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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580062 審決 特許
無効200580231 審決 特許
無効200480273 審決 特許
無効200480147 審決 特許
無効200235248 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G07B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G07B
審判 全部無効 特174条1項  G07B
管理番号 1139880
審判番号 無効2005-80061  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-10 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-02-25 
確定日 2006-05-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3179409号発明「ID情報利用の搭乗券発行システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3179409号(請求項1及び請求項2)は、次のような手続きを経たものである。

特許出願 平成10年 5月28日
(特願平10-147997号)
特許権設定登録 平成13年 4月13日
(特許第3179409号)
無効審判請求 平成17年 2月25日
請求書副本の送達通知 平成17年 3月24日
(発送日:平成17年3月28日)
答弁書 平成17年 5月27日
答弁書副本送付通知 平成17年 6月20日
(発送日:平成17年6月21日)
陳述要領書(請求人) 平成17年 7月22日
陳述要領書副本の送付通知 平成17年 7月27日
(発送日:平成17年7月28日)
陳述要領書(被請求人) 平成17年 8月26日
陳述要領書副本の送付通知 平成17年 8月31日
(発送日:平成17年8月31日)
口頭審理(特許庁審判廷) 平成17年 9月12日
無効理由通知 平成17年 9月30日
(発送日:平成17年10月5日)
訂正請求書・意見書 平成17年11月 4日
訂正請求書等副本の送付通知 平成17年11月29日
(発送日:平成17年11月30日)

本件は、口頭審理の後、書面審理に切り換えて、審理を行ったものであり、上記のとおり、当審において、平成17年11月29日付け(発送日:同年11月30日)で、審判請求人に対して、訂正請求書等(意見書、訂正請求書及び添付された訂正明細書)の副本を送付して意見を求めたところ、審判請求人は、特に意見を述べておらず、又、新たな証拠の提示もない。

第2 当事者の主張
1 審判請求人の主張
無効審判請求人(以下、「請求人」という。)は、甲第1号証乃至甲第10号証を提出し、本件請求項1及び2に係る特許は、次の理由1乃至理由4により無効にすべきである旨、主張する。
(1)理由1
本件請求項1及び2に係る特許発明は、甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明及び、甲第5号証に記載された周知並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)理由2
本件請求項1及び2に係る特許発明は、本願明細書に記載されている本件特許の出願当時の技術水準を構成する公然知られた発明及び甲第5号証、甲第9号証並びに甲第10号証に記載された周知、慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)理由3
平成13年3月1日付手続補正(甲第3号証参照)により、本件請求項1に係る特許発明の構成要件となった「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、」各ユーザ機関毎に料金請求額をホストコンピュータが算出する点(構成要件C4)は、出願当初明細書又は図面(甲第1号証参照)に記載されていないから、本件の手続補正は、出願当初明細書等に記載した事項の範囲を越えた補正であり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、その特許は特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(4)理由4
請求項1に係る特許発明の構成要件D2において、搭乗券発券機は読取った「利用者ID情報」とホストコンピュータから送信された「利用者個人のID情報」とを照合して、と記載されているが、「利用者個人のID情報」と、「利用者ID情報」即ち「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」とを、どのような条件の下に、照合一致、不一致を判断して照合するのかが不明であるから、本件の請求項1に記載された発明は明確でなく、又、請求項1を引用する請求項2に記載された発明も明確でない。
したがって、本件の請求項1及び請求項2は、特許法第36条第6項第2号に規定する特許請求の範囲の記載要件を満たしておらず、その特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(5)口頭審理陳述要領書による理由
請求人は、平成17年7月22日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、上記理由2に関連して、甲第11号証を提出して、航空券、クレジットカードのどちらにも対応できる搭乗券発券機は、本願出願前に使用されていたと、又、甲第12号証を提出して、「ホストコンピュータが各ユーザ機関毎に料金請求額を算出すること」は慣用技術であると、主張し、更に、上記理由4に関連して、「利用者ID情報」の意味が、被請求人の主張のとおりのものであれば、その点は、明細書に開示がなく、特許法第17条の2第3項に違反し、且つ、特許法第第36条第6項第1号の要件を満たしていない、旨主張する。
[証拠方法]
(1)甲第1号証:本件の出願当初の明細書及び図面
(2)甲第2号証:本件の平成12年6月15日付手続補正書
(3)甲第3号証:本件の平成13年3月1日付手続補正書
(4)甲第4号証:特開昭63-173159号公報
(5)甲第5号証:日経マルチメディア 1998年6月号(No.35)
(6)甲第6号証:特開平8-96050号公報
(7)甲第7号証:YAHOO!JAPAN 1998年4月号
(8)甲第8号証:日経PC21 1998年1月号
(9)甲第9号証:ANA Travel Flyer Vol.1
(10)甲第10号証:三菱電機技報 Vol.68 No.10 1994
(11)甲第11号証:旅客操作型チェックイン機(SCMIII)機器仕様書
(12)甲第12号証:特開平10-63894号公報

2 審判被請求人の主張の概要
無効審判被請求人(以下、「被請求人」という。)は、乙第1号証乃至乙第6号証を提出し、答弁書において、概略、次のように主張している。
(1)理由1に対して
本件特許発明と甲第4号証との対比において、分説した構成要件ごとの請求人の認定は、表記に誤りがあり、又、詳細に対比すると、各構成要件において同一とはいえず、請求人の主張は誤りである。そして、「ユーザ機関毎に料金請求額を算出する」(構成要件C4)ことに関する技術を開示した引例(証拠)は示されておらず、本件特許発明は、甲第4号証乃至甲第6号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(2)理由2に対して
請求人は、本件明細書に記載された2つの従来技術を組み合わせているが、これは、「審査基準」に記載された手法を無視するものであり、又、請求人の主張する「本件明細書の段落【0002】乃至【0008】及び図2に記載されている発明」は、請求人の創作であり誤っている。専用端末で航空券予約が行われる場合は、搭乗券発券機でクレジットカードの情報を読み取る必要はない。又、本件特許発明との対比において、構成要件C4に関する技術を開示した引例(証拠)は示されておらず、本件特許発明は、本件明細書に従来技術として記載された発明と甲第5号証、甲第9号証、甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)理由3に対して
「各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能」(構成要件C4)は、出願当初の明細書の請求項3等に明示的に記載された事項であり、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出するにあたって各航空券予約と各ユーザ機関との対応付けが必要であることは自明であるから、「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能」は、出願当初明細書の請求項1及び請求項3の記載から自明な事項であって、本件特許の手続においてなされた手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
(4)理由4に対して
本件特許発明において、「利用者個人に関するID情報」と「当該ユーザ機関に関するID情報」とが、それぞれ「利用者ID情報」であるから、構成要件Dにおける「照合」とは、ID記録媒体から読み取った「利用者個人に関するID情報」とホストコンピュータから送信された「利用者個人に関するID情報」とが一致するか否かを判断するものであることは明らかであり、本件発明は明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
(5)乙号各証に関する主張
本願出願前、本願出願後において、乙第2号証乃至乙第6号証に示されるように、チケットレスサービスは、クレジットカードによる予約・決済のサービスとして認識されていた。
(6)口頭審理陳述要領書による反論
被請求人は、平成17年8月26日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、乙第7号証に示すように、本件発明は、社会的に高い評価を得ているものであるから、進歩性を有することは明らかである、と反論している。
[証拠方法]
(1)乙第1号証:平成17年2月27日付陳述書
(2)乙第2号証:日経マルチメディア 1998年4月号
(3)乙第3号証:日経ネットビジネス 2000年2月号
(4)乙第4号証:日経ネットビジネス 2000年7月号
(5)乙第5号証:日経情報ストラテジー 1998年6月号
(6)乙第6号証:日経ネットビジネス 2002年10月号
(7)乙第7号証:第14回マルチメディアグランプリ1999受賞作品集

第3 当審における無効理由通知
口頭審理の後、当審において通知した無効理由は、概略、次のとおりである。

1 無効理由1:特許法第17条の2第3項違反
(1)平成13年3月1日付手続補正は、ホストコンピュータから搭乗券発券機に送信される情報に関して、補正前の「ID情報」を「利用者個人のID情報」と補正する事項を含むものである。
当該補正により、搭乗券発券機は、ID記録媒体から読み取った「利用者ID情報」とホストコンピュータから送信された「利用者個人のID情報」とを照合する照合機能を有するものとなった。
当初明細書を検討するに、当初明細書の発明の詳細な説明に記載された、ホストコンピュータが搭乗券発券機の送信する「ID情報」とは、「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」のことであり、又、当初明細書の請求項1における、ホストコンピュータが搭乗券発券機の送信する「ID情報」とは、「各ユーザ機関毎のID情報」のことである。
以上のとおり、当初明細書には、搭乗券発券機が、自己が読み取った利用者ID情報と、「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」或いは「各ユーザ機関毎のID情報」とを照合することは記載されているが、「利用者個人のID情報」と照合することは記載されていないから、上記補正事項は、当初明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものではない。
(2)上記(1)の点は、請求項2に係る記載に関しても同様である。

