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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1140295
審判番号 不服2003-24020  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-11 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 平成 9年特許願第132081号「リフロー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 4日出願公開、特開平10-322014〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成9年5月22日の出願であって、平成15年10月31日付けで拒絶査定がなされ(発送11月11日)、これに対し、同年12月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月24日に手続補正がなされたものである。

第2.平成15年12月24日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成15年12月24日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成15年12月24日付け手続補正(以下、「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】加熱室を仕切壁により複数のゾーンに分割し、コンベヤにより基板を各ゾーンを搬送しながら各ゾーンに設けられた加熱手段により基板を加熱することにより、基板に搭載された電子部品を半田付けするようにしたリフロー装置であって、各ゾーンに基板の温度を測定する放射温度計と、この放射温度計を回転させるアクチュエータとをそれぞれ設け、また前記各ゾーンに入ってくる基板を検出することにより前記放射温度計による基板の温度測定開始タイミングを決定するセンサを設け、各ゾーンにおける基板の搬送に追随して各放射温度計を回転させることにより、各ゾーンにおける基板の温度を連続的に測定するようにしたことを特徴とするリフロー装置。」

本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「各ゾーンにおける基板の搬送に追随して各放射温度計を回転させることにより、各ゾーンにおける基板の温度を連続的に測定する」ために必要な「前記各ゾーンに入ってくる基板を検出することにより前記放射温度計による基板の温度測定開始タイミングを決定するセンサを設け」との限定を付加するもので、本件補正に係る事項は、新規事項を含むものでなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることが出来るものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由において引用された本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平3-94130号公報(以下、「引用文献1」)というにはリフロー装置に関し図面とともに、以下の事項が記載されている。
(あ)「そこで本発明は、加熱室内を搬送される基板の温度を簡単正確に測定できる手段を備えたリフロー装置を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第12行〜第14行)
(い)「ヒータ及びファンが配設された加熱室内をコンベヤにより基板を搬送しながら、この基板に塗布されたペースト状半田を加熱処理するようにしたリフロー装置において、上記加熱室の上方に、基板の温度を測定する放射温度計と、この放射温度計を基板と同速で搬送する搬送手段を設けるとともに、この加熱室に搬入される基板を検出して、上記搬送手段の作動を開始させる基板検出センサーを設たものである。」(第2頁左上欄第16行〜右上欄第5行)
(う)「モータ15が駆動すると、摺動子10は送りねじ6に沿ってコンベヤ2により搬送される基板Sと同速で摺動し、放射温度計12は基板Sの温度を測定するものであり、送りねじ6、摺動子10、送りナット11、モータ15は、放射温度計12の搬送手段を構成している。なお上記ヒータHやファンFは、放射温度計12の視野の障害にならないように、基板Sの上部側方に配設されている。
16は加熱室4の入口部に設けられた基板検出センサーであり、このセンサー16が基板Sを検出すると、上記モータ15は駆動を開始する。」(第2頁左下欄第12行〜右下欄第5行)
また、図示はされていないが、第2図、第5図の記載及び技術常識からみて、引用文献1記載のリフロー装置においても、加熱室内は仕切壁により複数のゾーンに分割されているものと認められる。

以上を総合すると、引用文献1には、「加熱室4を仕切壁により複数のゾーンに分割し、コンベヤ2により基板Sを各ゾーンを搬送しながら各ゾーンに設けられたヒータHにより基板Sを加熱することにより、基板Sに搭載された電子部品を半田付けするようにしたリフロー装置であって、基板Sの温度を測定する放射温度計12と、この放射温度計12を搬送する搬送手段とを設け、また前記加熱室4に入ってくる基板Sを検出することにより前記放射温度計12による基板Sの温度測定開始タイミングを決定する基板検出センサー16を設け、各ゾーンにおける基板Sの搬送に追随して放射温度計12を搬送することにより、各ゾーンにおける基板Sの温度を連続的に測定するリフロー装置」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶理由において引用された特開昭64-6835号公報(以下、「引用文献2」という)には、第1図とともに、以下の記載がある。
(え)「被測定体の表面温度を非接触で測定する温度センサを備えた温度測定システムにおいて、この温度センサに、当該温度センサを一点を中心として扇状に可動させる首振機構を連結装備したことを特徴とする温度測定システム」(特許請求の範囲)
(お)「複数個所のケーブルの表面温度を効率良く連続的に測定することができる実用的な温度測定システムを提供する」(第1頁右欄第13行〜第15行))
(か)「第1図に示す温度測定システムは、被測定体としてのケーブル1の表面温度を非接触にて測定する温度センサ2とこの温度センサ2を図中左右方向に首振り可動させる首振機構としての可動手段3とこの可動手段3の動作を制御する制御部4とにより構成されている。
前記温度センサ2は本実施例では、赤外線放射温度センサからなり、可動手段2は、例えばモータ等により構成されている。」(第2頁左上欄第6行〜第14行)

