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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1140083
審判番号 不服2004-8761  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-28 
確定日 2006-07-14 
事件の表示 特願2001- 49814「プリンタシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月25日出願公開、特開2001-260496〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成4年6月29日に出願された特願平4-170888号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成15年9月12日付けで拒絶の査定がされた(謄本送達は平成16年4月7日)ため、これを不服として平成16年4月28日付けで本件審判請求がされるとともに、同年5月21日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年5月21日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「複数の画像データと、画像データ毎についての階調制御用テーブルと、前記画像データを特定してプリントを指示するためのプリントジョブとが蓄積されたメモリカードと、
前記メモリカードから前記画像データ、当該画像データについての階調制御用テーブル及びプリントジョブを読み取るカード読み取り手段と、
制御手段と、
階調制御用テーブルが書き込まれるメモリ手段を有する印画手段と
を少なくとも備えるプリンタシステムであって、
前記制御手段は、所定の指示手段により印画が指示された場合に前記カード読み取り手段によりメモリカードに蓄積されているプリントジョブを読み取り、このプリントジョブで画像データの印画が指示されている場合には、カード読み取り手段により、印画が指示されている画像データ及び当該画像データについての階調制御用テーブルをメモリカードから読み出し、当該階調制御用テーブルを印画手段のメモリ手段に書き込むと共に、当該画像データを印画手段に渡し、
前記印画手段は、制御手段から渡された画像データを、メモリ手段に書き込まれた階調制御用テーブルを用いて印画する
ことを特徴とするプリンタシステム。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-93820号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜クの記載が図示とともにある。なお、後記引用例2を含め、摘記に当たっては、拗音・促音等を通常表記に従い小さな文字に改めたり、改行及び一字空白を省略することがある。
ア.「本発明は、いわゆるICメモリカードについての新規な利用技術に関するものであり、さらに具体的には、ICメモリカードを記憶媒体として用いたプリントデータ処理装置を提供しようとするものである。」(2頁左上欄10〜14行)
イ.「本発明の目的は、OA機器とプリンターとの間の結合のオフライン化を可能にすることにより、互いに離れた位置にある複数のOA機器が1台以上のプリンターを共有できるようなプリントデータ処理装置を提供することにある。」(2頁左下欄18行〜右下欄2行)
ウ.「ICメモリカード2へのデータ書き込みを行う場合には、前述の機能切り換え手段によって書き込み機能を選択している状態に制御するとともに、前記コネクタ11を介して、パソコン等のOA機器本体7aを接続する。この場合、OA機器本体7aにプリントアウト命令を下すと、OA機器本体7aからはプリントアウト・データ(実際にプリンターによってプリントされるべきデータ)とプリンター制御用データ(印字実行命令や行替え命令等、プリンターの動作や状態自体に関する命令コード・データ)とが出力されるが、プリントデータ処理装置は、プリントアウト・データとプリンター制御用データの両データ(以下、この両データをプリントデータと総称する)を受け取ると、そのままの順序でICメモリカード2に記憶書き込みする。」(3頁右上欄3〜18行)
エ.「ICメモリカード2からのデータの読み出しを行う場合には、前述の機能切り換え手段によって読み出し機能を選択している状態に制御するとともに、前記コネクタ11を介して、プリントデータ処理装置10をプリンター7bと接続する。この場合には、プリントデータ処理装置10はICメモリカード2内に記憶されているプリントデータを順次読み出すとともに、読み出したプリントデータを、前記コネクター11を介してプリンター7bに送信する。」(3頁右上欄19行〜左下欄8行)
