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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1140281
審判番号 不服2003-18292  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-02-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-18 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 特願2000-229504「自動洗髪機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 5日出願公開、特開2002- 34638号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年7月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年6月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「被洗髪者の頭部を仰向けに収容し、収容した頭部に洗浄水を噴射して髪を洗う自動洗髪機であって、
中央に配置された水槽と、
水槽の後ろ下方側に設けられた貯湯タンクと、
貯湯タンクの右側に設けられ、外部から供給される温水を貯湯タンクへ導くための給湯配管設備と、
水槽の左下方側に設けられたドレンパンと、
水槽内に設けられた洗浄水を噴射するためのノズルと、
水槽の下方に設けられ、貯湯用タンクの湯を汲み出してノズルへ与えるポンプおよびバルブ機構と、
水槽の右側に設けられた電気回路部品と、
前記各構成要件を覆って装置の外観形状を構成するキャビネットとを有し、
キャビネットの前面右側の下端部分には、その内側に位置している前記電気回路部品の占有容積が少ないことを利用して、キャビネットの横に立って作業をするオペレータの足先が進入可能に内方へ凹まされた凹欠部が形成されていることを特徴とする自動洗髪機。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-78822号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「この自動洗髪機は、キャビネット1によってその外観形状が形成されており、キャビネット1の上面中央には、頭部を挿入するための入口2が形成されている。入口2の内部には、頭部および髪が収納される後述する水槽が配置されている。」(段落【0009】)
(b)「キャビネット1の右手前のコーナ部には、面取側面13が形成されている。この面取側面13は、美容師等がハンドシャワー8を操作する際に、被洗髪者により近づけ、ハンドシャワー8を操作しやすいように形成されたものである。」(段落【0012】)
(c)「図3において、水槽51の上部には洗髪時に被洗髪者の頭部Hを背面状態で挿入できるように、開口53が形成されており、底面には排水口51aが形成されている。」(段落【0017】)
(d)「水槽51の上方位置には、頭部用ノズルリンク(以下、「上ノズル用リンク」という。)55が設けられており、上ノズル用リンク55は、支点56を中心に矢印A1の角度範囲内で揺動自在にされている。上ノズル用リンク55は、後で詳述するように、頭部Hに沿うように略半円弧状に形成されており、その端部が水槽51の側壁に回動自在に取り付けられている。この上ノズル用リンク55には、複数個のノズル57が頭部H方向へ向けて配列されている。そして、使用時には、ノズル57から噴射される洗浄水により、頭部Hおよび髪HAの根元部分を洗うことができるとともに、洗浄水の噴射により頭皮をマッサージできるようになっている。
また、水槽51には、襟足用ノズルリンク(以下、「下ノズル用リンク」という。)58がA2の角度範囲内で回動自在に設けられている。下ノズル用リンク58には、複数個のノズル59が固着されており、ノズル59から噴射される洗浄水により、A2の角度範囲内で髪HAの根元部および襟足部を洗浄できる仕組みになっている。
さらに、水槽51の相対的に下方位置の前後の内壁には、主として髪HAが長いときに、その先端部分(以下「ロング毛髪部」という)を洗浄するための3つの固定式ノズル60a,60b,60cが配列されている。」(段落【0018】〜【0020】)
(e)「図8は自動洗髪機の水路図である。外部の給水管から供給される水は、ストップバルブ81C、ストレーナ82Cおよび逆止弁83Cを経てミキシングバルブ84に与えられる。また、外部の給湯管から供給される湯は、ストップバルブ81H、ストレーナ82Hおよび逆止弁83Hを経てミキシングバルブ84に与えられる。そして、ミキシングバルブ84において、水と湯が混合され適当な温水にされる。この温水は、貯湯バルブ85が開かれると、ミキシングバルブ84に接続された貯湯管86を介して貯湯タンク87へ供給される。」(段落【0034】)
