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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K |
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管理番号 | 1139908 |
審判番号 | 不服2003-12085 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-27 |
確定日 | 2006-07-12 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 9562号「魚釣用スピニングリール」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 4日出願公開、特開平10-201403〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年1月22日の出願であって、平成15年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月25日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、同手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「前側鍔部と釣糸巻回胴部と後側鍔部とからなるスプールの釣糸巻回胴部を、スプール軸方向後方に向け順次小径となる逆テーパ状に形成した魚釣用スピニングリールに於て、 上記前側鍔部の外径に対する釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法の割合を70%〜90%に設定して釣糸巻回胴部を大径化し、スプールの軸心に対し0.5°〜5°のテーパ角度を以って釣糸巻回胴部をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成し、上記前側鍔部の外径に対する後側鍔部の外径寸法の割合が95%〜105%となるように前側鍔部を大口径化すると共に、上記釣糸巻回胴部に比し後側鍔部をスプール軸方向へ長尺に形成したことを特徴とする魚釣用スピニングリール。」 2.刊行物及びその記載内容 これに対して、原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された登録実用新案第3007531号公報(以下、「刊行物」という。)には、次のことが記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、釣糸放出性の改良を図った魚釣用スピニングリールに関する。」、 「【0007】 【作用】 ・・・魚釣用スピニングリールにおけるスプールの釣糸巻回領域の外周形状を前方から後方にかけて漸次小径となるテーパー状に形成し、スプールの前端部に釣糸放出時における釣糸巻回面への釣糸の接触を防止するガイド部を形成したので、釣糸巻回部に巻回された釣糸の糸くずれを防止して釣糸放出操作時に安定した釣糸の繰り出しを行うことができる。」、 「【0011】 本実施例ではこのようなスプール1の形状を、図1に示すように、釣糸巻回領域2の外周形状が釣糸繰出し側の前方から後方にかけて漸次小径となる逆テーパーのテーパー状4のように形成し、スプール1の前端部に釣糸放出時に釣糸巻回面2aへの後側の釣糸の接触を防止するガイド部3を形成している。 【0012】 従って、ガイド部3が無い従来のスプールに比較すれば、釣糸放出時にスプール1の後方の釣糸が前方に巻回されている釣糸巻回面2aの釣糸に当たって、一緒に運んでしまう糸くずれをガイド部3によって防止できるので、釣糸がまとまって出てしまう放出トラブルを避け、釣糸を1ループづつ確実に放出させることが可能になり、より安定した釣糸放出操作を行うことができる。」。 また、【図1】には、ガイド部3の外径に対し、釣糸巻回領域2のガイド部3基部の外径寸法が、若干小さいこと、スプールの軸心に対しあるテーパ角度を以って釣糸巻回領域2をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成すること、及び、ガイド部3の外径が、スプールの後側鍔部の外径寸法とほぼ同径となるように形成することが記載されている。 上記記載及び図面の記載からみて、刊行物には、 「ガイド部3と釣糸巻回領域2と後側鍔部とからなるスプールの釣糸巻回領域2を、スプール軸方向後方に向け順次小径となる逆テーパ状に形成した魚釣用スピニングリールに於て、 上記ガイド部3の外径に対し、釣糸巻回領域2のガイド部3側基部の外径寸法が、若干小さく、 スプールの軸心に対しあるテーパ角度を以って釣糸巻回領域2をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成し、 上記ガイド部3の外径が、後側鍔部の外径寸法とほぼ同径となるように形成した魚釣用スピニングリール。」