と整合性をとるため、請求項4及び請求項1,7の他の部分を補正するものであって、これらの補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮、及び同項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正後発明1」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


2.引用刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物1:特開平10-220670号公報
には、図面と共に次のa.〜c.の記載がある。
a.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は一対の管体を接続するための管体接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】例えば水栓金具と配管とを接続するための接続構造として、従来、図7に示すような接続構造が一般に採用されている。同図において200は配管側の管体で、先端部の内周側に雌ねじ部202(図7(A))又は外周側に雄ねじ部204(図7(B))を有している。
【0003】206は水栓側の管体で、先端部の外周側に雄ねじ部208(図7(A))又は内周側に雌ねじ部210を有する袋ナット212(図7(B))をそれぞれ有している。
【0004】この従来の接続構造の場合、(A)に示しているように管体200の雌ねじ部202に対して、管体206の雄ねじ部208をねじ込むことで接続するか、または(B)に示しているように管体200の雄ねじ部204に対して、管体206の袋ナット212をねじ合わせることで、一対の管体200,206の接続を行う。
【0005】尚、一対の管体200,206間のシールは、(A)に示す雄ねじ部208にシールテープを巻いてねじ結合することにより行うか、或いは(B)に示しているように一対の管体200,206の間にパッキン214を挾み込むことによって行う。
【0006】しかしながら図7の接続構造の場合、シールテープを巻いたり、ねじ部をねじ結合するに当って工具を用いて何回も回転操作することが必要であるなど施工が煩雑であるとともに、シールテープの巻き加減やねじの回し加減による施工のばらつきを生じるといった問題がある。
【0007】これに対して、近年図8に示すような接続構造が用いられるようになってきている。この接続構造は、クランプ部材を用いて一対の管体をワンタッチで接続可能となしたものである。詳述すると、同図において216は管体206に突出状に設けられた断面円形の中空の挿入軸部で、外周面にシール用のOリング218が装着されている。
【0008】220は管体200に設けられた、管軸方向に延びる平滑な円形の嵌合面で、222,224はそれぞれ管体200,206に設けられたフランジ部、226はクランプ部材としての弾性クリップである。
【0009】弾性クリップ226は、(C)に示しているように帯状の金属板ばね材を略リング状に回曲させた形態のもので、周方向の所定箇所に嵌込用開口228を有し、また幅方向中間部において周方向に延びる係入溝230を有している。
【0010】この接続構造の場合、挿入軸部216を管体200の内部に嵌入して、挿入軸部216の外周面をOリング218を介して嵌合面220に嵌合させた上、弾性クリップ226を嵌込用開口228を通じて管体200,206にまたがるように弾性的に嵌め合わせ、そして互いに当接状態に合わせられた管体200,206の一対のフランジ部222,224を、弾性クリップ226の係入溝230内に係入させることで、一対の管体200,206を水密に接続する。
【0011】この図8に示す接続構造は、ワンタッチで極めて簡単に管体200,206の接続作業を行うことができるものであり、近年この接続構造の採用例が多くなってきているものの、現状では未だ図7に示すねじ結合方式による接続構造と、図8に示す接続構造とが併存しているのが実状であり、従って例えば配管側の管体等、一方の管体側の接続部としては相手側(他方の管体側)が図7に示すねじによる接続方式である場合であっても、また図8に示す挿入軸部216の差込みによる接続方式であっても、何れにも対応できるものであることが望ましい。」(下線は当審が付した。以下、同じ。)

b.「【0032】
【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。図1及び図2において、10は例えば配管側の管体、12は例えば水栓側の管体で、一方の管体10は比較的軟らかい樹脂管等からなる主管14に接続されている。また他方の管体12は、比較的軟らかい樹脂管等からなる主管18に接続されている。
【0033】本例において、上記一対の管体10,12は併せて接続金具をなすものである。
【0034】一方の管体10には、端部外周面に半径方向外方に突出するフランジ部(係合部)22が全周に亘って形成されており、また内周側には開口に続いて雌ねじ部24が形成されている。またその奥部には雌ねじ部24に続いて嵌合面26が形成されている。嵌合面26は、平面形状が円形で管軸方向に延びる平滑な面をなしている。
【0035】他方の管体12には、上記フランジ部22と同様の形態のフランジ部(係合部)28が形成されており、更に図1及び図2の(A)においてはこのフランジ部28に続いて内部中空且つ断面形状が円形の挿入軸部30が突出形成されている。挿入軸部30の外周面にはOリング溝32が形成されていて、そこに弾性を有するシール部材としてのOリング34が装着されている。
【0036】36はクランプ部材としての弾性クリップであって、この弾性クリップ36は、帯状の板ばね材を略リング状に回曲変形させた形態をなしている。
【0037】この弾性クリップ36は、周方向所定箇所に嵌込用開口38を有しており、また幅方向中間部に係入溝40が周方向に沿って形成されている。また嵌込用開口38と反対側には、上記フランジ部22,28との干渉を回避するための逃げ部42が形成されており、更に嵌込用開口38に続く部分にはハの字状に開いたガイド部44が形成されている。
【0038】尚、図1において46及び48は主管14又は18内部への挿入結合部である。また図1(B)に示している他方の管体12には、フランジ部28に続いて雄ねじ部50が形成されている。」

