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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1140075 |
審判番号 | 不服2003-15216 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-06-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-07 |
確定日 | 2006-07-14 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第324537号「コネクタ端子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月18日出願公開、特開平11-162611号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成9年11月26日の出願であって、平成15年4月14日付けで手続補正がなされ、平成15年7月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年8月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年9月8日付けで手続補正がなされ、平成18年1月6日付けで審尋がなされ、これに対し、平成18年3月13日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成15年9月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年9月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「【請求項1】 第1接続部(7)で一体に接続された複数の第1コネクタ端子(4)および第2接続部(8)で一体に接続され第1コネクタ端子(4)よりも長い複数の第2コネクタ端子(5)を、それら端子(4,5)の長手方向が帯状の金属板母材(6)の長手方向に直交するように配列して、該金属板母材(6)からプレス打ち抜きにより成形するコネクタ端子の製造方法であって、 第1コネクタ端子(4)および第2コネクタ端子(5)は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部(4w,5w)と、コネクタハウジング(1)の端子装着孔(9,10)への挿入後に折り曲げ加工される幅狭部(4n,5n)とを一体に備えていて、その第1,第2コネクタ端子(4,5)の幅広部(4w,5w)は同一形状を有しているが、第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)が第1コネクタ端子(4)の幅狭部(4n)よりも長くなっており、 また第1コネクタ端子(4)および第2コネクタ端子(5)は交互に配列されると共に、隣接する第1コネクタ端子(4)の間隔と、隣接する第2コネクタ端子(5)の間隔とを、それらが挿入されるコネクタハウジング (1)の端子嵌着孔(9,10)の間隔に一致させており、 前記金属板母材(6)から第1コネクタ端子(4)および第2コネクタ端子(5)をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子(4)の一端および第2コネクタ端子(5)の他端は金属板母材(6)の一方の側縁に沿って形成した前記第1接続部(7)に接続され、且つ第1コネクタ端子(4)の他端および第2コネクタ端子(5)の一端は金属板母材(6)の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部(8)に接続されていて、第1コネクタ端子(4)の幅広部(4w)・幅狭部(4n)が第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)・幅広部(5w)にそれぞれ対向するように配列されてお り、 そのプレス打ち抜き後に、第1コネクタ端子(4)の他端を第2接続部(8)から切断し、且つ第2コネクタ端子(5)の他端を第1接続部(7)から切断することにより、第1接続部(7)と一体に接続された複数の第1コネクタ端子(4)を、第2接続部(8)と一体に接続された複数の第2コネクタ端子(5)から分離することを特徴とする、コネクタ端子の製造方 法。」 2.補正の目的及び新規事項の追加の有無 上記補正は、平成15年4月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1における特定事項である「第1コネクタ端子(4)および第2コネクタ端子(5)」を「長手方向両端側にそれぞれ幅広部(4w,5w)と、コネクタハウジング(1)の端子装着孔(9,10)への挿入後に折り曲げ加工される幅狭部(4n,5n)とを一体に備えていて、その第1,第2コネクタ端子(4,5)の幅広部(4w,5w)は同一形状を有しているが、第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)が第1コネクタ端子(4)の幅狭部(4n)よりも長くなっており、」と限定を付加するとともに、同じく特定事項である「且つ第1コネクタ端子(4)の他端および第2コネクタ端子(5)の一端は金属板母材(6)の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部(8)に接続されており、」に「第1コネクタ端子(4)の幅広部(4w)・幅狭部(4n)が第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)・幅広部(5w)にそれぞれ対向するように配列されており、」と限定を付加して、「且つ第1コネクタ端子(4)の他端および第2コネクタ端子(5)の一端は金属板母材(6)の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部(8)に接続されていて、第1コネクタ端子(4)の幅広部(4w)・幅狭部(4n)が第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)・幅広部(5w)にそれぞれ対向するように配列されており、」とするものである。