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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1140000
審判番号 不服2004-5741  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-23 
確定日 2006-07-13 
事件の表示 特願2001-246082「IDチップ付きブランド品判定サービスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月28日出願公開、特開2003- 58659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成13年8月14に出願されたものであって、平成16年2月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成16年3月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成16年3月23日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「【請求項1】判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを通信回線を介して被判定対象物に埋め込んで設けた粉末状のIDチップが備えた読み出し専用メモリに記録したID番号,ブランド品製造者名,商品名,素材種別,製造年月日,製造番号等の情報を有するID情報を送受信するように接続したIDチップ付きブランド品判定サービスシステムであって、
前記判定装置は、前記IDチップの読み出し専用メモリに記録した前記被判定対象物のID情報を無線で読取るIDチップリーダと、前記IDチップリーダで前記IDチップの読み出し専用メモリから読取った前記被判定対象物のID情報より前記ID番号を識別するID番号識別制御部と、前記IDチップ管理センタコンピュータとの通信を制御する通信制御部と、前記被判定対象物のマッチング判定結果の情報を表示する表示部とを有し、前記判定装置のID番号識別制御部は、前記被判定対象物に埋め込まれた前記IDチップの読み出し専用メモリに記録したID情報を前記IDチップリーダで読取る機能と、前記IDチップリーダで前記IDチップの読み出し専用メモリから読取られた前記被判定対象物のID情報を前記通信制御部から前記通信回線を経由して前記IDチップ管理センタコンピュータに送信する機能とを備え、前記IDチップ管理センタコンピュータは、前記被判定対象物毎に付加されたID番号をデータベースに登録する手段と、前記データベースに登録された前記ID番号と前記IDチップの読み出し専用メモリから読取られた前記被判定対象物のID情報の前記ID番号をマッチング判定する手段とを備えたことを特徴とするIDチップ付きブランド品判定サービスシステム。」
と補正された。

前記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するための補正であり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
本件出願前に刊行された特開2000-148950号公報(平成12年5月30日出願公開。以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の各記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、商品に偽造品判別用のタグを埋め込むことにより、取扱対象の商品が、本来の製造元が製造した商品か、又はその偽造品かを判別する偽造品判別システムと、このシステムに用いられる非接触タグとに関するものである。
【0002】
【従来の技術】バッグ、カバン、トランク等の携帯用品に関しては、伝統のある製造メーカによる著名商標を付した商品に人気が集中し、DCブランドとして市場に出回っている。これらの商品は、製造個数もそう多くはなく、商品品質を保持するために、自社の工場又は認定された工場で、吟味された材料を用いて製造されている。
【0003】しかし、ブランド指向が高まる中で、ブランド品に対する偽造品も多く出回っている。その1つの要因は、偽造品の商品品質も一般には見分けが付かない程度に確保されており、販売価格も安いのがその理由である。商標権の使用が正式に許諾されていない第三者が、同一商標を使って偽造品や類似商品を生産したり、販売業者が偽造品を販売することは商標法違反となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】所謂、ブランド商品が正規商品か偽造品かを判別することは、それぞれの商品に対して特殊な知識を必要とするので、特別に訓練された人にしかできない。又分析装置を用いて構成材料を分析する必要が生じることもある。商品に折り込まれた各種の絵柄や、文字、記号から偽造品か正規品かを判定する場合は、特に鑑定人の眼力に頼る所が多い。又偽札のような特定された印刷物に対しては、その形状や絵柄が規格化されているので、透かしの状態を検査したり、専用の判定装置を用いて磁性インクの状態から偽札か真札かを検査できる。しかし前述したブランド品は、形状や構成又は絵柄が千差万別であるため、専用の判定装置がなく、必要な場合には鑑定人の所にその商品を持ち込んで判定を行っていた。
【0005】以上のような各種の理由により、有名ブランド商品に対して、偽造品が一部の市場で多く出回っている。このため正規の製造メーカは意匠権や商標権が侵害され、本来の利益を確保でなくなるという問題が発生する。又実際の使用において、偽造品の品質や機能が低下した場合、正規の製造メーカの商品に対する信頼が損なわれるという問題が発生する。又鑑定人による判別方法では、疑いのある商品を鑑定人の居る場所まで持ち込む必要があり、一般的とは言えない。商品の再流通経路である質屋やリサイクルショップでは、全ての商品を高精度で識別することは難しかった。
【0006】本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、商品に偽造品判別用タグを埋め込むことにより、取扱対象の商品が、商標を有する本来の製造元が製造した商品か、又はその偽造品かを容易に判別できる偽造品判別システムと、このシステムに用いられる非接触タグを実現することを目的とするものである。」