2 無効理由2:特許法第36条第6項第1号違反
(1)本件発明1について
本件特許の発明の詳細な説明(段落【0014】〜【0022】、段落【0023】〜【0034】参照)に記載された「搭乗券発行システム」において、入力、送信(表示)、読取、照合される情報は「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」のことであって、当該情報について、「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」以外の情報を示唆する記載は見あたらない。
他方、本件発明1においては、汎用パソコンが表示する情報は「ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報」であり、ホストコンピュータが搭乗券発券機に送信する情報は「利用者個人のID情報」であり、搭乗券発券機が読取る情報は「利用者ID情報」であり、同じく照合する情報は「利用者個人に関するID情報」であるところ、上記のとおり、詳細な説明には、入力、送信、照合等がなされる情報は「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」であって、例えば、照合が「利用者個人のID情報」だけで行われること等を示唆する記載は見あたらない。
してみると、本件発明1は、詳細な説明に記載されていない事項を、発明を特定する事項とするものであるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載した発明ではない。
(2)本件発明1を引用する本件発明2も、発明の詳細な説明に記載した発明ではない。

3 無効理由3:特許法第36条第6項第2号違反
(1)請求項1に記載された「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報」は、「利用者個人のID情報」のことである(「第1回口頭審理調書」の被請求人の項目2参照)が、請求項1においては、他に「利用者個人のID情報」との記載もあり、両者は、同じ情報を意味する用語であるにもかかわらず、異なる用語を用いており、本件発明1が明確でない。
(2)同じく請求項1第5〜6行によれば、本件発明1の「記録媒体」には「利用者個人のID情報」が記録されているところ、本件発明1の「搭乗券発券機」が読取る情報は「利用者ID情報」であり、この「利用者ID情報」は「利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」のことであるから、ID記録媒体に関して、記録される情報と読取られる情報とが矛盾しており、本件発明1は明確でない。
(3)上記(1)及び(2)の点は、本件発明1を引用する本件発明2に関しても同様である。

第4 訂正の適否について
上記無効理由に対して、被請求人より請求された、訂正は次のとおりのものであるので、各訂正事項について検討する。

1 訂正の内容
被請求人の提出した訂正請求書の請求の趣旨は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報が記録されたID記録媒体」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報が記録されたID記録媒体」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において「搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において「成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された利用者個人のID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能」とあるのを、「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関に関するID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1において「ID記録媒体の入力を通じて利用者ID情報を読取るID読取機能」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「ID記録媒体の入力を通じて各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報を読取るIDD読取機能」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1において「読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する照合機能」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「読取った各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とホストコンピュータから送信された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを照合する照合機能」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、ID記録媒体に記録される情報には、訂正前の「各ユーザ機関内の利用者個人に関する利用者ID情報」に加え、「当該ユーザ機関に関するID情報」も含まれることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落【0017】等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、予約申請時に汎用パソコンに表示される「各ユーザ機関及び当該ユーザ機関内の利用者個人のID情報」について、訂正事項1に合わせて、その記載を「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」に統一するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、ホストコンピュータが空港の搭乗券発券機に送信する情報には、訂正前の「利用者個人のID情報」に加え、「当該ユーザ機関に関するID情報」も含まれることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】、【0019】等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、ユーザ機関毎に料金請求額を算出するために用いる「各ユーザ機関のID情報」について、訂正事項1に合わせて、その表現形式を「各ユーザ機関に関するID情報」に統一するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、搭乗券発券機がID記録媒体より読取る情報には、訂正前の「利用者個人のID情報」に加え、「当該ユーザ機関に関するID情報」も含まれることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落【0017】、【0020】等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、搭乗券発券機が照合する情報が、ID記録媒体から読取る「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」と、ホストコンピュータから送信される「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」であることを限定するものであるところ、前者については、訂正前の「利用者ID情報」が何であるかを明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たり、後者については、訂正前の「利用者個人のID情報」に加え、「当該ユーザ機関に関するID情報」も含まれることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】、【0020】等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、上記各訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第5 本件特許発明
上記第4に記載したとおり、本件特許発明について訂正が認められたので、特許第3179409号に係る発明は、平成17年11月4日付訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)。
【請求項1】
航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータと、
各ユーザ機関に設けられた汎用パソコンと、
空港に設けられた搭乗券発券機と、
各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報が記録されたID記録媒体と、
を備え、
各ユーザ機関の汎用パソコンは、
搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、
搭乗券発行機関のホストコンピュータは、
汎用パソコンからの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる予約受領機能と、
成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、
搭乗券発券機から送信される搭乗券の発券結果情報を蓄積する情報蓄積機能と、
前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関に関するID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能と、
を有し、
空港の搭乗券発券機は、
ID記録媒体の入力を通じて各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報を読取るID読取機能と、
読取った各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とホストコンピュータから送信された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを照合する照合機能と、
照合した結果に基づいて対応する航空券予約情報に基づく搭乗券を発券する発券機能と、
搭乗券発券の事実をホストコンピュータに送信する発券結果送信機能とを有する、
ことを特徴とするID情報利用の搭乗券発行システム。
【請求項2】
搭乗券発行機関のホストコンピュータは、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する際に、料金を割引くことができる一括精算割引機能を有することを特徴とする請求項1に記載のID情報利用の搭乗券発行システム。

第6 当審において通知した無効理由に関する判断
1 無効理由1について
上記訂正事項3のとおり、ホストコンピュータが搭乗券発券機に送信する情報が「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」と限定され、又、上記訂正事項5のとおり、搭乗券発券機がID記録媒体から読取る情報が「各ユーザ機関内の利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報」と限定され、更に、上記訂正事項6のとおり、搭乗券発券機が照合する情報が、ID記録媒体から読取った「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」とホストコンピュータから送信された「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」であることが限定され、これらの点は、当初明細書(甲第1号証の段落【0016】〜【0020】参照)に記載された事項の範囲内のものであるから、上記訂正事項3、訂正事項5及び訂正事項6により、特許法第17条の2第3項に関する無効理由1は解消された。

2 無効理由2について
上記訂正事項1乃至6のとおり、本件発明1の「搭乗券発行システム」において、ID記録媒体に記録される情報、各ユーザ機関の汎用パソコンにより表示される情報、ホストコンピュータから送信される情報、搭乗券発券機により読取られ、照合される情報等が「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」と限定され、各情報がこのように限定された「搭乗券発行システム」は、発明の詳細な説明に記載された実施例であるから、訂正事項1乃至6により、特許法第36条第6項第1号に関する無効理由2は解消された。

3 無効理由3について
上記訂正事項1乃至6のとおり、利用者ID情報に関係する情報が、「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」と明記されるようになり、用語も統一されたため、本件発明1及び本件発明2は、明確なものとなったから、訂正事項1乃至6により、特許法第36条第6項第2号に関する無効理由3は解消された。

4 まとめ
以上のとおりであるから、当審において通知した無効理由1乃至3は解消され、この理由を以てしては、本件発明1及び本件発明2に係る特許を無効とすることはできない。

第7 請求人の主張する無効とすべき理由に関する当審の判断
請求人が、本件特許を無効とすべきであると主張する理由1乃至理由4を検討するについて、本件発明1及び本件発明2を特定するために、まず、理由3(特許法第17条の2第3項違反)、及び、理由4(特許法第36条第6項第2号違反)について検討する。