この限定を付加する補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記補正は、新規事項を追加するものでもない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-189186号公報(以 下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「(ロ) 発明の背景 コネクタ接触端子はコネクタハウジングのコネクタ接触端子孔と同一ピッチPで、フープ導電材を順送金型により2列共取りで多数個を縦列に連続してプレス加工し、つぎにその縦列に連続した状態でメッキ処理を施し、さらにその縦列に連続した状態で自動機によりコネクタハウジングに自動組込みを行っていた。 しかし、前述したメッキ処理工程では、コネクタ接触端子の全体の腐蝕を防止するために全体にニッケルメッキを、また電気接触部はその接触抵抗を下げるため電気接触部の一部分のみに噴流金メッキを、さらに端子部はプリント基板等への取付けの際半田付を容易にし、かつ確実にするため端子部の一部分のみに半田ドブ漬処理を必要とするが、従来より行われているコネクタ接触端子の製造方法ではこのメッキ処理工程でそれぞれ次のような欠点を有していた。 (1)第1図に示すごとくトランスファプレス機の各ステーションに移送するためキャリア1をフープ導電材2の移送方向の中心部形成して、このキャリア1に中心位置を同一とする第1列側および第2列側のコネクタ接触端子3を配置した製造方法では、ニッケルメッキは第1列側および第2列側を同時に施し噴流金メッキおよび半田ドブ漬処理は、第1列側と第2列側のコネクタ接触端子3を互にキャリア1の中央部より切離しして、第1列側および第2列側を別々にしてそれぞれを別個にメッキしていた。このためメッキ処理工程はニッケルメッキ1回、噴流金メッキ2回、半田ドブ漬処理2回で合計5回必要であり、作業工程が複雑で工程での不良率が高くメッキ処理工程がコストアップの要因となつていた。 またニッケルメッキを施した後キャリア1の中央部より折曲げて第1列側と第2列側のコネクタ接触端子を互に重ね合せる方法は、コネクタ接触端子3の片面のみに噴流金メッキを施す場合は有効であるが、両面に噴流金メッキが必要な場合は重ね合わさった互の内面に噴流金メッキを施すことができず前述したような工程でメッキ処理を施さなければならなかつた。 (2)第2図に示すごとくトランスファプレス機の各ステーシヨンに移送するためのキャリア1をフープ導電材2の移送方向の両側部に形成して、このそれぞれのキャリア1に中心位置を1/2ピッチずらし第1列側および第2列側のコネクタ接触端子3を千鳥取りに配置した製造方法においても、前述したと同様に5回のメツキ処理工程が必要であった。」(第1ページ右下欄第2行〜第2ページ右上欄第14行) (2)第2図には、一方のキャリア1で一体に接続された複数の第1列側のコネクタ接触端子3および他方のキャリア1で一体に接続された複数の第2列側のコネクタ接触端子3が、それらコネクタ接触端子3の長手方向がフープ導電材2の長手方向に直交するように配列しており、 また第1列側のコネクタ接触端子3および第2列側のコネクタ接触端子3は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と幅狭部とを一体に備えていて、第1列側のコネクタ接触端子3および第2列側のコネクタ接触端子3は同一形状を有しており、 第1列側のコネクタ接触端子3および第2列側のコネクタ接触端子3は、それぞれの中心位置を1/2ピッチずらし千鳥取りに配列されており、 第1列側のコネクタ接触端子3の一端はフープ導電材2の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリア1に接続され、他端はフープ導電材2の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリア1に接続されておらず、且つ第2列側のコネクタ接触端子3の一端はフープ導電材2の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリア1に接続され、他端はフープ導電材2の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリア1に接続されておらず、第1列側のコネクタ接触端子3の幅広部・幅狭部が第2列側のコネクタ接触端子3の幅狭部・幅広部にそれぞれ対向するように配列されている、 様子が記載されている。 上記(1)の「コネクタ接触端子はコネクタハウジングのコネクタ接触端子孔と同一ピッチPで、フープ導電材を順送金型により2列共取りで多数個を縦列に連続してプレス加工し、つぎにその縦列に連続した状態でメッキ処理を施し、さらにその縦列に連続した状態で自動機によりコネクタハウジングに自動組込みを行っていた。」という記載からすると、上記(2)の第2図に記載されているキャリア1で一体に接続したコネクタ接触端子3のピッチすなわち間隔は、コネクタハウジングのコネクタ接触端子孔のピッチ、すなわち間隔に一致させていると認められる。 また、上記(2)の第2図に記載された事項の「第1列側のコネクタ接触端子3の・・・他端はフープ導電材2の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリア1に接続されておらず、且つ第2列側のコネクタ接触端子3の・・・他端はフープ導電材2の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリア1に接続されてされておらず、」から、一方のキャリア1で一体に接続された複数の第1列側のコネクタ接触端子3は、他方のキャリア1で一体に接続された複数の第2列側のコネクタ接触端子3から分離できるといえる。 