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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01N
管理番号 1140541
審判番号 不服2003-692  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-09 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 平成 9年特許願第362665号「排気ガス浄化用コンバ-タ-の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月29日出願公開、特開平11-173140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 〔1〕手続の経緯及び本願発明
本願は、平成9年12月11日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成18年4月19日に提出された手続補正書によって補正された明細書からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、つぎのとおりである。

『【特許請求の範囲】
【請求項1】 触媒保持体と,前記触媒保持体の外方を覆う金属製シェルとの間に配置するニードルパンチング処理された結晶質アルミナ繊維マットからなる保持シール材によって構成される排気ガス浄化用コンバーターにおいて,
前記結晶質アルミナ繊維マットの組立前の嵩密度が0.1g/cm3以上であり,
前記保持シール材を触媒保持体に巻付けた後,保持シール材の外周を部分的にOPP粘着テープで被覆した後金属製シェル内に組み入れ,
保持シール材の充填密度が0.2g/cm3以上であり,
前記排気ガス浄化用コンバーターの総重量に対する有機分含有量が0.1%以内であることを特徴とする排気ガス浄化用コンバーターの製造方法。』

〔2〕当審の拒絶理由
当審において平成18年2月15日付けで通知した拒絶の理由の概要は、
「1.本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」
というものである。

〔3〕当審の判断
1.(特許法第29条第2項)
(1)引用文献記載の発明
(ア)当審において平成18年2月15日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開平9-317455号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

a.「触媒保持体と、その外方を覆う金属製パイプとの間に配置する結晶質アルミナ繊維マットよりなる排気ガス浄化用コンバーターの組立方法であって、
予め嵌合部を設けた結晶質アルミナ繊維マットの外側を張力下で有機シートを用いて嵩密度が0.10g/cm3以上となるように被覆固定した後、前記有機シートの端部を前記触媒保持体の端面側で固定し、
次に、前記金属製パイプの端部に漏斗状の取り付け治具をセットした後、前記触媒と有機シートを用いて被覆固定された結晶質アルミナ繊維マットを圧入し、圧入した後の結晶質アルミナ繊維マットの充填嵩密度を0.25g/cm3〜0.50g/cm3とする排気ガス浄化用コンバーターの組立方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

b.「取り付け方法としては、例えばテーブル上にまず有機シートを置き、その上の中央部に前記結晶質アルミナ繊維マットを置き、マットの端部に前記触媒保持体を置く。次に、有機シートの端部を前記触媒保持体に粘着テープ等で固定しておき、テーブル上方向に前記触媒保持体を加圧しながら、のり巻きずしを作る要領で前記触媒保持体を回転させて有機シートと結晶質アルミナ繊維マットを巻き付けた後、有機シートの端部を有機シートに粘着テープ等で固定する。」(【発明の詳細な説明】【0012】)

c.「次に、結晶質アルミナ繊維マットの嵩密度は、通常0.06〜0.10 g/cm3であるが、金属製パイプ内への充填後の嵩密度を0.25g/cm3以上とするためには、充填前の状態で前記結晶質アルミナ繊維マットの外側を張力下で拘束し嵩密度を0.10g/cm3以上にしておく必要がある。」(【発明の詳細な説明】【0014】)