オ.「プリントデータの読み出し機能を有するプリントデータ処理装置については、プリンター自体の一部に内蔵することも可能である。」(3頁右下欄4〜7行)
カ.「プリントデータ処理装置は、CPU21、プログラムを記憶しているROM22、処理データ等を記憶しておくためのRAM23、入力ポート24、出力ポート25、入出力ポート26、メモリカード用インターフェース手段として設けられたメモリカード・コネクタ27、およびこれらの各要素間を結んでいるデータバス28、アドレスバス29、コントロールバス30等を有するマイクロコンピュータ・システムによって構成されている。」(3頁右下欄15行〜4頁左上欄3行)
キ.「プリンター側は、プリントデータのバッファメモリへの取り込みを終了すると、アクノリッジ信号を出力するとともに、BSY線をLレベルに復帰させる。」(4頁左下欄1〜4行)
ク.「本発明によれば、OA機器本体とプリンターとが、ONライン状態で互いに接続されていなくても、ICメモリカードとプリントデータ処理装置を介して、複数のOA機器間で1台以上のプリンターを共有して使える状態を作ることができる。」(6頁右下欄16行〜7頁左上欄1行)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載オには、プリントデータ処理装置をプリンターに内蔵することが記載されており、そのようなプリンターはICメモリカードに書き込まれたプリントアウト・データを印刷するものであるから、プリンターとICメモリカードを併せたものを「プリンタシステム」ということができる。以下では、プリントデータ処理装置を内蔵したプリンターにおいて、印刷を司る部分を「プリント部」ということにする。
「ICメモリカード及びプリントデータ処理装置を内蔵したプリンターからなるプリンタシステムであって、
前記ICメモリカードにはプリントアウト・データ及びプリンター制御用データからなるプリントデータが書き込まれており、
前記プリントデータ処理装置は前記ICメモリカードに書き込まれた前記プリントデータを読み出してプリンターのプリント部に送信するものであり、
前記プリント部は前記プリントデータをバッファメモリへ取り込み、前記プリンター制御用データに従ってプリントアウト・データを印刷するプリンタシステム。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「プリントアウト・データ」、「ICメモリカード」、「プリントデータ処理装置」及び「プリント部」は、本願発明の「画像データ」、「メモリカード」、「カード読み取り手段」及び「印画手段」にそれぞれ相当する。
本願発明の「階調制御用テーブル」と引用発明1の「プリンター制御用データ」は、「画像データ」以外のデータであって、印画(印刷)に必要なデータである(以下、その意味で「制御データ」という。)点で一致する。
引用発明1の「プリンター」が、「所定の指示手段により印画が指示された場合にカード読み取り手段により画像データ及び当該画像データについて制御データをメモリカードから読み出し、当該画像データを印画手段に渡す」ような「制御手段」を備えていることは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「画像データと、制御データとが蓄積されたメモリカードと、
前記メモリカードから前記画像データ及び制御データを読み取るカード読み取り手段と、
制御手段と、
印画手段とを少なくとも備えるプリンタシステムであって、
前記制御手段は、所定の指示手段により印画が指示された場合に前記カード読み取り手段によりカード読み取り手段により画像データ及び制御データをメモリカードから読み出し、当該画像データを印画手段に渡し、
前記印画手段は、制御手段から渡された画像データを印画するプリンタシステム。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明の「メモリカード」には、「複数の画像データ」及び「前記画像データを特定してプリントを指示するためのプリントジョブ」が蓄積されているのに対し、引用発明1では、そもそも「複数の画像データ」が蓄積されているかどうか明らかでない点。
〈相違点2〉本願発明では、「制御データ」が「画像データ毎についての階調制御用テーブル」と限定されており、「印画手段」が「階調制御用テーブルが書き込まれるメモリ手段を有する」旨限定されているのに対し、引用発明1の「制御データ」に「画像データ毎についての階調制御用テーブル」が含まれるとはいえず、その結果「プリント部」が「階調制御用テーブルが書き込まれるメモリ手段を有する」ともいえない点。