(f)「貯湯タンク87の上方位置には、水槽51の排水口51aに接続された排水管91に接続するオーバフロー管92が備えられており、タンク87内に貯留限界以上の温水が供給されると、オーバフロー管92によって過供給された温水が排水管91に導かれ、外部に排水される。」(段落【0036】)
(g)「貯湯タンク87の下方位置は、流出管96を介して、インバータ106により仕事量が可変可能とされたポンプ95の吸込側に接続されている。ポンプ95が駆動されると、タンク87に貯留された温水は流出管96を通ってポンプ95に吸い込まれる。ポンプ95の吐出側には、上ノズル用バルブ96Aを介して上ノズル用リンク55が、下ノズル用バルブ96Bを介して下ノズル用リンク58が、ロング用バルブ97を介してロング毛髪用の固定式ノズル60a,60b,60cがそれぞれ独立して接続されている。」(段落【0037】)
(h)「制御回路には、制御中枢としてのマイクロコンピュータ110が備えられていて、このマイクロコンピュータ110に各種スイッチやセンサの信号が与えられ、その信号に基づいてマイクロコンピュータ110から種々の素子や装置へ制御信号が出力される。
具体的には、図2に示す操作パネル7に備えられた各種キーの押圧に応答して、対応するキースイッチ群等111から信号がマイクロコンピュータ110に入力される。」(段落【0043】〜【0044】)
(i)図8には、ストップバルブ81C、ストレーナ82C、逆止弁83C、ストップバルブ81H、ストレーナ82H、逆止弁83H、ミキシングバルブ84、貯湯バルブ85、貯湯管86などからなる給湯配管設備であって、外部から供給される温水を貯湯タンク87へ導くための給湯配管設備が図示されている。
(j)図1には、キャビネット1の上面の右側中央に配置された操作パネル7が図示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、
「被洗髪者の頭部Hを背面状態で挿入し、挿入した頭部Hに洗浄水を噴射して髪を洗う自動洗髪機であって、
中央に配置された水槽51と、
貯湯タンク87と、
外部から供給される温水を貯湯タンク87へ導くための給湯配管設備と、
水槽51内に設けられた洗浄水を噴射するためのノズル57、ノズル59、固定式ノズル60a,60b,60cと、
貯湯タンク87の湯を汲み出してノズル57、ノズル59、固定式ノズル60a,60b,60cへ与えるポンプ95および上ノズル用バルブ96A、下ノズル用バルブ96B、ロング用バルブ97と、
制御回路と、
前記各構成要件を覆って装置の外観形状を構成するキャビネット1とを有し、
キャビネット1の右手前のコーナ部には、キャビネット1の横に立って作業をする美容師等が被洗髪者により近づけるように内方へ凹まされた面取側面13が形成されている自動洗髪機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「頭部Hを背面状態で挿入し」及び「挿入した頭部H」は、それぞれ前者における「頭部を仰向けに収容し」及び「収容した頭部」に相当することは明らかであり、また、後者における「水槽51」が前者における「水槽」に、以下同様に、「貯湯タンク87」が「貯湯タンク、貯湯用タンク」に、「ノズル57、ノズル59、固定式ノズル60a,60b,60c」が「ノズル」に、「ポンプ95」が「ポンプ」に、「上ノズル用バルブ96A、下ノズル用バルブ96B、ロング用バルブ97」が「バルブ機構」に、「制御回路」が「電気回路部品」に、「右手前のコーナ部」が「前面右側」に、「美容師等」が「オペレータ」に、それぞれ相当することも明らかである。
また、後者における「面取側面13」と前者における「凹欠部」とは、どちらも「被洗髪者により近づけるように内方へ凹まされた部分」であるという点で共通する。
してみると、両者は、
「被洗髪者の頭部を仰向けに収容し、収容した頭部に洗浄水を噴射して髪を洗う自動洗髪機であって、
中央に配置された水槽と、
貯湯タンクと、
外部から供給される温水を貯湯タンクへ導くための給湯配管設備と、
水槽内に設けられた洗浄水を噴射するためのノズルと、
貯湯用タンクの湯を汲み出してノズルへ与えるポンプおよびバルブ機構と、
電気回路部品と、
前記各構成要件を覆って装置の外観形状を構成するキャビネットとを有し、
キャビネットの前面右側には、キャビネットの横に立って作業をするオペレータが被洗髪者により近づけるように内方へ凹まされた部分が形成されている自動洗髪機。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本願発明は、「水槽の左下方側に設けられたドレンパン」を有しているのに対して、引用発明は、ドレンパンを有していない点。
相違点2:本願発明においては、「貯湯タンク」が「水槽の後ろ下方側に設けられ」、「給湯配管設備」が「貯湯タンクの右側に設けられ」、「ポンプおよびバルブ機構」が「水槽の下方に設けられ」、「電気回路部品」が「水槽の右側に設けられ」ているのに対して、引用発明においては、それらの配置が明確にされたいない点。
相違点3:キャビネットの横に立って作業をするオペレータが被洗髪者により近づけるように内方へ凹まされた部分が、本願発明においては、「キャビネットの前面右側の下端部分」に形成した「オペレータの足先が進入可能」な「凹欠部」であるのに対して、引用発明においては、キャビネットの右手前のコーナ部に形成された面取側面である点。