の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比・判断 本願発明と上記刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「ガイド部3」及び「釣糸巻回領域2」が、それぞれ、本願発明の「前側鍔部」及び「釣糸巻回胴部」に相当し、本願発明の「前側鍔部の外径に対する釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法の割合を70%〜90%に設定」することは、前側鍔部の外径に対し、釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法が、若干小さいということができ、本願発明の「スプールの軸心に対し0.5°〜5°のテーパ角度を以って釣糸巻回胴部をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成」することは、スプールの軸心に対しあるテーパ角度を以って釣糸巻回胴部をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成するということができ、本願発明の「前側鍔部の外径に対する後側鍔部の外径寸法の割合が95%〜105%」とすることは、前側鍔部の外径が、後側鍔部の外径寸法とほぼ同径となるように形成するということができるから、 両者は、 「前側鍔部と釣糸巻回胴部と後側鍔部とからなるスプールの釣糸巻回胴部を、スプール軸方向後方に向け順次小径となる逆テーパ状に形成した魚釣用スピニングリールに於て、 上記前側鍔部の外径に対し、釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法が、若干小さく、 スプールの軸心に対しあるテーパ角度を以って釣糸巻回胴部をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成し、 上記前側鍔部の外径が、後側鍔部の外径寸法とほぼ同径となるように形成した魚釣用スピニングリール。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 前側顎部の外径と、釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法に関し、本願発明が、「前側鍔部の外径に対する釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法の割合を70%〜90%に設定して釣糸巻回胴部を大径化」するのに対し、刊行物には具体的な数値割合が記載されていない点。 (相違点2) 逆テーパ状に関し、本願発明が「スプールの軸心に対し0.5°〜5°のテーパ角度を以って釣糸巻回胴部をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成」したのに対し、刊行物には具体的なテーパ角度が記載されていない点。 (相違点3) 前側鍔部の外径と後側鍔部の外径寸法に関し、本願発明が「前側鍔部の外径に対する後側鍔部の外径寸法の割合が95%〜105%となるように前側鍔部を大口径化」したのに対し、刊行物には具体的な数値割合が記載されていない点。 (相違点4) 本願発明が「釣糸巻回胴部に比し後側鍔部をスプール軸方向へ長尺に形成」したのに対し、刊行物にはこの点が記載されていない点。 上記相違点1を検討すると、刊行物には、前側鍔部の外径に対して釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法を若干小さく構成する点が記載されており、いいかえれば、相対的に、釣糸巻回胴部を大径化したことが記載されているものと認められ、また、このような大径化により迅速な巻取り及び糸グセの減少の効果を奏することは自明の事項であり、その際に、前側鍔部の外径に対する釣糸巻回胴部の前側鍔部側基部の外径寸法の割合をどのような値にするかは、当業者であれば適宜決定できる設計的事項にすぎない。 上記相違点2を検討すると、刊行物には、スプールの軸心に対しあるテーパ角度を以って釣糸巻回胴部をスプール軸方向後方に向け逆テーパ状に形成することが記載されており、魚釣用リールに当然期待される課題である釣糸放出時の糸崩れ防止及び糸抵抗の軽減を考慮し、該テーパ角度をどのような値にするかは、当業者であれば適宜決定できる設計的事項にすぎない。 上記相違点3を検討すると、刊行物には、前側鍔部の外径が、後側鍔部の外径寸法とほぼ同径(100%)となるように形成した点が記載されており、本願発明と同様に前側鍔部を大口径化したことが記載されていると認められ、前側鍔部の外径に対する後側鍔部の外径寸法の割合をどのような値にするかは、当業者であれば適宜決定できる設計的事項にすぎない。 上記相違点4を検討すると、釣糸巻回胴部に比し後側鍔部をスプール軸方向へ長尺に形成することは、原審で挙げた実願昭60-185777号(実開昭62-91973号)のマイクロフィルム、実願平4-65508号(実開平6-26466号)のCD-ROM、実願平3-94723号(実開平5-43866号)のCD-ROM等に記載されているように周知慣用であり、しかも、このように構成したことにより後側鍔部が釣糸巻取操作時の糸落ちを防止することは、当業者にとって技術常識である(実願平5-40798号(実開平7-11166号)のCD-ROMの【0002】、【0003】及び【図12】におけるアウトスプール型のリールのスカート部に関する記載等参照)。したがって、刊行物記載の発明において釣糸巻回胴部に比し後側鍔部をスプール軸方向へ長尺に形成することは、当業者であれば容易に推考できることである。 また、本願発明のように構成したことによる相乗効果(「糸崩れの防止」,「糸グセの減少」,「糸落ちの防止」の作用効果を全て同時に図る)も、刊行物記載の発明及び周知技術から、当業者であれば当然予期できる範囲内のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-26 |
結審通知日 | 2006-05-09 |
審決日 | 2006-05-22 |
出願番号 | 特願平9-9562 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 恭 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
大元 修二 西田 秀彦 |
発明の名称 | 魚釣用スピニングリール |
代理人 | 古谷 史旺 |