d.「【実施例】
実施例1
触媒保持体としてコージェライトモノリス外形130mm、長さ100mm、金属製パイプとして内径138mm、肉厚1.5mm、SUS409、長さ300mm、結晶質アルミナ繊維マットとして厚み20mm、嵩密度0.06g/cm3の結晶質アルミナ繊維(商品名デンカアルセン 電気化学工業株式会社製)、有機シートとして、厚さ50μmのポリエチレンシート、取り付け治具として、厚み0.6mmの金属板を、大径側の内径を160mm、小径側の外径を138mm、高さ50mm、周長が変わるように重ね合わせ部分を30mm設けた漏斗状のものを用いて、排気ガス浄化用コンバーターに断熱シール材を取り付けた。
次に、取り付け方法について説明する。図1に示すように、結晶質アルミナ繊維マット3を幅100mm、両端部に25mmの嵌合部を設けて長さ420mmの寸法にカットしたものを、幅200mm、長さ500mmの寸法にカットした有機シート5の中央部に置く。次に、図2に示すように、前記マット3の端部に前記触媒保持体1を置く。次に、有機シートの端部を前記触媒保持体に粘着テープ4等で固定しておき、テーブル上方向に前記触媒保持体を加圧しながら、のり巻きずしを作る要領で前記触媒保持体を回転させて有機シートと結晶質アルミナ繊維マットを巻き付けた後、有機シートの端部を有機シートに粘着テープ等で固定する。巻き付けた後のマットの嵩密度は0.15g/cm3、厚みは8mmであった。
次に、図3に示すように触媒保持体1と、前記有機シートで巻き付けた結晶質アルミナ繊維マット3がずれないように圧入側の端部を粘着テープ4によって固定する。
次に図5に示す漏斗状の取り付け治具6の小径側を金属製パイプ2にセットし、前記触媒保持体1の外周部に、前記有機シート5で巻き付け固定した結晶質アルミナ繊維マット3を油圧プレスを用いて金属製パイプ2の中央まで圧入する。尚、圧入前に漏斗状の取り付け治具6と金属製パイプ2の内面及び、前記有機シートで巻き付けた結晶質アルミナ繊維マット3の外周部に潤滑油を塗布しておいた。圧入した状態を図7に示す。尚、この時の圧入荷重は、250〓kgfであり、マットの充填密度は0.3g/cm3であった。」(【発明の詳細な説明】【0022】〜【0025】)

したがって、当該引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる

『触媒保持体1と,前記触媒保持体1の外方を覆う金属製パイプ2との間に配置する結晶質アルミナ繊維マット3からなる保持シール材によって構成される排気ガス浄化用コンバーターにおいて,
前記結晶質アルミナ繊維マット3の組立前の嵩密度が0.10g/cm3以上であり,
前記保持シール材を触媒保持体1に巻付けた後,保持シール材の外周を部分的に粘着テープ4で被覆した後金属製パイプ2内に組み入れ,
保持シール材の充填密度が0.25〜0.50g/cm3以上である排気ガス浄化用コンバーターの製造方法。』(以下、この発明を「引用文献1記載の発明」という。)

(イ)当審において平成18年2月15日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開平7-286514号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

a.「単繊維引張強度が150〜400kg/mm2 、直径45μm以上のショットの含有率が5重量%以下、かつAl2 O3 /SiO2 (重量比)=70/30〜74/26であるアルミナ繊維を積層し、かつニードルパンチングによりその繊維の一部を積層面に対して縦方向に配向させてなるブランケットで構成したことを特徴とする排ガス浄化装置用把持材。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

b.「【産業上の利用分野】本発明は内燃機関の排ガス浄化装置に用いる触媒把持材に関するものであり、特にハニカム型触媒を触媒ケーシング内に保持するための把持材に関する。」(【発明の詳細な説明】【0001】)

c.「アルミナ繊維を積層したブランケットは、一般に知られているブランケットの製造法により製造することができ、例えば、オキシ塩化アルミ等のアルミナ源、シリカゾル等のシリカ源、ポリビニルアルコール等の有機バインダー及び水を混合後、紡糸して得られたアルミナ繊維前駆体を積層したシートにニードルパンチングを施した後、1000〜1300℃で焼成することにより得られる。
ニードルパンチングを施すことにより、シート内のアルミナ繊維前駆体の一部がシートを貫通して縦方向に配向してシートを緊縛するため、シートの嵩比重を高めることができ、また、層間の剥離、層間のずれを防止することができる。ニードルパンチングの密度は通常1〜50打/cm2 であり、ニードルパンチングの密度を変化させることにより、ブランケットの嵩比重や強度を調節することができる。(特開昭62-17060号公報参照)
本発明の把持材を用いてハニカム型触媒を触媒ケーシング内に把持するには、例えば、ハニカム型触媒の全周に、把持材を均一な厚さとなるようにきつく巻きつけ、触媒ケーシング内に収容して、把持材の復原力によりケーシング内壁に密着して固定されるようにすればよい。」(【発明の詳細な説明】【0008】〜【0009】)

したがって、当該引用文献2には、次の発明が記載されているものと認められる

『触媒保持体と,前記触媒保持体の外方を覆う触媒ケーシンとの間に配置するニードルパンチング処理された結晶質アルミナ繊維マットからなる保持シール材によって構成される排気ガス浄化用コンバーター及びその製造方法。』

