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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B27K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27K |
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管理番号 | 1140239 |
審判番号 | 不服2004-4518 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-10-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-04 |
確定日 | 2006-07-19 |
事件の表示 | 特願2002- 25591「防腐防蟻剤により建材を処理する処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月23日出願公開、特開2002-307405〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年2月1日(国内優先日:平成13年2月6日)の出願であって、平成16年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月2日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年4月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年4月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。 「【請求項1】 木タールと木酢液の混合物を有効成分とし、これにより建材を処理するようにした防腐防蟻剤を用い、建材を注入処理管内に挿入・設置し、前記管内を減圧しその後、前記木タールと木酢液の混合物を建材に対して加圧注入処理するようにしたことを特徴とする防腐防蟻剤により建材を処理する処理方法。」 ところで、本願明細書【0005】〜【0007】【0015】によれば、木材を乾留して得られる抽出成分は、木タール、木タールオイル、木酢液、木クレオソートおよびそれらの混合物であるが、上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「有効成分」に関して、「木材を乾留して得られる抽出成分(木タール、木タールオイル、木酢液、木クレオソートおよびそれらの混合物)」を「木タールと木酢液の混合物」に限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭58-1508号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(イ)ないし(ヘ)の事項が記載されている。 (イ)「木材に木酢液を含浸せしめた後、燻材処理を施すことを特徴とする木材の処理方法。」(特許請求の範囲) (ロ)「・・・本発明は、木材に木酢液を含浸させた後、燻材処理を施すことを特徴とするものであり、木材の在来の性質に、有効な防腐、防黴、防虫、防水、防湿性等を附与し、更に調色、調臭、軽量化などにより、各種の構造材、器具材、工芸用材、その他の加工材として優れた特性を与え、更にこれを燃料、ガス化原料材として用いる場合は、その貯蔵性、取扱性に優れ、水分含有量の少ないことから発熱量の向上等優れた特徴を有する高品質化した木材を提供することにある。・・・」(第1頁左下欄8行〜20行目) (ハ)「木酢液は木材の熱分解の際生成される水溶性成分で、表1、表2、表3に示す如く、ph2〜3その主成分は酢液約3%、メタノール約1%、溶解タール約2〜3%を含み、溶解タールの主成分はフェノール、グアヤコール、エチルグアヤコール、ジメチルコール等で、その他数10種類に及ぶ有機酸成分を含んでいる。」(第1頁右下欄10行〜16行目) (ニ)「このような木酢液は腐朽菌の生育を阻害する性質があって木材に塗布、含浸すると防腐効果があるが、木酢液の含浸処理のみでは、水溶性のために、野外に放置すると降雨の際等に溶脱され、その腐朽効果等を激減する。・・・」(第2頁左下欄1行〜5行目) (ホ)「本発明において、木酢液(本発明では木タールを含む)処理は、木材、竹材等をそのまま或は製材後、塗布、浸漬、更に加圧装置、減圧装置を用いる方法等適宜の方法、装置を用いて行うものである。・・・」(第2頁左下欄下1行〜右上欄4行目) (ヘ)「木酢液の木材への浸透は、例えば杉材にph3、比重1.080の木酢液を15℃で5〜10秒の瞬間浸漬のみで小口面で13mm、板目面で3mm、平均5〜6mm良好に浸透し、1分以上の浸漬で更に多く浸透する。木タールは分子が大きいのでやや浸透しにくいが、用材の使用目的に応じて適宜の手段により浸透量を調整してもよい。・・・」(第2頁右下欄13行〜19行目) これらの記載から、引用例には、「木材に有効な防腐、・・・防虫・・・等を附与するために、木酢液(木タールを含む)を含浸せしめた後、木材に対して加圧装置を用いて、燻材処理を施す木材の処理方法」の発明が記載されていると認められる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例記載の発明とを比較すると、引用例記載の発明の「木酢液(木タールを含む)」、「木材」、「有効な防腐、・・・防虫・・・等を附与するために」、「加圧装置を用いて、燻材処理を施す」は、本願補正発明の「木タールと木酢液の混合物」、「建材」、「防腐防蟻剤を用い」、「加圧注入処理するようにした」に相当する。 また、引用例記載の発明も、加圧装置を用いて木材の処理行う際に当然行われる事として、木材を注入処理管内に挿入・設置しておくものと認められる。よって、両者は、 「木タールと木酢液の混合物を有効成分とし、これにより建材を処理するようにした防腐防蟻剤を用い、建材を注入処理管内に挿入・設置し、前記木タールと木酢液の混合物を建材に対して加圧注入処理するようにした防腐防蟻剤により建材を処理する処理方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。 〈相違点〉 加圧注入処理に際して、本願補正発明では、管内を減圧しその後、木タールと木酢液の混合物を建材に対して加圧注入処理するようにしたものであるのに対し、引用例記載の発明では、加圧注入に先立って減圧する方法であるのかどうか明瞭ではない点。 (4)判断 〈相違点について〉 管内を減圧しその後、処理液を建材に対して加圧注入処理するようにしたものは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特公平1-35721号公報、特公平3-56523号公報、特公昭58-44442号公報に見られるように、周知の事項である。したがって、本願補正発明の相違点に係る構成とすることは、引用例記載の発明に周知事項を適用することにより、当業者ならば容易に成し得るものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例記載の発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下するべきものである。 3.本願発明について 平成16年4月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年1月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 木材を乾留して得られる抽出成分を有効成分とし、これにより建材を処理するようにした防腐防蟻剤を用い、建材を注入処理管内に挿入・設置し、前記管内を減圧しその後、前記抽出成分を建材に対して加圧注入処理するようにしたことを特徴とする防腐防蟻剤により建材を処理する処理方法。」 (【請求項2】は省略) (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、本願補正発明から「有効成分」に関して、「木タールと木酢液の混合物」を上位概念化し、「木材を乾留して得られる抽出成分」としたものである。 そうすると、本願発明の下位概念化したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-05-23 |
結審通知日 | 2006-05-24 |
審決日 | 2006-06-07 |
出願番号 | 特願2002-25591(P2002-25591) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B27K)
P 1 8・ 575- Z (B27K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂田 誠 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
小山 清二 宮川 哲伸 |
発明の名称 | 防腐防蟻剤により建材を処理する処理方法 |
代理人 | 辻本 一義 |
代理人 | 辻本 一義 |