(イ)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態における偽造品判別システムについて図面を参照しつつ説明する。図1は本実施の形態の偽造品判別システムの基本構成を示す概念図である。ここでは商標権の確立されたブランド商品を、例えば製造メーカAの製造するトランクTとして説明する。正規の製造メーカAが生産した一定数量のトランクTは、販売店Bに卸され、不特定の人に対して店頭販売されたり、通信販売されたりする。この商品を購入した使用者Uは、トランクTを自己の持ち物として使用するか、他人に贈与したり譲渡したりする。又使用者UがトランクTを質屋やリサイクルショップ等の下取店Cに持ち込み、売却処分をすることもある。又使用者Uが購入したトランクTを長期間使用し、一部が破損した場合にそのトランクTを販売店Bに持ち込み、修理を依頼することもある。
【0014】このような市場において、偽造品のトランクT’の流通を阻止するために、製造メーカA、販売店B、及び下取店Cに偽造品判別装置である書込読取制御装置1を設ける。図1に示すように、書込読取制御装置1は、リードライトヘッド(RWヘッド)2、IDコントローラ3を含んで構成される。又製造メーカAはあらかじめその外部からは見分けがつかないように商品の一部にIDタグ4を取付けておく。書込読取制御装置1はIDデータの送信及び受信を行い、その商品情報の管理を行うものである。このときIDデータが正規のフォーマットで得られ、IDデータが製造メーカAが管理する商品情報に含まれる場合に、検査対象の商品が正規の商品として判定し、そうでない場合は、検査対象の商品は製造メーカAが製造又は管理しない商品と判定するものとする。
【0015】IDタグ4は、IDタグ供給元Dから商品の製造メーカAに対して供給される。上記した書込読取制御装置1はIDタグ供給元Dにも設置されている。ここで、製造メーカA、販売店B、下取店C、IDタグ供給元Dに設置された書込読取制御装置を夫々1A,1B,1C,1Dとする。
【0016】ここで本発明の非接触タグであるIDタグ4について、図2を用いて説明する。図2はIDタグ4の構成図であり、データキャリア(DC)とも呼ばれる。IDタグ4は後述する内容の商品管理情報を保持し、電磁結合などの非接触通信方式によりRWヘッド2を介してIDコントローラ3と商品管理情報の送受信を行ったり、商品管理情報の更新を行うものである。IDタグ4は商品の一部の場所に取付けられるように小型化及び薄型化されている。例えば本実施の形態で用いるIDタグ4は1チップに集積化され、外形も偏平なコイン状に形成されている。図2に示すようにIDタグ4は、送受信部40、復調回路41、変調回路42、制御部43、メモリ44を含んで構成される。これらの回路は、送受信部40を構成するLC共振回路を除いてASIC化されており、樹脂モールドにより封止され、耐薬品性、高温保存性が確保されている。
【0017】送受信部40は、RWヘッド2から出力された変調搬送波信号を受信したり、搬送波信号の同一の周波数を有し、IDデータに対応した残留信号を送信するものである。復調回路41は送受信部40から出力された信号を復調し、商品管理情報を構成するデータを復調するものである。制御部43は復調回路41から出力されたデータをメモリ44に書き込むと共に、メモリ44に記録されたデータを読み出し、変調回路42に与えるものである。メモリ44は、商品管理情報を保持する不揮発性のメモリであり、例えばEEPROMにより構成される。変調回路42は制御部43から得られたデータに基づいて、パルス信号に変換し、送受信部40に与えるものである。送受信部40はパルス信号をRWヘッド2に送信すると共に、IDコントローラ3の動作中に搬送波信号を整流することにより、メモリ44を含む各回路部に電力を供給する。ここで送受信部40、復調回路41、変調回路42は、電磁結合により外部から与えられたデータを受信して制御部43に与え、制御部43を介してメモリ44から読み出されたデータを電磁波を用いて外部に送信するデータ伝送手段を構成している。
【0018】メモリ44のメモリマップを図3に示す。メモリ44のデータ記憶領域は複数の領域に分割されており、IDコントローラ3の種別により、書き込み領域が制限されている。図3に示すように、メーカ書込領域44aは、製造メーカに設置されたIDコントローラ3Aにより書き込み可能な領域であり、例えば製造メーカ名、商品分類(トランク、バッグ、カバン等の分類)、商品名、製造年月日、商品番号等の商品管理情報が記録される。一般書込領域44bは、少なくとも販売店に設置されたIDコントローラ3Bにより書き込み読み出し可能な領域であり、例えば販売店名、販売年月日、購入者氏名、購入者連絡先、修理履歴等が記録される。IDタグ供給元書込領域44cは、IDタグ供給元によってIDタグ4の製造時に初期データを登録する領域であり、例えばIDタグ管理番号、製造年月日、商品の製造メーカ名等が記録される。この領域はIDタグ4の出荷前にライトプロテクトされる。
【0019】次に書込読取制御装置1について図4を用いて説明する。書込読取制御装置1は、IDコントローラ3とRWヘッド2とを含んで構成される。RWヘッド2はIDコントローラ3から出力されたIDデータを例えばASK変調によりIDタグ4に対して時分割で送信すると共に、IDタグ4から送信された変調信号を復調し、IDコントローラ3に与えるものである。RWヘッド2は変調回路21、送信部22、受信部23、復調回路24を有している。図1に示すように商品の検査場所等の近傍に設置される。一方、IDコントローラ3は、図4に示すようにアクセス領域設定部31とIDデータ入出力部32及び判別部33とを有している。
【0020】図4に示す変調回路21は、IDデータ入出力部32から出力されたIDデータをシリアルデータに変換し、各ビットのH又はLレベルに基づいて1ビット単位でデューティ比の異なるパルス信号を生成するものである。送信部22は、搬送波を変調回路21から出力されたパルス信号で変調してASK信号を生成し、図示しないLC共振回路のコイル状のアンテナを駆動するものである。受信部23はIDタグ4から出力された変調信号を受信し、復調回路24に与えるものである。送信部22と受信部23とは、同一の周波数を有する搬送波を用いるので、所定周期で時分割で交互に動作する。
【0021】尚、書込読取制御装置1とRWヘッド2の基本構成と動作原理の詳細については、本件出願人が既に出願した特開平1-151832号等に記載されている。
【0022】IDコントローラ3のアクセス領域設定部31は、図3に示すメモリ44の書込領域を設定するもので、書込読取制御装置1の設置場所によってメモリ44のアクセス領域が指定される。IDデータ入出力部32はRWヘッド2に対してIDデータを出力したり、RWヘッド2からIDデータを取り出すインタフェースである。判別部33は正常な通信ができるか否かによって正規の商品か否かを判別するものである。書込読取制御装置1が商品の製造メーカに設置される場合、IDコントローラ3は外部のホストコンピュータ34Aと接続される。又書込読取装置1が商品の販売店や下取店に設置される場合、IDコントローラ3は入力操作部34と表示部36に接続される。入力操作部34は書込読取制御装置1を介して、商品管理情報を照合したり、商品管理情報を更新するため、データを入力するキーボードである。表示部36は入力操作部34の入力データを表示したり、IDコントローラ3の出力データを表示するモニタである。」

