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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1140275 |
審判番号 | 不服2003-14546 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-10-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-29 |
確定日 | 2006-07-20 |
事件の表示 | 特願2000- 79203「開放マグネット型MRI装置用の患者位置決め方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月17日出願公開、特開2000-287952〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成12年3月22日(パリ条約による優先権主張1999年3月23日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という)。 「患者の医用撮像に用いるための患者位置決め装置であって、 開放マグネット型MRI装置を形成する上部マグネットと、下部マグネットを含み、患者を載置するための移動可能であり、前記患者と平行な方向と前記患者と垂直な方向に移動可能である寝台を収容する医用撮像用のハウジングと、 前記ハウジングの上部に設置され、前記ハウジングの内部より、前記ハウジング内の移動可能な寝台上の患者に向けて内部光ビームを放出して、患者の所望のスキャン・エリアの医用撮像のために所望のスキャン・エリアをスキャン領域内に位置合わせするための内部位置合わせ用光源と、 を備える患者位置決め装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成4年4月7日に公開された特開平4-105642号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (2-1)「撮影空間を挟み上下方向に対向して設けられ、撮影空間内に磁場を形成する一対の永久磁石と、永久磁石を保持する磁石架台と、磁場内に被検体を挿入する寝台とを備えた磁気共鳴画像診断装置において、磁場の水平方向および垂直方向の少なくとも一方向の中心位置を、被検体表面に照射した位置表示光で表示する位置決め用投光器を磁石架台内部に設けたことを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。」(第1頁、特許請求の範囲) (2-2)「磁場を形成する磁石として永久磁石を使用したMRI装置として、例えば第5図および第6図に示すような開放型の装置が病院等に設置されている。 このMRI装置は、撮影空間1を挟み上下方向に対向して設けられた一対の永久磁石2a、2bと、この永久磁石2a、2bを保持する磁石架台3と、永久磁石2a、2bによって撮影空間1に形成された磁場内に被検体4を挿入する寝台5とを備えて構成される。 また磁石架台3は上部磁気回路板6aおよび下部磁気回路板6bを4本の支柱7によって支持して構成される。・・・。 一方寝台5の上面には、被検体4を載置し磁石架台3方向にスライド自在に移動する天板9が設けられている。また磁石架台3の外部で寝台5側の頂部には、被検体4の磁石架台3に対する相対位置を表示するための位置決め表示ランプ10が装備される。」(第1頁右下欄第12行〜第2頁左上欄14行) (2-3)「ところでMRI装置において鮮明で高精度の画像を得るためには、磁力線の強度のばらつきが少なく均一な磁場が形成された磁場中心にスキャン対象部位を設定することが極めて重要である。」(第2頁右上欄第3〜6行) (2-4)「上記構成に係る磁気共鳴画像診断装置によれば、位置決め用投光器から照射された位置表示光が被検体表面に表示されるのでオペレータは被検体のスキャン対象部位を位置表示光に一致させるべく被検体の姿勢位置を僅かに修正するだけで、スキャン対象位置を磁場中心に迅速に設定することができる。 すなわち、オペレータが磁場中心を位置表示光によって目視することができ、スキャン対象部位の位置決めを迅速に行なうことが可能であり、・・・、被検体の位置決め等に伴うオペレータの作業負荷を大幅に軽減することができる。」