(2)対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明の「触媒保持体1」、「金属製パイプ2」及び「結晶質アルミナ繊維マット3」が、本願発明の「触媒保持体」、「金属製シェル」及び「結晶質アルミナ繊維マット」にそれぞれ相当する。そして、「OPP粘着テープ」は「粘着テープ」の1種であるから、引用文献1記載の発明の「粘着テープ」と本願発明の「OPP粘着テープ」は、「粘着テープ」という限りにおいて、一致する。したがって、両者は、

『触媒保持体と,前記触媒保持体の外方を覆う金属製シェルとの間に配置する結晶質アルミナ繊維マットからなる保持シール材によって構成される排気ガス浄化用コンバーターにおいて,
前記結晶質アルミナ繊維マットの組立前の嵩密度が0.1g/cm3以上であり,
前記保持シール材を触媒保持体に巻付けた後,保持シール材の外周を部分的に粘着テープで被覆した後金属製シェル内に組み入れ,
保持シール材の充填密度が所定範囲にある排気ガス浄化用コンバーター。』
で一致し、次の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明において、「結晶質アルミナ繊維マット」は「ニードルパンチング処理され」ているのに対して、引用文献1記載発明において、「結晶質アルミナ繊維マット3」が「ニードルパンチング処理され」ているか否か不明な点。

〔相違点2〕
本願発明が、「保持シール材の外周を部分的にOPP粘着テープで被覆し」「排気ガス浄化用コンバーターの総重量に対する有機分含有量が0.1%以内である」ようにしたのに対して、引用文献1記載の発明が「保持シール材の外周を部分的に粘着テープ4で被覆し」ているが、「前記排気ガス浄化用コンバーターの総重量に対する有機分含有量が0.1%以内である」か否か不明な点。

〔相違点3〕
「保持シール材の充填密度」を、本願発明は「0.2g/cm3以上」としたのに対して、引用文献1記載の発明が「0.25〜0.50g/cm3」とした点。

(3)判断
〔相違点1〕について
本願発明のような「ニードルパンチング処理された結晶質アルミナ繊維マット結晶質アルミナ繊維マット」は、引用文献2に記載されている。そして、引用文献1記載の発明に、引用文献2に記載されたことを適用することにより、この相違点1に係る本願発明のような構成とする程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。

〔相違点2〕について
本願発明が採用している「OPP粘着テープ」は、「粘着テープ」の1種であり、布テープやクラフトテープ等の他の粘着テープとともに包装などに広く使用されているものである。そして、本願発明は「保持シール材の外周を部分的にOPP粘着テープで被覆し」たことにより、「排気ガス浄化用コンバーターの総重量に対する有機分含有量が0.1%以内」となったものである。ここで、「排気ガス浄化用コンバーターの総重量に対する有機分含有量」を「0.1%以内」とした点に技術的に格別な臨界的な意義があるとは認められない。すなわち、上記の点は、当業者が実験的又は経験的に必要に応じて適宜選択可能なものにすぎないと認められる。よって、引用文献1記載の発明における「粘着テープ4」を広く使用されている「OPP粘着テープ」に限定することにより、「排気ガス浄化用コンバーターの総重量に対する有機分含有量が0.1%以内」とする程度のことは、当業者であれば、容易に想到することができたものと認められる。

〔相違点3〕について
「保持シール材の充填密度」の範囲を、本願発明が「0.2g/cm3以上」とした点に関しては、【発明の詳細な説明】【0009】に「尚、充填密度が0.2g/cm3以上とする事は、振動等によって触媒保持体がズレるのを防止するための必要面圧を確保する為である。」との記載しかない。したがって、本願発明において、「充填密度」を「0.2g/cm3以上」としたことに技術的に格別な臨界的な意義があるとは認められない。すなわち、上記の点は、当業者が実験的又は経験的に必要に応じて適宜選択可能なものにすぎないものと認められる。よって、「保持シール材の充填密度」を、本願発明は「0.2g/cm3以上」としたことは、引用文献1記載の発明が「0.25〜0.50g/cm3」としたことに基いて当業者が適宜設定することができたものと認められる。