c.「【0039】本例の接続構造においては、図1及び図2の(A)に示すように、他方の管体12が中空の挿入軸部30を有するものである場合、先ず一対の管体10,12のフランジ部22,28同士が当接するまで一方の管体10内に他方の管体12の挿入軸部30を挿入し、挿入軸部30の外周面を管体10の内周側の雌ねじ部24に続く嵌合面26に嵌合する。尚、このとき挿入軸部30の外周面と嵌合面26との間にはOリング34が介されるため、それらは水密に嵌合される。
【0040】そして上記嵌合状態下で弾性クリップ36を嵌込用開口38を通じて一対の管体10,12にまたがるように弾性的に嵌め合わせ、当接する一対のフランジ部22,28を弾性クリップ36の係入溝40に係入させることで一対の管体10,12を接続することができる。
【0041】一方、図1及び図2の(B)に示すように他方の管体12が雄ねじ部50を有するものである場合、この雄ねじ部50を一方の管体10の雌ねじ部24にねじ込むことで、一対の管体10,12を接続することができる。
【0042】本例の接続構造では、一方の管体10が、その内周側に雌ねじ部24とそれに続く平滑な嵌合面26とを備えており、従って本例によれば、他方の管体12が挿入軸部30の差込接続方式、或いは雄ねじ部50によるねじ接続方式の何れの方式の場合のものであっても、一方の管体10は共通のもので対応することができ、汎用性を高めることができる。
【0043】また本例の接続構造では、一方の管体10がフランジ部22を備えているため、このフランジ部22と他方の管体12のフランジ部28とを共に弾性クリップ36の係入溝40に係入するだけで、一対の管体10,12を弾性クリップ36にてワンタッチで極めて簡単に接続することができる。」


3.対比・一致点・相違点
本願補正後発明1と、刊行物1に記載された発明とを対比する。
まず、本願補正後発明1における「アダプタ」は、本願明細書段落【0021】に、
「 【作用及び発明の効果】
上記のように請求項1の管体接続構造は、管軸方向の一端側に一方の管体との接続用の少なくとも2種の接続機能部を有し、また他端側に他方の管体との接続用の接続機能部を有するアダプタを介してそれら一対の管体を接続するようになし、且つアダプタにおける上記他端側の接続機能部を雄ねじ部又は雌ねじ部としてこれを他方の管体にねじ接続するとともに、一端側の2種の接続機能部のうちの何れかを雄ねじ部又は雌ねじ部、即ちねじ接続方式とする一方、他の接続機能部を嵌合接続方式となしたもので、この管体接続構造の場合、他方の管体がねじ接続方式のものである場合において、一方の管体がねじ接続方式のものであっても、また嵌合接続方式のものであっても支障なく一対の管体を接続することができる。」
と記載された機能を持つものである。
これに対して、刊行物1に記載された発明の「一方の管体10」は、刊行物1段落【0042】に、
「本例の接続構造では、一方の管体10が、その内周側に雌ねじ部24とそれに続く平滑な嵌合面26とを備えており、従って本例によれば、他方の管体12が挿入軸部30の差込接続方式、或いは雄ねじ部50によるねじ接続方式の何れの方式の場合のものであっても、一方の管体10は共通のもので対応することができ、汎用性を高めることができる。」
と記載された機能を持つものである。
このように、本願補正後発明1における「アダプタ」と、刊行物1に記載された発明の「一方の管体10」は、いずれも、2種の接続方式に適合可能とするものであり、刊行物1に記載された発明の「一方の管体10」がアダプタの一種であり、本願補正後発明1における「アダプタ」に相当するものであることは明白である。

