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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1140235
審判番号 不服2003-17084  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-04 
確定日 2006-07-19 
事件の表示 平成11年特許願第160597号「座椅子の底部構造並びにこれを用いた座椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月29日出願公開、特開2000- 60672号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年6月8日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年10月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「座椅子座部の後方延長方向に、上向きの屈曲部およびこれに連続する平坦部を設け、当該屈曲部の位置を使用者が背もたれ部に寄りかかったときの重心点の範囲内としたことを特徴とする座椅子の底部構造。」

II.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、実願平5-41646号(実開平7-11948号)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)には、「座椅子」について、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)(【0005】及び【0006】段落)
「このような課題を解決するための本考案の技術的手段は、着座可能な座板と、座板に所定角度で固定された背もたれとを備えた座椅子において、座板の両側に前後方向に延びる脚部を設け、脚部の床面に接する接触面のうち、少なくとも背もたれ側の後側面を、座板が揺動可能になるように弧状に湾曲形成したものである。そして、必要に応じ、上記脚部の床面に接する接触面のうち、上記後側面より前側に、水平面を備えた構成としている。

(2)(【0007】及び【0008】段落)
「床面を足で押す等して、背もたれに体重をかけていくと、脚部の床面に接する接触面のうち後側面が弧状に湾曲形成されているので、座板及び背もたれが、所定の角度関係を保ったまま、傾動していき、背もたれにかけた体重のバランスにより、あるいは、足の床面に対する突っ張り具合等により、適宜の角度位置に略静止させられる。この場合、座板の前端が床面よりも持ち上がるので、尻が前側に滑ることがなく、確実に尻が座板に載せられた状態になる。また、脚部の床面に接する接触面のうち、後側面より前側に水平面を備えた場合には、座板及び背もたれをぐらつくことなく正位置に静止させることができる。」
(3)(【0010】段落)
「座板2の両側には前後方向に延びる細長板状の脚部4が設けられている。脚部4の背もたれ3側の後側部4aは、背もたれ3の座板2に対する固定位置よりも後方に突出しているとともに、湾曲して上方に立ち上がっている。そして、脚部4の床面に接する接触面5のうち、背もたれ3側の後側面5aは、座板2が揺動可能になるように弧状に湾曲形成されている。」
(4)(【0012】段落)
「また、上記脚部4の床面に接する接触面5のうち、後側面5aより前側は、座板2の座面を略水平にするよう水平に形成され、水平面5bとして構成されている。・・・後略・・・」
(5)(図1〜4)
図1〜4には、前側に水平面5b、後側に湾曲した後側面5aを有する、座板2の両側に前後方向に延びる細長板状の脚部4を設けた座椅子1が示されており、図2には、座椅子1が水平面5bで支持された正位置の静止状態が、図3,4には、それぞれ、座椅子1が湾曲した後側面5aで支持され、背もたれ3にかけた体重のバランスにより、所定の角度傾動している状態が示されている。

記載事項(1)によると、引用文献記載の座椅子は、着座可能な座板と、座板に所定角度で固定された背もたれとを備えるとともに、座板の両側に前後方向に延びる脚部を設けており、脚部の床面に接する接触面のうち、背もたれ側の後側面、すなわち座板の座面より後方側を、座板が揺動可能になるように上方に立ち上がるよう弧状に湾曲形成したものであるとともに、脚部の床面に接する接触面のうち、該後側面より前側、すなわち背もたれの前面側の座面に対応する部分に、水平面を備える構成としたものである。記載事項(3)、(4)には、これに対応する構成が記載されている。
記載事項(2)によると、背もたれに体重をかけて、この座椅子を後に傾動させた場合、脚部の床面に接する接触面のうち後側面が弧状に湾曲形成されているので、背もたれにかけた体重のバランスにより、座椅子は、適宜の角度位置に略静止させられるものであることが認められるから、この場合、後側面は使用者が背もたれに体重をかけたときの重心点の範囲内にあるといえる。

上記(1)〜(4)の記載、及び(5)の図示事項からすると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「座板の座面より後方側に、座面に対応する水平面に続けて上方に立ち上がるよう弧状に湾曲形成した後側面を設け、当該後側面の位置を使用者が背もたれに体重をかけたときの重心点の範囲内にあるようにした座椅子の脚部構成。」

III.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明における「座板の座面」は本願発明における「座椅子座部」に相当する。また、引用発明の脚部の「後側面」は、座面に対応する水平面に続けて、後方側に上方に立ち上がるよう弧状に湾曲形成されているので、座面の後方延長方向に設けられていると言えるから、本願発明の「屈曲部」に相当する。また、引用発明の「座椅子の脚部構成」は、座椅子の床に接する部分の構造に係るものであるので、本願発明の「座椅子の底部構造」に対応する。

そこで、両者は次の点で一致し、次の相違点で相違する。
(一致点)
「座椅子座部の後方延長方向に、上向きの屈曲部を設け、当該屈曲部の位置を使用者が背もたれ部に寄りかかったときの重心点の範囲内とした座椅子の底部構造。」
(相違点)
本願発明が屈曲部に連続する平坦部を設けているのに対して、引用発明は、そのような平坦部を設けていない点。

IV.判断
上記相違点について検討する。
引用文献には、「脚部の床面に接する接触面のうち、後側面より前側に水平面を備えた場合には、座板及び背もたれをぐらつくことなく正位置に静止させることができる。」(記載事項(2)参照)と記載されているが、椅子を側面から見て前後2点で床上に支持した場合、重心がその2点間にあるあいだ、椅子が揺動せず静止安定することは物理的に自明のことであり、このことは、該2点間を直線で結んだ平面状の接地部を持つものにおいても同様に言えることである。
そして、前後方向に傾動可能な椅子において、椅子を、所望の角度傾いた姿勢で静止安定させる目的で、該角度において、椅子を床面に2点もしくは、上記直線支持させるように接地部を構成する技術は、例えば、実願昭47-68220号(実開昭49-27507号)のマイクロフィルム、実願昭59-6473号(実開昭60-120646号)のマイクロフィルム、特開平7-23833号公報、実願昭60-71724号(実開昭61-188735号)のマイクロフィルム等に示すように周知である。
そこで、引用発明において、座椅子を後方に傾動させるとき、所定の角度で静止安定させる目的で、屈曲部に続けて平面状の接地部分を設け、相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

V.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-09 
結審通知日 2006-05-16 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願平11-160597
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 和泉 等
一色 貞好
発明の名称 座椅子の底部構造並びにこれを用いた座椅子  
代理人 小野 信夫  

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