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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60S 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60S |
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管理番号 | 1139981 |
審判番号 | 不服2003-19364 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-02 |
確定日 | 2006-07-13 |
事件の表示 | 平成6年特許願第41083号「ワイパー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成7年9月26日出願公開、特開平7-246916〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成6年3月11日の出願であって、平成15年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月21日付けで手続補正がなされたものである。 【2】平成15年10月21日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年10月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 基部と、ネック部と、リップ部と、剛性向上手段とを有し、ウィンドシールドパネルの表面を払拭するワイパーブレードを備えたワイパー装置において、 前記基部は、前記ウインドシールドパネルに沿って払拭移動する保治具に保持されると共に、受部と前記ウインドシールドパネル側に対向する当面とを有するものとし、 前記ネック部は、前記基部とこの基部に対してウィンドシールドパネル側に位置するリップ部とを連結するものとし、 前記リップ部は、前記基部の当面に対し一定の隙間を有すると共に払拭方向に一定幅を有し、且つウィンドシールドパネルの表面を摺動するリップ先端部を有し、 前記剛性向上手段は、前記リップ部の払拭移動方向両側に形成され、払拭移動時に前記基部の当面と接触し、一定幅を有する肩部と、前記ワイパーブレードの表面のコーティング処理部とから形成され、この肩部は前記リップ部と受部との間に設けられ、 払拭移動時に、ウィンドシールドパネルとリップ部とのなす角θを30度≦θ≦55度とし、ネック部の剛性をリップ先端部よりも小さくすると共に、前記リップ部の肉厚t2をt2≧0.7mmかつネック部の肉厚t1をt1≦0.6mmとしたことを特徴とするワイパー装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明の構成に欠くことができない事項の一部である「基部」について「受部」を有するとの限定を付加し、同じく「肩部」の設置場所について「この肩部は前記リップ部と受部との間に設けられ」との限定を付加し、同じく「ネック部」について「ネック部の剛性をリップ先端部よりも小さくする」との限定を付加し、同じく「リップ部とネック部の肉厚」について「前記リップ部の肉厚t2をt2≧0.7mmかつネック部の肉厚t1をt1≦0.6mmとした」との限定を付加するものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下で検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物とその記載事項は、次のとおりである。 刊行物1:特開平4-309534号公報 刊行物2:特開昭57-77241号公報 刊行物3:特開平2-162142号公報 刊行物4:実願昭62-186016号(実開平1-90657号) のマイクロフィルム 2-1.刊行物1(特開平4-309534号公報)の記載事項 刊行物1には、「車両用ワイパーブレード」に関して、図1とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 ゴムを主たる材料として成型した車両用ワイパーブレードの表面に、架橋したN-メトキシメチル化ナイロンの皮膜を、1〜50μmの厚みで形成すること、を特徴とした車両用ワイパーブレード。 【請求項2】 架橋したN-メトキシメチル化ナイロンの皮膜中に、二硫化モリブデン粉未または/およびグラファイト粉末を、N-メトキシメチル化ナイロンに対して10〜50重量%含むことを特徴とした請求項1の車両用ワイパーブレード。」(第2頁第1欄第2〜10行) (イ)「【図1】車両用ワイパーブレードの切断面である。 …… 1.ワイパーブレードが車両のガラス面にあたる部分(リップ部) 2.ワイパーブレードの最もくびれた部分(ネック部) 3.リップ部の先端面」(第6頁第10欄第4〜12行) 上記記載事項(イ)及び図1の記載と技術常識とを参酌すると、ワイパーブレードは車両のガラス面等のウインドシールドパネルの表面を払拭するものであって、ワイパー装置に備えられるものであることは明らかであり、また、図1の記載におけるネック部2より上の部位(リップ部1とは反対側の部位)はワイパーブレードの基部といえるもので、当該基部が車両のガラス等のウインドシールドパネルに沿って払拭移動する保持具に保持されることは明らかである。 