《用語の対応》
そこで、刊行物1に記載された発明の、
・挿入軸部30を有する他方の管体12(図1(A))、及び、雄ねじ部
50を有する他方の管体12(図1(B))、
・主管14、
・一方の管体10、
・雌ねじ部24及び平滑な嵌合面26、
・挿入結合部46、
・フランジ部22,28及び弾性クリップ36、
は、本願補正後発明1の、
・一方の管体、
・他方の管体、
・アダプタ、
・一端側の2種の接続機能部、
・他端側の接続機能部、
・第一の抜止手段、
にそれぞれ相当すると認められる。

《一致点》
したがって、両発明は、
「管端部に雌嵌合面若しくは雄嵌合面から成る嵌合面を接続部として備えるか又は雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた一方の管体を、管端部に接続部を備えた他方の管体に対して接続可能とする管体接続構造であって、
短管状を成し、管軸方向の一端側に前記一方の管体との接続用の少なくとも2種の接続機能部を有するとともに、他端側に前記他方の管体との接続用の接続機能部を有するアダプタを介してそれら一対の管体を接続するようになし、且つ前記一端側の2種の接続機能部のうちの何れかを雄ねじ部若しくは雌ねじ部から成るねじ部となすとともに、該2種の接続機能部のうちの他を、管軸方向に平滑に延び、前記一方の管体に備えられた雌嵌合面若しくは雄嵌合面に対して管軸方向に差し込まれて嵌合する雄嵌合面若しくは雌嵌合面から成る嵌合面となし、前記一端側を前記一方の管体に対してねじ接続するか又は前記嵌合面において嵌合した状態に接続して該アダプタの一端側と該一方の管体とを第一の抜止手段により管軸方向に抜止めするようになしたことを特徴とする管体接続構造。」
で一致する。
なお、審判請求人は審判請求書(同請求書を補正対象とする平成16年6月25日付け手続補正書第6頁23〜29行)において、
「しかしながらこの引用文献1に開示のものは・・・本願発明のように一対の管体を接続するに際し、中間にアダプタを介在させて、そのアダプタにより一対の管体を接続するといったものではなく、この点において本願発明と引用文献1に開示のものとは本質的に相異なったものであると思料する。」
と述べている。しかし、刊行物1段落【0032】には、
「【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。図1及び図2において、・・・一方の管体10は比較的軟らかい樹脂管等からなる主管14に接続されている。」
と記載されており、刊行物1に記載された発明においても「一方の管体10」を中間として、この「一方の管体10」により「主管14」と「他方の管体12」とが接続されるのは自明である。

《相違点》
そして、両発明は下記の点で相違する。
相違点:本願補正後発明1では、他方の管体が管端部に「雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を」接続部として備え、「(アダプタの)他端側の接続機能部を雄ねじ部若しくは雌ねじ部から成るねじ部となす」とともに、「前記アダプタの他端側を前記他方の管体に対してねじ接続するようになす」としている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、「一方の管体10(本願の「アダプタ」に相当)」を「主管14(本願の「他方の管体」に相当)」にねじ接続していない。



4.判断
《相違点についての検討》
管の接続をねじ接続とすることは、周知の技術にすぎない。
(もし、周知文献が必要であれば、
・特開昭54-106920号公報
「そして上記管継手を用いて2管を接続するには、第2図に示す如く、接続する2管の一方の管(6)をソケット本体(1)の一端に形成された螺子部(5)に螺合させた後、他方の管(7)をソケット本体(1)の他端から挿入すれば、」(第1頁右下欄6〜11行)、
・特開平9-112767号公報
「【0036】・・・例えば、図7に示すように、上記継手主体(1) に於ける締付具(2) とは反対側の端部に雄ネジ部(17)が設けられ、この継手主体(1) に前記締付具(2) 側から金属製のスライド管(1a)が挿入され、このスライド管(1a)の外側端部に雌ネジ部(18)が具備された構成としてもよい。」
等を参照。)
そして、この周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせ、相違点における本願補正後発明1の構成に到達することは当業者であれば容易である。



《発明の効果についての検討》
本願補正後発明1の効果は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に推測できた程度のものである。



5.まとめ
以上のように、本願補正後発明1は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本願の補正後の請求項2ないし7に係る各発明については検討するまでもなく、上記平成16年6月25日付けの、明細書を補正対象とする手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。