(第2頁右下欄第4〜17行) (2-5)「すなわち本実施例に係る磁気共鳴画像診断装置は、撮影空間1を挟み上下方向に対向して設けられ、撮影空間1内に磁場を形成する一対の永久磁石2a、2bと、永久磁石2a、2bと保持する磁石架台3と、磁場内に被検体4を挿入する寝台5とを備えた磁気共鳴画像診断装置において、磁場の水平方向および垂直方向の中心位置Ch、Cvを、被検体4表面に照射した十字状の位置表示光12h、12vで表示する位置決め用投光器13h、13vをそれぞれ磁石架台内部に設けて構成される。」(第3頁左上欄第8〜18行) (2-6)「また第2図に示すように磁場の水平方向の中心を表示する位置決め用投光器13hは、磁石架台3内の整磁板8aの下面中央に取り付ける一方、」(第3頁左上欄第19行〜同頁右上欄第1行) 3.対比 引用例1に示されている診断用医療機器としての核磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)は、上記摘記事項(2-1)、(2-2)に記載されているように、「開放型の装置」であり、永久磁石2a、2bによって均一な磁場を形成するものであって、該永久磁石a、2bは磁石架台3に上下に対向して設けられ、該永久磁石2a、2bが撮影空間1を挟むように配されていて、被検体4を該撮影空間1に挿入するための寝台5が設けられたものである。本願発明と引用例1に記載の発明とを比較すると、本願発明の「上部マグネット」「下部マグネット」「寝台」「ハウジング」はそれぞれ引用例1の「永久磁石2a」「永久磁石2b」「寝台5」「磁石架台3」に相当しているものと認められる。また本願発明の寝台の移動可能な方向である「患者と平行な方向」は引用例1における寝台のスライド方向の「磁石架台3方向」に相当するものと認められる。 本願と引用例1の「MRI装置」において、上記の対応する各構成相互の配置関係は同一であると認められるから、引用例1の「MRI装置」は本願発明の「開放マグネット型MRI装置」に相当するものである。 また、本願発明の「ハウジングの上部に設置された内部位置合わせ用光源」「内部光ビーム」「患者のスキャンエリア」「スキャン領域」は、それぞれ引用例1の「磁石架台3の上部磁気回路板6aの整磁板8aの下面中央に取り付けられた位置決め用投光器13h」「位置表示光12h」「被検体のスキャン対象部位」「磁場中心」に相当するものと認められる。 したがって本願発明と引用例1に記載の発明は、 「患者の医用撮像に用いるための患者位置決め装置であって、 開放マグネット型MRI装置を形成する上部マグネットと、下部マグネットを含み、患者を載置するための移動可能であり、前記患者と平行な方向に移動可能である寝台を収容する医用撮像用のハウジングと、 前記ハウジングの上部に設置され、前記ハウジングの内部より、前記ハウジング内の移動可能な寝台上の患者に向けて内部光ビームを放出して、患者の所望のスキャン・エリアの医用撮像のために所望のスキャン・エリアをスキャン領域内に位置合わせするための内部位置合わせ用光源と、 を備える患者位置決め装置。」 である点で一致するが、以下の点において相違している。 (相違点1)本願発明では、寝台が「患者と平行な方向と前記患者と垂直な方向に移動可能である」であるのに対し、引用例1に記載の発明では寝台は「患者と平行な方向に移動可能である」とされている点。 4.当審の判断 上記相違点1について検討する。MRI装置において患者を載置する移動可能な寝台が、患者と平行な方向のみにしか移動できないと、スキャンの際に患者に不快感を生じさせるという問題は、先の拒絶査定時に例示された特開平2-55042号(以下、「周知例1」とする)の第2頁左下欄第1〜16行にも記載されているように従来から周知な問題点であり、これを解決する手段として、患者と平行な方向(周知例1では患者の体軸方向)のみならず患者と垂直(周知例1では患者の体軸方向と水平に交差する方向な方向)にも寝台を移動可能に構成することも、上記の周知例1に記載されているように、当業者にとって従来から周知な事項に過ぎず、同様の問題点がある引用例1に記載の発明に上記周知の解決手段を採用することは、当業者ならば容易に想到できる程度の事項に過ぎない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-15 |
結審通知日 | 2006-02-21 |
審決日 | 2006-03-09 |
出願番号 | 特願2000-79203(P2000-79203) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右▲高▼ 孝幸 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 櫻井 仁 |
発明の名称 | 開放マグネット型MRI装置用の患者位置決め方法及び装置 |
代理人 | 松本 研一 |
代理人 | 伊藤 信和 |
代理人 | 小倉 博 |