1 請求人の主張する理由3について
請求人の主張する理由3は、平成13年3月1日付手続補正(甲第3号証参照)により補正された「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能」について、「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、」料金請求額を算出する点は、出願当初明細書(甲第1号証参照)又は図面に記載された事項ではない、というものである。
上記主張の根拠は、出願当初明細書の段落【0022】及び【0030】の「蓄積された発券結果情報に基づいて料金請求額を算出する」との記載であって、当該記載、又、出願当初の請求項2の記載からみて、料金の算出は「発券結果情報」という特定の情報に基づいてのみなしえるものである、というものである。
そこで、検討するに、確かに、出願当初の明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)には、「各ユーザ機関のID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する」なる記載はない。
しかしながら、当初明細書の請求項3及び段落【0022】には、「一括精算機能」に関して、「各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる」との記載があり、「各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する」ためには、各ユーザ機関を特定する何らかの情報が必要であることは、当該技術分野における技術常識であるところ、請求項1には、本件発明1の構成要件として、ID記録媒体に「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」が記録されていること、搭乗券の予約から発券までに使用される情報は「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」であることが記載されているから、各ユーザ機関を特定するために、この「ユーザ機関に関するID情報」を使用することは明らかであり、その結果、各ユーザ機関毎の料金請求額は「各ユーザ機関のID情報に基づいて」算出されることになるから、上記手続補正により補正された「前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関のID情報に基づいて、」は、当初明細書の請求項3及び段落【0022】の記載から自明な事項であって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
したがって、請求人の主張する理由3は採用できない。

2 請求人の主張する理由4について
請求人の主張する理由4は、請求項1の構成要件D2において、(搭乗券発券機は)「読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信された利用者個人のID情報とを照合する」と記載されているが、「利用者個人のID情報」と、「利用者ID情報」即ち「利用者個人および当該ユーザ期間に関するID情報」とを、どのような条件の下に、照合一致、不一致を判断して照合するのかが不明である、というものである。
しかしながら、本件発明1は、搭乗券発券機に関して、上記第4の訂正事項5及び訂正事項6のとおりに訂正されたため、本件発明1における、搭乗券発券機の有する照合機能は、「読取った各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とホストコンピュータから送信された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを照合する」ものとなり、照合される情報は「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」であることが明確になったから、請求人の主張する、特許請求の範囲の記載の不明な点は解消され、発明は明確である。
したがって、請求人の主張する理由4は採用できない。

3 請求人の主張する理由1について
上記1及び2に検討したとおり、本件発明1及び本件発明2が特定されたので、次に、請求人の主張する理由1(特許法第29条第2項違反)について検討する。

3-1 甲号各証に記載された事項
請求人が、理由1に関する証拠として提出した甲第4号証乃至甲第8号証には、次の事項が図面等と共に記載されている。
(1)甲第4号証:特開昭63-173159号公報
ア.「第1図は本発明システムの構成を示す模式図である。
同図に示されるように、予約センターなどに設置されるホストコンピュータ1には、市中に設置された自動予約機2及び自動発券機3がデータ回線を介して接続されている。
これら自動予約機2及び自動発券機3は、駅の広場、旅行センター、ホテルのロビー等の利用し易い場所に設置することが好ましい。」(公報2頁左下欄2〜10行)
イ.「そして、本システムにあっては、予約に際しては、市中に設置された自動予約機2にIDカードを挿入した後に該予約機2に対して顧客自身が所定の操作を行なうことにより、または予約受付所4に電話をかけてIDカード番号及び予約事項を顧客が係員に口頭で伝え、係員が手元の予約用端末機42に対して所定の操作を行うことにより、ホストコンピュータ1の予約ファイル上に(第6図参照)該当予約事項をIDカード番号と関連付けてオンラインで書込むようになされている。
他方、券紙入取に際しては、市中に設置された自動発券機3に顧客がIDカードを挿入して、該発券機3によりIDカード番号と予約ファイルとをオンラインで照合させ、照合一致を条件として予約事項に関する券紙を該発券機3から放出させるようになされている。」(同2頁左下欄19行〜右下欄14行)
ウ.「まず、顧客自身が自動予約機2を操作して所望の予約(例えば航空便の座席予約等)を行なう場合について説明する。
第7図に示されるように、この場合まず顧客は自身が所持するIDカードを自動予約機2のカード出入口22に挿入する(ステップ701)。
すると、自動予約機2側では投入されたカードの有効性を判定し、無効の場合には(ステップ702否定)、CRT21上に取扱不可表示を行なった後(ステップ703)、当該IDカードをカード出入口22から顧客へと返却する(ステップ704)。
これに対して、投入されたIDカードが有効であれば(ステップ702肯定)、顧客はCRT21上のタッチパネルを利用して、所望の航空便に相当する予約内容を入力する(ステップ705)。
すると、自動予約機2ではホストコンピュータ1に対しホストデータの要求をオンラインで行なう。
すると、このデータ要求に応答して、ホストコンピュータ1からは空席データがオンラインで返送され、この返送された空席データはCRT21の画面上に表示される(ステップ706)。
顧客はCRT21上の表示に基づき、座席選択に必要な確認操作を行なう。
すると、この確認操作で形成された確定データ、すなわちこの場合席確保データは当該顧客のID番号とともにホストコンピュータ1へとオンラインで伝送され、第6図に示されるように、ホストコンピュータ1の予約ファイル上には該当する予約内容が当該顧客のID番号と関連付けて記憶されることとなる。
次に、顧客が手元の電話器5から予約受付所の電話器41に電話をかけ、予約受付所の係員が端末機42を操作することで、予約ファイルを作成する場合について説明する。
この場合、第8図に示されるように、予約受付所の係員はまず電話器41で顧客の電話器5と応答することにより、予約内容を聞く。例えば、東京行きの朝の空席の如くである。
次いで、予約受付所の係員は端末機42のキーボードを操作して、予約内容を操作する(ステップ801)。
すると、予約内容はホストコンピュータ1へ送られるとともに、これに応答して空席データが返送され、この返送された空席データは端末機42のCRTに空席状況として表示される(ステップ802)。
次いで、予約受付所の係員は、端末機42のキーボードを使用して予約確保のためのキー操作を行なうとともに(ステップ803)、電話器41を利用して顧客に対しID番号を問いただし、その後ID番号をキーボードから端末機42へと入力する(ステップ804)。
すると、確保された席情報及びID番号はホストコンピュータ1へと送られ、第6図に示されるように予約ファイルが作成されるわけである。
次に、顧客自身が自動発券機3を操作して、予約内容に相当する券紙を入取する場合について説明する。
この場合、第9図に示されるように、まず顧客は所持するIDカードをカード出入口31に挿入する(ステップ901)。
すると、自動発券機3では挿入されたIDカードからID番号を読取り、これをホストコンピュータ1に伝送する。この際暗証番号の入力を行なう。
すると、ホストコンピュータ1では伝送されたID番号に相当する予約内容を予約ファイルから読出し、これを自動発券機3へと返送する。
自動発券機3では、ホストコンピュータ1から伝送されてくる予約内容をCRT33の画面上に表示させる(ステップ902)。
その後、発券操作が開始され(ステップ903)、券プリンタ37が駆動されて、予約内容に相当する航空券が作成され(ステップ904)、作成された航空券は券出口34から顧客に放出される(ステップ905)。
同時に、当該航空料金がIDカードから引落され、その後領収書プリンタ36が駆動されて、領収書出口32からは航空券料金の領収書が放出される。」(同3頁左下欄1行〜4頁左下欄2行)
(2)甲第5号証:日経マルチメディア 1998年6月号(No.35)
エ.「日本エアシステム(JAS)がホームページを使った企業向け予約サービス「スカイコールPorte」を4月1日から開始した。これまでの専用端末をWebで置き換え、ユーザー企業の社員全員が予約できるように開放した。」(甲第5号証20頁の見出し欄3〜5行)
オ.「日本エアシステム(JAS)は、こんなビジネス・ユーザーのニーズを満たす企業向け予約サービス「スカイコールPorte」を4月1日から始めた(画面1)。このサービスは、企業専用の予約システムを一般顧客向けのインターネット予約サービス「JASとON-LINE」をベースに作り替えたもの。インターネットでの予約の際に、住所・氏名などの「JASとON-LINE」の登録に必要な個人情報に加えて、あらかじめJASが付与した企業コードや事務所コード番号を入力すれば、一般顧客より優遇したサービスが受けられる。」(同20頁中欄1行〜右欄6行)
カ.「スカイコールPorteはJASと得意先企業との取引という位置づけにして、…(略)…。スカイコールPorteで最もメリットが見込めるのが、搭乗便の最後の1座席までインターネットで予約できる機能だ。実は「JASとON-LINE」はインターネットで予約できる座席数に上限を設けている。これは出発の1時間前まで予約を受け付けるため。直前にキャンセルが頻発して、航空券が売れ残らないようにする措置だ。」(同20頁右欄8行〜21頁左欄1行)
キ.「スカイコールPorteでは、予約した内容が本人あての電子メールで返送される。ブラウザではすぐ消えてしまう予約内容を電子メールで確認できるようにした。」(同21頁左欄2〜6行)
ク.「これまで旅行代理店を通して航空券を購入していた企業は、予約結果を電子メールで旅行代理店に転送して、従来どおりのサービスを受けることができる。」(同21頁左欄21〜25行)
ケ.「専用端末の企業設置が主眼だった営業展開も改める。これまでJASは得意先企業からの注文を拡大するために、JASの予約ホストに専用線でつながる専用端末の設置を進めてきた。…(略)…、わざわざコストをかけて端末を設置しても、予約ができるのは設置した部署にいるユーザーに限られる。得意先で設置スペースを取るのも問題だ。こういう理由から専用端末の設置は拡大しなかったが、Webに置き換えることで一気に企業顧客を増やす考えだ。」(同21頁中欄4〜19行)
コ.「企業単位の情報を収集しておけば、航空料金が自由化されたときに、企業別にディスカウントするサービスにも対応できる」(稲垣氏)。」(同21頁右欄16〜19行)
(3)甲第6号証:特開平8-96050号公報
サ.「【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、座席の指定に必要な情報の入力を行うための入力部11と、座席指定の管理を行うホスト装置1と通信回線2を介して接続され、該ホスト装置1と座席指定に関する情報の授受を行うための通信制御部12と、媒体3に座席指定の行われた情報を記録して該媒体3を座席指定券として発行するための発券部20と、これらの制御を行うための主制御部30とより構成される座席指定券発売機10において、前記座席指定の行われた情報を当該発売機10内に一時的に保管する手段を備えたものである。」(【0004】)
シ.「【作用】上記構成によれば、座席指定券の発売開始前にホスト装置1との通信により予め設定された所定の区間、枚数の座席指定情報に基づく座席の予約が確保され、この座席指定の行われた情報が保管手段により当該発売機10内に格納されている。次に座席指定券の発売開始後に、顧客あるいは係員が新たな座席指定に必要な情報を入力した場合、主制御部30は保管手段に格納されている情報との照合を行う。これらの情報が一致すると判定された場合、すなわち新たに入力された座席指定の情報が保管手段により当該発売機10内に格納されている場合は、通信制御部12はホスト装置1との通信を行わず、格納されている情報を基に発券部20が座席指定券を発行する。またこれらの情報が一致しないと判定された場合は、通信制御部12はホスト装置1との通信を行い、新たに入力された情報に基づく座席指定の確保後、発券部20による座席指定券の発行が行われる。」(【0007】)
(4)甲第7号証:YAHOO!JAPAN 1998年4月号
甲第7号証には、航空券のインターネット予約に関して、オンライン予約の後、搭乗当日に空港の自動チェックイン機で決済カードを使ってチェックインができ、クレジットカードによるオンライン決済を行うチケットレスシステム、が記載されている(118頁左欄及び中欄参照)。
(5)甲第8号証:日経PC21 1998年1月号
甲第8号証には、クレジットカードを用いて航空券の予約から電子決済までを行うこと、及び、登録したクレジットカードを自動チェックイン機に入れれば搭乗券が自動的に発行されること、が記載されている(201頁参照)。