(ウ)「【0023】このような構成の偽造品判別装置とIDタグを用いた偽造品判別システムの使用について説明する。尚、書込読取制御装置1とRWヘッド2の基本的な動作説明は、前述した公報の記載内容と実質的に同一であるので、ここでは詳細な動作説明を省略する。図1に示すように、まずIDタグ供給元Dが、トランクTの製造メーカA及びその他の取引先の製造メーカに対してIDタグ4を供給する。図2においてIDタグ4の基本仕様は、供給先に係わらず同一とし、メモリ44の容量、書込領域のフォーマットは、業態別に規格化しておくとよい。IDタグ4がASIC等を用いて製造されると、IDタグ供給元Dは、自社のID書込読取制御装置1DとRWヘッド2Dとを用いて、製造メーカAに供給するIDタグ4のIDタグ供給元書込領域44cに、IDタグ管理番号(シリアルNO)や供給先(製造メーカA)のデータを書き込む。尚、IDタグ供給元書込領域44cはEEPROMにおいてライトプロテクトのかかる領域とする。こうすることによって、商品の流通経路で他の書込読取制御装置1を用いて初期データが悪意に改ざんされることを防止する。
【0024】このようにIDタグ4が供給されると、トランクTの製造メーカAは、例えば製造されるトランクの外革と内張りの間にIDタグ4を取り付ける。IDタグ4の感応範囲は数十cm以内であるので、RWヘッド2の取り付け位置に対して感応範囲に納まる位置であれば、トランクTのどの部分でもよい。しかし商品の外観上、変化が生じず、且つ視覚的に確認できない位置がよい。図5はIDタグ4をトランクTの側面(表地と裏地の間)に取り付けた例を示す外観図である。偽造品の製造メーカが偽造のトランクT’を製造したしても、IDタグ4を入手できないので、IDタグ4をトランクT’に取り付けることができない。
【0025】さて正規の製造メーカAは、製造された各トランクTに対して商品管理情報を書き込む。このとき自社に設置されたID書込読取制御装置1AとRWヘッド2Aをと用いて、製造メーカ名、商品分類(例えば、トランク)、製造年月日、商品名(例えば、牛革薄茶色ビジネス用トランク)、商品番号等をIDデータとしてメーカ書込領域44aに書込む。このような記録は、ホストコンピュータ34Aを用いて行う。こうして所定数のトランクTが出荷される。
【0026】一方販売店Bは、製造メーカAからトランクTを仕入れると、このトランクTも含めて多数の種類の携帯用袋物や旅行かばん類を販売する。トランクTの販売が成立する度に、自社のID書込読取制御装置1BとRWヘッド2Bとを用いて、顧客情報を登録する。このとき図4の入力操作部35を「登録」として操作すると、図3の一般書込領域44bに、販売店名、購入年月日が自動的に記録される。又顧客から登録すべき氏名や住所等を聞き出し、入力操作部35から登録してもよい。こうして保証書の機能を有する顧客情報がトランクTのIDタグ4に対して記録される。又他の流通経路から搬入された類似のトランクT’に対しては、ID書込読取制御装置1BでIDタグ4の有無を調べることで、一般的な商品知識しか持たない店員であっても偽造品か正規商品かを識別できる。
【0027】さてトランクTを購入した使用者Uは、必要に応じてトランクTを使用する。長年使用すると、一部の金具がはずれたり、破損したりする。このとき使用者Uは、トランクTを正規の販売店に持ち込み、修理を依頼する。販売店は自社のID書込読取制御装置1Bを用いて顧客情報を読み出す。このとき、正規ルートで購入されたトランクTと判定された場合は、修理依頼を引き受ける。又修理品の持ち込み者の氏名が、登録顧客名(実際にこのトランクTを購入した人)と異なる場合は、登録顧客名を相手から直接聞き出し、聞き出した氏名と、IDタグ4の登録結果とが合致する場合は、譲渡されたトランクTか、又は登録顧客の関係者が持ち込んだトランクTと判断し、修理依頼を引き受ける。又聞き出した氏名が登録結果と合致しない場合は、盗品のトランクT’等と推定し、修理依頼を引き受けないようにする。このような判断処理は、図1の下取店Cでも同様に行われる。この場合は、「修理」を「下取り」として上記の処理を解釈する。
【0028】又偽造のトランクT’が大量に出回り、これらのトランクT’が下取店Cに持ち込まれても、下取店CはID書込読取制御装置1Cを用いてIDタグにアクセスし、IDタグからの応答の有無により正規商品か偽造品かを即座に識別することができる。
【0029】一方、クレジットカードが盗まれた場合、このクレジットカードは悪意の第3者によって即座に使用されることが多い。このとき第3者は盗んだクレジットカードを用いて、換金し易い有名ブランドのトランクTxを購入したとする。このとき、被害者がクレジットカードの盗難をカード発行会社Eに報告をすれば、カード発行会社Eはクレジットカードの使用記録から、トランクTxの販売店名を即座に知ることができるので、その販売店からトランクTxの商品管理情報を獲得することができる。そしてカード発行会社Eが、自社の管理下にある下取店CにトランクTxの商品管理情報を通達すれば、盗難品の下取りを未然に阻止することができる。
【0030】一般にクレジットカードが盗まれると、悪意の第3者によって即座に大量の高額商品の買い付け行為が始まる。しかし盗品の売却換金には買い付けより時間がかかるので、この時間差を利用して不正な行為を防止できる。このような情報処理は、使用者が旅行中にトランクTが丸ごと盗まれても有効に作用する。悪意の第3者がトランクTを盗むのは、トランクT内の金品を搾取するためであり、金品の搾取後はトランクTを廃棄する。善意の第3者がこのトランクTを拾い、警察に届けたとする。又被害者も盗難届けを警察に出したとする。販売店が警察からトランクTの拾得通報を受けると、トランクTを一時預かり、IDタグ4から顧客情報を調べることによって、持ち主を特定することができる。
【0031】又メモリ44の一般書込領域44bに記録されたデータによって、各種の追跡調査が可能となる。
【0032】
【発明の効果】このような特徴を有する本願の請求項1〜4記載の発明によれば、偽造品判別システムに適用することができる非接触IDタグとすることができる。請求項5の発明では、このような非接触IDタグは商品に比較的確認できない位置に取付けられ、偽造品の製造メーカには提供されないため、正規商品か偽造品かを容易に認識することができる。又この偽造品判別システムを用いて商品情報を管理することも可能となる。更に請求項6の発明では、IDコントローラの判別部からの出力によって商品が正規商品かどうかを判別することができる。」