第3 本願発明についての検討

1.本願発明
平成16年6月25日付けの、明細書を補正対象とする手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成16年1月19日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】 一対の管体を接続する管体接続構造であって、短管状を成し、管軸方向の一端側に一方の管体との接続用の少なくとも2種の接続機能部を有するとともに、他端側に他方の管体との接続用の接続機能部を有するアダプタを介してそれら一対の管体を接続するようになし、且つ該他端側の接続機能部と前記一端側の2種の接続機能部のうちの何れかとをそれぞれ雄ねじ部又は雌ねじ部となすとともに、該2種の接続機能部のうちの他を、管軸方向に平滑に延び、前記一方の管体に備えられた雌嵌合面又は雄嵌合面に対して管軸方向に差し込まれて嵌合する雄嵌合面又は雌嵌合面となし、前記アダプタと該一方の管体とを、それら雄嵌合面と雌嵌合面とにおいて嵌合させた状態で第一の抜止手段により管軸方向に抜止めするようになしたことを特徴とする管体接続構造。
【請求項2】 請求項1に記載の管体接続構造において、前記第一の抜止手段が、前記アダプタと前記一方の管体とにそれぞれ設けられた管軸と直角方向外向きに突出する鍔状部と、それら鍔状部を管軸方向にクランプするクランプ部材とを有していることを特徴とする管体接続構造。
【請求項3】 請求項1,2の何れかに記載の管体接続構造において、前記アダプタの他端側には該他端側の前記接続機能部と別種の接続機能部を更に具備させたことを特徴とする管体接続構造。
【請求項4】 請求項3に記載の管体接続構造において、前記他端側の別種の接続機能部を、管軸方向に平滑に延び、前記他方の管体に備えられた雌嵌合面又は雄嵌合面に対して管軸方向に差し込まれて嵌合する雄嵌合面又は雌嵌合面となし、前記アダプタと該他方の管体とを、それら雄嵌合面と雌嵌合面とを嵌合させた状態で第二の抜止手段により管軸方向に抜止めするようになしたことを特徴とする管体接続構造。
【請求項5】 請求項4に記載の管体接続構造において、前記第二の抜止手段が、前記アダプタと前記他方の管体とにそれぞれ設けられた管軸と直角方向外向きに突出する鍔状部と、それら鍔状部を管軸方向にクランプするクランプ部材とを有していることを特徴とする管体接続構造。
【請求項6】 請求項2,5の何れかに記載の管体接続構造において、前記鍔状部の外周面に前記雄ねじ部が設けてあることを特徴とする管体接続構造。
【請求項7】 一対の管体を接続するための管体接続構造であって、一方の管体と他方の管体とを、短管状を成すアダプタを介して接続するようになし、該アダプタには管軸方向の一端側に接続機能部を具備させるとともに他端側に2種の接続機能部を具備させて、該一端側の接続機能部と該他端側の2種の接続機能部のうちの何れかとをそれぞれ同種の雄ねじ部又は雌ねじ部となし、該アダプタを該他方の管体に対して管軸方向に180°異なった正,逆両方向の何れの向きにおいても接続可能となすとともに、前記2種の接続機能部のうちの他を、管軸方向に平滑に延び、前記一方の管体の雌嵌合面又は雄嵌合面に対して管軸方向に差し込まれて嵌合する雄嵌合面又は雌嵌合面となし、前記アダプタと該一方の管体とを、それら雄嵌合面と雌嵌合面とにおいて嵌合させた状態で第三の抜止手段により管軸方向に抜止め状態に接続可能となしたことを特徴とする管体接続構造。」


2.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された
刊行物1:特開平10-220670号公報
に記載された発明は、上記、第2、2.に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)における「一対の管体を接続する管体接続構造」を、「管端部に雌嵌合面若しくは雄嵌合面から成る嵌合面を接続部として備えるか又は雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた一方の管体を、管端部に雌ねじ部若しくは雄ねじ部から成るねじ部を接続部として備えた他方の管体に対して接続可能とする管体接続構造」と具体的に限定したものが、本願補正後発明1である。
そうすると、本願発明1を限定、減縮したものに相当する本願補正後発明1が、上記第2、3.ないし5.に記載したとおり、上記の刊行物1に記載された発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由により、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、上記の刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の請求項2ないし7に係る各発明については検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-14 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-11 
出願番号 特願平10-240888
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
P 1 8・ 575- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内山 隆史神崎 孝之  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 佐野 遵
会田 博行
発明の名称 管体接続構造  
代理人 吉田 和夫  

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