3-2 甲第4号証に記載された発明
上記ア乃至ウの記載及び第1図、第7〜9図等の記載からみて、甲第4号証には、次のような発明が記載されている。
「市中に設置された自動予約機2と、
市中に設置された自動発券機3と、
該自動予約機2及び自動発券機3とデータ回線を介して接続される、予約センターに設置されるホストコンピュータ1と、
顧客が所持するIDカードと、からなり、
自動予約機2は、(顧客による)IDカードの挿入、予約内容の入力に基づいて、該予約内容とIDカード番号とをホストコンピュータ1に送信し、
ホストコンピュータ1は、送信された予約内容とIDカード番号とを関連付けて、予約ファイルに記憶し、
自動発券機3は、(顧客による)IDカードの挿入に基づいて、IDカードからID番号を読取り、該ID番号を、ホストコンピュータ1に送信し、
ホストコンピュータ1は、送信されたID番号に相当する予約内容を予約ファイルから読出し、該予約内容を自動発券機3へ返送し、
自動発券機3は、ホストコンピュータ1から返送された予約内容に相当する航空券を発行し、発券完了の信号をホストコンピュータ1に送信し、
航空料金がIDカードから引落される、予約管理システム。」

3-3 理由1についての当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、「各ユーザ機関毎に航空券利用状況を管理することが容易で、各ユーザ機関毎に種々のサービスを提供できて顧客を十分に惹きつけることができるID情報利用の搭乗券発行システムを提供することを目的とする」(本件公報【0011】参照)ものであり、その目的を達成するために、「搭乗券を発行する搭乗券発行機関」(「航空会社」)に設けられたホストコンピュータ、「各ユーザ機関」に設けられた汎用パソコン、空港に設けられた「搭乗券発券機」、「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報」(以下、「利用者個人及びユーザ機関のID情報」という。)が記録されたID記録媒体、を構成要件とするものであり、航空券の予約、及び、搭乗券の発券に際し、入力、照合等に用いられる情報は、全て上記の「利用者個人及びユーザ機関のID情報」であり、料金請求額は、「ユーザ機関のID情報」に基づいて、各ユーザ機関毎に算出されるものである。なお、算出された料金は、各ユーザ機関に対して、航空会社から(直接)請求されるものと解される。
即ち、本件発明1は、搭乗券発行機関(航空会社)とユーザ機関との契約関係を前提とするものである。
他方、請求人が、理由1における主引用例として提示した、甲第4号証には、上記3-2に記載したような発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているところ、甲4発明に言う顧客は、ユーザ機関とは何ら関係付けられていない単なる個人であり、予約を行う機械は、市中に設置された自動予約機(予約専用機)である。又、上記3-1(1)ウの記載からみて、IDカードはクレジットカードであると解されるから、該カードには利用者個人のID情報が記録され、料金は、信販会社により、利用者個人の口座から(発券の度に)引き落とされ、更に、発券されるものは「航空券」であり、航空券発券に関与するホストコンピュータは予約センターに設置されており、この予約センターには、航空会社に限らず、旅行会社等も含まれることは明らかである。
即ち、甲4発明は、単なる個人と(搭乗券は発行しない)予約センターとの関係を前提とするものである。
両者は共に、予約端末装置、ホストコンピュータ、発券機、ID記録媒体を構成要件とするシステムではあるが、上記のとおり、本件発明1は、搭乗券発行機関(航空会社)とユーザ機関との契約関係を前提とし、甲4発明は、単なる顧客個人と(搭乗券は発行しない)予約センターとの関係を前提とするものであるから、発明の基となる技術思想を異にするものであって、本件発明1と甲4発明とを対比すると、次のような一致点、相違点となる。
[一致点]
ホストコンピュータと、予約端末装置と、発券機と、ID記録媒体と、を備え、
予約端末装置は、ホストコンピュータに対して利用者個人のID情報を表示して予約申請を行う予約申請機能を有し、
ホストコンピュータは、予約端末装置からの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる予約受領機能を有し、
発券機は、ID記録媒体の入力を通じて利用者個人のID情報を読取るID読取機能と、読取られた利用者個人のID情報とホストコンピュータが記憶する情報とを照合した結果に基づいて、対応する航空券予約情報に基づくチケットを発券する発券機能とを有する、
ことを特徴とするID情報利用のチケット発行システム。
[相違点1]
ホストコンピュータが、本件発明1では、搭乗券発行機関に設けられているのに対して、甲4発明では、予約センターに設けられている点。
[相違点2]
予約端末装置が、本件発明1では、ユーザ機関に設けられた汎用パソコンであるのに対して、甲4発明では、市中に設置された自動予約機(予約専用機)である点。
[相違点3]
発券機及び発券されるチケットが、本件発明1では、空港に設けられた搭乗券発券機及び搭乗券であるのに対して、甲4発明では、市中に設けられた航空券発券機及び航空券である点。
[相違点4]
ID記録媒体に記録される情報が、本件発明1では、利用者個人及びユーザ機関のID情報であるのに対して、甲4発明では、利用者個人のID情報である点。
[相違点5]
予約のための入力、発券のための照合等に用いられる情報が、本件発明1では、利用者個人及びユーザ機関のID情報であるのに対して、甲4発明では、利用者個人のID情報である点。
[相違点6]
本件発明1では、ホストコンピュータは、利用者個人及びユーザ機関のID情報と予約情報とを搭乗券発券機に(予め)送信する待機指令機能を有しているのに対して、甲4発明では、ホストコンピュータは、航空券発券機からの利用者個人のID情報の送信に基づいて、送信されたID番号に相当する予約内容を読み出し、航空券発券機へ返送している点。
[相違点7]
本件発明1では、搭乗券発券機が、ID記録媒体から読み取った利用者個人及びユーザ機関のID情報とホストコンピュータから(予め)送信された利用者個人及びユーザ機関のID情報とを照合する照合機能を有しているのに対して、甲4発明では、航空券発券機は照合機能を有しておらず、ホストコンピュータが、航空券発券機から送信された利用者個人のID番号に基づいて照合を行う点。
[相違点8]
本件発明1では、搭乗券発券機が、発券結果情報をホストコンピュータに送信する発券結果送信機能を有しているのに対して、甲4発明では、航空券発券機が、発券完了の信号をホストコンピュータに送信している点。
[相違点9]
本件発明1では、ホストコンピュータは、搭乗券発券機が送信する発券結果情報を蓄積する情報蓄積機能を有しているのに対して、甲4発明では、ホストコンピュータは、航空券発券機から発券完了の信号を受信している点。
[相違点10]
本件発明1では、ホストコンピュータが、ユーザ機関のID情報に基づいて請求料金額の算出を行う一括精算機能を有しているのに対して、甲4発明では、航空料金が顧客のIDカードから引落される点。
これら相違点について検討するに、甲第5号証乃至甲第8号証には、相違点8に係る、搭乗券発券機が有する「発券結果送信機能」、相違点9に係る、ホストコンピュータが有する(発券結果情報を蓄積する)「情報蓄積機能」は、記載されておらず、又、これら機能を有することを条件とする、相違点10に係る、ホストコンピュータが有する「航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関に関するID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能」は記載されておらず、更に、相違点4及び7に係る、照合のために搭乗券発券機に挿入される「各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報が記録されたID記録媒体」は、何ら示されておらず、本件発明1は、これらの構成要件により、本件明細書に記載の作用効果(段落【0034】、【0036】、【0037】参照)を奏するものである。
なお、請求人は、ユーザ機関毎の料金の請求に関して、コーポレートカードを用いて航空券予約を行う場合、法人を特定するクレジット番号を入力し、該クレジット番号に基づき、法人毎の請求は可能である、旨主張する(審判請求書21頁下から2行〜22頁4行参照)が、請求人は、「コーポレートカード」の具体的構成、公知性等について、何ら言及・立証していないから、請求人の当該主張は採用できない。
以上のとおり、甲第4号証乃至甲第8号証には、「利用者個人及びユーザ機関のID情報」及び「これら情報が記録されたID記録媒体」を利用して、照合を行い、搭乗券を発券する点、又、各ユーザ機関毎に料金請求額の算出を行う点は、示されていないから、本件発明1を、甲第4号証乃至甲第8号証に基づいて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、上記(1)に記載のとおり、本件発明1を、甲第4号証乃至甲第8号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない以上、本件発明2についても、甲第4号証乃至甲第8号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
以上(1)、(2)のとおりであるから、請求人の主張する理由1は採用できない。