さらに、上記(1)の「(2)第2図に示すごとくトランスファプレス機の各ステーシヨンに移送するためのキャリア1をフープ導電材2の移送方向の両側部に形成して、このそれぞれのキャリア1に中心位置を1/2ピッチずらし第1列側および第2列側のコネクタ接触端子3を千鳥取りに配置した製造方法においても、」という記載から、上記(2)の第2図に記載された様子は、フープ導電材2から第1列側のコネクタ接触端子3および第2列側のコネクタ接触端子3をプレス打ち抜きしたときの様子を表しているものと認められる。 そして、コネクタ接触端子、第1列側のコネクタ接触端子、第2列側のコネクタ接触端子は、それぞれコネクタ端子、第1コネクタ端子、第2コネクタ端子とも表現できるので、これらの表現を用いて、コネクタ端子の製造方法という視点から、上記(1)、(2)の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「一方のキャリア1で一体に接続された複数の第1コネクタ端子3および他方のキャリア1で一体に接続された複数の第2コネクタ端子3が、それらコネクタ端子3の長手方向がフープ導電材2の長手方向に直交するように配列して、フープ導電材2からプレス打ち抜きにより形成されるコネクタ端子の製造方法であって、 第1コネクタ端子3および第2コネクタ端子3は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と幅狭部とを一体に備えていて、第1コネクタ端子3および第2コネクタ端子3は同一形状を有しており、 また第1コネクタ端子3および第2コネクタ端子3はそれぞれの中心位置を1/2ピッチずらし千鳥取りに配列されると共に、隣接する第1コネクタ端子3の間隔と、隣接する第2コネクタ端子3の間隔とを、それらが挿入されるコネクタハウジングのコネクタ端子孔の間隔に一致させており、 前記フープ導電材2から第1コネクタ端子3および第2コネクタ端子3をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子3の一端はフープ導電材2の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリア1に接続され、他端はフープ導電材2の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリア1に接続されておらず、且つ第2コネクタ端子3の一端はフープ導電材2の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリア1に接続され、他端はフープ導電材2の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリア1に接続されておらず、第1コネクタ端子3の幅広部・幅狭部が第2コネクタ端子3の幅狭部・幅広部にそれぞれ対向するように配列されていて、 一方のキャリア1で一体に接続された複数の第1コネクタ端子3は、他方のキャリア1で一体に接続された複数の第2コネクタ端子3から分離でき る、 コネクタ端子の製造方法。」 3-2. 対比 そこで、本願補正発明と刊行物記載の発明を対比すると、その機能・構造からみて、後者の「一方のキャリア」、「他方のキャリア」、「フープ導電材」、「それぞれの中心位置を1/2ピッチずらし千鳥取りに配列され る」、「コネクタ端子孔」、フープ導電材の「側部」は、それぞれ前者の「第1接続部」、「第2接続部」、「帯状の金属板母材」、「交互に配列される」、「端子嵌着孔」、金属板母材の「側縁」に相当する。 後者の「第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と幅狭部とを一体に備えていて、第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は同一形状を有しており、」と前者の「第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と、コネクタハウジングの端子装着孔への挿入後に折り曲げ加工される幅狭部とを一体に備えていて、その第1,第2コネクタ端子の幅広部は同一形状を有しているが、第2コネクタ端子の幅狭部が第1コネクタ端子の幅狭部よりも長くなっており、」とは、「第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と幅狭部とを一体に備えていて、その第1、第2コネクタ端子の幅広部は同一形状を有しており、」の限りで共通しているといえる。 同じく、後者の「前記フープ導電材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の一端はフープ導電材の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリアに接続され、他端はフープ導電材の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリアに接続されておらず、且つ第2コネクタ端子の一端はフープ導電材の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリアに接続され、他端はフープ導電材の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリアに接続されておらず、第1コネクタ端子の幅広部・幅狭部が第2コネクタ端子の幅狭部・幅広部にそれぞれ対向するように配列されていて、」と前者の「前記金属板母材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