(4)まとめ
以上のように、引用文献1記載の発明に、引用文献2に記載されていることを適用することにより、本願発明を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1及び2に記載された発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。
したがって、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.(特許法第36条第4項及び第5項)
(1)当審において平成18年2月15日付けで通知した拒絶の理由における明細書及び図面の記載の不備の点には、次の(A)及び(B)の2点が含まれている。
(A)発明の詳細な説明において、「排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量が1%未満である」とするための具体的なやりかたが不明である。発明の詳細な説明の【0012】には「排気ガス浄化用コンバーターの有機含有量を1%未満とする為、粘着テープの使用面積を極力少なく、また、テープの厚みも薄いほうが好ましい。」とあるが、このように「粘着テープの使用面積を極力少なく、また、テープの厚みも薄」くする程度のことで、「排気ガス浄化用コンバーターの有機含有量」を「1%未満」にできるとは考えられない。さらに、発明の詳細な説明に記載された2つの実施例においても、「排気ガス浄化用コンバーターの有機含有量を1%未満とする為」に、特段の工夫や配慮がされているわけではない。

(B)請求項1及び2の「前記排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量が1%未満である」に関して、「1%未満」とした根拠が不明である。なお、発明の詳細な説明には2つの実施例が記載されているが、そのうちの実施例1の当該量は「0.1%」であり、また、実施例2には、当該量の記載がない。

(2)本願明細書の記載
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0012】
また,前記OPP粘着テープは,分割状金属製シェル内に装着する場合,前記嵩高い保持シール材が上シェルと下シェルの合わせ部分に噛み込む事を防ぐ為に,上シェルと下シェルの合わせ部分に使用される。
前記OPP粘着テープの材質は以上の目的で使用される為,引っ張り強度が強く,摩擦係数が低いものを選択する必要がある。
また,排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量を0.1%以内にする為,OPP粘着テープの使用面積を極力少なく,また,テープの厚みも薄いほうが好ましい。かかる点よりテープの材質としては,ポリエチレン粘着テープ,アルミ箔粘着テープが好ましい。

【0014】
また、分割状金属製シェル内に装着する場合、前記同様に無機繊維シートの合わせ部分を粘着テープで固定した後、上シェルと下シェルの合わせ部分、即ち、無機繊維シートの両側に帯状に粘着テープを貼り付けた後、分割状金属製シェルを合わせて装着する。

【0016】
【実施例】
実施例1
触媒保持体としてコーディエライトモノリス外形130mm、長さ100mm、金属製パイプとして内径138mm、肉厚2.5mm、SUS304、長さ300mm、無機繊維シ-トとして厚み12mm、嵩密度0.10g/cm3 の結晶質アルミナ繊維マット(商品名マフテックブランケット 三菱化学(株)製)、保持シール材の外周を部分的に被覆する粘着テープとして、幅30mmの粘着テープ(商品名セキスイEvercel OPP テープ No,835EV )を用いて排気ガス浄化用コンバーターを製造した。
【0017】
まず、結晶質アルミナ繊維マットを敷、触媒保持体にのり巻き状に巻き付けた。巻き付けた結晶質アルミナ繊維マットの合わせ部を粘着テープで仮止めした後、触媒保持体の端部と巻き付けた結晶質アルミナ繊維マットの端部を粘着テープで被覆した後、プレスを用いて金属製パイプに圧入した。
【0018】
得られた排気ガス浄化用コンバーターの有機分を測定したところ0.1%であった。
実施例2
触媒保持体としてコーディエライトモノリス外形130mm、長さ100mm、金属製分割シェルとして内径69mmR、肉厚2.5mm、SUS304、長さ300mmの半割りパイプ、無機繊維シ-トとして厚み12mm、嵩密度0.10g/cm3 の結晶質アルミナ繊維マット(商品名マフテックブランケット三菱化学(株)製)、保持シール材の外周を部分的に被覆する粘着テープとして、幅30mmの粘着テープ(商品名セキスイEvercel OPP テープ No,835EV )を用いて排気ガス浄化用コンバーターを製造した。」