相違点4:キャビネットの横に立って作業をするオペレータが被洗髪者により近づけるように内方へ凹まされた部分が、本願発明においては、キャビネットの内側に位置している電気回路部品の占有容積が少ないことを利用して形成されているのに対して、引用発明においては、その点が明確にされていない点。

4.当審の判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
自動洗髪機においては、一般に、貯水タンクに温水が過剰に供給されたときに、これを外部に排水するように構成されており、具体的には、引用例に記載された自動洗髪機のように、貯水タンクに接続された排水管を介して外部に排水するように構成されているもの(前記「2.(f)」を参照)や、あるいは、貯水タンクから溢水する温水をドレンパンで受けて排水するように構成したもの(例えば、特開平7-39418号公報の図2における「水槽2の左下方側に設けられたドレンパン130」を参照)などがあり、これらの排水構造は従来周知であったということができる。
そうすると、引用発明において、過剰供給された温水の排水に関して上記周知のドレンパンを採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることであるということができ、その際に、ドレンパンをキャビネット内のどこに配置するかは、他の構成部品との関連性やキャビネット内のスペースなどを考慮して、当業者が適宜決定し得ることであり、当業者にとって設計的事項にすぎないというべきである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到できたものであるといえる。
(2)相違点2について
貯湯タンク、給湯配管設備、ポンプ、バルブ機構などを本願発明と同様の配置とすることは、例えば、前掲特開平7-39418号公報などに見られるように、従来から既に知られていたことである。
また、引用発明においては、前記「2.(j)」に摘記したように、操作パネル7がキャビネット1の上面の右側中央に配置されていること、及び、一般に電気回路部品は操作パネルに近接して設けるのが普通であることを考慮すると、引用発明において、電気回路部品を操作パネル7の下方位置に操作パネル7に近接して設けること、即ち電気回路部品を水槽の右側に設けることは、当業者にとってむしろ自然な選択であるといえる。
しかも、キャビネット内に構成部品をどのように配置するかは、各構成部品の重量や大きさ、他の構成部品との関連性、キャビネット内のスペースなどを考慮して、当業者が適宜決定し得ることであるから、上記相違点2に係る本願発明の構成は、当業者にとって単なる設計的事項にすぎないというべきである。
(3)相違点3について
引用発明は、キャビネットの横に立って作業をするオペレータが被洗髪者により近づけるようにしたものであり、そのために、オペレータの立つ位置に対応させて、キャビネットの前面右側に面取側面13を形成したものである。
ところで、キャビネットにより近づいて作業が行えるようにするために、キャビネットの下端部分に、オペレータの足先が進入可能な凹欠部を形成することは、実公昭37-17048号公報、特開昭64-52927号公報などに見られるように、従来周知であったということができる。
そうすると、引用発明において、被洗髪者にさらに近づけるようにするために、上記周知技術に倣って、キャビネットの前面右側の下端部分にオペレータの足先が進入可能な凹欠部を形成することは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の構成も、当業者が容易に想到できたものであるということができる。
(4)相違点4について
引用発明において、キャビネットの前面右側に形成された面取側面13は、その内側に位置している部品が何であるかはともかくとして、少なくともその部品の占有容積が少ないことを利用した結果として、形成されたものであることは明らかである。
また、引用発明においては、操作パネル7がキャビネット1の上面の右側中央に配置されているところからみて、水槽の右側に電気回路部品が設けられていると考えるのが自然であることは、上記「(2)相違点2について」で検討したとおりである。
そうすると、上記相違点4に係る本願発明の構成も、当業者が容易に想到できたものであるということができる。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-05 
出願番号 特願2000-229504(P2000-229504)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子金丸 治之  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 増沢 誠一
川本 真裕
発明の名称 自動洗髪機  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  
代理人 川崎 実夫  

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