以上の記載から見て、刊行物1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「書込読み取り制御装置1,RWヘッド2,IDコントローラ3を有し、非接触タグ4及びこれを用いた偽造品判別システムであって、
前記非接触タグ4は商品管理情報を電子的に記録しており、検査対象の商品の視覚的に確認できない位置に取り付けられ、そして前記非接触タグ4は、前記商品管理情報のデータを保持する不揮発性のメモリ44と、前記メモリ44へのデータの書き込みとデータの読み出しとを制御する制御部43と、非接触通信により外部から与えられたデータを受信して前記制御部43に与え、前記制御部43を介して前記メモリ44から読み出されたデータを外部に送信するデータ伝送手段40とを備え、また前記非接触タグ4の前記メモリ44は、少なくとも商品の製造元、商品名、商品番号を示すデータのいずれかを記録するメーカ書込領域44aと、少なくとも商品の販売店、商品の購入者、修理履歴を示すデータのいずれかを記録する一般書込領域44bと、少なくともIDタグ管理番号、商品の製造メーカを示すデータのいずれかを記録しライトプロテクトされたIDタグ供給元書込領域44cとを有し、
前記書込読取制御装置1は、前記非接触タグ4へのデータの送信及び前記非接触タグからのデータの受信時に、前記非接触タグ4に設けられた共振回路の共振周波数と同一の周波数を有する搬送波を送出し、前記非接触タグ4に対してデータの送信と受信とを行うRWヘッド2と、前記非接触タグ4のメモリ書込領域44を設定するアクセス領域設定部31、及び外部から入力された商品管理情報のデータを前記RWヘッド2に与え、前記RWヘッド2を介して前記非接触タグ4から読み出されたデータを外部に出力するIDデータ入出力部32を有するIDコントローラ3とを有し、
前記IDコントローラ3は、検査対象の商品に対して前記RWヘッド2を介してデータを送信した際に、前記商品から応答がないとき前記商品を正規商品でないと判定し、前記非接触タグ4を取り付けた商品から所定フォーマットの応答があるとき前記商品を正規商品と判別する判別部33を有する非接触タグ及びこれを用いた偽造品判別システム。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「検査対象の商品」は、本願補正発明の「被判定対象物」に相当し、刊行物1に記載された発明の「1チップに集積化されたIDタグ4」は、本願補正発明の「IDチップ」に相当し、刊行物1に記載された発明の「IDタグ4の不揮発性のメモリ44」は、本願補正発明の「IDチップが備えた読み出し専用メモリ」に相当し、刊行物1に記載された発明の不揮発性のメモリ部44に記録した「IDタグ管理番号」、「製造メーカ名」、「商品名」、「製造年月日」、「商品番号」は、それぞれ、本願補正発明の「読み出し専用メモリに記録した「ID番号」、「ブランド品製造者名」、「商品名」、「製造年月日」、「製造番号」に相当し、刊行物1に記載された発明の「書込読取制御装置1」は、本願補正発明の「判定装置」に相当し、刊行物1に記載された発明の「RWヘッド2」は、本願補正発明の「IDチップリーダ」に相当し、刊行物1に記載された発明の「IDコントローラ3の判定部33」は、本願補正発明の「ID番号識別制御部」に相当し、刊行物1に記載された発明の「変調回路21,送信部22,受信部23,復調回路24」は、本願補正発明の「通信制御部」に相当し、刊行物1に記載された発明の「表示部36」は、本願補正発明の「表示部」に相当し、刊行物1に記載された発明の「非接触タグ及びこれを用いた偽造品判別システム」は、本願補正発明の「ブランド品判定サービスシステム」に相当することは、明らかである。

そして、刊行物1には、バッグ、カバン、トランク等の検査対象の商品(被判定対象物に相当)に、1チップに集積化されたIDタグ4(IDチップに相当)を、使用者が視覚的に確認できない位置に取り付け、該検査対象の商品に取り付けられたIDタグ4に備えられている不揮発性のメモリ44(読み出し専用メモリに相当)に、IDタグ管理番号,製造メーカ名,商品名,製造年月日,商品番号等のID情報を記録し、この記録されたID情報を書込読取制御装置1(判定装置に相当)により読み取り、その送信部22及び受信部23を介して外部に送受信するようにした非接触IDタグ4及びこれを用いた偽造品判別システム(IDチップ付きブランド品判定サービスシステムに相当)が記載されているから、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「判定装置を備え、被判定対象物に埋め込んで設けたIDチップが備えた読み出し専用メモリに記録したID番号,ブランド品製造者名,商品名,製造年月日,製造番号等の情報を有するID情報を送受信するようにしたIDチップ付きブランド品判定サービスシステム」
である点で差異はない。

刊行物1には、書込読取制御装置1が、IDタグ4の不揮発性のメモリ44に記録した検査対象の商品のID情報を無線で読み取るRWヘッド2(IDチップリーダに相当)と、該RWヘッド2でIDタグ4の不揮発性のメモリ44から読み取った商品のID情報を識別するIDコントローラ3の判定部33(ID番号識別制御部に相当)と、IDタグ4の不揮発性のメモリ44から読み出されたデータを電磁波を用いて外部に送信する変調回路21及び送信部22からなるデータ送信手段(通信制御部に相当)と、検査対象の商品が正規のものか偽造されたものかを判定しその判定結果情報を表示する表示装置36(表示装置に相当)を有することが記載されているから、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「前記判定装置は、前記IDチップの読み出し専用メモリに記録した前記被判定対象物のID情報を無線で読取るIDチップリーダと、前記IDチップリーダで前記IDチップの読み出し専用メモリから読取った前記被判定対象物のID情報を識別するID番号識別制御部と、通信を制御する通信制御部と、前記被判定対象物の判定結果の情報を表示する表示部とを有する」
点で差異はない。

刊行物1には、書込読取制御装置1のIDコントローラ3は、商品に取り付けられたIDタグ4の不揮発性のメモリ44に記録したID情報をRWヘッド2で読み取る機能と、RWヘッド2でIDタグ4の不揮発性のメモリ44から読み取られた検査対象の商品のID情報を変調回路21,送信部22により外部に送信する機能とを備えているから、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「前記判定装置のID番号識別制御部は、前記被判定対象物に埋め込まれた前記IDチップの読み出し専用メモリに記録したID情報を前記IDチップリーダで読取る機能と、前記IDチップリーダで前記IDチップの読み出し専用メモリから読取られた前記被判定対象物のID情報を前記通信制御部から外部にに送信する機能とを備えている」
点で差異はない。

刊行物1には、IDコントローラ3の判定部33からの出力によって検査対象の商品が正規商品か偽造商品かを判定しているから、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「前記IDチップの読み出し専用メモリから読取られた前記被判定対象物のID情報を判定する手段」
を備えている点で差異はない。