4 請求人の主張する理由2について
請求人は、本件明細書に記載された「従来の技術」(【0002】〜【0008】参照)を、本件特許の出願当時の技術水準を構成する公然知られた発明として引用し、理由2(特許法第29条第2項違反)を主張するので、本件明細書に記載された「従来の技術」を、進歩性判断の基礎とできるか否か、検討する。

4-1 本件明細書に記載された「従来の技術」の公知性について
請求人は、本件明細書に記載された事項を「本件特許の出願当時の技術水準を構成する公然知られた発明」として引用するについて、特許庁の発行する「審査基準」の「第II部第2章 2.8 進歩性の判断における留意事項(3)」を根拠としているので、「留意事項(3)」をみるに、同(3)には「本願の明細書中に本願出願前の従来技術として記載されている技術は、出願人がその明細書の中で従来技術の公知性を認めている場合は、出願当時の技術水準を構成するものとしてこれを引用して請求項に係る発明の進歩性判断の基礎とすることができる。」(審査基準:第II部第2章20頁23〜25行)と記載されている。
そこで、本件の当初明細書の段落【0002】乃至【0008】に、出願人が公知性を認めている記載があるか否か、検討するに、「・・・は公知であった。」或いは「・・・はよく知られていた。」等の記載はなく、単に、従来技術の説明が記載されているにすぎない。
即ち、本件の当初明細書に「従来の技術」として記載されている事項は、出願人が「従来の技術」と認識していた技術事項であって、それが公知であったか否か、については、何ら言及されていない。
したがって、本件の当初明細書に記載された「従来の技術」を、公然知られた発明として採用することはできない。

4-2 理由2についての当審の判断
上記4-1に記載のとおり、請求人の主張する理由2について、請求人が、公然知られた発明として提示した、本件の当初明細書の記載事項は、証拠として採用できない。
したがって、それを主たる証拠とする、理由2に関する請求人の主張は誤りであり、採用できない。

5 付記
念のため、理由2に関して、請求人が提出した、主たる証拠以外の甲号証について、検討する。

5-1 理由2に関する他の甲号証の公知性について
請求人が、理由2に関して、主たる証拠以外に提出した、甲第5号証、甲第9号証乃至甲第12号証の内、甲第9号証及び甲第11号証には、発行日等を示す明確な記載がないので、その公知性について検討する。
(1)甲第9号証について
請求人が提出した甲第9号証は、「ANA Travel Flyer」という、全日空トラベルのパンフレットの写しである。
なお、「ANA Travel Flyer」には頁数の付与がないため、以下、記載箇所の指示は、パンフレットの写しの綴じられた順に、1頁乃至6頁とする。
ところで、該パンフレット6頁(最終頁)には、発行日等の記載はなく、全日空トラベル株式会社の各支店が、3桁の郵便番号、住所、電話番号と共に列記されており、それら支店の内、「旭川支店」に関して「平成9年3月開設予定」との記載が認められる。
該パンフレットは、全日空トラベルが、全日空の「able-Q」なる航空券発券システムを、出張等で飛行機を利用する企業に導入して貰うべく作成した宣伝用パンフレットであることは、その記載内容から明らかである。そして、上記旭川支店に関する「平成9年3月開設予定」との記載をみれば、その作成時期は、平成9年3月より前、更に言えば、パンフレット作成に要する時間も含んで、それより前であることも明らかである(パンフレットの作成が完了すると予想される時に、旭川支店が開設される予定ならば、他の支店と同様に、開設した支店として記載されるものと認められる。)。
通常、(利潤を追求する)企業がこのような宣伝用パンフレットを作成した場合、それを使用しないまま放置しておくとは到底思料できず、宣伝等に使用したであろうことは想像に難くない。即ち、販売員が各企業を訪問してパンフレットを渡したり、或いは、各企業にパンフレットを郵送したりしたものと解され、そうであれば、該パンフレットは不特定多数に頒布されたものであり、その頒布時期についても、作成と間をおかず、ほぼ同時期と解するのが相当であって、このように解しても何ら矛盾はない。
被請求人は、「甲第9号証の発行日、頒布の事実の有無、頒布時期については不知である。」と主張(答弁書19頁2〜3行)するが、上記のとおりであるから、甲第9号証は、本願出願前に頒布された刊行物と推認できる。
(2)甲第11号証について
甲第11号証は「旅客操作型チェックイン機(SCMIII)機器仕様書」であり、その1頁左下の枠内に「入庫:'97.1.-6」の丸印が、同じく2頁左下の枠内に「再入庫:'97.3.17」の丸印が、同じく3頁左下の枠内に「再入庫:'97.2.-3」の丸印が認められ、7頁、8頁の同箇所(左下の枠内)は空欄になっており、又、1頁左下左から2番目の枠内に「DWN.フワ 96・12・12 CHKD.フワ96・12・12 APPD.96・12・20」として日付らしきものが認められる。
請求人は、甲第11号証について、「1996.12.20(修正版06の作成日)」(証拠説明書参照)と説明しており、請求人の主張のとおり、「1996.12.20」が、甲第11号証の作成日であるとしても、当該日付は、単に機器仕様書が作成された日を示しているにすぎない。
請求人は、甲第11号証が公知となった日を示す証拠、或いは、本願出願前、不特定多数の人に頒布されたことを示す証拠を、何ら提示しておらず、又、通常、甲第11号証のような機器仕様書は、機器の設計・製作を依頼された会社が、依頼主に対して、設計内容、機器の構成、機器の使用法等を説明するために渡す資料と認められるから、このような資料が、第三者に頒布される、或いは、誰もが見られる状態になる、とも思料できず、結局、甲第11号証が、本願出願前に公知であったとは認められない。
したがって、甲第11号証は、証拠として採用できない。

