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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62B
管理番号 1140288
審判番号 不服2003-21008  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 平成10年特許願第244257号「筒状部材の回転構造および筒状部材の回転構造を有する物品収納具」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月7日出願公開、特開2000-71994〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年8月31日の出願であって、本願の請求項1〜7に係る発明は、平成16年3月29日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明は次のとおりのもの(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。)と認める。
「【請求項2】筒状部材が他の部材に外嵌され、
上記筒状部材と他の部材とは相対的に軸心周りに回転可能に構成され、
上記筒状部材と他の部材との間に、滑り用の筒状の中間部材がはめ込まれ、
上記中間部材の上下少なくともいずれか一端に、筒状部材の端部に係合する鍔部が形成され、
中間部材は、弾性作用によって筒状部材の内周面または他の部材の外周面のいずれか一方に密着するとともに、他方との間に隙間を形成していることを特徴とする筒状部材の回転構造。」

2.引用刊行物およびその記載事項
これに対して、前置審査における平成16年1月23日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平8-135669号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「合成樹脂製ブッシュを用いた軸受、その軸受を備えたホッパ、そのホッパを備えた組合せ計量装置、及び合成樹脂製ブッシュを用いた軸受の製造方法」に関して、図1〜15とともに次のような記載がある(下線は当審で付加)。
A)「【0039】・・・ゲート21は、閉状態でホッパ本体20の下端の開口部内に入り込むプレート部材21aと、該プレート部材21aの下面に貼り付けられて該プレート部材21aを補強するフレーム部材21bとで構成されていると共に、図4に拡大して示すように、このフレーム部材21bの上部はコ字状に屈曲されて、その両側の屈曲片21b′,21b′がホッパ本体20側に揺動自在に連結されており、また、一方の屈曲片21b′には上記リンク機構23の第2リンク23bが連結されている。
【0040】・・・上記フレーム部材21bの屈曲片21b′,21b′におけるゲート21の揺動中心部には、合成樹脂製ブッシュを用いた軸受30,30が構成されており、次に、この軸受30の構造を説明する。
【0041】図5に示すように、この軸受30は、ホッパ本体20側において、該ホッパ本体20の側面に貼り付けられたフレーム部材22にナット部材31を溶接によって固着する一方、ゲート21側のフレーム部材21b(屈曲片21b′)には合成樹脂製ブッシュ32を取り付けて、該ブッシュ32にカラー33を挿入すると共に、このカラー33に挿通したボルト34の先端部を上記ナット部材31に締め込んだ構成とされている。」
B)「【0042】・・・上記ゲート21側のフレーム部材21bへの合成樹脂製ブッシュ32の取り付けは、図6〜図8に示すように行われる。
【0043】まず、図6に示すように、フレーム部材21bに下穴35を穿設すると共に、該フレーム部材21bにおける上記下穴35の周囲の部分をバーリング加工によって一方の面側に折曲させることにより、図7に示すような筒状部36を突設する。その場合に、このバーリング加工によれば、フレーム部材21bにおける筒状部36の反突出側の面から該筒状部36の内周面36aへの折曲部に角アール部yが形成されると共に、該筒状部36の内周面36aは先端側ほどやや径が小さくなるテーパー状に形成される。
【0044】そして、この筒状部36内に、一端にフランジ部32aを有する合成樹脂製ブッシュ32を、反フランジ部側の端部を先頭としてフレーム部材21bの上記角アール部yが形成されている方の面から圧入するのであるが、その場合に、上記角アール部yによりブッシュ32が円滑に筒状部36内に導入されると共に、該筒状部36のテーパー状の内周面36aにより次第に縮径されて強固に圧入されることになる。
【0045】また、この合成樹脂製ブッシュ32の軸方向寸法は筒状部36の軸方向寸法より十分長くされており、したがって、図8に示すように、フランジ部32aが上記角アール部yに当接するまで圧入されたときに、反フランジ部側の端部32bが筒状部36の先端から突出することになるが、この突出した部分32bは、符号zで示すように、自らの弾力性によって縮径された状態から当初の状態に拡径することになる。そのため、該ブッシュ32はこの拡径下端部32bと上記フランジ部32aとで、筒状部36に対して軸方向の両側に抜け止めされた状態となり、上記テーパー面による強固な圧入と相まって、フレーム部材21bに確実に固着されるのである。
【0046】そして、このようにしてゲート21側のフレーム部材21bに取り付けられた合成樹脂製ブッシュ32内にカラー33が挿入されると共に、このカラー33内にボルト34が挿通されて、その先端部が上記ホッパ本体20側のナット部材31に締め込まれるのであるが、その場合に、図5に示すように、上記カラー33はブッシュ32より若干寸法が長く、したがって、ボルト34の締め付けによりカラー33が該ボルト34の頭部とナット部材31との間に挟み付けられて、ホッパ本体20側に確実に固定されることになる。
【0047】また、合成樹脂製ブッシュ32は、上記のようにゲート21側のフレーム部材21bに強固に固定されると共に、上記ボルト34によって軸方向に締め付けられることがないから、該フレーム部材21bないしゲート21と共に、上記カラー33との嵌合面を摺動面として自由に回動可能となるのである。」
C)「【0053】・・・図12に示すように、計量ホッパ17の軸受50においても、筒状部56に圧入固定された合成樹脂製ブッシュ52にカラー53が挿入されていると共に、このカラー53に挿通されたボルト54の先端部が、ホッパ本体40側のフレーム部材421,422に個着されたナット部材51,51に締め込まれている。
・・・
【0055】また、上記ブッシュ52の筒状部56の先端より突出した端部52bが拡径することにより、該ブッシュ52がその端部52bと反対側のフランジ部52aとによって筒状部56に対して軸方向の両側に抜け止めされることになる。」