そうすると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
(一致点)
「判定装置を備え、被判定対象物に埋め込んで設けたIDチップが備えた読み出し専用メモリに記録したID番号,ブランド品製造者名,商品名,製造年月日,製造番号等の情報を有するID情報を送受信するように接続したIDチップ付きブランド品判定サービスシステムであって、
前記判定装置は、前記IDチップの読み出し専用メモリに記録した前記被判定対象物のID情報を無線で読取るIDチップリーダと、前記IDチップリーダで前記IDチップの読み出し専用メモリから読取った前記被判定対象物のID情報を識別するID番号識別制御部と、通信を制御する通信制御部と、前記被判定対象物の判定結果の情報を表示する表示部とを有し、前記判定装置のID番号識別制御部は、前記被判定対象物に埋め込まれた前記IDチップの読み出し専用メモリに記録したID情報を前記IDチップリーダで読取る機能と、前記IDチップリーダで前記IDチップの読み出し専用メモリから読取られた前記被判定対象物のID情報を前記通信制御部から外部に送信する機能とを備え、前記IDチップの読み出し専用メモリから読取られた前記被判定対象物のID情報を判定する手段とを備えたIDチップ付きブランド品判定サービスシステム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、 判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとは通信回線を介して接続され、前記IDチップ管理センタコンピュータは、被判定対象物毎に付加されたID番号をデータベースに登録し、データベースに登録されたID番号とIDチップの読み出し専用メモリから読取られた被判定対象物のID情報の前記ID番号をマッチング判定しているのに対して、刊行物1に記載された発明では、書込読取制御装置1は通信回線を介してセンターの管理コンピュータに接続されておらず、ID番号を登録したデータベースを有せず、そしてデータベースに登録されたID番号とIDタグ4の不揮発性のメモリ44から読取られた検査対象の商品のID情報のID番号とをマッチング判定していない点。

(相違点2)
本願補正発明のIDチップが、粉末状のIDチップであるのに対して、刊行物1に記載された発明の1チップに集積化されたIDタグ4は、粉末状であると明記されていない点。

(相違点3)
本願補正発明のID情報が、ID番号,ブランド品製造者名,商品名,製造年月日,製造番号の他に素材種別を含んでいるのに対して、刊行物1に記載された発明のID情報が、素材種別を含んでいない点。

(4)判断
(相違点1について)
前記相違点1について判断するに、
(i)一般に、複数の端末装置と中央の管理コンピュータとを通信回線を介して接続し、中央の管理コンピュータが、検索対象のID情報等のリストをデータベースの形で持ち、端末装置から入力された検索対象のID情報がデータベースに登録されているか否かをマッチングにより確認しその正当性を判断することは、当業者のみならずコンピュータの一般ユーザが日常良く経験している周知技術事項である。この点については、例えば、次の文献
『「特集 RFIDの可能性」,SEPTEMBER 2000 CardWave,株式会社シーメディア,2000年8月10日,pp.14-23』
を参照のこと。特に、第18頁右欄,第20頁に示される図1とその関連説明(第21頁左欄及び中欄),及び第17頁右欄を参照のこと。
(ii)また、複数の読取端末と管理センタコンピュータである認証サーバとを通信ネットワークを介して接続し、中央の認証サーバが暗号化されたID情報である秘密鍵と公開鍵のデータベースを有し、読取端末が認証サーバから公開鍵を入手しこれを用いて商品タグから読み取った証明書等の認証情報の真偽を確認し、ブランド品などの商品の真贋を判定することは、特開2000-11114号公報にその旨の記載があるように当業者には周知な技術事項である。
以上のことに鑑みれば、刊行物1に記載された発明に、上記(i)及び(ii)に示される周知技術事項を適用して、本願補正発明の如く正当性の確認・チェックを中央で管理する構成を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
前記相違点2について判断するに、粉末状のIDチップは、例えば、特開平11-353561号公報、特開2001-208875号公報、及び特開平7-306264号公報にその旨の記載があるように当業者には周知である(第1番目の公報にあっては、特許請求の範囲の請求項3,4,7を参照のこと。第2番目の公報にあっては、特許請求の範囲の請求項3,5を参照のこと。第3番目の公報にあっては、段落【0016】〜【0018】を参照のこと。)から、刊行物1に記載された発明に上記周知技術を適用して本願補正発明の如く構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

なお、粉末状のIDチップという記載は、チップ自体が粉末状になっているという印象を与えかねない表現であるが、IDチップ自体は結晶であり個体である。これを技術的にみると、IDチップに作成されるアンテナのコイル部が粉末状の磁性体材料等で形成されることである。

(相違点3について)
前記相違点3について判断するに、(i)どれくらいのアイテムすなわち項目をID情報としてメモリに記録するかは当業者の設計事項程度のことであると認められるところ、(ii)例えば、刊行物1に記載された発明では、「商品分類(トランク、バッグ、カバン等の分類)」、「商品名等」をもID情報に含めている(段落【0018】参照。)から、ID情報の中に「素材種別」を含めるようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではなく、特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであるから、平成16年3月23日付けの手続補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月23日付けの手続補正は、前記のとおり却下されるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを通信回線を介して被判定対象物に埋め込んで設けた粉末状のIDチップに記録したID情報を送受信するように接続したIDチップ付きブランド品判定サービスシステムであって、
前記判定装置は、前記被判定対象物に埋め込まれた前記IDチップのID情報を読取る機能を備え、前記IDチップ管理センタコンピュータは、前記被判定対象物毎に付加されたID番号を登録する手段と、前記登録されたID番号と前記被判定対象物のIDチップから読取られたID情報をマッチング判定する手段とを備えたことを特徴とするIDチップ付きブランド品判定サービスシステム。」