の一端および第2コネクタ端子の他端は金属板母材の一方の側縁に沿って形成した前記第1接続部に接続され、且つ第1コネクタ端子の他端および第2コネクタ端子の一端は金属板母材の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部に接続されていて、第1コネクタ端子の幅広部・幅狭部が第2コネクタ端子の幅狭部・幅広部にそれぞれ対向するように配列されており、」とは、「前記金属板母材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の一端は一方の側縁に沿って形成した前記第1接続部に接続され、且つ第2コネクタ端子の一端は金属板母材の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部に接続されていて、第1コネクタ端子の幅広部・幅狭部が第2コネクタ端子の幅狭部・幅広部にそれぞれ対向するように配列されている、」の限りで共通しているといえる。 そうすると、両者は、 「第1接続部で一体に接続された複数の第1コネクタ端子および第2接続部で一体に接続され複数の第2コネクタ端子を、それら端子の長手方向が帯状の金属板母材の長手方向に直交するように配列して、該金属板母材からプレス打ち抜きにより成形するコネクタ端子の製造方法であって、 第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と幅狭部とを一体に備えていて、その第1、第2コネクタ端子の幅広部は同一形状を有しており、 また第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は交互に配列されると共 に、隣接する第1コネクタ端子の間隔と、隣接する第2コネクタ端子の間隔とを、それらが挿入されるコネクタハウジングの端子嵌着孔の間隔に一致させており、 前記金属板母材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の一端は一方の側縁に沿って形成した前記第1接続部に接続され、且つ第2コネクタ端子の一端は金属板母材の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部に接続されていて、第1コネクタ端子の幅広部・幅狭部が第2コネクタ端子の幅狭部・幅広部にそれぞれ対向するように配列されている、 コネクタ端子の製造方法。」 で一致し、次の点で相違する。 【相違点1】 本願補正発明においては、第1コネクタ端子および第2コネクタ端子は、幅狭部がコネクタハウジングの端子装着孔への挿入後に折り曲げ加工されるものであるとともに、第2コネクタ端子の幅狭部が第1コネクタ端子の幅狭部よりも長くなっているのに対し、刊行物記載の発明においては、第2コネクタ端子の幅狭部は第1コネクタ端子の幅狭部と同一形状である点。 【相違点2】 本願補正発明においては、金属板母材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の他端は金属板母材の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部に接続され、且つ第2コネクタ端子の他端は金属板母材の一方の側縁に沿って形成した前記第1接続部に接続されており、そのプレス打ち抜き後に、第1コネクタ端子の他端を第2接続部から切断し、且つ第2コネクタ端子の他端を第1接続部から切断することにより、第1接続部と一体に接続された複数の第1コネクタ端子を、第2接続部と一体に接続された複数の第2コネクタ端子から分離するのに対し、刊行物記載の発明においては、金属板母材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の他端は第2接続部に接続されておらず、第2コネクタ端子の他端は第1接続部に接続されておらず、第1接続部と一体に接続された複数の第1コネクタ端子を、第2接続部と一体に接続された複数の第2コネクタ端子から分離できる点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 刊行物記載の発明は、従来周知の、同じ形状のコネクタ端子を用いてなるコネクタを前提としたコネクタ端子の製造方法であるといえる。そして、コネクタの技術分野において、長さの異なる第1コネクタ端子と第2コネクタ端子をコネクタハウジングのコネクタ端子孔へ挿入後に折り曲げ加工してなるコネクタも、従来周知(例えば、特開平5-29043号公報、実願平5-27565号(実開平6-83130号)のCD-ROMを参照)であ る。 そうだすると、刊行物記載の発明のコネクタ端子の製造方法を上記従来周知の長さの異なる第1コネクタ端子と第2コネクタ端子をコネクタハウジングのコネクタ端子孔へ挿入後に折り曲げ加工してなるコネクタのコネクタ端子の製造に適用しようとすることは、当業者であれば容易に考え付くことであり、その適用に際して、第2コネクタ端子の幅狭部が第1コネクタ端子の幅狭部よりも長くなっているようにすることは、刊行物記載の発明において も、コネクタ端子は、長手方向両端側にそれぞれ幅広部と幅狭部とを一体に備えたものであり、また、コネクタ端子の幅広部と幅狭部のどちらをコネクタハウジングのコネクタ端子孔へ挿入し、挿入後に折り曲げ加工するかは、挿入、折り曲げ加工後のコネクタ端子孔におけるコネクタ端子の保持強度、コネクタ端子に電気的に接続するソケットコンタクトの形状等を考慮して適宜決め得る技術的事項であると認められるから、当業者であれば適宜なし得たものである。 よって、相違点1における本願補正発明の特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願補正発明の相違点1における特定事項とすることによる効果も格別なものではない。 (2)相違点2について コネクタ端子のプレス製造において、コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、コネクタ端子の長手方向の両端部がフープ材の両側縁(キャリア)に接続しているようにすることは、従来周知の技術である(例えば、特開昭57-22834号公報、特開昭59-46785号公報、特開平5-343151号公報を参照)。 そうだとすると、刊行物記載の発明において、上記従来周知の技術を取り入れて、フープ導電材から第1コネクタ端子および第2コネクタ端子をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子の他端もフープ導電材の他方の側部に沿って形成した前記他方のキャリアに接続され、第2コネクタ端子の他端もフープ導電材の一方の側部に沿って形成した前記一方のキャリアに接続されるようにし、その後に、上記コネクタ端子の他端をキャリアから切断 し、一方のキャリアに一体に接続された複数の第1コネクタ端子を、他方のキャリアと一体に接続された複数の第2コネクタ端子から分離できるようにすることは、当業者であれば必要に応じ適宜なし得たものである。 よって、相違点2における本願補正発明の特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願補正発明の相違点2における特定事項とすることによる効果 も、上記従来周知の技術及び刊行物記載の発明から予測できるものであっ て、格別なものではない。 したがって、本願補正発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明 平成15年9月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月14日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 第1接続部(7)で一体に接続された複数の第1コネクタ端子(4)および第2接続部(8)で一体に接続され第1コネクタ端子(4)よりも長い複数の第2コネクタ端子(5)を、それら端子(4,5)の長手方向が帯状の金属板母材(6)の長手方向に直交するように配列して、該金属板母材(6)からプレス打ち抜きにより成形するコネクタ端子の製造方法であって、 第1コネクタ端子(4)および第2コネクタ端子(5)は交互に配列されると共に、隣接する第1コネクタ端子(4)の間隔と、隣接する第2コネクタ端子(5)の間隔とを、それらが挿入されるコネクタハウジング(1)の端子嵌着孔(9,10)の間隔に一致させており、 前記金属板母材(6)から第1コネクタ端子(4)および第2コネクタ端子(5)をプレス打ち抜きしたときには、第1コネクタ端子(4)の一端および第2コネクタ端子(5)の他端は金属板母材(6)の一方の側縁に沿って形成した前記第1接続部(7)に接続され、且つ第1コネクタ端子(4)の他端および第2コネクタ端子(5)の一端は金属板母材(6)の他方の側縁に沿って形成した前記第2接続部(8)に接続されており、 そのプレス打ち抜き後に、第1コネクタ端子(4)の他端を第2接続部(8)から切断し、且つ第2コネクタ端子(5)の他端を第1接続部(7)から切断することにより、第1接続部(7)と一体に接続された複数の第1コネクタ端子(4)を、第2接続部(8)と一体に接続された複数の第2コネクタ端子(5)から分離することを特徴とする、コネクタ端子の製造方 法。」 第4.刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載事項は、上記第2.の3の3-1に記載したとおりである。 第5.対比・判断 本願発明は、上記第2.の1及び2で検討した本願補正発明から、その特定事項である「長手方向両端側にそれぞれ幅広部(4w,5w)と、コネクタハウジング(1)の端子装着孔(9,10)への挿入後に折り曲げ加工される幅狭部(4n,5n)とを一体に備えていて、その第1,第2コネクタ端子(4,5)の幅広部(4w,5w)は同一形状を有しているが、第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)が第1コネクタ端子(4)の幅狭部(4n)よりも長くなっており、」及び「第1コネクタ端子(4)の幅広部(4w)・幅狭部(4n)が第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)・幅広部(5w)にそれぞれ対向するように配列されており、」を省いたものということができる。 そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに、「長手方向両端側にそれぞれ幅広部(4w,5w)と、コネクタハウジング(1)の端子装着孔(9,10)への挿入後に折り曲げ加工される幅狭部(4n,5n)とを一体に備えていて、その第1,第2コネクタ端子(4,5)の幅広部(4w,5w)は同一形状を有しているが、第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)が第1コネクタ端子(4)の幅狭部(4n)よりも長くなってお り、」及び「第1コネクタ端子(4)の幅広部(4w)・幅狭部(4n)が第2コネクタ端子(5)の幅狭部(5n)・幅広部(5w)にそれぞれ対向するように配列されており、」との特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.の3に記載したとおり、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-16 |
結審通知日 | 2006-05-17 |
審決日 | 2006-05-31 |
出願番号 | 特願平9-324537 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 柳 五三 |
発明の名称 | コネクタ端子の製造方法 |
代理人 | 落合 健 |
代理人 | 仁木 一明 |