(3)判断
(A)について
平成18年4月19日に提出された意見書において、「保持シール材の外周を部分的にOPP粘着テープで被覆」したことにより、有機分含有量を抑制する具体的手段を明確にした。そして、OPP粘着テープを採用して得られた排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量を測定したところ0.1%であったことが、明細書の段落「0018」に記載されている。」と主張している。
しかしながら、「保持シール材の外周を部分的にOPP粘着テープで被覆」しただけで、「前記排気ガス浄化コンバーターの総重量に対する有機分含有量」をなぜ「0.1%以内」にできるのか、その根拠は不明である。すなわち、まず、上記(2)に摘記したように、明細書の段落「0018」に記載されている「排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量を測定したところ0.1%」であったとする唯一の実施例である実施例1において使用したOPP粘着テープは「商品名セキスイEvercel OPP テープ No,835EV」のみである。したがって、この実施例1において使用した「商品名セキスイEvercel OPP テープ No,835EV」以外のOPP粘着テープを使用した場合にも、排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量が0.1%となるという保証はない。例えば、上記「商品名セキスイEvercel OPP テープ No,835EV」のテープ厚みは「0.060mm」であるのに対して、その姉妹製品である「No,830EV」及び「No,820EV」のテープ厚みは、それぞれ「0.078mm」及び「0.052mm」と異なっている。したがって、「No,830EV」及び「No,820EV」を使用した場合には、むしろ「前記排気ガス浄化コンバーターの総重量に対する有機分含有量」が「0.1%」とならない可能性の方が高いと予想される。また、明細書の段落「0012」の「また,排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量を0.1%以内にする為,OPP粘着テープの使用面積を極力少なく,また,テープの厚みも薄いほうが好ましい。かかる点よりテープの材質としては,ポリエチレン粘着テープ,アルミ箔粘着テープが好ましい。」の記載とどのように整合するのか不明である。
さらに、明細書の段落「0012」に「排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量を0.1%以内にする為,OPP粘着テープの使用面積を極力少なく」とあるが、明細書の段落「0016」に、実施例1において使用した「粘着テープ(商品名セキスイEvercel OPP テープ No,835EV )」は、「幅30mm」とあるだけで、使用した長さは不明であるため、「OPP粘着テープの使用面積」がどの位であったのかも不明である。このようにOPP粘着テープの使用量が不明であるのに、「前記排気ガス浄化コンバーターの総重量に対する有機分含有量」が「0.1%」となったという結果だけを提示されても、OPP粘着テープの使用との因果関係は不明瞭である。
(なお、明細書の段落「0012」に「排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量を0.1%以内にする為、OPP粘着テープの使用面積を極力少なく、また、テープの厚みも薄いほうが好ましい。」とあり、そして、これはOPP粘着テープの使用量を減らせば、それだけ排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量が少なくなるという当然の予測に合致している。してみれば、「前記排気ガス浄化コンバーターの総重量に対する有機分含有量」を少なくするには、粘着テープの材質よりも粘着テープの使用面積又は厚みを小さくする方が得策ではないかと考えられる。)

(B)について
平成18年4月19日に提出された意見書において、「排気ガス浄化用コンバーターの有機分含有量」の上限値の根拠は「明細書の実施例1(段落「0018」)に記載されている」と主張している。しかしながら、「明細書の実施例1(段落「0018」)」には、「得られた排気ガス浄化用コンバーターの有機分を測定したところ0.1%であった。 」としか記載されていない。すなわち、明細書には、「前記排気ガス浄化コンバーターの総重量に対する有機分含有量」を「0.1%」となった一つの例のみが記載されているにすぎない。これでは、「前記排気ガス浄化コンバーターの総重量に対する有機分含有量」の上限値の根拠が明らかになったとすることはできない。
さらに、明細書の段落「0018」に記載された実施例2の「排気ガス浄化用コンバーター」は、実施例1の「排気ガス浄化用コンバーター」と同形のもので、実施例1との唯一の相違は、金属製シェルを2つ割の分割状金属製シェルとした点である。しかしながら、この実施例2の有機分の測定結果は記載されていない。ところで、明細書の段落「0014」に、「分割状金属製シェル内に装着する場合、前記同様に無機繊維シートの合わせ部分を粘着テープで固定した後、上シェルと下シェルの合わせ部分、即ち、無機繊維シートの両側に帯状に粘着テープを貼り付けた後、分割状金属製シェルを合わせて装着する。」とある。つまり、2つ割の分割状金属製シェルの場合のOPP粘着テープの使用量は分割状金属製シェルではない場合に比べて多くなると考えられる。すなわち、分割状金属製シェルではない実施例1の排気ガス浄化用コンバーターの有機分が0.1%であるのであれば、2つ割の分割状金属製シェルの実施例2の排気ガス浄化用コンバーターの有機分は0.1%より大きくなると考えられる。

(4)以上のように、本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

3.むすび
以上のように、本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用文献1及びに記載された発明及び上記周知のことに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-24 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2006-06-13 
出願番号 特願平9-362665
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01N)
P 1 8・ 536- WZ (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 飯塚 直樹
長馬 望
発明の名称 排気ガス浄化用コンバ-タ-の製造方法  
代理人 高橋 祥泰  
代理人 高橋 祥泰  

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