(1)引用例
原審が拒絶の理由で引用した特開2001-5869号公報(平成13年1月12日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア’)「【0018】
【発明の実施の形態】図1は本発明による駐輪場出入管理システムの実施の形態を示す構成図である。
【0019】この図に示す駐輪場出入管理システム1は、駐輪場2の出入口に配置され、駐輪場2に出入りする利用者、自転車3を確認する処理、無線信号を使用して駐輪場2に駐輪されている各自転車3の中から利用者の自転車3を呼び出す処理などを行う出入管理装置4と、駐輪場2の管理室などに配置され、駐輪場2に駐輪されている自転車3の管理、駐輪場2を利用している各利用者の管理などを行う中央管理装置5と、駐輪場2の各部に配置され、出入管理装置4から送信される無線信号を中継する中継アンテナ装置6とを備えている。
【0020】また、この管理システム1は、各自転車3に取り付けられ、読み出し信号を含む無線信号を受信したとき、予め登録されている自転車IDを含む無線信号を送信するIDチップ7と、各自転車3に取り付けられ、中継アンテナ装置6を介して無線信号が供給されたとき、この無線信号に含まれる呼び出しIDが予め登録されている設定IDと一致しているとき、ランプ8を点灯させる表示ランプ装置9と、各利用者によって携帯され、各利用者が駐輪場2に出入りするとき、出入管理装置4に通されて、この出入管理装置4に利用者IDを知らせる利用者カード10とを備えている。
【0021】そして、この管理システム1においては、各利用者が自転車3を駐輪場2に駐輪させる際に、出入管理装置4によって、利用者の利用者カード10に登録されている利用者ID、自転車3のIDチップ7に登録されている自転車IDを読み取って中央管理装置5に登録する。一方、利用者が駐輪場2に駐輪させている自転車3を引き取りに来たとき、出入管理装置4によって、利用者の利用者カード10に登録されている利用者IDを読み取るとともに、中央管理装置5に登録されている各自転車IDの中から、この利用者IDに対応する自転車IDを取り込んで、この自転車IDを呼び出しIDとする無線信号を送信する。これにより呼び出しIDに応答した自転車3に取り付けられた表示ランプ装置9のランプ8が点灯し、利用者に自転車3の位置を知らせる。また、予め設定されている集計日毎に、中央管理装置5に登録されている各利用者の駐輪場利用状況を集計し、この集計結果に基づき、各利用者の利用料金を計算し、料金の徴収処理を行うことができるようになっている。
【0022】この場合、出入管理装置4は、駐輪場2の出入口に配置される入場改札筐体11と、この入場改札筐体11の入口側上部に設けられたカード投入口12に利用者カード10が挿入したとき、これを取り込みながら、この利用者カード10に書き込まれている利用者IDを読み取って、出口側上部に設けられたカード排出口12から排出させるカード読み取り装置13と、入場改札筐体11の入口側内側面に配置され、利用者が駐輪させようとしている自転車3に取付けられたIDチップ7と無線信号の授受を行って、このIDチップ7に登録されている自転車IDを読み出す非接触式読み取り装置14と、入場改札筐体11内に配置され、利用者が自転車3を駐輪するとき、あるいは駐輪させている自転車3を引き取るとき、利用者、自転車3の確認処理、自転車3の呼び出し処理などを行う制御装置15と、入場改札筐体11の上部などに配置され、制御装置15から呼び出しIDを含む高周波信号が出力されたとき、これを無線信号に変換して、中継アンテナ装置6に送信する送信アンテナ装置16と、入場改札筐体11の出口側上部に配置され、制御装置15から出力される案内メッセージデータ、アラームメッセージデータなどに応じたメッセージを表示して、利用者を案内するディスプレイ装置17と、入場改札筐体11の内側面に配置され、制御装置15から通過許可が出されたとき、所定時間だけ開いて、利用者、自転車3を通過させる開閉扉18とを備えている。」
なお、下線は審決において附された、以下同様。

(イ’)「【0025】この後、駐輪場2を利用しようとしている利用者が入場改札筐体11のカード投入口12に利用者カード10を投入して、自転車3とともに、入場改札筐体11の内側を通過したとき、この利用者カード10に登録された利用者IDと、自転車3のIDチップ7に登録された自転車IDとを読み取って、中央管理装置5に登録させる。次いで、この利用者が駐輪場2内に自転車3を駐輪させ、出場改札筐体19のカード投入口20に利用者カード10を投入し、出場改札筐体19の内側を通過したとき、この利用者カード10に登録された利用者IDを読み取って、中央管理装置5に駐輪完了を登録する。
【0026】また、この利用者が自転車3を引き取りにきて、入場改札筐体11のカード投入口12に利用者カード10を投入し、入場改札筐体11の内側を通過したとき、この利用者カード10に登録された利用者IDを読み取って、中央管理装置5に登録されている各自転車IDのうち、この利用者IDに対応する自転車IDを読み出し、これを利用者IDと対にしてメモリに記憶するとともに、この自転車IDを呼び出しIDとする無線信号を送信し、この利用者の自転車3に取り付けられている表示ランプ装置9のランプ8を点灯させる。
【0027】この後、この利用者が出場改札筐体19のカード投入口22に利用者カード10を投入して、自転車3とともに、出場改札筐体19の内側を通過したとき、利用者カード10に登録された利用者IDと、自転車3のIDチップ7に登録された自転車IDとを読み取るとともに、メモリに記憶されている各利用者IDと、各自転車IDとを参照して、これらが対応しているかどうかを確認し、これらが対応しているとき、開閉扉26を開いて、この利用者を通過させた後、中央管理装置5に削除指令を供給して、この利用者の自転車3が引き取られたことを知らせ、また対応していないとき、開閉扉26を閉じて、利用者が駐輪場2を出るのを阻止しながら、ディスプレイ装置25に、他人の自転車であることを表示し、この自転車3を元の位置に戻させる。
【0028】また、中央管理装置5は、駐輪場2の管理者などによって操作されるキーボード装置33と、表示信号を取り込んで、駐輪場2を管理するのに必要な管理画面、各利用者の利用状況を管理するのに必要な集計画面などを表示する表示装置34と、プリント指令が入力されたとき、このプリント指令とともに入力されたプリントデータに応じた帳票、例えば各利用者の利用状況を示す帳票36(図3参照)などをプリントアウトするプリンタ装置35と、出入管理装置4から登録要求が出されたとき、この登録要求とともに出力される利用者ID、自転車IDを取り込んで、内部に配置されたハードディスク機構などに登録する処理、出入管理装置4から読み出し要求が出されたとき、この読み出し要求とともに出力される利用者IDを検索キーとして、ハードディスク機構をアクセスし、この利用者IDに対応する自転車IDを読み出して、これを出入管理装置4に供給する処理、出入管理装置4から削除指示が出されたとき、ハードディスク機構に登録されている自転車IDなどを削除する処理、キーボード装置33から新規顧客指示が出力されたとき、各利用者に割り当てられている利用者ID、自転車ID以外の利用者ID、自転車IDを選択して、新たな利用者カード10、新たなIDチップ7を発行する処理、出入管理装置4から管理指示が出力されているとき、ハードディスク機構に登録されている各利用者ID、各自転車IDに基づき、管理データを生成して、表示装置34に管理画面を表示させる処理、キーボード装置33から集計指示が出力されているとき、ハードディスク機構に登録されている各利用者ID毎に、利用回数などを集計して、集計結果データを生成し、表示装置31に集計画面を表示させる処理、プリンタ装置35から集計結果に応じた帳票36などをプリントアウトさせる処理などを行う中央管理装置本体37とを備えている。
【0029】そして、駐輪場2の管理開始指示が入力されたとき、中央管理装置本体37によって、図3に示すように、各利用者の利用履歴、利用状況などが格納される利用者ファイル部38と、出入管理装置4から出力される各種要求、利用者ID、自転車IDなどを取り込む入力機能部39と、この入力機能部39によって取り込まれた要求内容を判定して、保存処理、削除処理、出力処理などを指示する判定機能部40と、この判定機能部40によって保存処理が指示されたとき、この判定機能部40から出力される利用者ID、自転車IDを取り込んで、利用者ファイル部38に登録されている利用者の利用状況などを更新し、この利用者が現在、駐輪場2を利用中であることを示す利用者フラグを“1”にする保存機能部41と、判定機能部40によって削除処理が指示されたとき、利用者ファイル部38に登録されている利用者の利用状況を更新して、この利用者の利用フラグを“0”にするとともに、利用履歴を更新する削除機能部42と、判定機能部40によって出力処理が指示されているとき、判定機能部40から出力される利用者IDを検索キーにして、利用者ファイル部38に格納されている各自転車IDの中から利用者IDに対応する自転車IDなどを読み出し、これを出入管理装置4に出力する出力機能部43とを生成する。
【0030】さらに、中央管理装置本体37によって、各利用者の利用履歴などをまとめた顧客データが格納される顧客ファイル部44と、キーボード装置33から保守指令などが出力されたとき、顧客ファイル部44に格納されている顧客データ、利用者ファイル部38に登録されている利用者履歴、利用状況などを整理する保守機能部45と、キーボード装置33から帳票作成指令が出力されたとき顧客ファイル部44に格納されている顧客データ、利用者ファイル部38に登録されている利用者履歴、利用状況などを使用し、プリンタ装置33から指定された帳票36をプリントアウトさせる帳票出力機能部46と、キーボード装置33から新規作成指令が出力されたとき、顧客ファイル部44に格納されている各利用者の顧客データを参照して、各利用者に割り当てられている利用者ID、自転車ID以外の利用者ID、自転車IDを選択し、新たな利用者カード10、新たなIDチップ7を発行する情報書込機能部47とを生成する。
【0031】この後、中央管理装置本体37によって、出入管理装置4から登録要求、読み出し要求が出力されているかどうかを監視し、出入管理装置4から登録要求が出されたとき、この登録要求とともに出力される利用者ID、自転車IDを取り込んで、ハードディスク機構などに形成された利用者ファイル部38に登録し、また出入管理装置4から読み出し要求が出されたとき、この読み出し要求とともに出力される利用者IDを検索キーとして、ハードディスク機構をアクセスして、この利用者IDに対応する自転車IDを読み出し、これを出入管理装置4に供給し、また出入管理装置4から削除要求が出されたとき、この削除要求とともに出力される利用者ID、自転車IDを取り込んで、ハードディスク機構に登録されている利用者ID、自転車IDを削除する。」