5-2 甲号各証に記載された事項
請求人が、理由2に関する証拠として提出したものの内、公知性の認められる、甲第9号証、甲第10号証、及び甲第12号証には、次の事項が図面等と共に記載されている。
甲第5号証については、上記3-1(2)に記載したとおりである。
(1)甲第9号証:ANA Travel Flyer vol.1
ア.「オフィスで予約、その場で発券。able-Qとは、全日空の航空チケット発券システムのことです。」(甲第9号証2頁1〜2行)
イ.「机上ユースのコンパクトサイズで電話回線一本あれば手軽に設置でき、使用量は一切無料です。」(同2頁5行)
ウ.「[予約キー]→[メニュー画面]→[内容選択]→[画面が誘導]→[発券]」(同2頁8行)
エ.「able-Qは、コンピュータと思えないほど操作が簡単です。予約キーを押し、画面の指示に従って必要な情報を入力するだけで予約が完了します。そのあと発券精算ボタンを押せば、後払いのアカウントクーポン券が発券できます。…(略)…しかも、料金は自動計算ですので、手間も時間もかかりません。」(同2頁左欄3〜8行)
オ.「部署別に集計したい。発券した航空券の料金を、各部署ごとワンタッチで集計します。」(同2頁右欄10〜11行)
カ.「から発券された航空券なら、空港で短時間にチェックインできるSCM(自動チェックイン機)がご利用になれます。さらに、マイシートリクエストをしていれば、航空券を挿入するだけなので、わずか5秒でチェックイン完了。」(同3頁左欄3〜6行)
キ.同3頁右欄に「ワンタッチ操作で簡単です。[予約操作例]」として、予約に必要な事項の入力画面が順次記載されている。
ク.「アカウントクーポンシステム(ACS)は、お預けした航空クーポン券を必要なだけご使用いただき、ご搭乗分のみの代金を翌月に一括してお支払いいただく全日空国内線の航空券予約・販売システムです。」(同4頁左欄3〜6行)
ケ. 同4頁右欄に「アカウントクーポンシステム」として、「[CORP型設置]→[端末操作にて空席照会、予約]→[端末操作にて発券]→[1カ月間搭乗分の料金を翌月15日にご請求(各セクションごとのご請求明細書の出力も可能)]→[翌月末全日空トラベル指定口座へお支払い]」と記載されている。
(2)甲第10号証:三菱電機技報 Vol.68 No.10 1994
コ.「JALPAS/D-IIは、日本航空の国内線の空港で搭乗手続きや搭乗管理等の空港業務を総合的にサポートするシステムであり、日本航空が保有するホストシステム(国内線の予約・発券システム、運航システム及び日本語情報システム)と密接に連携し、予約から搭乗、精算までの情報処理の統合化を実現している。」(甲第10号証52頁左欄13〜18行)
サ.「(3)チェックイン業務 空港での搭乗手続きであり、旅客が所持する航空券の行き先、便名、券の有効性などを確認し、座席の確保と搭乗券の発券、手荷物の受託を行う。チェックイン業務は、空港のチェックインカウンタで行うが、専用端末を導入して操作を簡略化している。」(同52頁左欄最下行〜右欄5行)
シ.「(5)バックオフィス業務 チェックインカウンタで旅客から回収した航空券を集計し、精算するための集札情報を作成するとともに、便ごとの搭乗人数などの搭乗結果情報をホストシステムに送信する。」(同52頁右欄12〜15行)
ス.「(6)精算 ホストシステムの予約・発券情報にJALPAS/D-IIから送付された搭乗結果情報を反映する。」(同52頁右欄16〜18行)
セ.「(1)自動チェックイン このシステムでは、旅客から受け取った多様な航空券をBPPに読み込ませるだけで、チェックイン操作が行えるようにしており、チェックインの操作性、正確性、迅速性を向上させている。すなわち、航空券をBPPに読み取らせることで、航空券の情報とシステムの保持する予約、航空券情報との整合性チェックが自動的に行われ、チェックインが行えるようになっている。」(同54頁左欄23〜30行)
(3)甲第12号証:特開平10-63894号公報
ソ.「第2のシステム4は、受信した該利用情報を蓄積し、集計処理を行い、月締めで企業・団体と発行機関との間で精算/請求処理、更に発行機関と各交通機関との間の精算処理が行われる。」(【0008】12〜15行:行の指摘は公報による。)
タ.「企業コード別に集計された発行金額は、利用残の有無にかかわらず明細書と共に各企業に月締めで一括請求される。」(【0009】8〜10行)

5-3 甲号各証についての検討
甲第9号証には、全日空の航空チケット発券システムが記載されているところ、当該システムは、全日空が、航空券発券のための専用端末を企業に貸与し、企業の社員は、当該専用端末により発券された航空券を、空港の自動チェックイン機に挿入して、チェックインを行い、翌月、全日空トラベル株式会社(全日空が出資する総合旅行会社:甲第9号証3頁下枠参照)が、1カ月間搭乗分の料金を請求するものである。
甲第5号証の、「専用端末をWebで置き換え、ユーザー企業の社員全員が予約できるようした」(上記3-1(2)サ参照)、「あらかじめJASが付与した企業コードや事務所コード番号を入力すれば、」(上記3-1(2)オ参照)、なる記載を参酌すれば、甲第9号証記載の「専用端末」を「汎用パソコン」に置き換えること、予約に際して企業コードを入力すること、は把握できる。
しかしながら、甲第9号証には、料金が請求されることは記載されているが、請求料金額がどのように算出されるか全く記載がなく、又、甲第5号証には、料金に関連する記載は一切ない。
なお、甲第5号証に関して、請求人は、甲第5号証の「企業別にディスカウントするサービスにも対応できる」(上記3-1(2)コ参照)との記載を根拠に、甲第5号証記載の「スカイコールPorte」では、企業別にディスカウントして料金請求可能である、旨主張する(理由1に関して:審判請求書9頁右上枠4〜5行参照)が、上記サービスの条件となる「企業単位の情報を収集しておけば、」(同じくコ参照)との記載も参酌すると、上記記載からは、飛行機の利用頻度等に応じて、企業を区別し、企業毎にディスカウントする割合を変える、という程度のことが類推できるだけであるから、上記記載を以て、企業別に料金を請求することが記載されている、とは言い難い。
さらに、甲第5号証記載の「企業コード」は、「企業コードを入力すれば、一般顧客より優遇したサービスが受けられる。」(上記3-1(2)オ)との記載からみて、一般顧客とJASが契約した企業の社員とを区別するためのもの、又、「スカイコールPorteで最もメリットが見込めるのが、搭乗便の最後の1座席までインターネットで予約できる機能だ。実は「JASとON-LINE」はインターネットで予約できる座席数に上限を設けている。これは出発の1時間前まで予約を受け付けるため。直前にキャンセルが頻発して、航空券が売れ残らないようにする措置だ。」(上記3-1(2)カ)との記載からみて、航空券が売れ残らないようにするためのもの、であると解される(これら点は、「スカイコールPorte」の開発者である稲垣利展の陳述事項4、5(乙第1号証1頁下から4行〜2頁14行)とも対応している。)。
即ち、甲第5号証記載の「企業コード」は、予約者がJASと契約した企業の社員であることを示すためのものであり、又、上記のとおり、甲第5号証には、料金に関する記載はないから、甲第5号証記載の「企業コード」が、料金算出に利用されるものとは認められない。
他方、甲第12号証には、企業コード別に発行金額を集計することが記載されており、この点からみて、上記甲第5号証記載の企業コードを集計に利用することは、当業者にとって容易であると言えるかもしれない。
しかしながら、そうであっても、甲第5号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証には、搭乗券発券機が有する「発券結果送信機能」、ホストコンピュータが有する(発券結果情報を蓄積する)「情報蓄積機能」は、記載されておらず、又、これら機能を有することを条件とする、ホストコンピュータが有する「各ユーザ機関に関するID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する一括精算機能」は記載されていない。そして何より、上記甲号各証には、「照合」のために搭乗券発券機に挿入される「利用者個人及びユーザ機関のID情報が記録されたID記録媒体」は、記載されていない。

6 まとめ
したがって、本件発明1及び本件発明2は、請求人の提出した甲第4号証乃至甲第12号証に記載された発明及び技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、又、平成13年3月1日付手続補正書により補正された事項は、本件の出願当初の明細書に記載された事項の範囲内のものであり、更に、平成17年11月4日付けの訂正請求により、本件発明1及び本件発明2は明確なものとなったから、請求人の主張する理由1乃至4によっては、本件発明1及び本件発明2に係る特許を無効とすることはできない。