よって、上記記載事項(ア)(イ)、図1の記載及び技術常識を総合すると、刊行物1には、 「基部と、ネック部2と、リップ部1とを有し、ウィンドシールドパネルの表面を払拭するワイパーブレードを備えたワイパー装置において、 前記基部は、前記ウインドシールドパネルに沿って払拭移動する保治具に保持されるものとし、 前記ネック部2は、前記基部とこの基部に対してウィンドシールドパネル側に位置するリップ部1とを連結するものとし、 前記リップ部1は、前記基部に対し一定の隙間を有すると共に払拭方向に一定幅を有し、且つウィンドシールドパネルの表面を摺動するリップ先端部を有し、 前記ワイパーブレードの表面に皮膜が形成されたワイパー装置」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 2-2.刊行物2(特開昭57-77241号公報)の記載事項 刊行物2には、「ワイパブレード」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (ウ)「ワイパブレードの首部3の肉厚は0.5〜1.0mm、リツプ部2の先端肉厚は0.7〜1.5mmとする。」(第2頁左上欄第12〜14行) 2-3.刊行物3(特開平2-162142号公報)の記載事項 刊行物3には、「ワイパブレードラバー」の従来技術に関して、図面第6図とともに次の事項が記載されている。 (エ)「揺動部8のリップ部8aがウインドウガラス1面に対して、30°〜50°傾いて接触し、このリップ部8aにより、ウインドウガラス1が払拭されるようになっている。このようにリップ部8aの接触角を30°〜50°程度にすることにより、立ちすぎや寝すぎを防止し、拭き残りやびびり現象を防ぐようにしている。」(第2頁左上欄第1〜7行) 2-4.刊行物4(実願昭62-186016号(実開平1-90657号)のマイクロフィルム)の記載事項 刊行物4には、従来の「ブレードラバー」に関して、図面第3図とともに次の事項が記載されている。 (オ)「従来のブレードラバーはブレ-ドラバーをガラス面に押しつける圧力(分布荷重)を大とすると角度αが小となり、望ましい撓み角度αとしての60°〜35°を達成する分布荷重の範囲が狭くなる。」(明細書第2頁下から1行〜第3頁第4行) 3.発明の対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「皮膜」は本願補正発明の「コーティング処理部」に相当し、本願補正発明も引用発明も、「ワイパーブレードの表面にコーティング処理部が形成された」点では同じである。 よって、本願補正発明と引用発明とは、 《一致点》 「基部と、ネック部と、リップ部とを有し、ウィンドシールドパネルの表面を払拭するワイパーブレードを備えたワイパー装置において、 前記基部は、前記ウインドシールドパネルに沿って払拭移動する保治具に保持されるものとし、 前記ネック部は、前記基部とこの基部に対してウィンドシールドパネル側に位置するリップ部とを連結するものとし、 前記リップ部は、前記基部に対し一定の隙間を有すると共に払拭方向に一定幅を有し、且つウィンドシールドパネルの表面を摺動するリップ先端部を有し、 前記ワイパーブレードの表面にコーティング処理部が形成されたワイパー装置」 である点で一致し、次の点で相違している。 《相違点1》 本願補正発明では、「ワイパーブレード」が「剛性向上手段」を有し、基部が「受部とウインドシールドパネル側に対向する当面とを有するもの」であり、上記「剛性向上手段」が「リップ部の払拭移動方向両側に形成され、払拭移動時に基部の当面と接触し、一定幅を有する肩部と、ワイパーブレードの表面のコーティング処理部とから形成され、この肩部はリップ部と受部との間に設けられ」ているものであるのに対して、引用発明では、上記「剛性向上手段」、「受部」、「当面」及び「肩部」についての限定がなく、また、ワイパーブレードの表面に皮膜(コーティング処理部)が形成されたことは記載されているものの、当該皮膜(コーティング処理部)が剛性向上手段としての一つの手段であることの限定がない点。 《相違点2》 本願補正発明では、「払拭移動時に、ウィンドシールドパネルとリップ部とのなす角θを30度≦θ≦55度とし」ているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。 《相違点3》 本願補正発明では、「ネック部の剛性をリップ先端部よりも小さく」しているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。 《相違点4》 本願補正発明では、「リップ部の肉厚t2をt2≧0.7mmかつネック部の肉厚t1をt1≦0.6mmとし」ているのに対して、引用発明では、そのような限定がない点。 4.当審の判断 そこで、上記各相違点について以下で検討する。 《相違点1》について 「ワイパーブレード」に「剛性向上手段」を設け、基部を「受部とウインドシールドパネル側に対向する当面とを有するもの」とし、上記「剛性向上手段」を「リップ部の払拭移動方向両側に形成され、払拭移動時に基部の当面と接触し、一定幅を有する肩部から形成し、この肩部はリップ部と受部との間に設けられ」るものとすることは周知の技術である(例えば、実願平1-133352号(実開平3-70559号)のマイクロフィルムの明細書第3頁第14〜17行、図面第5,6図の記載、実願平2-129545号(実開平4-84070号)のマイクロフィルムの明細書第11頁第8〜18行、図面第9図の記載、特開昭59-34963号公報の第3頁左上欄第18行〜右上欄第11行、図面第9図の記載、参照)。 