(ウ’)「【0032】また、この動作と並行し、中央管理装置本体37によって、キーボード装置33から管理指示、集計指示、印字指示などが出力されているかどうかを監視し、管理指示が出力されているとき、ハードディスク機構に登録されている各利用者ID、各自転車IDの登録内容、削除内容などによって構成される利用状況、利用履歴を整理して、管理データを生成し、表示装置34に管理画面を表示させ、またキーボード装置33から集計指示が出力されているとき、ハードディスク機構に登録されている各利用者ID毎に、利用日時などを集計して、表示装置34に集計画面を表示させ、また印字指示が出力されているとき、プリンタ装置35から集計結果などに応じた帳票36をプリントアウトさせる。
【0033】このように、この実施の形態では、各利用者が自転車3を駐輪場2に駐輪させるとき、出入管理装置4によって、利用者の利用者カード10に登録されている利用者ID、自転車3のIDチップ7に登録されている自転車IDを読み取り、中央管理装置5によって、各利用者ID、各自転車IDを管理させ、駐輪場2の利用許可を出させるようにしているので、駐輪場2に対する出入りをスムーズに行わせることができ、これによって駐輪に要する時間を大幅に短縮させて、利用者の利便性を大幅に向上させることができるとともに、駐輪場2を利用する各利用者、各自転車の管理を容易にして、運用コストを大幅に削減させることができる。
【0034】また、この実施の形態では、各利用者が自転車3を駐輪場2に駐輪させるとき、出入管理装置4に設けられたカード読み取り装置13、22、非接触式読み取り装置14、23によって、利用者の利用者カード10に登録されている利用者ID、自転車3のIDチップ7に登録されている自転車IDを読み取るようにしているので、利用者が自転車3を押しながら、駐輪場2の出入口を通過するだけで、この利用者の識別番号と、自転車の識別番号とを検知することができ、これによって駐輪に要する時間を大幅に短縮して、利用者の利便性を大幅に向上させることができるとともに、駐輪場2を利用する各利用者の管理を容易にして、運用コストを大幅に削減させることができる。
【0035】また、この実施の形態では、駐輪場2に自転車3を駐輪させている利用者が駐輪場2の出入口を通過したとき、出入管理装置4によって、この利用者の利用者IDを読み取って、中央管理装置5に登録されている各自転車IDの中から、この利用者IDに対応する自転車IDを読み出すとともに、この自転車IDを呼び出しIDとする無線信号を送信させて、この利用者の自転車3に取り付けられたランプ8などを点灯させて、この利用者の自転車が存在する位置を知らせるようにしているので、利用者が駐輪場2に自転車3を駐輪させた後、この利用者が自転車3を引き取りにきたとき、自転車3を探し出す時間をほぼゼロにさせることができる。
【0036】また、この実施の形態では、各利用者、各自転車3の駐輪場2の出入口を出入したとき、出入管理装置4によって、これを検知して、中央管理装置5に管理させるようにしているので、各利用者が各自転車3を駐輪させた日時、時刻を管理させることができ、これによって各利用者から駐輪場2の利用料金を徴収する際の契約方法として、月極め契約、曜日契約、利用日数契約、利用回数契約、利用時間契約など、種々の契約方法を使用させ、各利用者の利便性を飛躍的な向上させることができる。
【0037】なお、上述した実施の形態では、利用者が携帯している利用者カード10を入場改札筐体11に設けられたカード投入口12、出場改札筐体19に設けられたカード投入口20に投入したとき、これら入場改札筐体11、出場改札筐体19内に設けられた各カード読み取り装置13、22によって、利用者カード10に登録されている利用者IDを読み取らせるようにしているが、各利用者に無線式の利用者カードを持たせるとともに、入場改札筐体11、出場改札筐体19内に非接触式のカード読み取り装置を配置し、これらの利用者が駐輪場2の出入口を通過するとき、非接触式のカード読み取り装置によって、利用者が携帯している利用者カードの利用者IDを読み取らせるようにしても良い。」