上記A)〜C)の記載と、併せて図5〜図8,図12を参照すれば、上記刊行物1の図5〜図8における「合成樹脂製ブッシュを用いた軸受」は、フレーム部材21bに形成した筒状部36が、ボルト34が挿通されたカラー33に外嵌されるとともに、上記筒状部36とカラー33とが相対的にボルト34の軸心周りに回転可能に構成された、筒状部36の回転構造であるものと認められ、上記筒状部36とカラー33との間には、合成樹脂製ブッシュ32がはめ込まれ、上記合成樹脂製ブッシュ32の上端に、筒状部36の端部である角アール部yに係合するフランジ部32aが形成されるとともに、合成樹脂製ブッシュ32は、弾性作用(自らの弾力性)によって筒状部36の内周面に密着しているものと認められる(なお、図12の実施例においては、合成樹脂製ブッシュ52の下端に、筒状部56の端部に係合するフランジ部52aが形成されている。)。また、上記合成樹脂製ブッシュ32が、カラー33との嵌合面を摺動面として自由に回動可能であることからみて、合成樹脂製ブッシュ32は、滑り用の筒状部材であるものと認められる。
したがって、上記刊行物1には、
「筒状部がカラーに外嵌され、
上記筒状部とカラーとは相対的に軸心周りに回転可能に構成され、
上記筒状部とカラーとの間に、滑り用の筒状の合成樹脂製ブッシュがはめ込まれ、
上記合成樹脂製ブッシュの上下いずれか一端に、筒状部の端部に係合するフランジ部32aが形成され、
合成樹脂製ブッシュは、弾性作用によって筒状部の内周面に密着している筒状部の回転構造。」の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願発明と上記刊行物1の発明との対比
本願発明と上記刊行物1の発明とを対比すれば、上記刊行物1の発明の「筒状部」は本願発明の「筒状部材」に対応し、以下同様に「カラー」は「他の部材」に、「合成樹脂製ブッシュ」は「中間部材」に、「フランジ部32a」は「鍔部」に、それぞれ対応している。
したがって、本願発明と上記刊行物1の発明は、
「筒状部材が他の部材に外嵌され、
上記筒状部材と他の部材とは相対的に軸心周りに回転可能に構成され、
上記筒状部材と他の部材との間に、滑り用の筒状の中間部材がはめ込まれ、
上記中間部材の上下いずれか一端に、筒状部材の端部に係合する鍔部が形成され、
中間部材は、弾性作用によって筒状部材の内周面に密着している筒状部材の回転構造。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
本願発明では、中間部材が、弾性作用によって筒状部材の内周面または他の部材の外周面のいずれか一方に密着するとともに、他方との間に隙間を形成しているのに対し、上記刊行物1の発明では、中間部材である合成樹脂製ブッシュが、筒状部材である筒状部の内周面に密着してはいるものの、他方の部材であるカラーとの間に隙間を形成しているか否かは明らかでない点。

4.相違点の検討
刊行物1の発明のように、相対的に軸心周りに回転可能に構成された二部材間にブッシュ状の中間部材がはめ込まれた回転構造において、中間部材と、該中間部材に対して相対回転する部材との間に、回転を円滑に行わせるための隙間を形成しておくことは周知技術(例えば特開平3-161813号公報の第2頁左上欄12〜18行の記載を参照。)である。
してみれば、刊行物1の発明において、中間部材である合成樹脂製ブッシュと、他方の部材であるカラーとの間に隙間を形成することは、刊行物1の発明に上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に行い得たものである。
(なお、本願発明の構成要件ではないが、中間部材に滑り用と制振用の2つの機能を持たせることも、例えば特開昭61-122044号公報にみられるように従来周知技術である。)

そして、本願発明が奏する作用効果は、上記刊行物1の発明と上記周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。

5.むすび
以上詳述したとおり、本願の請求項2に係る発明は、上記刊行物1の発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項1、3〜7に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-05 
出願番号 特願平10-244257
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒瀬 雅一柳田 利夫  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 ぬで島 慎二
永安 真
発明の名称 筒状部材の回転構造および筒状部材の回転構造を有する物品収納具  
代理人 森本 義弘  
代理人 板垣 孝夫  

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