また、刊行物1の記載事項(ア)及び本願明細書の段落【0023】、【0024】の記載によれば、引用発明の「皮膜」は、本願補正発明の「コーティング処理部」と同じ材質、厚さであることから、本願補正発明と同様に「剛性向上手段」としての一つの手段となるものであることは明らかである。 よって、上記相違点1でいう本願補正発明の構成事項は、引用発明に上記周知の技術を適用することによって、当業者であれば容易に想到することができた事項である。 《相違点2》について 上記のとおり、刊行物3には、「リップ部8aの接触角を30°〜50°程度にすること」が記載され、また、刊行物4には、「望ましい撓み角度αとしての60°〜35°」が記載されていることから、上記相違点2でいう本願補正発明の「払拭移動時に、ウィンドシールドパネルとリップ部とのなす角θを30度≦θ≦55度とし」たことは、当業者が通常採用する角度の範囲を限定したものにすぎない。 《相違点3》について ワイパーブレードのネック部の剛性をリップ先端部よりも小さくすることは、周知の技術であり(例えば、特開昭59-34963号公報の第2頁右上欄第16行〜20行の記載、参照)、上記相違点3でいう本願補正発明の構成事項は、引用発明に上記周知の技術を適用することによって、当業者であれば容易に想到することができた事項である。 《相違点4》について 上記のとおり、刊行物2には、「ワイパブレードの首部3の肉厚は0.5〜1.0mm、リツプ部2の先端肉厚は0.7〜1.5mmとする」ことが記載されているから、上記相違点4でいう本願補正発明の「リップ部の肉厚t2をt2≧0.7mmかつネック部の肉厚t1をt1≦0.6mmとし」たことは、当業者が通常採用する肉厚の範囲内で、リップ部の肉厚の下限及びネック部の肉厚の上限を限定したものにすぎない。 また、本願補正発明が奏する作用効果も、刊行物1〜4に記載された発明及び周知の技術から予測される範囲内のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物1〜4に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】本願発明について 1.本願発明 平成15年10月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成15年7月7日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 基部と、ネック部と、リップ部と、剛性向上手段とを有し、ウィンドシールドパネルの表面を払拭するワイパーブレードを備えたワイパー装置において、 前記基部は、前記ウインドシールドパネルに沿って払拭移動する保治具に保持されると共に前記ウインドシールドパネル側に対向する当面を有するものとし、 前記ネック部は、前記基部とこの基部に対してウィンドシールドパネル側に位置するリップ部とを連結するものとし、 前記リップ部は、前記基部の当面に対し一定の隙間を有すると共に払拭方向に一定幅を有し、且つウィンドシールドパネルの表面を摺動するリップ先端部を有し、 前記剛性向上手段は、前記リップ部の払拭移動方向両側に形成され、払拭移動時に前記基部の当面と接触し、一定幅を有する肩部と、前記ワイパーブレードの表面のコーティング処理部とから形成され、 払拭移動時に、ウィンドシールドパネルとリップ部とのなす角θを30度≦θ≦55度としたことを特徴とするワイパー装置。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項は、上記【2】2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、「基部」について「受部」を有するとの限定を省き、同じく「肩部」の設置場所について「この肩部は前記リップ部と受部との間に設けられ」との限定を省き、同じく「ネック部」について「ネック部の剛性をリップ先端部よりも小さくする」との限定を省き、同じく「リップ部とネック部の肉厚」について「前記リップ部の肉厚t2をt2≧0.7mmかつネック部の肉厚t1をt1≦0.6mmとした」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記【2】4.に記載したとおり、刊行物1〜4に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1〜4に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1〜4に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-10 |
結審通知日 | 2006-05-16 |
審決日 | 2006-05-29 |
出願番号 | 特願平6-41083 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60S)
P 1 8・ 121- Z (B60S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 友也 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
柴沼 雅樹 永安 真 |
発明の名称 | ワイパー装置 |
代理人 | 三好 秀和 |