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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1139939
審判番号 不服2004-1527  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-22 
確定日 2006-07-10 
事件の表示 平成 6年特許願第303570号「エアバッグ装着車用の窓ガラス破壊具」拒絶査定不服審判事件〔平成8年6月18日出願公開、特開平8-156724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年12月7日の出願であって、平成15年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願の発明
本願の請求項1〜3に係る発明は、平成15年11月20日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものと認められるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】衝突センサと、該衝突センサの信号により作動して膨張するエアバッグを装着した車両において、シクロトリメチレントリニトロアミン、ペンタエリストールテトラナイトレート、ヘキサニトロスチルベン、およびジアミノヘキサニトロジフェニルから選ばれる爆薬の充填されたチューブが窓ガラスに固着された導爆線と、該導爆線を起爆させる点火装置とを有し、該点火装置が前記衝突センサの信号で作動することを特徴とするエアバッグ装着車用の窓ガラス破壊具。」

3.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭46-63070号(実開昭48-20144号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「車内圧力上昇防止装置」に関して、第1、2図とともに次の事項が記載されている。

ア.「この考案は、自動車の衝突時エアバツグの膨張による車内圧力の上昇を防止する装置に関するものである。
車体が衝突した際、人体を保護するようにエアバツグを座席の前方に装備した自動車において、車体が衝撃を受けるとエアバツグが瞬間的に膨張するため、密閉された車内の圧力が急に上昇し、乗員の目および耳に著しい生理的傷害を与える恐れがある。
この考案は、自動車が衝撃を受けると同時にウインドガラスを自動的に破壊し、エアバツグ膨張による車内圧力上昇を防止し、上記の生理的傷害を受けるのを避けようとするものである。
この考案の一例を図面によつて説明する。
リヤーウインドガラス1をリヤーパネル2の周辺に接着する接着剤3の流出を防止するために設けられたダム4に火薬を充填した火薬ケース5を全周にわたつて装着し、該火薬ケース5に少なくとも1個の電気雷管6を組込み、この電気雷管6は衝突検出装置7に電気的に連結されている。
自動車が衝撃を受けると、衝突検出装置7によつてゼネレータ8が作動し、エアバツグを膨張させると同時に、起爆装置である電気雷管6が点火され、その点火によつて火薬ケース5内の火薬が爆発してリヤーウインドガラス1をその全周にわたつて破壊し、エアバツグの膨張による車内圧力を大気に開放する。火薬ケース5の火薬爆発方向は外方に向けられているのでリヤーウインドガラス1の破片が車内に飛散することはない。」(第1頁第11行〜第2頁第19行)

4.発明の対比
(1)本願発明の構成事項と引用例の記載事項とを対比する。
引用例の「衝突検出装置7」は、本願発明の「衝突センサ」に相当し、引用例の「エアバツグ」は、衝突検出装置7(衝突センサ)の信号により作動して膨張するものであるから、本願発明の「エアバッグ」に相当する。
引用例の「火薬ケース5」は、内部に爆発する火薬(本願発明の「爆薬」に相当する。)が充填されてリヤーウインドガラス1(本願発明の「窓ガラス」に相当する。)の全周に装着されるものであるから、「爆薬の充填されたチューブが窓ガラスに固着された導爆線」といえる。
引用例の「電気雷管6」は、火薬ケース5(導爆線)を起爆させるものであるから、本願発明の「点火装置」に相当し、この「電気雷管6」は衝突検出装置7(衝突センサ)と電気的に連結されているから、本願発明の「点火装置」と同様に、衝突検出装置7(衝突センサ)の信号で作動するものである。
そして、引用例の「車内圧力上昇防止装置」は、ウインドガラスを自動的に破壊し、エアバツグ膨張による車内圧力上昇を防止するものであるから、本願発明の「エアバッグ装着車用の窓ガラス破壊具」に相当する。

(2)以上の対比関係から、引用例に次の発明が記載されているとみることができ、これは本願発明との一致点といえる。
【一致点】
「衝突センサと、該衝突センサの信号により作動して膨張するエアバッグを装着した車両において、爆薬の充填されたチューブが窓ガラスに固着された導爆線と、該導爆線を起爆させる点火装置とを有し、該点火装置が前記衝突センサの信号で作動するエアバッグ装着車用の窓ガラス破壊具。」
に係る発明である点。

(3)一方、引用例に記載された発明と本願発明との間に、次の相違点が認められる。
【相違点】
導爆線に充填される爆薬に関して、本願発明では、「シクロトリメチレントリニトロアミン、ペンタエリストールテトラナイトレート、ヘキサニトロスチルベン、およびジアミノヘキサニトロジフェニルから選ばれる」と限定しているのに対し、引用例に記載された発明では、そのような限定がない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
爆薬としてシクロトリメチレントリニトロアミン(RDX)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)は、従来周知のものであるから(例えば、特開平2-293388号公報、特開昭62-3088号公報、特開昭57-140396号公報参照)、引用例に記載された発明において、火薬ケース5(導爆線)に充填する爆薬をシクロトリメチレントリニトロアミン(RDX)やヘキサニトロスチルベン(HNS)とし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることに格別の技術的困難性があるとは認められない。
また、上記相違点で指摘した構成を備える本願発明の作用効果は、引用例の記載事項及び上記周知技術から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-18 
結審通知日 2006-05-19 
審決日 2006-05-30 
出願番号 特願平6-303570
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 川上 益喜
永安 真
発明の名称 エアバッグ装着車用の窓ガラス破壊具  
代理人 小宮 良雄  

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