第8 むすび
以上のとおり、当審において通知した無効理由によっては、又、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1及び本件発明2に係る特許を、無効とすることはできない。
又、他に、本件発明1及び本件発明2に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ID情報利用の搭乗券発行システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータと、
各ユーザ機関に設けられた汎用パソコンと、
空港に設けられた搭乗券発券機と、
各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報が記録されたID記録媒体と、
を備え、
各ユーザ機関の汎用パソコンは、
搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、
搭乗券発行機関のホストコンピュータは、
汎用パソコンからの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる予約受領機能と、
成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、
搭乗券発券機から送信される搭乗券の発券結果情報を蓄積する情報蓄積機能と、
前記航空券予約のために汎用パソコンによって表示された各ユーザ機関に関するID情報に基づいて、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができる一括精算機能と、
を有し、
空港の搭乗券発券機は、
ID記録媒体の入力を通じて各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報を読取るID読取機能と、
読取った各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とホストコンピュータから送信された各ユーザ機関内の利用者個人及び当該ユーザ機関に関するID情報とを照合する照合機能と、
照合した結果に基づいて対応する航空券予約情報に基づく搭乗券を発券する発券機能と、
搭乗券発券の事実をホストコンピュータに送信する発券結果送信機能とを有する、
ことを特徴とするID情報利用の搭乗券発行システム。
【請求項2】
搭乗券発行機関のホストコンピュータは、各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する際に、料金を割引くことができる一括精算割引機能を有することを特徴とする請求項1に記載のID情報利用の搭乗券発行システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、航空予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータと、各ユーザ機関に設けられた端末とを備えたID情報利用の搭乗券発行システムに係り、とりわけ、各ユーザ機関の端末として汎用パソコンを用いることができるID情報利用の搭乗券発行システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、航空予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関は、ユーザ機関に専用端末を設置することによって航空券予約の利便性を高めている。各ユーザ機関は当該専用端末を用いることによって、航空券予約を容易かつ迅速に行っている。
【0003】
専用端末を利用した従来の搭乗券発行システムの概略を図2に示す。図2に示すように、従来の搭乗券発行システム50は、搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータ51と、当該ホストコンピュータ51に電話回線52等を介して接続され、各ユーザ機関に設けられた専用端末53とを備えている。専用端末53には、専用の航空券発券機54が併設されており、航空券発券機54は、専用端末53によって航空券予約を行った際に、その航空券56を発券できるようになっている。また、搭乗券発券機55は各空港に設けられ、投入口55aを有しており、航空券56を投入口55aに投入することによって対応する搭乗券57が発券されるようになっている。
【0004】
従来の搭乗券発行システム50では、専用端末53からの操作によってホストコンピュータ51に対して航空券予約申請を行うことができる。またホストコンピュータ51が適切な航空券予約申請を受領すると航空券予約は成立し、ホストコンピュータ51にその予約情報が記録されるとともに、専用端末53に併設された航空券発券機54を介して航空券56が発券される。
【0005】
利用者はその航空券56を持って出発時に空港に行き、当該空港にある搭乗券発行機関の搭乗券発券機55の投入口55aにその航空券56を投入する。搭乗券発券機55は、投入された航空券56に基づいて対応する搭乗券57を発券する。
【0006】
また、個人単位の電話予約による航空券予約も実施されている。この予約方法は、航空券予約をする個人が、何らかのクレジットカードを所有(登録)していることが必要である。
【0007】
航空券予約をしたい個人は、航空予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に電話をする。そして所望の航空券についての予約申請をするとともに、所有(登録)するクレジットカードのカード名、登録番号等を伝達する。搭乗券発行機関が当該予約申請に応じ、その予約申請を受領することで航空券予約は成立する。この時、航空券は仮想的に発行されるのみで実際には発行されず、個人は航空券を手にしないが、精算は行われ、所定の料金がクレジットカード会社から搭乗券発行機関に支払われる。
【0008】
航空券予約をした個人は、予約時に表示した内容のクレジットカードを持って出発時に空港に行く。そして当該空港にある搭乗券発行機関の搭乗券発券機にそのクレジットカードを挿入する。その搭乗券発券機は、クレジットカードの情報を読取り、予め入力されている航空券予約の情報と照合して搭乗券を発券する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
まず、前述した従来の搭乗券システム50は、各ユーザ機関に専用端末53を設置してなるものであるが、他に用途のない専用端末53を設置することはスペース利用効率上具合が悪い。また、一旦専用端末53が導入された後も、そのメンテナンス等を専用端末53独自に行う必要があり、コスト及び手間の面で問題がある。このため、各ユーザ機関は専用端末53の導入に慎重にならざるを得ず、システムの普及に限界がある。
【0010】
また、電話予約による航空券予約方法は個人を対象としたものであるため、各ユーザ機関毎に航空券利用状況を管理することが困難で、ユーザ機関毎に料金を精算する等といったサービスを提供することも困難である。従って、搭乗券発行会社と各ユーザ機関との繋がりが弱まり、搭乗券発行機関は各ユーザ機関内の顧客を失う可能性が増す。また、各ユーザ機関内の利用者の側にも、クレジットカードを所有していなければこの方法を利用できないという不都合がある。
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、設置スペース上の問題を解消し、システム導入コストおよびシステムメンテナンスコストを低減するとともに、各ユーザ機関毎に航空券利用状況を管理することが容易で、各ユーザ機関毎に種々のサービスを提供できて顧客を十分に惹きつけることができるID情報利用の搭乗券発行システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータと、各ユーザ機関に設けられた汎用パソコンと、空港に設けられた搭乗券発券機と、ID情報が記録されたID記録媒体と、を備え、各ユーザ機関の汎用パソコンは、搭乗券発行機関に対して各ユーザ機関毎のID情報を表示して航空券予約申請を行う予約申請機能を有し、搭乗券発行機関のホストコンピュータは、汎用パソコンからの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる予約受領機能と、成立した航空券予約情報と、当該航空券予約のために汎用パソコンによって表示されたID情報とを空港の搭乗券発券機に送信する待機指令機能と、搭乗券発券機から送信される搭乗券の発券結果情報を蓄積する情報蓄積機能とを有し、空港の搭乗券発券機は、ID記録媒体の入力を通じて利用者ID情報を読取るID読取機能と、読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信されたID情報とを照合する照合機能と、照合した結果に基づいて対応する航空券予約情報に基づく搭乗券を発券する発券機能と、搭乗券発券の事実をホストコンピュータに送信する発券結果送信機能とを有する、ことを特徴とするID情報利用の搭乗券発行システムである。
【0013】
本発明によれば、各ユーザ機関は汎用パソコンによって航空券予約申請を行うことができるため、従来のような専用端末を設置する必要がなく、従って設置スペース上の問題が解消し、システム導入コストおよびシステムメンテナンスコストが著しく低減する。また、本発明の汎用パソコンは各ユーザ機関毎に設置されるため、各ユーザ機関毎に航空券利用状況を管理することが容易で、各ユーザ機関毎に種々のサービスを提供でき、顧客を十分に惹きつけることができる。さらに利用者も、ID記録媒体を所有すればよく、クレジットカード所有(登録)の必要がない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態によるID情報利用の搭乗券発行システム10を示している。図1に示すように、本実施の形態のID情報利用の搭乗券発行システム10は、航空券予約を受けて搭乗券を発行する搭乗券発行機関に設けられたホストコンピュータ11と、当該ホストコンピュータに電話回線12を介して接続され、各ユーザ機関に設けられた汎用パソコン13と、ホストコンピュータ11に電話回線12を介して接続され、各空港に設けられた搭乗券発券機15と、ID情報が記録されたID記録媒体16と、を備えている。
【0015】
汎用パソコン13には、専用の航空券予約ソフト14がインストールされているが、その他にも種々のアプリケーションソフトがインストールされている。航空券予約ソフト14が起動されると、汎用パソコン13はホストコンピュータ11と通信可能となり、ホストコンピュータ11に対して航空券予約申請を行うことができるようになる。航空券予約ソフト14は、例えば搭乗券発行機関によって各ユーザ機関に無償で貸与され、航空券予約が容易かつ円滑に行えるように設定されている。