〈相違点3〉本願発明の「制御手段」は、「メモリカードに蓄積されているプリントジョブを読み取り、このプリントジョブで画像データの印画が指示されている場合には、カード読み取り手段により、印画が指示されている画像データ及び当該画像データについての階調制御用テーブルをメモリカードから読み出し、当該階調制御用テーブルを印画手段のメモリ手段に書き込む」としているのに対し、引用発明1がこのような構成を有するとはいえない点。
〈相違点4〉本願発明の「印画手段」は「メモリ手段に書き込まれた階調制御用テーブルを用いて印画する」としているのに対し、引用発明1がこのような構成を有するとはいえない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例1に「制御データ」の具体例として例示されているのは「印字実行命令や行替え命令等、プリンターの動作や状態自体に関する命令コード・データ」(記載ウ)であり、「ICメモリカード」は印刷を実行するためにプリントデータ処理装置に装着するのであるから、「ICメモリカード」に蓄積される「プリントアウト・データ」が単一であるならば「印字実行命令」を「制御データ」に含むことの技術的意義が乏しくなる。
また、1つの「ICメモリカード」に複数の「プリントアウト・データ」を蓄積できないと理解することは著しく困難である。そして、1つの「ICメモリカード」に複数の「プリントアウト・データ」が蓄積されている場合には、どの「プリントアウト・データ」につき、何枚ずつ印刷するか(0枚を含む)を指定することは、従来ネガフィルムの焼き増しを依頼する際に、焼き増し枚数を指定していたことからも、当然なすべき事項にすぎない。
そして、「前記画像データを特定してプリントを指示するためのプリントジョブ」とは、印刷指定枚数が0枚でないことを意味するだけであるから、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-66379号公報(以下「引用例2」という。)には、
「中間調を再現できるピクトリアルカラー画像出力装置はビデオプリンタ、カラー複写装置、コンピュータグラフィックス出力端末機器として大いに期待されている。この種の濃度情報を持つカラー画像情報の入力装置としては、多くはTVカメラ、CCDカラーセンサ等を搭載したカラー画像入力装置が使用される。各画素の色分解されたカラーデータは例えば6ビット(64階調)又は8ビット(256階調)の濃度データとして送られているように、通常、センサからA/D変換されて量子化されるビット数は装置により異なる。また量子化ビット数が同一の入力装置であっても色分解時のフィルタ特性、センサの特性、光量等の違いにより画像データの性質は異ってくる。そこで、これらの入力カラーデータとプリンタとの間で色の整合をとるため、即ち、これら異った性質の画像データを本来もつべき値に修正する為、読み取られた入力画素の濃淡値C1を変換してC2にすべく、C2=f(C1)のような演算処理を施さなければならない。従来、このような濃度変換は外部のホストコンピュータにより計算をして予め新しいファイルを作るか、又はリアルタイムに演算して転送するような事が行われており、その分外部ホスト装置の負担や処理時間に影響を与えていた。また、一方ではこれらの演算をプリンタ側の色処理回路内に設け、例えば変換データをROMに書き込むなどしてカラーデータ(画像ソース)の性質に合せてROMを入れ変えたり、あるいはROM数を増してスイッチ等により変換ROMを選択していた。このためあまり効率的ではなかった。」(1頁右下欄12行〜2頁右上欄11行)、
「本発明は上記欠点に鑑みてなされたものであり、予め外部ホスト装置より濃度変換用テーブル情報を知らせることのみで以降のカラーデータはそのテーブル情報をもとに各色成分毎に任意変換され、送り側で煩雑な濃度変換処理をする必要のないカラー像形成装置を提供することにある。」(2頁右上欄13行〜左下欄2行)、
「第9図(a)〜(c)は実施例の各種カラーデータコマンドの構成図である。第9図(a)は濃度変換データコマンドの構成を示す。始めの2バイトは当該コマンドが“濃度変換データコマンド”であることを示し、次の第1パラメータは本コマンドが対象とする4種類の色情報指定R,G,B,RGB共通のうちいづれかを指定する部分である。第2パラメータの256バイト分のデータは左から入力濃度“0”に対する出力変換データ、入力濃度“1”に対する出力変換データ、…、入力濃度“255”に対する出力変換データが記憶されているようになっている。これは、本実施例装置において所望の濃度変換を可能にするものであり、その濃度変換の態様の例は第12図(a)〜(d)に示されている。」(6頁左上欄末行〜右上欄14行)及び
「本発明によれば、カラー画像データ転送前に先立って例えば外部ホスト装置より濃度変換テーブル情報をR,G,B毎に又はRGB共通指定を行う事により、外部ホスト側で煩雑な濃度補正処理を施す事なく、異なるカラーソースに対して所望のカラー画像をプリントアウトする事ができる。」(8頁左下欄1〜7行)との各記載がある。