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比するに、引用発明の「ヒータ」、「基板検出センサー」は、本願補正発明の「加熱手段」、「センサ」に相当する。
また、引用発明の「放射温度計12を搬送する搬送手段」は、放射温度計を可動とする手段の点で、本願補正発明の「放射温度計を回転させるアクチュエータ」と共通するものである。
したがって、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおり認定できる。
[一致点]
加熱室を仕切壁により複数のゾーンに分割し、コンベヤにより基板を各ゾーンを搬送しながら各ゾーンに設けられた加熱手段により基板を加熱することにより、基板に搭載された電子部品を半田付けするようにしたリフロー装置であって、基板の温度を測定する放射温度計と、この放射温度計を可動とする手段とを設け、また前記放射温度計による基板の温度測定開始タイミングを決定するセンサを設け、各ゾーンにおける基板の搬送に追随して放射温度計を可動させることにより、各ゾーンにおける基板の温度を連続的に測定するようにしたリフロー装置。
[相違点1]
放射温度計の可動手段の構成が、本願補正発明では回転移動させるアクチュエータであるのに対し、引用発明ではコンベアに平行に直線移動させる搬送手段である点
[相違点2]
本願補正発明が放射温度計及びアクチュエータ並びにセンサを各ゾーン毎に設けるとともに、温度測定タイミングを各ゾーンに入ってくる基板を検出することにより決定しているのに対し、引用発明では放射温度計12、搬送手段及び基板検出センサ16が各ゾーンに設けられておらず、温度測定開始タイミングを加熱室4に入ってくる基板Sを検出することにより決定している点

4.当審の判断
以下、各相違点につき検討する。
[相違点1]
温度測定の技術分野で、ワークの温度を非接触で連続的に測定するために放射温度計を回転型(首振り型)とし、モータ等のアクチュエータで駆動することは、引用文献2に記載された本願出願前、公知の技術手段であり、かかる技術手段を引用発明に適用することに格別な困難性は認められない。
[相違点2]
仕切壁等が邪魔になって、加熱室任意位置の基板の温度測定ができない場合、個別のゾーン毎に放射温度計を設置することは、周知の技術手段であり(例えば、特開平1-124727号公報第3図参照)、放射温度計及びアクチュエータを各ゾーン毎に設けることは、前記周知の技術手段に倣って、当業者が容易に想到し得た事項である。また、引用発明において基板検出センサーが、加熱室の入口部のみに設けられている理由は、放射温度計と基板の同速直線移動が保証されているからであり、かかる条件が満たされない場合、基板の搬送に追随して温度測定をするために「前記放射温度計による基板の温度測定開始タイミングを決定するセンサ」を入口部のみならず各ゾーン毎に設けることは、当業者が、当然なすべき設計事項である。
そして、本願補正発明により得られる効果も、引用文献1,2記載の発明並びに周知の技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用文献1,2に記載された発明並びに周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年12月24日付け手続補正は上記のとおり却下されたので 、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】加熱室を仕切壁により複数のゾーンに分割し、コンベヤにより基板を各ゾーンを搬送しながら各ゾーンに設けられた加熱手段により基板を加熱することにより、基板に搭載された電子部品を半田付けするようにしたリフロー装置であって、各ゾーンに基板の温度を測定する放射温度計と、この放射温度計を回転させるアクチュエータとをそれぞれ設け、各ゾーンにおける基板の搬送に追随して各放射温度計を回転させることにより、各ゾーンにおける基板の温度を連続的に測定するようにしたことを特徴とするリフロー装置。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献とその記載事項は、前記の「第2.2」に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から「前記各ゾーンに入ってくる基板を検出することにより前記放射温度計による基板の温度測定開始タイミングを決定するセンサを設け」の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、引用文献1,2記載の発明並びに周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1,2記載の発明並びに周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1,2記載の発明並びに周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-05 
出願番号 特願平9-132081
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 前田 仁
特許庁審判官 鈴木 久雄
平瀬 知明
発明の名称 リフロー装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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