【0016】
航空券予約ソフト14が起動された汎用パソコン13は、利用を希望する航空便の情報と、利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報とをホストコンピュータ11に送信(表示)することにより、容易かつ円滑に航空券予約申請を行うことができるようになっている(予約申請機能)。
【0017】
航空券予約申請時に、汎用パソコン13からホストコンピュータ11に送信される利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報は、利用者ID情報としてID記録媒体16に記録されている。本実施の形態におけるID記録媒体16はIDカードであるが、態様はこれに限定されない。
【0018】
一方、搭乗券発行機関のホストコンピュータ11は、汎用パソコン13からの航空券予約申請に基づいて航空券予約を成立させる(予約受領機能)。例えば、ホストコンピュータ11は、汎用パソコン13から送信された航空便の情報に基づいて当該航空便に残席があるか否かを検索し、残席があれば航空券予約を成立させ、残席が無ければその旨を汎用パソコン13に返信する。なお、汎用パソコン13からID情報が正しく送信されていない場合には、航空便に空席があっても航空券予約は成立しないように設定されている。
【0019】
航空券予約が成立した場合、ホストコンピュータ11は、成立した航空券予約情報と当該航空券予約に付随するID情報とを、当該航空便の出発空港に設けられた搭乗券発券機15に送信するようになっている(待機指令機能)。
【0020】
空港の搭乗券発券機15は、ID記録媒体16の投入(入力)のための投入口15aを有しており、この投入口にID記録媒体16が投入(入力)された時に、当該ID記録媒体からこれに記録された利用者ID情報を読取ることができるようになっている(ID読取機能)。そして読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信されたID情報とを照合し(照合機能)、その照合の結果に基づいて、対応する航空券予約情報に基づく搭乗券17を発券するようになっている(発券機能)。さらに、搭乗券発券の事実を、搭乗券発券結果情報としてホストコンピュータ11に送信するようになっている(発券結果送信機能)。
【0021】
搭乗券発券機15からホストコンピュータ11に送信された搭乗券17の発券結果情報は、ホストコンピュータ11内のデータベースに蓄積されるようになっている(情報蓄積機能)。
【0022】
搭乗券発行機関のホストコンピュータ11は、さらに、蓄積された発券結果情報に基づいて料金請求額を算出することができ(搭乗後精算機能)、各ユーザ機関の汎用パソコン毎あるいは各ユーザ機関毎に料金請求額を算出することができ(一括精算機能)、各ユーザ機関の汎用パソコン毎あるいは各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する際に料金を割引くことができる(一括精算割引機能)ようになっている。
【0023】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。本実施の形態のID情報利用の搭乗券発行システム10は、各ユーザ機関の汎用パソコン13が、オペレータによって起動、操作され、汎用パソコン13にインストールされた航空券予約ソフト14が起動される。航空券予約ソフト14が起動されると、汎用パソコン13はホストコンピュータ11と通信可能な状態となる。
【0024】
次に、オペレータは、利用を希望する航空便の情報と、利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報とを汎用パソコン13に入力し、汎用パソコン13からホストコンピュータ11に送信(表示)して、ホストコンピュータ11に対して航空券予約申請を行う。なお、ホストコンピュータ11に送信される利用者個人および当該ユーザ機関に関するID情報は、利用者ID情報としてID記録媒体16に記録されている情報である。
【0025】
搭乗券発行機関のホストコンピュータ11は、汎用パソコン13からの航空券予約申請を受信すると、例えば汎用パソコン13から送信された航空便の情報に基づいて当該航空便に残席があるか否かを検索し、残席があれば航空券予約を成立させ、残席が無ければその旨を汎用パソコンに返信する。なお、汎用パソコン13からID情報が正しく送信されていない場合には、航空便に空席があっても航空券予約は成立しない。
【0026】
航空券予約が成立すると、ホストコンピュータ11は、成立した航空券予約情報と当該航空券予約に付随するID情報とを、当該航空便の出発空港に設けられた搭乗券発券機15に送信する。これによって航空券予約手続は完了する。
【0027】
航空券予約をした利用者は、予約時に表示したID情報を記録したID記録媒体16を持って出発空港に行く。そして当該空港にある搭乗券発行機関の搭乗券発券機15の投入口15aにそのID記録媒体16を投入する。
【0028】
搭乗券発券機15はID記録媒体16の情報を読取り、読取った利用者ID情報とホストコンピュータから送信されたID情報とを照合して、その照合の結果に基づいて、対応する航空券予約情報に基づく搭乗券17を発券する。
【0029】
さらに搭乗券発券機15は、搭乗券発券の事実を、搭乗券発券結果情報としてホストコンピュータ11に送信する。搭乗券発券機15からホストコンピュータ11に送信された搭乗券の発券結果情報は、ホストコンピュータ11内のデータベースに蓄積される。
【0030】
搭乗券発行機関のホストコンピュータ11は、搭乗券発行機関の選択によって、蓄積された発券結果情報に基づいて料金請求額を算出したり、各ユーザ機関の汎用パソコン13毎あるいは各ユーザ機関毎に料金請求額を算出したり、各ユーザ機関の汎用パソコン13毎あるいは各ユーザ機関毎に料金請求額を算出する際に料金を割引いたりする。
【0031】
以上のように本実施の形態によれば、各ユーザ機関は汎用パソコン13によって航空券予約申請を行うことができるため、従来のような専用端末を設置する必要がなく、従って設置スペース上の問題が解消する。また、システム導入コストおよびシステムメンテナンスコストについても、汎用パソコン13に関するコストに航空券予約ソフト14に関するコストが付加されるのみであるから、従来に比べて著しく低減する。
【0032】
また、本実施の形態によれば、汎用パソコン13は各ユーザ機関に設置されるため、各ユーザ機関は航空券利用状況を容易に管理することができる。特に、汎用パソコン13は他のアプリケーションソフトも起動できるため、例えば航空券利用状況のデータを経理用アプリケーションソフトに読込ませる等の幅広い応用が容易に行える。
【0033】
一方搭乗券発行機関は、本実施の形態によって各ユーザ機関毎に種々のサービスを提供できる。例えば、搭乗券発券結果情報に基づいて、料金精算を後払いで一括に請求したり、各ユーザ機関毎に利用回数や利用距離数などに応じた割引サービスを提供することが可能である。これによって搭乗券発行機関は、各ユーザ機関の航空券利用のニーズを実質的に独占することが可能となる。
【0034】
航空便利用者は、航空券の代わりにID記録媒体16を所持すればよく、従来の電話予約方法のようにクレジットカードを登録、所有する必要はない。さらに料金精算手続もユーザ機関に対して行われるため、いわゆる立替払いおよびその申告というような機関内の手続も不要である。
【0035】
なお、汎用パソコン13は、航空券予約に付随する機能として、航空券予約状況の照会機能などの様々な機能を有している。その他、搭乗券発行機関からの各種のサービスが、ホストコンピュータ11から汎用パソコン13へ送信されるようにすることも可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、各ユーザ機関は汎用パソコンによって航空券予約申請を行うことができるため、従来のような専用端末を設置する必要がなく、従って設置スペース上の問題が解消する、また、システム導入コストおよびシステムメンテナンスコストが著しく低減する。
【0037】
また本発明によれば、汎用パソコンは各ユーザ機関に設置されるため、各ユーザ機関は航空券利用状況を管理することが容易であり、一方搭乗券発行機関は、各ユーザ機関毎に種々のサービスを提供でき、ユーザ機関の航空便利用のニーズを独占することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるID情報利用の搭乗券発行システムの実施の形態の構成を示す概略図。
【図2】
従来の搭乗券発行システムの構成を示す概略図。
【符号の説明】
10 ID情報利用の搭乗券発行システム
11 ホストコンピュータ
12 電話回線
13 汎用パソコン
14 航空券予約ソフト
15 搭乗券発券機
15a 投入口
16 ID記録媒体
17 搭乗券
50 搭乗券発行システム
51 ホストコンピュータ
52 電話回線
53 専用端末
54 航空券発券機
55 搭乗券発券機
55a 投入口
56 航空券
57 搭乗券
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-03-10 
結審通知日 2006-03-15 
審決日 2006-03-29 
出願番号 特願平10-147997
審決分類 P 1 113・ 55- YA (G07B)
P 1 113・ 537- YA (G07B)
P 1 113・ 121- YA (G07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 水谷 万司
高瀬 勤
登録日 2001-04-13 
登録番号 特許第3179409号(P3179409)
発明の名称 ID情報利用の搭乗券発行システム  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 吉武 賢次  
代理人 越智 隆夫  
代理人 吉武 賢次  
代理人 下田 憲雅  
代理人 岡部 正夫  
代理人 永井 浩之  
代理人 秋山 佳胤  
代理人 岡田 淳平  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 永井 浩之  
代理人 花水 征一  
代理人 松本 重敏  
代理人 牧野 利秋  
代理人 美勢 克彦  
代理人 岡田 淳平  

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