上記記載中の「濃度データ」、「濃淡値」又は「入力濃度」とは、階調データのことであるから、「濃度変換テーブル」と本願発明の「階調制御用テーブル」に差異を認めることはできない。
引用例2では、「カラー画像データ」(本願発明の「画像データ」に相当する。)転送に先立って「濃度変換テーブル情報」が「カラー像形成装置」(本願発明の「印画手段」に相当する。)に送られるのだから、「濃度変換テーブル情報」は個々の「カラー画像データ」固有のものである。
すなわち、引用例2記載の発明(以下「引用発明2」という。)は、「画像データ」と「階調制御用テーブル」を対にして外部ホスト装置からカラー像形成装置に送信することにより、カラー像形成装置にて良好に中間調再現を行う発明である。
ところで、引用発明1は、OA機器本体(引用発明2の「外部ホスト装置」)とプリンター(同「カラー像形成装置」)とが、ONライン状態で互いに接続されていない場合でも、ONライン状態で互いに接続されるのと同じ環境を現出するために、ICメモリカードとプリントデータ処理装置を介する構成を採用したものである(引用例1の記載イ,ク参照。)。
そうであれば、引用発明1においても、引用発明2同様良好に中間調再現を行うために、「画像データ」と「階調制御用テーブル」を対にすることは当業者にとって想到容易であり、引用発明1ではOA機器本体からの送信に代わるものとして、印刷に必要な情報をICメモリカードに蓄積しているのだから、「画像データ」と「階調制御用テーブル」を対にしてICメモリカードに蓄積すること、すなわち「制御データ」に「画像データ毎についての階調制御用テーブル」を含ませることは当業者にとって想到容易である。
また、引用発明1では、プリント部がプリントデータ(プリンター制御用データを含む)をバッファメモリへ取り込んでいるのだから、「制御データ」が「画像データ毎についての階調制御用テーブル」を含む場合に、プリント部(印画手段)が「階調制御用テーブルが書き込まれるメモリ手段を有する」構成とすることは設計事項に属する。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
相違点1に係る本願発明の構成を採用することが設計事項であることは(1)で述べたとおりであり、同構成を採用した場合には、印刷すべきプリントジョブとそうでないプリントジョブがICメモリカードに混在して蓄積されているのだから、「プリントジョブで画像データの印画が指示されている場合」に限って「印画が指示されている画像データ」を読み出すことは設計事項というべきである。
また、相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは(2)で述べたとおりであり、同構成を採用した場合には、「印画が指示されている画像データ」に加えて「当該画像データについての階調制御用テーブルし、当該階調制御用テーブルを印画手段のメモリ手段に書き込む」ことは設計事項というべきである。
すなわち、相違点1,2に係る本願発明の構成の採用を前提とした上で相違点3に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であり、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(4)相違点4について
相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは(2)で述べたとおりであり、同構成を採用した場合には相違点4に係る本願発明の構成の採用することは当然である(メモリ手段に書き込まれた階調制御用テーブルを用いて印画しないのであれば、同テーブルをメモリカードに蓄積し、読み出し、印画手段のメモリ手段に書き込むことに意味がない。)。
したがって、引用発明1を出発点とした場合に、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(5)本願発明の進歩性の判断
相違点1〜4に係る本願発明の構成を採用することは、設計事項又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-11 
結審通知日 2006-05-17 
審決日 2006-05-31 
出願番号 特願2001-49814(P2001-49814)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司畑井 順一  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 國田 正久
藤井 勲
発明の名称 プリンタシステム  
代理人 小林 和憲  

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