以上の記載から見て、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「駐輪場の出入口に配置され、駐輪場に出入りする利用者を識別するための利用者ID、当該駐輪場を利用する自転車を識別するための自転車IDを読み取る出入管理装置と、この出入管理装置によって読み取られた利用者ID、自転車IDに基づき、前記駐輪場の利用状況を管理する中央管理装置とを備えた駐輪場出入管理システムであって、
前記出入管理装置は、前記利用者が携帯している利用者カードの内容、前記自転車に取り付けられているIDチップの内容を各々、接触方式あるいは非接触方式で読み取って利用者ID、自転車IDを生成する駐輪場出入管理システム。」

(2)対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「IDチップ7」は、本願発明の「IDチップ」に相当し、引用例1に記載された発明の「出入管理装置4に設けられた非接触式読み取り装置14,23」は、本願発明の「判定装置」に相当し、引用例1に記載された発明の「中央管理装置5の中央管理装置本体37」は、本願発明の「IDチップ管理センタコンピュータ」に相当し、引用例1に記載された発明の「利用者ファイル部38,顧客ファイル部44」は、本願発明の「ID番号を登録する手段」に相当し、引用例1に記載された発明の「中央管理装置本体37のハードディスクをアクセスする手段」は、本願発明の「マッチング判定する手段」に相当することは、明らかである。
また、引用例1に記載された発明の「自転車3」は、本願発明の「ブランド品」に対応し、引用例1に記載された発明の「出入管理装置4と中央管理装置5とを結ぶ無線による通信手段」は、本願発明の「判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを結ぶ通信回線」に対応し、引用例1に記載された発明の「駐輪場出入管理システム」は、本願発明の「ブランド品判定サービスシステム」に対応することも明らかである。

そして、引用例1には、出入管理装置4と中央管理装置5とを中継アンテナ装置6を介して無線で結び、被判定対象物である自転車3に取り付けられたIDチップ7に記録したID情報を送受信するようにした駐輪場管理システムが記載されているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを通信手段を介して被判定対象物に埋め込んで設けたIDチップに記録したID情報を送受信するように接続したIDチップ付き物品判定サービスシステム」
である点で差異はない。

引用例1には、利用者が自転車3を駐輪場2に駐輪させるとき、出入管理装置4に設けられたカード読み取り装置13,22、及び非接触式読み取り装置14,23によって、利用者の利用者カード10に登録されている利用者ID、及び自転車3のIDチップ7に登録されている自転車IDを読み取るようにしているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記判定装置は、前記被判定対象物に埋め込まれた前記IDチップのID情報を読取る機能を備えている」
点で差異はない。

引用例1には、中央管理装置本体37が、出入管理装置4から登録要求が出力されているかどうかを監視し、出入管理装置4から登録要求が出されたとき、利用者ID、自転車IDを取り込んで利用者ファイル部38、顧客ファイル部44に登録することが記載されているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記IDチップ管理センタコンピュータは、前記被判定対象物毎に付加されたID番号を登録する手段」
を有している点で差異はない。

引用例1には、出入管理装置4から読み出し要求が出力されたとき、中央管理装置本体37の判別機能部40が、利用者IDをキーとしてハードディスクを照合し、自転車IDを読み出すことが記載されているから、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記判定装置は、前記登録されたID番号と前記被判定対象物のIDチップから読取られたID情報をマッチング判定する手段」
を有している点で差異はない。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
(一致点)
「判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを通信手段を介して被判定対象物に埋め込んで設けたIDチップに記録したID情報を送受信するように接続したIDチップ付き物品判定サービスシステムであって、
前記判定装置は、前記被判定対象物に埋め込まれた前記IDチップのID情報を読取る機能を備え、前記IDチップ管理センタコンピュータは、前記被判定対象物毎に付加されたID番号を登録する手段と、前記登録されたID番号と前記被判定対象物のIDチップから読取られたID情報をマッチング判定する手段とを備えたIDチップ付きブ物品判定サービスシステム。」
である点において一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
被判定対象物が、本願発明ではブランド品であるのに対して、引用例1に記載された発明では自転車3である点。

(相違点2)
本願発明のIDチップが、粉末状のIDチップであるのに対して、引用例1に記載された発明のIDチップ7は、粉末状であると明記されていない点。

(相違点3)
本願発明が、判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを通信回線を介して接続しているのに対して、引用例1に記載された発明は、出入管理装置4に設けられた非接触式読み取り装置14,23と中央管理装置本体37の判別機能部40とを無線を介して接続している点。すなわち本願発明の通信手段が有線であり、引用例1に記載された発明の通信手段が無線である点。

(3)判断
(相違点1について)
前記相違点1について判断するに、ブランド品に非接触タグを取り付け、該非接触タグから読み取ったID情報を判定することによりブランド品の真贋を判別することは、特開2000-148950号公報および特開2000-11114号公報にその旨の記載があるとおり、当業者には周知な技術事項であるから、引用例1に記載された発明に上記周知技術事項を適用して本願発明の如く、被判定対象物品をブランド品とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点2について)
前記相違点2について判断するに、粉末状のIDチップは、例えば、特開平11-353561号公報、特開2001-208875号公報、及び特開平7-306264号公報にその旨の記載があるように当業者には周知である(第1番目の公報にあっては、特許請求の範囲の請求項3,4,7を参照のこと。第2番目の公報にあっては、特許請求の範囲の請求項3,5を参照のこと。第3番目の公報にあっては、段落【0016】〜【0018】を参照のこと。)から、引用例1に記載された発明に上記周知技術を適用して本願発明の如く構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点3について)
前記相違点3について、判断するに、中央と端末とを通信回線を介して結ぶか、或いは無線を介して結ぶかは、当業者が置かれた技術的状況に応じて適宜選択すべき設計事項であると認められるところ、次の文献、
【1】特開2000-11114号公報
【2】「特集 RFIDの可能性」,SEPTEMBER 2000 CardWave,株式会社シーメディア,2000年8月10日,pp.14-23(第18頁右欄,第20頁に示される図1と第21頁左欄及び中欄に記載されたその関連説明,及び第17頁右欄を参照。)
には、中央と端末とを通信回線を介して接続することが記載されているから、引用例1に記載された発明に上記周知技術事項を適用して、本願発明の如く、判定装置とIDチップ管理センタコンピュータとを通信回線を介して接続することは、当業者が適宜なし得ることである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-11 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願2001-246082(P2001-246082)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 辰利小太刀 慶明  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 岡本 俊威
鈴木 明
発明の名称 IDチップ付きブランド品判定サービスシステム  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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